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悪魔の死

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第二章

「このままでは私の座が危うい」
「ではどうされますか」
「ここは」
「何かしたいが」
 それでもというのだった。
「今はな」
「一応カードはありますね」
「それは」
「あれだな、彼の母の再婚相手だが」
 ヒムラーは側近達の言葉に曇った顔で返した。
「ユダヤ系という噂だな」
「それがありますが」
「あの方については」
「ご本人も気にしておられる様ですし」
「そちらは」
「再婚相手だ」
 ヒムラーは曇った顔で指摘した。
「母のだ、だからだ」
「はい、血のつながりはないです」
「どう強引に言いましても」
「そのことは我々でもです」
「強引に言いつくろうことすら出来ません」
「しかも実はユダヤ系ではない」
 ヒムラーは不機嫌な顔で側近達にこのことをはっきりと言った。
「名前がそう思わせるだけだ」
「実際はですね」
「その再婚相手もユダヤ系ではない」
「ただ名前がそうした風なだけで」
「カードとしてあっても」
「それは」
「使えたものではない、そしてだ」
 ここでだ、ヒムラーは。
 側近達にだ、忠告する顔でこう言った。
「このカードは彼に下手に出すな」
「決してですね」
「そうしてはなりませんね」
「彼は気にしている」 
 このカードにならないカードをというのだ、それを切られる側としては。
「下手に使って彼を刺激するとだ」
「逆に我々がですね」
「あの方に消される」
「そうなりますね」
「言っておく、彼は自分に仕掛けてきた相手ならだ」
 それこそというのだ。
「容赦なく消す」
「あらゆる謀略を使い」
「そのうえで」
「謀略で彼に勝てる者はいない」
 ヒムラーは側近達に強く忠告するのだった。
「私も無理だ」
「長官でもですか」
「あの方の謀略に対することは」
「死にたくなければこのカードは使うな」
「カードにもならず」
「逆にあの方を刺激するだけだから」
「そうだ、だからだ」 
 そのカードも使えない、それ故にというのだ。
「彼についてはどうしようもない」
「あのままですか」
「手出し出来ずに」
「このまま放っておく」
「それしかないですか」
「非常手段もだ」
 それが何かはあえて言わないヒムラーだった。
「それもだ」
「使えませんか」
「そちらも」
「彼はフェンシングの達人だ」
 日々鍛錬を欠かしていない、オリンピックの選手だったこともある。 
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