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真田十勇士

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巻ノ三十五 越後へその三

「しかもそも娘殿も」
「既にな」
「北条家に嫁いでおられます」
 そうなっているというのだ。
「既に」
「そうじゃ、だからな」
「徳川家自体とはですな」
「縁組は出来ぬ」
「それが出来れば最もよいですが」
「うむ、無理だからな」
 それでというのだ。
「他の方になる」
「左様ですな」
「そもそも最早徳川家と当家では格が違う」
 このこともだ、昌幸は言った。
「あちらは二百五十万石でじゃ」
「こちらは十万石」
「全く違いますな」
「それを考えますと」
「徳川家自体との縁組は」
「うむ、出来ぬ」
 格という意味からともいうのだ。
「だから縁者じゃ」
「と、いいますと」
「どの方との縁組になるでしょうか」
「ここは」
「それはわからぬ、しかし徳川家でも重臣の方と縁組をしたい」
 縁者の中でもというのだ。
「そう考えておる」
「ですか、徳川家の重臣の方と」
「当家の縁組」
「それをお考えですか」
「うむ、そして源四郎はな」
 彼はというと。
「羽柴家じゃ」
「何と、あの家とのですか」
「縁組をお考えですか」
「羽柴家の重臣の方とな」
「縁組をですか」
「お考えなのですか」
「その相手も探したいが」
 ここでだ、昌幸はこうしたことを言った。
「二人共わしが言うのも何だが傑物、だからな」
「その奥方様もですか」
「かなりの方でないとですか」
「いけませぬか」
「そう考えておる」
 こう言うのだった。
「見事な細君を娶らせたい」
「では選ばれますか」
「相当な方を」
「そうお考えですか」
「そうじゃ、二人をそれぞれの家に送りな」
 徳川家、そして上杉家にだ。
「そのうえでじゃ」
「縁組のお話もですか」
「進められていきますか」
「そうする、そうして家を続けさせるぞ」
 政によってというのだ。
「徳川、上杉両家と結び」
「そして縁組も進め」
「そうしてですか」
「家を保っていきますか」
「そのつもりじゃ、天下はまずは羽柴家のものとなるであろうが」
 昌幸は天下のこれからのことも話した、それは真田家にも大いに関係のあることだ。彼は天下を見て家のことを考えているのだ。
「しかし秀吉公の後はな」
「それからはですか」
「あの方の後は、ですか」
「わかりませぬか」
「今は弟君の秀長公、そして千利休殿もおられるが」
 しかしというのだ。
「それでもな」
「お二人がおられなくなれば」
「そうなれば」
「秀吉公だけとなり」
 そしてというのだ。 
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