ウェディングは華麗に
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5部分:第五章
第五章
「関節もね。だから」
「動きが滑らかになるのね」
「わかったわね。その分速く動けて」
「余計にカロリーを効率よく消費する」
「そういうことなのよ。ただ食事制限して身体を動かすだけがダイエットじゃないの」
そこまで見ているのだった。かなりのものである。
「そういうことも大事なのよ」
「成程ね。奥が深いのね、ダイエットも」
「何事も一日においてならずよ」
ここで智巳はこう言った。
「ダイエットもね」
「効率よく総合的に長くやるのね」
「自分のできる範囲でね。無理はしたら駄目」
これもプラスする。
「続けられないからね」
「そうなの」
「まああんたは一時期だけ?痩せたいの」
「ううん、やっぱりそうね」
少し考えてからその質問に答える。
「やっぱりずっとね」
「ずっとなのね。じゃあ運動は続けてね」
「ええ」
「食べ物は緩やかにしていいから」
「食べ物はいいの」
「幾ら何でも旦那さんに玄米とかは強制できないでしょ」
少し苦笑いになっての言葉だった。やはりお米といえば白米である。その常識があるからこそあえてこのことを言うのであった。
「やっぱり。ただお菓子はね」
「気をつけるのね」
「そう、特に間食は駄目」
「わかったわ」
「飲み物も気をつけてね」
「お砂糖を入れないことね」
このことは忘れなかった。真由子もしっかりしていた。
「それなのね」
「そうよ。それは忘れたら駄目」
念押しだった。
「絶対にね」
「わかったわ。じゃあそれもね」
「ええ。あとは食べ過ぎないことね。しっかり食べるのは大事だけれど」
それははっきりと分けるのだった。
「それを守ればいいから」
「わかったわ。じゃあまずは結婚式ね」
「楽しみにしてるわ」
智巳の目が細くなってそのうえで垂れ下がる。普段は少しきつい感じなのに今は全く別人に見える。穏やかで心から優しげな感じであった。
「その時をね」
「期待していてね」
二人はお風呂に入りながら話をしていたのだった。それから暫く経って式の当日になった。そこには見事なまで奇麗に痩せた真由子がいたのだった。
純白の奇麗なウェディングに身を包んでいる。白いヴェールもよく似合っている。見違える程痩せた彼女は幸せそのものの笑みを浮かべてそこにいるのだった。
「あれ、新婦さんって」
「あんなに奇麗だったかな」
参列者達はその真由子を見てひそひそと話をしている。彼等も驚いているのだ。
そして横にいる新郎も。彼はにこにことして彼女に声をかけてきた。
「よく似合ってるよ」
「有り難う」
真由子も彼と同じ笑みで夫になる若者に言葉を返した。
「そう言ってもらえて嬉しいわ」
「何か凄く奇麗だし」
「奇麗になったのよ」
目を細めさせての言葉だ。
「努力したから」
「そうだったんだ」
「そうよ。このドレス奇麗な姿で着たかったの」
自分のウェディングドレスを見つつ言う。
「どうしてもね」
「そうだったんだ」
「ダイエットも上手くいったし」
そのことも述べる。
「そのおかげで」
「よかったね。僕にとってもね」
「貴方にとっても?」
「だって。奇麗な君を見ることができたらね」
「もう、そんなこと言って」
二人は完全におのろけになっていた。しかしそれだけではなかった。話はそれだけでは終わらずそこにあらたな出演者がやって来たのだった。
「おめでとう」
「智巳」
智巳が来たのだった。赤いドレスを着てにこりとした笑みを真由子に向けていた。
「よく似合ってるわ」
「有り難う。そう言ってもらえて何よりよ」
「そうなの」
「ええ。ダイエットのかいがあったわね」
「あんたのおかげよ」
満面の笑顔で智巳に対して言う。
「そのおかげでね」
「そう言ってもらえると有り難いわ。ただ」
「ただ?」
「私の為でもあったのよ」
優しい笑みを浮かべつつ真由子に対して言うのだった。
「実はね」
「そうだったの」
「驚かないのね」
「だって。智巳も一生懸命やってたじゃない」
彼女はそこを指摘するのだった。
「それを見ていたらわかるわよ。あんたもダイエットしたいんだって」
「そうなの」
「しっかり何キロ痩せたかまでチェックしていたしね」
そのことも告げる。実際のところ智巳もまた必死なのは事実だった。
「そういうの見ていたからね」
「そうだったの」
「そうよ。それでね」
そのうえでまた言う。
「聞かせてくれるかしら」
「ああ、あれね」
その言葉を聞いて頷くのだった。彼女が何を言っているのかわかっていた。
「そうよ。どうしてあんたもダイエットしていたの?充分スタイルいいのに」
「あんたと同じ理由よ」
今度はにこりとした笑みになった。
「実はね」
「それじゃああんたも」
「そうよ。もうすぐよ」
そういうわけだったのだ。彼女もまた。
「私もね」
「そうだったの。何か」
「あえて内緒にしていたの」
親友に対してもだった。
「この時の為にね」
「もう、意地が悪いわね」
「そのことは申し訳ないけれどこっちもこっちであれこれ考えていたのよ」
こう述べるのだった。
「どうやってあんたを驚かせてやろうかしらって」
「そういうのが意地が悪いのよ。驚かされる方はたまらないわ」
「御免なさいね」
「まあいいわ。それはそうとね」
「ええ」
話が変わる。今度は真由子が智巳に対して言い智巳が真由子に応える。
「何時なの?」
「何時式をするかってことね」
「それももう決まってるのよね」
「少し先だけれど二ヶ月後よ」
「そう、二ヶ月後ね」
「ええ。それじゃあその時には呼んでね」
「勿論よ。あんたを呼ばないと話にならないわ」
こうまで真由子に言ってみせる。
「それはね」
「じゃあ二ヵ月後ね」
話が決まった。
「楽しみにしておくから」
「二ヵ月後楽しみにしておくわ」
智巳も真由子に対して言ってきた。
「二人で来てね」
「勿論よ。それにしても」
「今度は何なの?」
「あんたの旦那様ってどんな人かしら。それと今よりもじっと奇麗になったあんたも」
「どっちも見たいのね」
「ええ、そうよ」
笑って述べる真由子だった。
「それでいいわね」
「勿論よ。二ヵ月後よ」
「ええ、二ヵ月後にね」
話はこれで終わった。こうして二人は二ヶ月後の智巳の結婚式も約束した。ウェディングは仲良く進んだ。それは二人にとっては楽しいものになった。ダイエットの苦労のぶんだけ。
ウェディングは華麗に 完
2008・5・24
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