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僕らの一年日記

作者:ザクロ
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4月22日 残り1ヶ月

5日後、だいぶ計画はたった。と、言っても、私から言ったことはほとんどなく、科学に関する知識を多く持つ、才茂くんや、善田くんの意見で、やることが決まった
川からとってきた水の中にある微生物を顕微鏡で見たり、炎色反応の実験をしたり、ジャイロ効果を説明したり、よくある、静電気で物を浮かせる、電気くらげ実験、スライム作り、割れないしゃぼん玉、など様々なことをする予定だ
ほかにもまだまだあるけど・・・・頭の悪い私にはついていけないよ・・・・
近いうちに道具を買いに行こう、という話になっていたその時
ガラッ
理科室のドアを開けて入ってきたのは、知らない人だった
上靴の色を見るに、同学年のようだけど、どこかで見たことあるような・・・・
「似非か」
だるそうに座っていた才茂くんが、立ち上がった。そうだ、この人放送部に行った時に見た
「あぁ、ここに俺が来たってことは、お前はわかってるな?」
「そういうことだろ。この部活は、今まで雑用係だったんだ。その雑用ってのは大半、放送部の手伝い。文化祭のために手伝ってほしいって言いたいんだよな?」
そうか、忘れてた。覚元くんが言っていたけど、総合理科研究部の総合っていうのは、理科全般って意味と、この学校全般の手伝いっていう二つの意味が込められているって
手伝い、それをしないために、先生はやることを決めてくれたんだ。今はこの文化祭のために、頑張らなければいけない
ほかの部活の手伝いをしている暇なんか無いよ
「部長は誰だ?」
似非(えせ)と呼ばれた、目つきの怖い人は、部員全員をその怖い目で見渡した
「そこの髪の短い人、お前だろ?」
指を指された。どうしてばれたんだろう・・・・?なんだか怖いな・・・・
「怖がっちゃダメだよ、美佳。それに、自信持って。部長に見えるって、かっこいいじゃない!」
「由紀・・・・」
励ます由紀は、私より一歩前へ出た
「似非、私が手伝いに行くよ。そもそも、総理研はだいたい一人なんだから、手伝うのもひとりでいいでしょ」
似非くんは、仕方がないなというようにため息をついた
「ったく、ちょっと部員が増えて、やること見つかったからって、思い上がるんじゃねーよ」
吐き捨てるように言って、由紀よりも先に、理科室から出て行ってしまった
「ごめんね、放送部の方こそ、この学校で大事な役割任されてるからって調子乗ってるのよね。あとは頼む、本当にごめん!」
由紀は申し訳なさそうに謝ると、走って似非くんを追いかけていった
「この学校で大事な役割って・・・・なんなんだろう」
「放送部は、部活動紹介の動画、文化祭の映像撮影、文化祭の作品展示、体育祭のアナウンス、県の総合文化祭の出場・・・・やることはたくさん、しかもなくてはならない重要な仕事、それを任されてる。俺も入ろうと思ったから若干知ってる。まぁ、結局、UNOしに行ってるだけだけど」
頼んでもないのだが、突然才茂くんが説明してくれた
「詳しいね、才茂くん」
「まぁな、俺、自分で言うのもなんだけど、頭はいいほうだと思ってるんだ」
自分でそれを言うのか、自尊心が強いのか・・・・
まぁ、頭の良さ、心の痛いところを突くことから、否定はしなけどもね・・・・
「あの・・・・4人で誰が何を買いに行くか決めませんか・・・・?」
申し訳なさそうに、善田くんは顔をのぞかせる
そうだそうだ、似非って人が入ってきて、話がそれちゃったけど、もともと、誰がなんの買い物に行くか決めなきゃいけなかったんだった
「薬品は学校でそろう。顕微鏡とかも学校にはある。ただ、静電気の実験に必要な風船、ビニールテープは買わなきゃいけない」
才茂くんが話し始めたとき、腕を組んで黙っていた覚元くんが口を開いた
「スライム作りの為の、ホウ砂、洗濯のりも必要だな。そこで、俺と善田で、スライム作りの道具、割れないしゃぼん玉作りの道具を買いに、駅二つ分離れたショッピングセンターに行く。残る、才茂と皆木が、その他の道具を、近くのホームセンターで買ってくれ」
すると、才茂くんの表情が少し曇った
「おいおい、確かに俺が仕切ったのは悪かったが、割り当ては部長が決めることだろ?お前が仕切るもんじゃねぇ」
「辛い遠くの仕事は任せろと言ったんだ。お前らを楽させるためだ」
「それで少しでも貢献したつもりか?」
「お前こそ、出しゃばることで役に立っているつもりか?」
にらみ合いが続く、これはまずいと、私は間に入った
「覚元くんの言ったとおりでいいよ。割り当ては、私もそう考えていたことだし。二人が言い争う必要はないよ。仕切ってくれるのは、むしろありがたいもん」
ありがたい、その言葉に自然と笑顔が出た。才茂は、ふーんと言って顔を逸らした
「行くぞ、善田。買い物」
「お・・・・おう、わかった」
部費を握り締め、先に覚元くんと善田くんは、理科室から出て行った
「皆木、俺たちも出ていく準備するぞ」
「う、うん、わかった」
険悪な仲になるふたりを、私はどうすることもできなかった。
この小さなほつれが、大きな穴とならないように、私に出来ることをしなくてはならない

・・・・内部分裂が、始まろうとしていた 
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