破壊ノ魔王
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一章
17
「う……、ん?」
あれ?寝てた……
寝てた!??
「うぇぇぇぇ!!なんで起こしてくれないんだよ!ゼロ!!」
…………
「……どちらさま?」
「黙ってろ、人質。殺すぞ」
うわあ、ガラのわるい……。なんでこんなことになってるんだろ。ゼロは?昼間なのに外出?
というか、今日にしてもこの前にしても、この宿のセキュリティはどうなってるんだ
「あのー。じっとしておくから本読んでていい?」
「き、肝の座ったガキだな」
「まぁ全身凶器みたいな人と一緒にいるからね」
ぼくには時間がないんだよ。なんで寝ちゃってたか……思い出せないけど、遅れたぶん取り戻さないと。
さて、本、本……
「だれがいいっつったよ!おら」
「……うるさいなあ」
なんだよ!邪魔しないでよ
試験に落ちたらどうなると思ってんの!
「おとなしく人質になってあげるから邪魔だけはすんな!!いい!!?」
「……は、はい」
まったく、もう
え。この本……なんか下の方が折れてる
あれ?こんなことしたっけ?
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折られたページには赤ペンで乱雑に丸がしてあった。長い文章にはびーっと線が引いてあって、単語に丸。
……なんだろ
この人がやったとは思えないし……
ぼくが頭をかしげていると、男の人の無線機みたいなのが、ザザザっと鳴った。応答する男の人。すると、ガサガサとした音と声が聞こえた
『だ……だずげで……ゆるじてぐれぇえ……』
声はそこで止んで、聞きなれたあの人の声がした
『おい、生き残り。あとはお前だけだ。5秒以内に出ていけ』
男は脱兎のごとく、部屋から消え去った。
武器も無線もおいて
「…………もしもーし、ゼロ?」
『あ?なんだ。ぴんぴんしてんじゃねぇか』
「まぁなんもされてないし。ちょっと首が痛いけどね」
『あー。そんな強くしたつもりねぇんだけど』
犯人はあんたかい!!
「それより、この丸と線。なに?」
『あ?覚えろってこと。そこのなかからでるから。問題』
……ん?
「問題知ってたの!?」
『んなわけあるか。予測だよ、予測』
「……つまりはヤマ勘?」
『出題傾向、最近の世間の問題、出題者の性格。それを踏まえた勘』
「すごいっすね!!」
『今ごろかよ。窓、開けとけ。入るぞ』
そう言われて窓を開けると、すぐに翼をだしたゼロが飛び込んできた。優雅だなー……って……
「どうしたの!背中!!」
「あ?騒ぐなよ、こんくらいで」
騒ぐよ!血だらけだよ!?血!!!
ゼロの血なんて初めてみたかもしんないよ!?ぼく!
「そんな強敵だったの?」
「いや。トラウマを克服するのは大変なんだよ」
……なんのことでしょう?
「それより勉強しろ。俺は寝る」
「するけど、治療は?いいの?毒とか入ってない???」
「あー、うっせぇな。大したことねぇし、毒があっても俺に効くかよ。日の中を出歩いた方がよっぽどキツイ」
あ……左様でございますか。いやはや流石ですね。言葉も出ませんよ。
そして……寝るのはやっっっ!
「……もう。人の気も知らずに……」
とはいっても。ちょっとだけ、優しさの片鱗が見えたな。この本、きっと全部読んで考えて、こうやったくれたわけだし
「…………うし。がんばるぞ」
やる気を出して机に向かったとき、眠ったと思った人から声がした。ククク、って笑い声
「俺に労力はたかせて……これでいよいよ失敗できねぇなあ。クソガキ」
血の気が凍りました。
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