真田十勇士
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巻ノ三十五 越後へその二
「わかった」
「では」
「我等は盟友同士となろう」
こう使者に言うのだった。
「是非な」
「そう言って頂けますか」
「うむ、では待っておる」
景勝もこう言うのだった。
「この春日山でな」
「さすれば」
こうしてだった、真田家はまずは徳川家と上杉家それぞれの家との講和、そして同盟の話を決めた。だがそれぞれの使者の話を聞いてだ。
昌幸は当然といった顔でだ、こう言った。
「人質じゃな」
「それはとです」
「両家共じゃな」
「送って欲しいとのことです」
「わかった」
そのことを当然としてだ、昌幸は言った。
「それではじゃ」
「はい、人質の方をですな」
「送る」
「では殿」
家臣の一人が昌幸に問うた。
「ここはどなたを送られますか」
「それはもう決めておる」
昌幸は家臣にすぐに返した。
「誰をどの家に送るのかな」
「両方の家にですか」
「そうじゃ」
「それではその人質の方々は」
「徳川家には御主じゃ」
昌幸は重臣筆頭の座にいる信之に顔を向けて言った。
「源三郎、御主が行け」
「はい」
信之は父にすぐに答えた。
「さすれば」
「そして上杉家にはじゃ」
今度は重臣次席の幸村に顔を向けて彼に告げた。
「源四郎、御主じゃ」
「わかり申した」
幸村もすぐに答えた。
「それでは」
「その様にな」
「ご子息を共にですか」
先程とは別の家臣が昌幸に問うた。
「送られるのですか」
「うむ、そうじゃ」
「ではお二人が留守の間は」
「わしと御主達でやっていこうぞ」
上田の切り盛りをというのだ。
「是非な」
「わかり申した、それでは」
「そしてじゃ」
それにと言うのだった。
「縁組も進めるが」
「お二人のですね」
「そちらのことも」
「源三郎は徳川家とじゃ」
こちらと、というのだ。
「その縁者との縁組を進めたい」
「ですか、源三郎様はですか」
「徳川家ですか」
「そちらの方と」
「とはいいましても」
ここで家臣の一人が言って来た。
「一つ問題がありますな」
「徳川家との縁組はじゃな」
「はい、家康殿はご子息はおられますが」
「ご息女はな」
「あの方はどうも娘御はあまり」
「縁がない方じゃな」
「はい」
生まれる子は男が多いというのだ。実際に家康にも娘はいるが娘よりも息子の方が多いのだ。
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