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マネージャーは大変

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6部分:第六章


第六章

「もうお昼ですね」
「あんたも食べに行ったらどうかしら」
 こう彼女にも言った。
「御飯を食べないと力が出ないわよ」
「私はもうここに」
 後輩はこう言うとだった。自分の鞄から何かを出してきた。そうしてそこから青く丸い小さな三段の弁当箱を取り出してきたのである。
「ありますよ」
「あっ、お弁当なの」
「愛妻弁当です」
 房江に対して笑って話す。
「彼氏が作ってくれたんですよ」
「いいわね、それは」
「房江さんは最近は」
「時間がないのよ」
 ふう、と苦笑い気味の溜息を出しての言葉だった。
「何分ね。四人共多忙だから」
「それでマネージャーさんも」
「そうよ。それでお昼は」
 そのお昼の話もするのだった。
「どうしようかしら」
「何を食べますか?」
 あらためて彼女に問う後輩だった。
「外でだと」
「有子ちゃんが午前の仕事終わって一旦こっちに来るから」
 今度は彼女であった。
「あの娘とおうどんでも食べるわ」
「おうどんですか」
「お蕎麦の方がいいかしら」
 ここでふと考えを変えた。
「お蕎麦の方が太らないし」
「ヘルシーなのは確かですね」
「だからそれにしようかしら」
 こう考えたのである。
「お蕎麦にね」
「それとお握りですか?」
「それでいいわよね」
 後輩に対して尋ねてそれをチェックにした。
「どうかしら」
「いいと思いますよ。それじゃあそれで」
「あのお店のお握りまた独特なのよね」
 房江は話しながらそのことを考えていた。
「玄米とか麦のものあって」
「麦御飯ですか」
「あれが結構美味しいのよ」
「けれど麦っていったら」
 後輩はその麦御飯のことを言った。所謂麦飯のことである。かつては色々と言われたことでかなり有名ではある。あまりいい意味ではない方向で。
「美味しいんですか」
「美味しいけれど。知らないの?」
「五穀飯は好きですけれど」
 これは後輩の好みである。
「それみたいな感じですか?」
「そうね。それはあるわね」
「そうなんですか」
「五穀御飯ね。それもいいわね」
 房江は後輩のその言葉に心を動かされた。それも悪くないと思ったのである。
「それだったら」
「じゃあそれにしますか?」
「ええ、いいわね」
 そちらに考えを向けることになった。
「それじゃあ有子ちゃんと一緒にね」
「はい、じゃあ楽しんで下さいね」
「そうさせてもらうわ」
 後輩に対してにこりと笑って言葉を返す。そのうえでその店に入る。そこは如何にも和風の内装で筆で書かれたお品書きが壁にあり木のテーブルと椅子には唐辛子が置かれている。しかもそれは坪に入っているという中々凝った風な感じになっている店であった。
 
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