異世界にて、地球兵器で戦えり
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第一話 斜め上の方向に向かい、開戦する
アビス大陸の覇者として君臨して四年という歳月が経過して平和を満喫していたアカツキ帝国は、外海の調査を続けると、新たな大陸を発見した。その大陸の名はファルマート大陸という大陸であった。未知の大陸の発見のニュースが、アカツキ帝国とアビス大陸の各国に知れ渡る。アビス大陸の国々も随分と昔に交流があったようだが、長い戦乱が原因により、交流が途絶えて少数が知るだけであった。そのため、フォレスト大陸の政情は、そこまで詳しく知らないので、健太郎元帥は、フォレスト大陸の各国の政情を知る為に詳しく調べるように命令を出した。
調査を開始してしばらくして、ある程度の情報が入った報告書が入ってきた。
「なるほど。帝国というのが国家名で、自分達が唯一の絶対支配者という証とうわけか」
調査部よりの報告書を読んでいる健太郎は、そう呟きながら次々と報告書を読む。ファルマート大陸の大まかな事情を把握する事が出来た。以前のアビス大陸の列強と同じ、帝国は人間至上主義を掲げる派遣国家というところだ。何よりファルマート大陸では帝国の支配領域は、大陸の殆どを占めており、ファルマート大陸の国家の殆どが属国という現状であった。
他にも宗教観に関しては、一神教は存在せず。数多くの宗教があり、宗教関係の対立は起きていないとの事だ。亜神という神の使いという存在もおり、種族問わずに千年の間は、神の神託を受けた状態の肉体に維持されるとの事で、いわば神の代行者という扱い。
大まかな情報を見て理解した健太郎は、一息ついて呟く。
「アビス大陸と似ている部分はあったが、宗教関係に関してはだいぶ違うな」
何しろ現在進行形で、勢力を大幅に失った人間教が、もはや聖職者とはかけ離れたテロ行為を当たり前のように実行している事実を見れば、羨ましいまでの宗教者同士の調和に羨ましくも感じる。こっちは、人間教と列強の旧貴族勢力達の残党のテロ行為を悩んでいるのにと、心の中で呟く健太郎。
「ですが元帥。この大陸に干渉するのはデメリットしかないと思いますが」
秘書の滝本麗奈が、自分の考えを健太郎に進言する。
「まあ、確実とはいかないが、面倒事は起きるな」
「では、何故ですか?」
「どの道。遅かれ早かれ接触する日はくる。問題は早く片付けて対処するのが一番だ。(滝本が心配する理由も分からなくはないけどな)」
何しろファルマート大陸を支配している国家が、現在進行形で侵略戦争を常識として実行に移している覇権国家だ。そんな国が支配している大陸に接触すれば、面倒事が起きると誰もが思うかも知れない。だが、どの道いつの日かは分からないけど、いつかはあっちもこの大陸を見つけて接触するのは分かりきっているので、ならば早いうちに接触して問題を無くそうと健太郎は決めたのだ。
ーーー。
こうして調査をして大まかな情報を入手したアカツキ帝国は、アビス大陸の過ちを犯さないように、外交官を派遣して穏便に交渉しようと帝国に乗り込んだ外務職員だったが、ここで予想もしない理由で交渉は決裂してしまう。
「我々以外の国で帝国を名乗るとは何様だ!!」
これにより交渉が決裂してしまった。挙句の果てに、アカツキ帝国の最高責任者の引き渡しと属国化を言い渡してきたのだ。当然のように拒否した外務職員だが、これにも腹を立て、事実上の宣戦布告を言い渡された。
「貴殿達の国の運命は決まったも同然だ!!」
これにより交渉は決裂。この事実を聞いて、また戦争かよと健太郎は思ってため息が吐きたくなる心情であったが、これを聞いたアカツキ帝国軍の将軍達は、怒号の怒りで健太郎に迫っていた。
「元帥!直ぐに、あの無礼な蛮族共の国に攻め入る許可を下さい!!」
「そうです。属国化を言い渡すだけでは飽き足らず、元帥まで引き渡せとは無礼千万です!」
「あんな思いあがった国には、直ぐに攻め滅ぼすべきです!」
このように、交渉決裂の要員を知った陸・海・空・特の四軍の将軍達の怒りが収まらず。会議で打つべしとの声を高く上げて、健太郎に進言しているのだ。
「まて、確かに交渉の席で言われた事に腹を立てる気持ちはわかる。だが、相手は明確に宣戦布告をしてきたわけではない。こちらから手を出すのはまずい」
何とか将軍達を宥めようとする健太郎だが、健太郎は忘れていた。このアカツキ帝国に所属する兵士達は、ゲームの時代から、この国を発展させた健太郎に感謝しており、そんな神とも言える存在でもある健太郎を貶されて、我慢できるほど彼らもお人よしではない事に、それはアビス大陸の時に、経験していたはずなのに、健太郎は四年という平和期間の間に忘れていた。
「何を言っているのですか!既に世論は、帝国討つべしと声を高く上げています」
「他の国もです。特に我が国と友好関係を強く持っています亜人諸国からは、対帝国戦に参加したいとの通達が」
(忘れてた。こいつら、俺がらみだとマジになるってことを)
普段は、実務に忠実で高い能力を発揮してくれるのに、健太郎が絡むとどうしても狂信的になってしまう傾向が強かった。そのため、アビス大陸の敗北した列強に対する扱いに関しても、やりすぎな政策を提案した時も、将軍達を宥めるのにすごく苦労した事を健太郎は思い出したのだ。
「分かった。君達の意見と市民の声も十分に伝わった」
なら、と期待の籠った視線を健太郎に浴びせる。
「相手が攻めてくるのを待つ。何もこちらから悪になる必要はない。こっちがあくまでも宣戦布告されて、攻撃を受けた事にすればいい。相手から攻めれば大義名分がこちらにつく。相手の戦力は、たかが知れてる。帝国はチェスに例えれば王やクイーンは、動かせてもルールの中でしか動けない。だが、こちらはいつでもルールを壊せる。気長に自称最強者様たちと戦うとしようじゃないか」
演技染みた口調で、そう言った健太郎。あくまでもこっちから攻めずに、攻められて仕方なく戦争に巻き込まれた形にしようと思い、このような提案をしたが、内心では「反対しないかな」と、ビクビクしていたが、この言葉を聞いた将軍達はにんまりとした表情であった。
「流石は元帥。だた攻めるだけでなく、大義名分をアカツキ帝国が握り、相手に何も言わせないようにするのですね」
「ならば直ぐに準備を進めます」
「ファルマート大陸の工作を任せてください。帝国の主戦派を煽り、相手から戦争を仕掛けるように、誘導します元帥」
(え、ちょっとまって!?)
何か話がややこしくなってない。いくら秘密裏に行動しても、こっちから戦争を煽ってどうするんだよとツッコミたい健太郎だが、既に話が大きくなって修正できる雰囲気でもなくなっていたので、内心はやっちまたあ~と、後悔しているが内心が落ち込んでいる事を悟られないように、いつものように威厳ある元帥を演じる。
「うむ。将軍や現場の兵士達の大いなる働きに期待する」
もう、ここまで来たらなるようになれと、投げ出し気分の健太郎だった。
ーーー。
帝国とアカツキ帝国の交渉決裂からしばらくして、アカツキ帝国の工作が始まった。帝国の領土になっていないアビス大陸という大陸の話を持ち掛けたのだ。現在のアビス大陸は、長い戦乱にさらされて、国が復興に向けての準備中の事を帝国主戦派に伝えたのだ。これに食いついた主戦派は、直ぐにでもアビス大陸に侵攻を開始すべきと現皇帝のモルトに話を持ち掛けた。モルトも、現状の帝国の閉寒感を打破するために広大な領土獲得を含めて遠征を決定する。
軍艦23隻と小型の武装商船80隻以上と翼龍を搭載するこの世界の空母ともいうべき龍母を10隻を入れた艦隊がアビス大陸に向けて侵攻した。
今回の遠征を任された帝国司令官は知らない。これが、自分達が新たな領土を得て、更なる富と地位を手に入れる事が出来ると思い込んでいたが、それは幻想に過ぎない事を彼は知らない。
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