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破壊ノ魔王

作者:紅蓮刃
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一章
  16

ガキにあぁ言ってから、部屋のなかは素晴らしく静かになった。寝る間も惜しんでなんとか覚えようとする姿がなかなか滑稽。まぁ本気でやってるのは見てとれるから、邪魔とかはしねぇけど


「ほら、食っとけ」

「ふぇ?あ、ありがと!」


今日で3日目。こいつはほとんど寝ずにやってる。なのにまだ読み終えてもないらしい。ここまで覚えることに躍起になることも今までなかったんだろうが、それにしても余裕が無さすぎる。なんとも効率の悪いことか


「飯くらいは食え。寝るときは寝ろ。休息も栄養も足りてねぇ頭に知識が入るか」

「そんなこといわれたって難しいんだよ!こんな分厚くて、なんか言葉も難しくて!受からせる気ないよね!?これ!」


まぁそれは確かだ。年に2.3回行われるが、トップ通過1名のみ資格を得るシステムだからな。軍人なら軍経由で楽にとれるんだが、さすがにそこまではさせられねぇから、やってもらうしかない


「あ。ゼロ、寝てていいよ。気にしないで」

「誰が気にするか。今日はあの女が来るから真っ昼間でも起きてるだけだ」

「そうだったっ……け?」


…………目、死んでるじゃねぇか
もう眠いとも感じてねぇだろうな、コレ

ったく、ほんと効率が悪い


「おい」

「ん?」


首に手刀一閃


なにもいわず崩れるガキ


「やれやれ、世話のやけるガキだな」


俺は顔のしたの本を引き抜き、ぱらりとそれをめくった。……まぁマニュアルだからな。字と図形しか載ってねぇし、参考書みたいな太字も赤字も一切ない。見てて楽しくなるもんじゃねぇな

ガキだし、まぁ、きついか。さすがに……


「…………しょうがねぇな」


散らかった机から一本ペンをとって、時計を見た。
あの女との時間まであと一時間くらい。まぁ十分だろ

煙草に火をつけ、俺は次のページをめくった



一時間後、曇り空のなか俺は外に出た。あの女との待ち合わせはあの女のアジト。はみ出し者のたまり場ともいう。ただでさえ人気のない町のなかで一番、人の少ない場所にそれはあった。あのガキがくればキンキン言いそうな雰囲気の場所。まぁ俺はこっちに慣れすぎてなんとも思わねぇけど


「わざわざ来てやったんだ。はやく渡すものを渡せ」


人のいない突き当たりで俺は言った。目には見えないが、そこらじゅうに張り付いてる。随分と警戒してるようで
ち。腹立つ
昼間から人を呼びだしといてこれか?


「そういう態度なら、楽しい鬼ごっこでもするか?1人残らず捕らえてここに埋めてやるよ」


お、やっと出てきたか
あんな脅しに怖がるくらいなら最初から出てきやがれってんだ


「ゼ、ゼロ……さん。コレで、す」


震える女は封筒を俺に差し出す。そのなかには一枚のカードが入っていた。それを取りだし、封筒は女に返す。

ん。良い出来だ。これならバレねぇ


「あ、の……ゼロさ、ん……」

「あ?もう用はねぇよ」


……………………あ?



女は訳がわからないことに急に抱きついてきた。音がするくらい震えて、こいつも何か言ってるが、さっぱりわからん。とりあえず邪魔だから引き剥がそうとした


「じっとしてろ!闇の帝王ゼロ!!」

「あ?」


なぜかいきり立ってる雑魚は、安い酒の臭いをさせて俺を高い場所から見下ろしている。ほぉ?なかなか頭にくる態度だな


「コレを見ろ!お前にツレができるとは思わなかったぜ!」


小型の液晶には寝ている、というより気絶したガキ。そこに刀を持った輩

……へぇ。面白いことしてくれる


「じっとしてねぇとガキを殺す!さーーて!悪魔狩りしてやるぜ!」

「安い要求だな。じっとしてろ、か。俺の首を軍に届けた方が特だろうに」

「言われなくてもそうしてやるよ!お前が強いのはお前が1人で、なにも大切なものがなかったからだ!今はちがう!弱点がここにある!!」

「同感だ。なかなかわかってんだな、子悪党」

「そんな生意気なくち開けるのも今だけだ!やれ!!女!!その傷の復讐をしてやれ!!」


女はその言葉にぴくりと反応し、異様な目をしてナイフを持つ。息は荒々しく、歓喜の声をあげながら恐怖で怯えてる

はぁ、くだらねぇ


「やれぇ!!!」


冷たい何かが背中に突き立てられた。徐々にそこは熱く、焼けるような痛みを放つ。


「いやぁ!!はぁあ!!ハ、ハハハハハハ!!」


随分と女もイカれてる


「いい気味だぜ!ゼロよお‼魔の帝王がこんなことでやられてるとはなあ!!愉快すぎて涙が出そうだぜ!」

「…………まったく」


拳銃をとりだし、素早く発射。撃たれたそいつが倒れるよりもはやく次のやつを撃つ。女はびびりすぎてナイフを放してへたりこんじまうし、無礼なあの馬鹿は現状を理解してすらない。

ほんと、どうしようもないバカだな


「…………あのなぁ、俺がそんなのを大事にするようなやつに見えるか?あ?」

「う、うそだろ!?殺すぞ?ほんとにやっちゃうぞ!??」

「あぁ。どうぞご勝手に。だが、今お前の命も俺次第だってことを忘れるなよ」


バカの口が止まったところで、背中に深々とやってくれた女に向かう。女は覚悟を決めたのか、俯いてこちらを見ることもない


「……身分証、いい仕事だった。ま、苦労したんだろうが、報酬はなし。背中のコレでチャラだ」

「……………………え?」

「文句ねぇな。ねぇなら早く行け」


まぁ殺してやろうとも思ったよ。でも、礼はしねぇといけねぇからな。約束を守らねぇのは主義に反する

命ひとつで偽装の身分証をゲット。安い買い物だな


「さて、言っとくがおまえは只では帰さねぇよ」


なーんの借りもねぇからな


「ど、どうせやられるんなら、このガキもろともやってやらあ!!!」

「ばーか。誰が殺すっつったよ、そんな軽いもので済むと思うなよ」


馬鹿はほっとしたような驚いたようなひびるような……なんとも微妙な顔つきをした。まぁ表情に一番出てるのは なぜ? かな

なぜ?
ほんと理解できねぇな
いつから命なんていう生産性のないものが一番重要になった?


「俺がほしいのは労力。依頼をこなせねぇならどこへ逃げようと殺す」


震えながらも頷く男。これでまた一つ楽ができる


「要求はひとつ。飛空挺を手に入れろ。で、俺の指定する場所にもってこい。お前の命と交換だ」




 
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