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戦国異伝

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第二百四十九話 厳島その十一

「焦ることはせぬ」
「ですな、焦っては負けますな」
「こちらの方が」
「敵を焦らせるのならともかく」
「こちらが焦ってはです」
「負けますな」
「そうなりますな」
「そうじゃ、戦で焦るは愚じゃ」
 まさにというのだ。
「だからじゃ」
「ここは、ですな」
「落ち着いてですな」
「茶を飲み」
「そうして」
「うむ、まずはな」
 この場でというのだ。
「茶の席を設けたいが」
「もう既に飲んでいますが」
 こう言ったのは平手だった。
「既に」
「いやいや、茶会じゃ」
 それだというのだ。
「それをするぞ」
「茶会をですか」
「それをここで開くぞ」
「そうされるのですか」
「そうじゃ、酒と思ったか」
「上様は飲めませぬから」
 酒をというのだ、信長が幼い頃から傍にいるだけあってだ。平手は彼が酒を全くと言っていい程飲めないことを知っているのだ。
「ですから」
「そうじゃな、だからな」
「ここは茶ですな」
「茶にじゃ」
 それにだった。
「菓子じゃ」
「それも出しますか」
「利休、そちらも用意しておるな」
「はい」
 すぐにだった、利休は微笑んで信長に答えた。
「無論です」
「茶があればな」
「やはり菓子ですな」
「それがあれば万全じゃ」
「そう思いまして」
 だからとだ、利休も答える。
「用意していました」
「ではな」
「はい、菓子とですな」
「茶じゃ」
「その茶はです」
 それはというと。
「宇治の茶です」
「おお、宇治の茶か」
「そうをどうぞ」
「うむ、ではな」
「はい、それでは」
 こうしてだった、 信長は戦の段取りを決めてだった。
 そのうえで茶会を開いた、そこで茶に菓子を楽しむのだった。菓子や果物や饅頭それに羊羹といったものだった。
 その羊羹も食べつつだ、信長は言った。
「ふむ、こうしてな」
「菓子を食することはですか」
「やはりよい」
 こう平手にも答えるのだった。
「酒は飲めぬがな」
「茶に菓子があれば」
「わしはそれでよい」
「ですか、しかしです」
「菓子もじゃな」
「どうも甘いものを食すれば」
 それでというのだ。 
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