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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Eipic1-B移ろいゆく季節~He and girls of the day~

†††Sideはやて†††

「ただいまです~」

「八神はやて准陸尉、リインフォース・ツヴァイ二等空士。ただいま戻りました」

事件捜査を終えたわたしとリインは、所属してる本局捜査部・特別技能捜査課のオフィスに帰った。敬礼して挨拶すると「はい。ご苦労様」って、特捜課の課長であるクー・ガアプ一等陸佐が労いの言葉を掛けてくれた。黒のショートヘア、空色の瞳をしてて、仕事に関したら厳しいけど、プライベートやととっても暖かで優しい人や。

「八神准陸尉、お疲れさまでーす」

さらに、とっても綺麗な水色の長髪をポニーテールにしてるシャルちゃんと、「お疲れで~す。准陸尉~」ローズピンクの長髪をおさげにしたルミナ(本名はアルテルミナスって結構長い)からも労いを貰った。ってゆうか・・・

「んもう! またそうやってからかう~!」

ぷう~っと頬を膨らませて見せる。わたしは上級キャリアの試験を受け、そんで合格。二等空士から一気に准陸尉へと昇進した。それを理由にいろいろとからかわれる事が多なった。

「でもまさか、一気に階級を追い抜かれるとは思わなかったよ。しかも嘱託に・・・」

ルミナは曹長。准尉の1つ下の階級やな。准尉への昇進試験をルミナは2回落ちてる。そのこともあって今ではわたしの方が上官になるわけなんやけど、上官ぶりたいわけやない。シャルちゃんもルミナも当然解ってるんやけど、一種の気晴らしとしてわたしをからかうんやもん。そろそろ本気で怒ろうかな~。

「それにしても1年で結構変わっちゃったよね、わたし達・・・」

シャルちゃんが寂しそうにそう言うた。チーム海鳴のみんな、中学校に進学してからは小学校の頃以上に仕事がバラバラになってしもうて、管理局で逢うことなんてまずなくなった。リンドヴルムのように協力して事件に当たる、ってゆうほどの大事件も起きへんし。

「特にルシルが完全に離脱したのが大きいというか、さ・・・。少しくらいは相談とかしてほしかったよね。いきなりはやての家から出てくし、学校の進学もやめるし、正式に局員になるし。そのうえ理由を付けて直接逢おうともしない。何よそれぇぇぇぇーーー!!」

「落ち着いて、イリス! 顔が放送事故を起こしてる!」

シャルちゃんの怒りは当然。全く以ってその通りやって同意する。ルシル君とアイリが出てった翌日。わたしらはルシル君とアイリを本局の中から捜し出して、そんで謝らせた。そん時に教えてくれた理由のこともあって、ちゃんと許した。そやけど、その日以降はもう酷い。全然逢えへんもん!

・―・―・回想や!・―・―・

――はやて。突然、家を出て行くことを許してほしい。君も、俺も、もう孤独じゃない。シグナム達が、なのは達が、君の側に居る。だからもう、俺が居なくても大丈夫だって思う。だから安心して、俺は俺の道を進むことが出来るよ。今まで楽しい時間をくれてありがとう。ルシリオン・セインテスト――

――お世話になりました! バイバイ、はやて♪ アイリ・セインテスト――

ルシル君の置手紙を読んで、ルシル君とアイリのの部屋に行ってみると、そこはやっぱりもぬけの殻やった。綺麗にベッドメイキングされてて、開かれたクローゼットの中に衣類は1着も残ってへん。

「っ!・・・いや・・・いやや・・・いやぁぁぁぁぁ!」

その場にへたり込んで叫ぶ。認めたなかった。確かにわたしの側にはたくさんの家族と友達が居る。もう孤独やない。そやけど、ルシル君が居らんくなっても平気ってわけやない。それくらい解っててほしかった。

「はやて!?」

「はやてちゃん!?」

「「主はやて!」」

わたしの叫び声を聞いて駆けつけてくれたシグナム達。そんで泣いてるわたしを見て「どうしたの!?」シャマルがわたしの肩を抱いてくれて、「んだよ、これ・・・!?」ヴィータと、「ルシリオンとアイリはどこだ・・・!?」シグナムが、空っぽになってるルシル君の部屋を見て絶句した。

「うそ・・・! ルシル君とアイリちゃんの私物が何も残ってない・・・!」

「なんでだよ・・・! アイツら、どこに行ったんだ!?」

「ヴィータ。その紙きれはなんだ?」

「え? あ、これか・・・。はあ!? んだよこりゃ!」

ヴィータがわたしの側に落ちてるルシル君の置手紙を読んで怒鳴り声を上げた。そんで「勝手に出て行っただと!?」シグナムも怒りを露わにした。シャマルも続いて手紙を読んで「そんな・・・!」ショックを受けた。

「ザフィーラ! お前、ルシルとアイリが居なくなることに気付かなかったのかよ!」

「む。・・・すまぬ。ルシリオンとアイリは警戒外の対象だったため、気付かなかった」

「ったくよ! お前の耳と鼻は飾りかよ!」

「ヴィータ、言い過ぎだぞ!」

「でも、あれだけの荷物をどうやって運び出したのかしら? 創世結界も使えないのに。そもそも出てくって、行くあてが手あるのかしら・・・?」

「主はやて。ルシリオンと連絡は取れませんか?」

シグナムからそう言われてハッとした。今はショックを受けて悲しんでる場合やない。わたしは自室へと駆け出す。勉強デスクの上に置かれた携帯電話を手にとって操作してると「はやてちゃん・・・?」リインが起きてしもうた。

「ごめんな、リイン、起こしてしもうて!」

「・・・何かあったですか? はやてちゃん、なにか様子が・・・」

わたしがリインからの問いに答える前に「出て行ったんだよ。ルシルとアイリが」続いてわたしの部屋にやって来たヴィータが答えてくれた。その最中にもわたしは、震える指でルシル君の電話番号を呼び出す。

「出て行った・・・? 出てった!? ど、えっ!? ルシル君とアイリ、この家を出て行ったんですか!?」

「そうなのよ。私たちが寝ている間に、荷物を纏めて出て行っちゃったみたいで」

「置手紙も残されていた」

「そんな・・・!」

リインも突然の別れにショックを受けてる。なんとしてもルシル君とアイリを見つけ出して、勝手に出てったことを叱ってやらな。

『お掛けになった電話番号は、電波の届かないところか、電源が切られておりますので、繋がりません』

「アカン・・・。圏外か電源を切ってる・・・!」

呼び出しコールを切った携帯電話を勉強デスクの上に置いて、わたしは椅子に座って突っ伏した。とそこに携帯電話からメロディが流れ始める。メロディからしてチーム海鳴の誰かからや。わたしは慌てて携帯電話を手に取るんやけど、「すずかちゃん・・・」電話を掛けて来たんはすずかちゃんやった。

「出ないですか? はやてちゃん・・・」

「今は・・・出るほどの気力ない・・・」

鳴り止まない携帯電話をもう一度デスクの上に置いて、また突っ伏す。そんなわたしの代わりに「私が出ますね」シャマルがデスクの上から携帯電話を取って「はい。シャマルです」呼び出しコールを受けた。

「ええ、おはよう、すずかちゃん。ええ。・・・ええ・・・。えっと、実は・・・」

シャマルが、すずかちゃんに事情を伝えた。ルシル君とアイリが突然いなくなったこと、行方知れずになったこと、を。スピーカーの奥から『ルシル君が居なくなった・・・!?』すずかちゃんの驚きの声が漏れ聞こえてきた。

「そうなの。それで今、はやてちゃんや私たちはてんやわんやで・・・。うん、そうなの・・・。あ、今日はみんなで中学校の校舎を観に行くって約束だったわね・・・」

そうや。来月から通う聖祥中学校の女子校舎をみんなで見学しに行こうって約束してたんやった。そやけど、今のわたしにはそれすら億劫や。

「ええ。・・・ええ。・・・判った。ありがとう、すずかちゃん。待ってるわね。・・・はやてちゃん。すずかちゃん達が来てくれるそうです」

「・・・うん」

それからしばらくして「お邪魔します!」すずかちゃん達が来てくれた。みんな息を切らしてて、ここまで急いで来てくれたってことが判る。そんで「はやてちゃん、大丈夫?」すずかちゃんと、「はやてちゃん・・・」なのはちゃんが、泣き過ぎて目を腫らしてるわたしの心配をしてくれた。わたしは「うん」頷いて応えるだけ。

「確かに荷物とか全部持ってったみたいね、ルシルの奴」

ルシル君の部屋に行って手掛かりを探しに行ってたアリサちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃん、そんでシャルちゃんがリビングに戻って来た。

「矢川先生に問い合わせてみたよ。どうやらルシルは、生まれ故郷のドイツの学校に進学することになってるみたい。でも・・・」

「ドイツ生まれっていうの、ルシルが魔術を使って偽装した国籍だけど・・・。でもだからってそっちの学校に行くなんて考えられない」

「やっぱり本当の出身世界のフェティギアに帰っちゃったのかな~・・・?」

「携帯電話じゃ連絡とれないってことみたいだけど、念話はどうなのかな?」

「それもダメなのよ、なのはちゃん。念話も繋がらない。完全に界外に行っちゃってるわね」

連絡手段が何もあらへん。みんなが打つ手なしって唸る。そこに「リンディ提督に、フェティギアの住所とか訊いてみたらどうだ?」ヴィータがそう提案した。フェイトちゃんがすかさず「訊いてみる!」リンディ提督に連絡を取り始めた。

「ルシル君が管理局を辞めていないなら、管理局の局員データに問い合わせてみたらどうかな?」

「ナイス、すずか♪ あたしが当たってみるわ」

わたしら八神家の保護観察処分はもう終えてる。そやからいつ管理局を辞めても問題あらへん。もしそうなら、やっぱりルシル君はフェティギアに帰って、本格的に“エグリゴリ”との戦闘に入るつもりなのかもしれへん。

「え? じゃあ母さんも、ルシルがはやての家を出てくことを知らなかったってこと?」

『当り前よ! 事前に知っていたら必ずあなた達に話すわ!』

スピーカーモードにされてるフェイトちゃんの携帯電話から、リンディ提督から驚きの声が発せられる。そんで『私からリアンシェルト先輩に連絡を入れてみるわ。こちらからまた電話するから!』電話が切れた。

「リアンシェルト総部長・・・」

「頼りたくない相手1番だが・・・」

「人事の一手を管理する運用部の総部長だし、今は・・・」

「つうか、エグリゴリん中で居場所が判ってんのリアンシェルトくらいだろ? ひょっとしてあの馬鹿・・・!」

ヴィータの話に「まさか・・・!」わたしはソファから立ち上がった。ルシル君はリアンシェルトを斃すために本局に向かったんか? 無理や、今のルシル君にリアンシェルトは斃せへん。それはルシル君かて理解できてるはずや。

「ルシルとアイリの局員IDは抹消されてないわ。けど・・・アイリはそのまま特捜課の課員として登録されたままだけど、ルシルだけが内務調査部に異動しちゃってるわ・・・」

アリサちゃんからの報告にわたしらは「え・・・?」呆気に取られた。そこにフェイトちゃんの携帯電話から呼び出しコールが鳴ったから、「母さん・・・?」フェイトちゃんは出た。

『先輩から事情を聞いたわ。ルシル君は来年度から正式局員に昇格され、一等空士にも昇進するみたいね。あと、住まいも本局内の寮になってるみたい。たぶん、今は寮でいろいろと整理してると思うわ・・・。逢いたいのならまずは寮に行った方が良いかも・・・』

「ありがとう、母さん。行ってみるよ」

電話を切るフェイトちゃんや、シグナム達みんながわたしを見る。そんで「はやて。ルシルに逢いに行こう。そして、1発お見舞いしようよ!」シャルちゃんがわたしの前にまで来て、右手を差し出した。

「・・・・うんっ。行こう!」

そんなシャルちゃんの右手を取って、わたしは強く頷き返した。そんでわたしらはトランスポーターを使って、本局の第零技術部――通称、スカラボへと直通転送。そこで「やぁ、こんにちは」スカラボの主、ジェイル・スカリエッティ少将(愛称はドクターで、みんなそう呼んでる)と、「いらっしゃい」スカリエッティ家の五女、チンクからのお出迎えを受けた。わたしらは「こんにちは!」そう挨拶を返して、すぐにここを出て行こうとした時・・・

「あ、そうだ。ねえ、ドクター。昨夜、ルシルとアイリ、ここに来なかった?」

シャルちゃんがドクターにそう訊ねた。

「ん? 昨夜・・・、こちらで言うと早朝か。あぁ、来ていたようだよ。生憎と私は研究中だったこともあって顔を合わせてはいないが。確かチンクが応対していたようだが・・・」

「はい。2人とも多くの荷物を持っていましたから、トーレと共にその荷物を居住区の第3セクションにある第7局員寮へと運び入れる手伝いをしました」

「おや? 彼は居住区に引っ越しをしたのかい?」

「実は――」

シャルちゃんがドクターとチンクに事のあらましを伝えた。すると「あぁ、だからか・・・」チンクがそう小さく唸った。

「だからって、何かあったん?」

「何かと言うほどでもないが・・・。寂しそうな顔をしていたと思ってな」

寂しそう・・・か。それやったらなんで出てったんやろ。置手紙の内容からして自分の意思で出て行ったことはおそらく間違いない。でも、全部が全部ルシル君の決めたことなんやろか。何か陰謀的な・・・。そう、リアンシェルトが何かルシル君に言うたんかもしれへん。

「まぁとにかく。ルシルとアイリは今日1日、家財道具を買いに行くと言っていたから、第3セクションの家具店を捜せば逢えると思うぞ。行ってみると良い」

チンクから有力な情報を得られた。わたしは「おおきにありがとうございます!」お礼して、みんなと一緒に居住区・第3セクションへと向かった。最初に目指すのは、ルシル君とアイリのこれからの住居である局員寮。

「ってゆうか、ケータイにも思念通話にも出ぇへんってどうゆうことや!?」

「あー、なんか避けられてるっぽいね・・・」

「逃げてるんでしょ、どうせ。あたし達の前から勝手に出て行ったことに後ろ暗いんでしょ」

一切の連絡が取れへん。なんかもう、こう・・・怒りがふつふつと沸いて来た。シャルちゃんから1発お見舞いしようって言われたけど、1発だけやと足りひんかも。

「ここが、ルシルの新しい住まいってわけだな」

目の前にそびえ立つんは20階建てのマンション。エントランスに入ると「あー、君たち、待ちなさい」管理人室からわたしらを制止する若い女性の声が。わたしは管理人室の窓口に行って、「こんにちは」と管理人のお姉さんに挨拶した後・・・

「わたし、特別技能捜査課所属、八神はやて准陸尉いいます」

局員IDを提示しながら身分を明かす。すると「あ! チーム海鳴の! よく見れば、後ろの方たちみんなチーム海鳴の!」管理人さんのテンションが急激に高なった。そんで「あの、サインとか貰って良いかな!?」管理人室の奥に引っ込んで行きそうやったのを「あの!」呼び止める。

「あの、ここにルシリオン・セインテスト二等空士、アイリ・セインテスト三等空士が入寮したらしいんですけど・・・」

一応確認を取る。ここにルシル君とアイリが入寮したことは、実際にここに荷物を運び入れたチンクから伺ってるけど、そやからと言って管理人さんをスルーして寮内に入ろうとすると通報されそうや。

「あ、あぁ・・・。あ、その、プライバシーの問題でそう言った話はちょっと・・・」

『このリアクションで、アイツがここの寮に居ることを認めてるもんだよな』

『ちょっと抜けてる管理人よね』

ヴィータとシャルちゃんからの思念通話に、『あはは・・・』わたしと、『にゃはは・・・』なのはちゃんが苦笑する。それでもきちんと仕事してる管理人さんの職務妨害するわけにはいかへんし、「お邪魔しました」寮のエントランスから出る。サインが欲しそうな顔してたけど、今はルシル君とアイリを捜す方が先や。

「さてと。これからどうする?」

「ここで待ってれば、外出なり帰宅なりで逢えそうだけど・・・」

「でもさ、ここでみんな揃って待つって言うのも・・・」

「時間の無駄っぽいよね」

「チンクさんの言ってたように、家具店を捜し回ってみる?」

「それも非効率な気がするわね」

「それじゃあ二手に別れましょ。ここで待つ班と捜しに行く班。ルシル君とアイリちゃんを発見したら即連絡」

とゆうわけで、シャマルの提案を採用したらわたしらは、寮の前にシグナムとザフィーラを残して、他のわたしらは第3セクションにある家具店の2店へ。

「わたしとヴィータとシャマルとリイン、そんでシャルちゃん」

「私とアリサちゃんとすずかちゃんとフェイトちゃんとアリシアちゃん」

さらにこの2班に分かれての捜索や。居住区を走るバスに乗る。そんで目的の家具店に近いバス停で降りて、4車線ある道路の歩道を歩いてると、「ルシル君、アイリ・・・!」の姿を見つけた。2人は反対側の歩道を歩いてる。

「シグナムやなのはちゃん達に知らせます」

「背後に回ろう。いきなり現れて驚かせてあげる」

シャマルが念話でシグナム達に伝えてくれた。ニッヒッヒ、ってイタズラっ子のような笑い方をするシャルちゃん。そうゆうわけで、わたしらはルシル君とアイリの背後を取るために行動開始。ルシル君の気配察知能力は尋常やないから難しいけど、今はもうどうにかしてルシル君を懲らしめたいからやる! それにしても・・・

『ルシル君とアイリちゃん。楽しそうにお喋りしてる・・・』

『あたしらにここまで混乱させておいて・・・』

『なんか、すごいイライラするです・・・』

『うん・・・。悲しんでた自分がアホらしなってきた・・・』

『・・・なんかもう、驚かせるのも手緩い。この鬱憤を・・・!』

――閃駆――

両脚を魔力で強化したシャルちゃんが、前方を行くルシル君とアイリに向かって突撃。止める間もなくシャルちゃんは「おらぁぁぁぁぁっ!」閃駆の速度を保ったままでの飛び蹴りを、「ぐはぁっ!?」ルシル君の背中に食らわせた。

「ひゃぁぁぁぁ!? マイスター!?」

文字通り吹っ飛んだルシル君の様子にアイリが悲鳴を上げる。そんで蹴りを繰り出したのがシャルちゃん、その後ろにわたしらが居ることを視認して、「あ、はやて達だ♪」満面の笑顔を浮かべて手を振った。

「はやて・・・!? それにシャル、ヴィータ達も・・・!」

起き上がったルシル君がわたしらの姿に目を丸くしてる。シャルちゃんが「言いたいことがいろいろあるけど、まずははやてから!」わたしに振り向いた。

「はやて・・・」

「ルシル君」

ルシル君の目の前にまで歩いて行って「っ!」振りかぶった右手で、「っつ!」パァンとルシル君の頬に平手打ち。ルシル君は僅かにフラついて、「すまない」謝った。

「手紙1枚だけ残して! なんの相談も無く勝手に出てかれて! 辛かった! 泣いた! そんで心配した!」

涙が溢れ出て来て、ルシル君たちの姿が滲む。両手で涙を拭ってると、ルシル君が「ごめん。配慮が足りなかった」わたしの頭を撫でてくれた。

「なんで・・・? 何でこんな急に、勝手に・・・わたしらの家を出てったん・・・!? 手紙に、わたしはもう孤独やないから、ルシル君が居らんくなっても平気って書いてたけど、そんなわけない・・・! ルシル君が最初なんよ・・・! わたしの孤独を埋めてくれたんは・・・! ずっと側に居ってくれて、それが当たり前で、ずっと続いてほしかった・・・!」

ルシル君にしがみ付いて、その胸に顔を埋めて問う。いろんな理由を考えた。リアンシェルトが何かしたんやないか、それともわたしに問題があったんやないか、となればわたしの告白が問題かもしれへん、とか。

「うん・・・」

「理由はなんなんかな・・・? わたしにあるんやったら言うてほしい・・・」

「ある意味、はやてが理由であり、俺自身にもある」

ルシル君がそう答えたら、「はあ!? はやてになんの問題があるっつうんだよ!」ヴィータと、「どういう理由です!?」リインが怒りを露わにした。わたしは顔を上げて「わたしとルシル君に・・・?」って小首を傾げる。

「あー、いや。俺自身への問題が大きいかも、な」

「で? その理由って何? 納得できないものだったら、強制的にはやての家に連れ帰るよ?」

ルシル君はそっぽを向いて、コホンと咳払いを1回。

「・・・その、なんだ。はやてももう中学生になる。これまで以上に多感な時期に入るだろう。それに、女の子として心身ともにいろいろと大変になるだろうし。そこに男子が一緒に暮らすとなると、お互いが気遣うことになる。ほら、あれだ。卒業式の朝、アリシアが言っていたように、綺麗に成長して行くはやてに緊張するのもある・・・。ああもう! はやてとドギマギした関係になりたくないから、はやての家を出て入寮することを決めたんだ!」

顔を赤くして、恥ずかしそうにその理由を教えてくれたルシル君。わたしも顔が熱くなるんを自覚する。嬉しいやら恥ずかしいやらで頭の中がぐるぐるや。嫌われたわけやなかった。わたしのことを案じてくれて、その上わたしをちゃんと1人の女の子として意識してくれてる。それがホンマに嬉しい。

「・・・ノロケかよ! 居なくなった理由、ノロケかぁぁぁ~~~~~い!!」

シャルちゃんが大声で叫んで頭を掻き乱した。ヴィータとリインの怒りも完全に沈下してて、「あらあら♪」シャマルは微笑ましそうにわたしらを眺めてる。
それからすずかちゃん達とも合流して、ルシル君は「申し訳なかった!」深々とみんなにも謝罪した。

・―・―終わり!・―・―・

嬉しい理由やったけど、翌日からはさんざんやった。なかなか連絡も取れへんし、逢うことも出来ひんくなったし。そやから久しぶりに逢うたびに、ルシル君を怒ってる気がする。嫌われたないけど、こればっかりは乙女心を尊重してほしい。

「はぁ・・・。なんか叫んだらスッキリしたかも・・・」

「それは良かったね、イリス。ほら、ササッと書類を片付けるよ」

「うぃー」

シャルちゃんとルミナがデスクワークを再開したから、「よしっ。わたしらもササっと片付けよか、リイン」わたしも、わたし用のデスクに着いて、今回担当した事件の報告書の作成に入る。リインも、わたしのデスクの上に設けられた特製の小さなデスクに着いて、「はいですよっ!」システムを立ち上げた。わたしもシステムを立ち上げて、キーボードを叩いて報告書を書いてく。

「あ、シャルさん。言い忘れてたですけど、さっきミッドの次元港でルシル君と逢ったですよ」

作業を始めて数分。リインが思い出したようにシャルちゃんに報告したら、「なんですと!?」シャルちゃんが勢いよく立ち上がった。報せるのすっかり忘れてた。別に隠そうとしたわけないよ?

「わたしなんてこの半年、モニター越しの通信でしか話せてないのに~!」

そんでうがーっと唸った。わたしかて直接逢って話すんなんて3ヵ月ぶりやった。ルシル君と逢えたことがどれだけ嬉しかったか。そやからシャルちゃんの気持ちも痛いほどに解る。

「あー、そう言えばルシルって全然このオフィスに来てないか~。ガアプ課長。ルシルって特捜課を辞めたんでしたっけ?」

「いいえ。彼の本籍は確かに内務調査部に変更されたけど、特捜課の一員であることには変わりないわ。まぁ、向こうの仕事が忙し過ぎている所為で、なかなかこちらの仕事に来られないけど」

なかなかって言うても、もう1年もこっちの仕事をしてへん。その分、内務調査部の新進気鋭のエリートやって、チーム海鳴のメンバーってゆうネームバリューも相まって本局でも色んな意味で有名人になってる。

(今や、完璧に、見逃すことなく、騙されることなく、不正を暴いて相手を弾劾、そんで徹底的に、逃れようなく、不正した人や組織を有罪にすることから慈悲無き粛清者・・・パージマシーンって呼ばれてる)

ホンマに嫌な二つ名や。マシーンなんて。ルシル君は確かに最近は冷たいけど、それでも優しい男の子や。それやのに・・・。

「もう! もう! 直接逢~いた~い~っ! さ~わ~りた~い~っ!」

「イリス~。しっかり仕事して~」

座ってる椅子をクルクル回すシャルちゃんと、淡々と作業する呆れ口調のルミナ。わたしは、「オフィスでデスクワークって言うてたから、オフィス前で待ってたら逢えるかもしれへん」って、最大のライバルであるシャルちゃんに伝えた。

「ホントに!?」

「わたしとリインの乗って来た便の1つ前やったし、たぶんまだ調査部オフィスに居ると思う」

「よっしゃぁぁぁーーー!」

テンションうなぎ登りのシャルちゃんやけど「仕事。やる。絶対」ルミナがジロリと見て、一刻も早く仕事を終わらせるように言う。シャルちゃんは「おらおらおらぁぁぁ!」ってものすごい勢いで書類作成を再開。そんで・・・

「確認お願いします!!」

データディスクをガアプ課長に提出した。その速さにガアプ課長は苦笑しつつ、提出されたデータディスクに収められた報告書を確認して、「はい。御苦労さま」ニコッて微笑んだ。

「お疲れ様でした! ルミナ、はやて、リイン、お疲れ!」

「お、おぉ・・・おつ~」

「お疲れ様、シャルちゃん」

「お疲れ様ですぅ~」

風のようにオフィスを出てったシャルちゃんを、わたしらは見送った。とそこで「はやては急がなくていいの?」ルミナからそう訊かれた。

「あ、うん。来週、ルシル君がわたしの家に遊びに来てくれるんよ」

「あれ? じゃあイリスって別に今日慌てて逢いに行かなくても、来週逢えるってこと?」

「そう・・・やね、うん」

泊まって行ってくれるかは判らへんけど、海鳴市に戻って来ることは確かやから、その日まで待てばシャルちゃんもルシル君と逢えると思う。

「ぷふっ」「ぷはっ」

「「あははははは!」」

さっきのシャルちゃんの必死過ぎる様子を思い出すと、悪いんやけどなんや笑い始めてしもうた。心の中で、ごめんな、って謝りながら「あー、楽しみやなぁ来週♪」ルシル君とゆっくり話せるやろうその日をひたすら待ち望んだ。
 
 

 
後書き
グッド・モーニング。グッド・アフタヌーン。グッド・イーブニング。
今話ははやて視点でお送りしました。次話はシャルですね。それにしても、ルシルの演技っぷりが酷い。前作におけるフェイト好き好き❤になる以前の、改心前のルシルのようです。
さて、話は変わりますけど、テイルズオブベルセリアの発売日がようやく判明。8月18日。それまでには「STRIKERS」編の中盤には入っておきたいなぁ。ていうか、スターオーシャン5すらまだクリアしてない! Youtubeにイセリア戦までUPしてる人たちは、いつ仕事やら学校やらに行っているんだ!?
 
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