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戦国異伝

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第二百四十九話 厳島その十二

「虫歯になり太るので」
「だからじゃな」
「慎まれて下され、若しくは」
「食った分だけか」
「身体を動かされるか」
「どちらかじゃな」
「上様はよく動かれていますので」
 戦の時以外もだ、とかく泳ぎ馬に乗り弓や刀槍の鍛錬をしてだ。信長は日々身体もよく動かしているのだ。
 それでだ、平手も言うのだ。
「さしあたっては大丈夫ですが」
「それでもじゃな」
「甘いものにもです」
 くれぐれもというのだ。
「お気をつけ下され」
「そういうことか」
「過ぎればです」
 まさにというのだ。
「何でもよくはなく」
「菓子もじゃな」
「お気をつけ下され」
「そこは酒と変わらぬか」
「酒には毒がありますが」
 所謂酒毒だ、酒に溺れ身体を壊してしまうのだ。
「しかしです」
「それは菓子もか」
「太り虫歯になりますので」
 それ故にというのだ。
「お気をつけ下さい」
「ではな」
「そういうことで」
 こう信長に言うのだった、そしてだった。
 信長はだ、菓子を口にしてだった。
 茶も飲みだ、こう言った。
「気が晴れるわ」
「そしてですな」
「うむ、心が落ち着く」 
 平手にも言うのだった。
「一服も出来て心が晴れやかになる」
「だからこそいいのですな」
「茶は最高じゃ」
 こうまで言うのだった。
「これを皆が飲まずしてどうする」
「そう仰いますが」
 信行が言って来た、今度は。
「やはり茶はです」
「高いのう」
「まだ」
「それをじゃ、今以上に作らせてな」
「多く作ればそれだけ安くなる」
「だから茶を作るのに向いている場所にはじゃ」
 それこそというのだ。
「多く作らせてな」
「そして安くさせてですか」
「誰もが飲める様にする」
 こう言いつつだった、信長は茶を飲むのだった。そうしてその茶会を宴としてだった。彼はいよいよ魔界衆との最後の戦に挑むのであった。


第二百四十九話   完


                     2015・10・25 
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