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戦国異伝

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第二百四十九話 厳島その八

「勝つのはじゃ」
「はい、我等です」
「陣を敷いてそのうえで」
「戦いましょう」
「そして勝ちましょうぞ」
「そうじゃ、しかしな」
 ここでだ、老人はこうしたことも言った。怪訝な顔になったうえで。
「何故一ノ谷では術が効かなかった」
「それがわかりませんな」
「織田信長の軍勢にです」
「術は全く効きませんでした」
「それがどうにもです」
「わかりませぬ」
「どうしてなのか」
 棟梁達も言う、彼等にしても何故自分達の術が効かなかったのかわからなかったのだ。それyは今もである。
「これまでああしたことはなかったです」
「ただの一度たりとも」
「同じだけの強さの力をぶつけられたことはあります」
「幾度も」
 魔界衆のこれまでの戦いの中でだ。
「聖徳太子といい行基といい」
「空海、最澄もそうでした」
「役小角や安倍晴明も」
「武士でも力を持っていてです」
 武士の気、その強さだ。
「それで我等と戦ってきましたが」
「しかしです」
「ああして術が消されたことはありませんでした」
「相殺されたことはありますが」
「それでも」
「そうじゃ、跳ね返されたのなら跳ね返されたその分だけ相手の力も弱めてきた」
 力がぶつかり合うその中でとだ、老人は言った。
「そうしてその弱まった力を受けてもな」
「我等は耐えて」
「敗れても生き残ることが出来ました」
「まだ」
「しかしです」
「ああして打ち消されたら」
「そして敵の力を完全に受ければ」
 それで、というのだ。
「どうしてもです」
「我等も敵いませぬ」
「術を消されると」
「どうしても」
「あれがわからぬ」
 老人にしてもというのだ。
「どうしてもな、だが」
「それでもですな」
「今度も使いますな」
「我等の術を」
「妖術を」
「今の幕府に術を使う者はおらぬ」
 老人はこのことはわかっていた。
「法力を持っている者はおるが」
「我等に対するものではありませぬな」
「高僧達のそれも」
だからですな」
「そちらで臆することはない」
「左様ですな」
「全くな、だからこそ使えばじゃ」
 まさにだ、それでというのだ。
「あの者達を倒せる筈じゃが」
「それが何故かです」
「一ノ谷では消された」
「それがわかりませぬが」
「それでもですな」
「次も術を使う」
「そうしますな」
「そうじゃ、そして陸で敗れても」 
 それでもだとだ、老人はここでだった。
 海を観てだ、棟梁達に言ったのだった。
「よいな」
「はい、海において」
「最後の最後のですな」
「戦を挑みますな」
「何としても」
「戦の場はじゃ」 
 海のそこはというと。 
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