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戦国異伝

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第二百五十話 信長の先陣その五

「これならな」
「はい、この度の戦はですな」
「我等の勝ちですな」
「意気揚々でしかもな」
 尚且つというのだ。
「隙も油断もない、これではな」
「勝つ」
「そうなりますな」
「対して魔界衆はおそらく」
 今度は彼等のことを話すのだった。
「まだ妖術が効くと思っている筈じゃ」
「一ノ谷のことはたまたま」
「何かの間違いだったとですな」
「思っている」
「今も尚」
「だからまだ妖術を切り札と思い」
 そしてというのだ。
「頼っている筈じゃ」
「それで、ですな」
「そこに隙が出来ますな」
「また妖術を破られる」
「そうなりますか」
「だからじゃ、この度の戦も勝つ」
 必ずとだ、明智は確かな声で言い切った。
「ましてや上様が自ら先陣になられておる」
「そこに勝つ思いがありますな」
「策だけでなく」
「そうじゃ、上様ご自身にじゃ」
 それにというのだ。
「我等にもな」
「だからこそ」
「策のこともあり」
「余計にですな」
「我等は勝つ」
「この度の戦でな」
 こう二人に言うのだった、そして。
 明智はここでだ、こうも言った。
「そしてわしもな」
「殿もですな」
「この度の戦で」
「完全にじゃ」
 まさにというのだ。
「あの者達を倒す」
「ですな、それがしもです」
「それがしもまた」
 二人も明智に応えた。
「あの者達に操られた屈辱は忘れてはおりませぬ」
「必ずそれを晴らします」
「全くじゃ、上様は許して頂いたが」
 明智もだ、怒りを含んだ声で言った。
「あの雪辱は晴らす」
「ですな、必ず」
「あの者達を滅ぼしましょう」
「そうしようぞ」
 こう言ってだ、明智もまた進むのだった。彼の家臣達そして兵達と共に進み。天下の軍勢は安芸から周防に入ってだった。
 魔界衆の軍勢の場所を目指していた、そこでだった。
 信長は先陣に入れた立花宗茂にだ、こう言った。
「この度の戦はお主も先陣に入れたが」
「はい、思う存分戦いまする」
「そうせよ、ただしまずは少し戦ってな」
「退きまするな」
「そうする、その時の後詰を御主にも頼む」
 こう言うのだった。
「あの二人と共にな」
「真田殿、直江殿と共に」
「よいか、御主は後詰じゃが」
 それでもというのだ。
「死んではならぬ」
「決してですな」
「御主には二人の父から受け継いだものがある」
 義父立花道雪、そして実父高橋紹運からというのだ。
「その類稀なる戦の才じゃ」
「それをこれからも天下の為に使うからこそ」
「死んではならぬ、この戦ではな」
「そしてこれからも」
「何としても生きるのじゃ」 
 信長は宗茂に強い言葉で言った。 
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