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美味しいの!?

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3部分:第三章


第三章

「もうな。どれだけまずいか」
「素材を殺すのがイギリス料理かよ」
「普通逆だよな」
「なあ」
 皆その話を聞いて深刻な顔になり見合った。
「京都の料理なんかそうだよな」
「素材を生かしてどれだけだろ?」
「そういうのも作ってからだよ」
 しかし友一はあくまでこう主張する。
「実際にね。じゃあ皆俺が作り終わるまでテレビターズでも観ててよ」
「ああ、あのDVDのか」
「それ観てもいいんだな」
「うん、それ観ててよ」
 作る間皆にそれを観るように告げる。テレビターズとはイギリスの子供向け番組だ。着ぐるみの子供達が楽しく遊んでいる。我が国で言うとポンキッキのような番組だ。イギリスにおいては大人気だがアメリカの雑誌ニューズウィークではこの雑誌での欧州に関する話題の常として酷評されていた。
「その間に作るからさ」
「じゃあそうさせてもらうね」
「それじゃあな」
「よし、まずは」
 彼は羊の内臓と玉葱やハーブを最初に見た。
「これでハギスを作ってそれからだね。後は」
 こんなことを言いながらそのイギリス料理を作っていく。もう夜にはできていた。サラダにコーンスープはまずは普通であった。
「まあこれはな」
「イギリスじゃなくてもね」
「美味しいからな」
 まずはこの二つが及第点だった。皆満足して食べる。
 続いて出されたフィッシュアンドチップスもだった。皆満足して食べてそれからスコッチを飲んでいた。フィッシュアンドチップスもスコッチも合格だった。
「スコッチは美味いな」
「これは言うまでもないだろ?」
「そうそう」
 スコッチについては皆最初からわかっているという感じだった。
「だってお酒だし」
「食べ物じゃないし」
 だからだというのだった。
「それにウイスキーだけはさ」
「美味しいって言われてるからね」
「その通りだ」
 英国帰りの彼がここでまた言った。
「イギリスにいる時はいつも朝飯を食っていた」
「朝御飯を?」
「それだけは美味かった」
 イギリス料理においてよく言われることである。
「それだけはな。後はこのフィッシュアンドチップスとスコッチだけだった」
「イギリスにいる間ずっとそれ?」
「それだけで生きてたの?」
「本当にそれだけだった」
 彼はうんざりとした顔で語った。
「朝飯と昼飯は大抵同じメニューで晩飯はパブだった」
「凄く栄養のバランス悪そう」
「確かにね」
 皆それを聞いて顔を見合わせてしまった。
「他にはカレーばかりだった」
「いや、カレーはインド料理だぞ」
「イギリス料理じゃないわよ」
 流石にカレーをイギリス料理と認める人間はいなかった。
「しかしそれだけか?」
「本当にそれだけしか食べてなかったの?イギリスで」
「本当にそれだけだった」
 彼は真顔で語った。
「元々イギリス人は作れるメニューは平均六つだ」
「六つって」
「アパート暮らしの大学生以下」
 あのインスタントラーメンを啜っている彼等よりもということだ。
「そこまで酷いのか、イギリス人」
「そんなんだったんだぞ。毎晩それでもおかしくないだろう?」
 彼は顔を顰めさせてそのフィッシュアンドチップスを食べながら皆に話すのだった。
 
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