転生とらぶる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
機動戦艦ナデシコ
1298話
「……今、何と仰いました?」
交渉が始まった直後にイネスの口から出た言葉は、さすがのプロスペクターといえども予想外だったらしい。
困惑した表情を浮かべながら、目の前のイネスへと尋ねる。
尚、護衛のつもりなのか、ライフルを持った男が2人、そんなイネスの後ろに控えていた。
まぁ、イネスが火星に生き残っている人の……少なくてもこのユートピアコロニーの地下に住んでいる者達のリーダーであるのは事実なんだし、その辺を考えれば護衛がいても当然なのだろう。
ただでさえ、俺達はイネスを含めて火星にいる生き残りを助けに来たのだから。
……もっともそれは表向きであり、実際にはさっきまで俺達がいた研究所の方にこそ用事があるんだろうけど。
あのチューリップモドキとか、な。
「だから言ったでしょう? 私達はナデシコに乗って地球へと向かう気はないと。折角私達を迎えに来てくれたみたいだけど、残念ながら私達はそれを望んでいない」
「つまり、とっとと帰れ。そう仰りたいのですかな?」
改めて尋ねるプロスペクターに、イネスは笑みすら浮かべて頷きを返す。
「ええ、私達は火星に残ります、と。ナデシコの基本設計をして地球に送ったのはこの私。だから私には分かる。この艦では木星蜥蜴に勝てない。そんな艦に乗る気にはならない」
キッパリと告げるその言葉に対し、即座に言葉を返したのはヤマダだった。
「だーかーらーよぉっ! 実際、俺達は地球からこの火星までやってきてるし、木星蜥蜴を相手にして負けた事は一切ないんだって言ってるだろ!」
「おい、ガイ! 今はいいから……」
そんなヤマダを慌てた様子で止めるテンカワ。
その理由は、イネスの背後に控えている2人の護衛だろう。
……なるほど。どうやら俺達がこのユートピアコロニー跡地へと戻ってきた時にテンカワとヤマダが拘束されていた理由は、この辺の言い争いにありそうだな。
と言うか、ヤマダが暴走するのはいつもの事だし、予想して然るべきかだったか。
そして、何故かそんなヤマダに対して濡れた視線を向けているメグミ。……男の趣味が悪いんじゃないか? と言いたいところだが、俺の口から出ても説得力ないよな。
ともあれそんな状況で護衛達が手を出してこないのは、ここがナデシコのブリッジ……つまり、こっちの手の内だから迂闊な行動をしていない訳か。
もっとも、イネスの方はそんなのは関係ないとばかりに口を開くが。
「確かに、貴方達は火星に来るまで木星蜥蜴を相手に負けた事はなかったんでしょう。それが、そこにいる男の乗っている機体のおかげだというのは、何となく想像出来るわ。けどね、貴方達は木星蜥蜴について何を知っているの? あれだけ高性能な……それでいてあれだけの物量を持つだけの無人兵器がどうして作られたのか。目的は? 火星を占拠した目的は?」
「だからだなぁっ! そんなの関係ねえだろ! 俺達がいれば木星蜥蜴なんぞ、どれだけいようと全部倒してみせる!」
再びブリッジに響くヤマダの声。
いや、声を上げたのはヤマダだが、ブリッジにいる殆どの者がそれに同調するような態度を取っている。
それは先程ヤマダを止めたテンカワですら同じだ。
……違うな。テンカワだからこそ、なんだろうな。
このユートピアコロニーはテンカワの故郷。そこで出会った火星の生き残り。普段は大人しいテンカワがムキになってしまうのも当然か。
「君の心、解説してあげようか?」
「ああん? 解説だぁ? 何だってそんな真似をするんだよ」
唐突に話題が移される。
何だって解説? そんな風に思っている間にも、イネスは言葉を続ける。
「君が小さい頃から憧れていた正義の味方。それを目指してきたんでしょうけど、実際に君はそこまで強くはない。それどころか、その性格を考えれば猪突猛進して周囲に迷惑ばかりを掛けている。更に、ナデシコをここまで連れて来たのは実質的には君じゃなくて、あの未知の機体。だからこそ、ここで自分の力を発揮して、己の存在意義をしっかりと周囲に示したい。……いい? 勝ったのはあの機体であって、君じゃないの。君は単純にあの機体におんぶに抱っこして貰ってるだけ。君は英雄になりたいのかもしれないけど、誰でも英雄になれる訳じゃないの。君は英雄じゃなくて、端役でしかないの」
イネスの口から出たのは、あながち間違いって訳でもない。実際、俺が……ミロンガ改が火星にくるまでにナデシコで大きな力となったのは事実なのだから。
だが、完璧に正しい訳でもない。
ナデシコとエステバリス。そしてこの艦のクルーの能力を考えれば、俺がいなくても無事に火星に到着出来た可能性は高いだろう。
「っだとこらぁっ!」
だが、それを聞いていたヤマダは我慢出来なかったらしく、イネスへと向かって踏み出そうとし……すると、まるでそれが合図だったかのように、ナデシコの中に警報音が鳴り響き、すぐにルリが現状の報告を口にする。
「敵襲です。敵は双胴艦……いえ、大型戦艦20、小型戦艦70。チューリップもその背後に多数」
双胴艦の呼び名は大型戦艦という事になったのか。まぁ、小型戦艦がカトンボなんだから、そのうち大型戦艦の方にも何か呼び名はつくだろうが。
ルリの報告を受けた艦長の判断は早かった。間髪入れずに指示を出す。
「グラビティブラスト、最大威力で発射します!」
その声に従い、ナデシコから放たれた重力波砲が真っ直ぐにこっちへと向かってくる木星蜥蜴の無人機へと向けて放たれ……
だが、重力波砲特有の黒い光が消え去った後で映像モニタに映し出されたのは、数秒前と寸分違わぬ光景だった。
それこそ実際には違うんだろうが、こうして傍から見る限りでは無傷にしか見えない木星蜥蜴の戦艦の数々。
「そんなっ! グラビティブラストに耐えた!?」
「敵もディストーションフィールドを持っているのよ。それは火星に突入する時の戦いでも分かっていた筈でしょう? 向こうにも相応の防御力はあるわ。お互い一撃必殺とはいかないわね」
まるでイネスの言葉に呼応するかのように、木星蜥蜴の戦力は次々と増えていく。
「どうなっている!? 何であんなにチューリップの中に入っている!?」
その光景を見た俺の口から、自然と声が漏れ出る。
当然だろう。何故か映像モニタにはチューリップから出てくる大型戦艦の姿が映し出されていたのだから。
そう、明らかにチューリップに入っているとは思えない程の数の大型戦艦が、だ。
その数は途切れる事なく、まさに底なしと呼ぶに相応しい規模で。
これは……何だ? もしかして俺達は勘違いをしていたのか? 俺は、チューリップというのはバッタやジョロといった小型機を、そしてカトンボのような小型戦艦を運ぶための移送ポッドや輸送艦の類だと思っていた。
だからこそ何とかしてチューリップを手に入れようとしていたのだが……これはまるで俺の思っていたものと違う。
明らかにチューリップの許容量を超えるだけの戦艦がチューリップから出て来ているのだ。
これを疑問に思わない者は、このブリッジにはいなかった。
ただ1人……恐らくこの展開を予想していただろう人物を除いて。
「入ってるんじゃない……出てくるのよ。途切れる事なく。あの沢山の戦艦はきっとどこか、別の宇宙から送り込まれてくるの」
その言葉を聞いた瞬間、俺はチューリップというものの本質を理解した。俺だからこそ……システムXNや、フォールドといった転移装置を戦闘や移動の手段として使いこなすシャドウミラーの俺だからこそ真っ先に気が付けたのだろう。即ち……
「チューリップというのは、転移装置だってのか?」
「驚いたわね。まさかこんな短時間でそれに気が付くなんて。……貴方があのミロンガ改とかいう機体のパイロットよね?」
「ああ」
「敵、尚も増大。チューリップから援軍が次々に出て来ます」
俺がイネスの言葉に頷くのと同時に、ルリからの報告が出る。
ちっ、俺達をここで潰す気か? その理由は俺達か、それとも火星の生き残りであるイネス達か……その理由はどうであれ、何だってここまで執拗に戦力を集めてくる? ……集める? そう、集めるだ。
幾ら木星蜥蜴が無人機で構成されていても、その活動能力には限界がある筈。なのに、何故ここまで俺達を執拗に滅ぼそうとしてくる?
俺達が火星にやってきた時の戦いもそうだった。これまで全くこちらに情報が存在しなかった双胴艦……いや、大型艦を複数出すような真似をしてまで、俺達を火星に突入させたくなかったように見える。
しかも、ナデシコが火星へと到達する2週間程の間、散発的に攻撃を仕掛けてデータを集めた上で、だ。
つまり、木星蜥蜴はそこまでして火星を守りたかったからという事になる。
……何故だ? 何故そこまでして火星を守りたがる?
木星蜥蜴の本拠地が実は火星にある? いや、それはない。そもそも木星蜥蜴はその名前通り木星の方から攻めて来たからこそ、木星蜥蜴という名前を付けられたのだから。
だとすれば……考えられるのは前線基地? BETAがハイヴを作るように木星蜥蜴も自分達を作る製作所みたいな場所を火星に作ってるのか? いや、それは有り得ない。そんな物があれば、ナデシコに捉えられない筈がない。
それこそ、ASRSやミラージュコロイドのようなステルス装置の類を使っていれば話は別だが、木星蜥蜴がその手の技術を使っているというのは聞いた事がない。
勿論大型戦艦のグラビティブラストや今回のディストーションフィールドのように、向こうの新技術としても出してくるという可能性は十分にある。だが、それでも……
その瞬間脳裏を過ぎったのは、ネルガルの研究所で見たチューリップモドキ。プロスペクター曰く、ナデシコの始まり。
「敵のフィールドも無敵ではない。連続攻撃でディストーションフィールドを破れ!」
俺の考えは、ゴートの口から出たその言葉によって遮られる。
そうだった、今は悠長にそんな事を考えている場合じゃない。現状を何とかする方が先決だろう。
「は、はい。ハルカさんグラビティブラスト発射準備!」
だが……
「無理よ」
ハルカの口から出たのは、その一言。
何故? 俺以外にもそう思った者は多いのだろう。その場にいた何人もの視線がハルカへと向かい……
「ここは真空ではないから、グラビティブラストを連射するには相転移エンジンの反応が悪過ぎる」
……なるほど。それが相転移エンジンの弱点か。
グラビティブラストを発射出来るだけの大出力を持つが、真空……宇宙以外の場所、例えば地上とかでは大きくその能力が落ちる、か。
欲しい技術かもしれないと思ってはいたんだが、この弱点を考えるとシャドウミラーで一般的なブラックホールエンジンの方が色々な面で圧倒的に優れているな。特定の機種にしか使われていない時流エンジンにしても、地上では出力が落ちるといった事はないし。
「どうする? あたし達が出るか?」
「無理だよリョーコ。数が違いすぎるから、逆に集中攻撃を受けて挽肉にされちゃうよ」
ブリッジの中に響くリョーコとヒカルの声。
それは事実だ。こちらの戦力はエステバリスが5機にミロンガ改が1機。
ミロンガ改を使えばあれだけの戦力を相手にやり合える自信はあるが、それはあくまでもミロンガ改だけでだ。
ナデシコを守りながらというのは、とてもではないが出来ない。
しかも、向こうにはグラビティブラストを持っている大型艦が大量に存在している。
「ハルカさん、ディストーションフィールドの展開をお願いします!」
「待って! 今フィールドを発生させたら、ナデシコの真下の地面が沈んでしまうわ!」
イネスの口から出た悲鳴のような叫び。それは、ユートピアコロニーの真下にいる火星の生き残りが全滅してしまうという事。
だが、それをしなければナデシコは木星蜥蜴の集中攻撃により撃破される。
「ただちにフィールドを張りつつ上昇!」
「ごめん、無理。一度着地しちゃった以上、離陸にはちょっと時間が掛かるの」
ユリカの唯一の希望を摘み取るかのように、ハルカの口から漏れ出る言葉。
そこに追撃を掛けるようにルリの言葉が続く。
「敵艦、上方に回り込みつつあります。チューリップより、尚も敵増大中」
「フィールドを張るか、敵の攻撃をこのまま受けるか」
「提督、艦長には厳しすぎる決断ですな。ここは……」
「待ってくれ、ユリカ! 地下には火星の人達が!」
そんな声が周囲に響く。
どうする? 俺ならそれを何とかする事が出来る。だが、いいのか? ここで俺の力を使ってしまえば……いや、だがこのまま火星の生き残りを殺すというのも、ましてやナデシコが沈むのもごめんだ。
なら、俺がやるべき事……やりたい事……
一瞬の迷いの後、すぐに決断する。
そう、ここで火星の生き残りを見殺しにするのも、ナデシコが沈むのを黙って見ているのも出来ない。
もしそんな真似をすれば、俺はレモン達に対して顔向けが出来なくなるだろう。
そんな事は絶対にごめんだ。
つまり、俺がやるべき事は……
「艦長!」
ブリッジの中に響く俺の声。
その声は、騒ぎになっていたブリッジの中を一瞬にして沈黙させる。
「俺に任せろ」
「え? その、アクセルさん!?」
「少なくても敵の第一波くらいはどうにかしてやる。……俺の力を使ってな」
そう告げ、俺は影のゲートを展開する。
「ちょっ、アクセル! 足、足下!」
「アクセル、大丈夫なの!? ちょっと!」
ハルカとエリナの言葉を聞きながら、俺は影のゲートへと身体を沈めるのだった。
大魔王と呼ばれた俺の、本当の力を振るう為に。
後書き
アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.10
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1188
ページ上へ戻る