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美味しいの!?

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2部分:第二章


第二章

「まさかと思うけれど御前が作ってみるのか?イギリス料理」
「ひょっとして」
「ああ、そのつもりだけれどな」
 彼も実際にこう返すのだった。
「やってみようかなってな」
「おいおい、それでも無理だって」
「確かに御前コックだけれどな」
 彼の仕事はコックである。洋食屋でいつも料理を作っている。確かに彼の専門は洋食であるが和食や中華も作れるのである。仕事にしているから当然であるが料理はかなり上手い。
「それでもあれは無理だって」
「どうにもならないわよ」
「いや、やってみなくちゃわからないさ」
 しかし友一はこう皆に返すのだった。
「実際に作ってみないとな。美味いかまずいか」
「じゃあ本当に作るのかよ」
「イギリス料理」
「作ってみたらわかるじゃないか」
 友一はまた皆に告げた。
「そうじゃないか?実際にさ」
「まあ確かにね」
「それはね」
 このことには皆その通りだと納得して頷いた。
「その通りだけれどね」
「それはね」
「けれどよ」
 しかしここで皆の中の一人が言うのだった。しかもかなり真剣な顔で。
「俺そのイギリスでイギリス料理食べたんだよ」
「うん。それで?」
「まずかった」
 乾燥は一言だった。
「尋常じゃない、野菜は食感がなくなるまで煮てな」
「野菜はそうなんだ」
「それに油ものは真っ黒になるまであげるんだぜ」
「何かお世辞にもいい料理の仕方じゃないね」
「だからまずいんだよ」
 これまたはっきりと言うのだった。
「もうな。どうにもならないな、あれは」
「どうにもねえ」
「幾ら御前でも無理だ」
 彼は友一に対して言い切ってみせた。
「あれだけはどうにもならない」
「まあとにかく作ってみるよ」
 しかしこう言われても友一は自分の考えを変えないのだった。
「とりあえずはね。作ってみるから」
「御前も強情だな」
 彼は友一のその言葉を聞いて呆れたように声を出したのだった。
「そんなにイギリス料理が作りたいのかよ」
「実際まずいのかどうかも見たいしね」
 だからだというのだった。こうして彼は本当にイギリス料理を作るのだった。彼はキッチンに立ち料理をはじめた。作るのはローストビーフにヨークシャープティング、鰻のパイ、そこにハギスとフィッシュアンドチップス、そしてスコーンにアフタヌーンティー、あとはサラダにコーンスープだった。それ等を作ることにしたのだ。
「へえ、何か定番ばかりだな」
「って素材は結構よかねえか?」
 皆キッチンの上に置かれたその素材を見てそれぞれ言う。見れば確かにそれぞれ新鮮でしかも質のいいものばかりであった。
「美味そうだよな」
「なあ」
「素材は選んだよ」
 友一はもう包丁を手にしていた。そうしてそのうえで香辛料や調味料も用意していた。
「後は実際に料理していくだけだよ」
「へえ、何か期待できそうだよな」
「美味いものができるんじゃないのか?」
「いや、わからないぞ」
 だがそのイギリスでイギリス料理を食べた彼が言うのだった。
「イギリス料理なんてな。その素材を完全に殺すんだぞ」
「完全にかよ」
「そうだよ、完全にだよ」
 こう断言するのだった。
 
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