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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epico?新たな時代へ~Step in the Future~

†††Sideすずか†††

3月20日。私は今日、私立聖祥大学付属小学校の全教育課程を修了して、卒業する。今日で最後になる小学校の制服の袖に腕を通す。そして同じように最後になる通学バス。みんなで一緒に乗ろうって決めていたから、私は自家用車で登校しなかった。

「おはようございます!」

「はい、おはよう」

いつもお世話になってるドライバーのおじさんに朝の挨拶。そして私は一番後ろ長ソファの座席に座る。次のバス停に着くまで窓から景色を眺めなる。この景色を見るのも今日で最後なんだなぁ。

「すずか!」

「あ、アリサちゃん!」

次に乗車して来たのはアリサちゃん。アリサちゃんと「おはよ~!」挨拶を交わして、隣に座るアリサちゃんとお話しする。次に乗車して来たのは「おはよ~♪」なのはちゃん、シャルちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃんの4人。私とアリサちゃんも「おはよ~!」挨拶を返す。そして最後に「おはよう♪」はやてちゃんとルシル君が乗車。これがチーム海鳴の通学組のメンバーだ。

「いやぁ、いよいよ卒業式なんやな~」

感慨深げにはやてちゃんが唸ると、「途中からだったけど、とても楽しかった」フェイトちゃんは目を閉じて頷いた。私となのはちゃんとアリサちゃんは1年生から。フェイトちゃんとアリシアちゃんは3年生の2学期から。シャルちゃんとはやてちゃんとルシル君は4年生からだ。

「うん。でも中等部からの3年は初めから一緒だから♪」

「そうやね。次からはみんな揃って一緒やから嬉しいわ♪」

シャルちゃんとはやてちゃんはとっても嬉しそうに笑う。でも「男女別々の校舎になっちゃうんだよね・・・」アリシアちゃんがルシル君を見ながらそう言った。そう。初等部は共学なんだけど、中等部からは男子校と女子校に分かれちゃう。だから通学組で唯一の男の子のルシル君とは一緒に勉強できなくなるわけで・・・

「ま、そういう仕組みなんだからしょうがないよな。うん、しょうがない」

でもルシル君はあんまり気にしてない風なんだよね。だからこそ「それが納得できないんだけど!」シャルちゃんのテンションが際立っちゃう。はやてちゃんも「なんで男女別なんやろ?」納得できないみたい。

「ほら。やっぱり子供から大人への成長過程が著しい期間だからじゃない?」

「アリシア、なんかやらしい顔してる・・・」

「あんた、変なとこだけ大人みたいな感性を持ってるわよね」

「えっへっへ~。体も成長してどんどん可愛くなってくからね。特にわたし達は美少女だから、男の子たちはドッキドキ♪ ルシルも大変だよね~。今以上に可愛くなっちゃうはやてと同じ屋根の下で暮らすんだもん。はやて。気を付けてね♪ ルシルも男の子だから、いつかはやてを襲わ――」

「ないっつうの!」

とうとうルシル君が大声でツッコみを入れて来た。顔を真っ赤にしちゃってるはやてちゃんは恥ずかしそうに俯いて、そしてシャルちゃんは「ルシル! わたしと一緒に暮らそう! わたしはいつでも大歓げ――ぎゃふっ!?」暴走寸前で、でも「やめんか!」アリサちゃんのツッコみという名のチョップを受けたことで止まった。

「シャルはダメでしょ~。可愛くてスタイルが良くても下品だし。それだったら、ルシルもわたしの方にトキメクでしょ~♪」

ニヤニヤ笑うアリシアちゃんがしなを作ってポーズを取った。すると「ペチャパイが何言ってんだか」シャルちゃんがポツリと呟いた。

「う、うるさいな! あるもん! ちゃんと膨らんできたもん! 確かにフェイト達に比べればまだ小っちゃいけど、あるもん! それに、シャルみたいにおっぱいだけじゃなくお腹は出て来てないしぃ!」

「んなっ!? それは誰にも言わないって約そ――ちょっ、お腹のお肉を摘まむなぁ!」

アリシアちゃんがシャルちゃんの脇腹を両手で掴んで「ぷにぷにだぁ~!」口撃を開始。シャルちゃんも「このぺったんこ~!」アリシアちゃんの胸を両手で鷲掴み。

「2人とも、やめなさいよ!」

「ストップ、ストップ!」

「落ち着いてシャルちゃん、アリシアちゃん!」

「おーい。一応男子な俺を前に何の話をしているんだ君らは、まったく」

ルシル君がアリシアちゃんとシャルちゃんの頭に手を置いて、2人を引き離した。2人は渋々だけど椅子に座り直した。

「アリシア。君はまだ幼い。肉体的な年齢もあって他のみんなに比べ成長が遅いのは必然だ。だけど、君の母・プレシア・テスタロッサは美しかった。君は彼女の娘だろう? 大丈夫。将来、君も美人になるさ」

「ルシル・・・、ありがと♪」

「で、だ。シャル。俺はどちらかと言うとガリガリにやせ細った女性より、少しふっくらした方が好みだ。ま、太り過ぎはちょっと勘弁だけどな」

「・・・うん。ありがとう❤」

しっかりとフォローするルシル君には心の中で拍手を送る。そして自分の座ってた席に座り直そうとする前に、はやてちゃんの頭を優しくポンポンと叩いた。すると元に戻り始めてたはやてちゃんの顔が「っ・・・!」また赤くなった。ルシル君。今はたぶんスキンシップはしない方が良いかもだよ。
そんなこんなで、私たちは学校に到着。ドライバーのおじさんに「ありがとうございましたー!」お礼を言って、バスを降りる。そして「おはよう!」校舎の昇降口に歩く途中にすれ違うクラスメイト達と朝の挨拶を交わし合う。

「おはようございます、皆さん」

そんな時、知り合った時から卒業までずっとクラス委員長だった咲耶ちゃんから挨拶を貰った。いつも通りの艶やかなドリルポニーっていう髪型を揺らしてる。さらに「おは~!」金髪のボブカットの天音ちゃん、「おはよう」艶やかな黒髪を腰まで伸ばしてる依姫ちゃん、「おっはよう!」藍色の長髪をシュシュで纏めた刀梅ちゃん、「おはよう」夕陽色の髪をハーフアップにした耀ちゃんからも朝の挨拶を貰った。

「おーっす、ルシル! 今日もハーレム登校か?♪」

ルシル君と特に仲の良い男の子、赤髪の亮介君や、「おっはよう!」天音ちゃんの双子の弟の天守君、「おはよう、ルシル君、なのはさん達も」栗色のさらさらヘアの護君が、私たちに挨拶をくれた。

「ん? すずか、なんかアクセサリー増えてない?」

天音ちゃんが、首から提げてる“スノーホワイト”の待機モード時であるクリスタル、その隣に指輪に気付いた。制服の下に隠れてるのに良く判ったな~。制服の上着の下から“スノーホワイト”を、そして黄金に輝く指輪を取り出す。

「これは・・・」

・―・―・回想です・―・―・

リンドヴルムの首領だったスマウグはアールヴヘイムに閉じ込められてなかった。アールヴヘイムの存在する次元世界と、私たちが過ごしている次元世界を隔てる境界を繋げる唯一の存在、“転移門ケリオンローフェティタ”はまだアールヴヘイムに還ってないってことになる。それはつまり、“転移門”の人化した姿の1人、私たちの大切な友達だったケリオン君もまた還ってないはず。

(それを確認するために、私たちはまたここに戻って来た・・・)

当時と同じ巡航L級3番艦・ジャスミンに搭乗して、機動一課のフィレス一尉と私たちチーム海鳴の臨時特殊作戦班(シグナムさんとヴィータちゃんとシャマル先生とザフィーラ、それにセレスちゃんとルミナちゃんとベッキーちゃんは別の仕事で居ない)は、回収した6つの神器と一緒に再び彼の地、リンドヴルムの本拠地だった無人世界へと赴いていた。

「っ! ケリオン君・・・!」

レクリエーションルームに集まっている私たちの前に展開されてるモニターに、途轍もない大きさを誇る黄金に輝く門が宙に浮いてる映像が映し出された。でも「何よアレ。ボロボロじゃない」アリサちゃんが言うように傷1つとして付いていない綺麗だった黄金が、ところどころ無残に崩れていた。門扉の部分には大きな亀裂が走ってるし、大穴も空いてる。

「アレ、大丈夫なわけ? 神器って壊れたらやっぱり死んじゃうんじゃないの?」

シャルちゃんのその言葉に私は血の気が引いた。私は「ルシル君!」に振り向いて、ケリオン君の状態がどういったものかを訊ねる。ルシル君は難しい顔をして、モニターに映る“転移門”を注視する。そして・・・

「大丈夫。おそらく死んでいないよ。そもそも神器は死ねば、二度と修復できないように砂状になるんだ。とは言え、転移門は正式な神器じゃないため、確約は出来ないんだが・・・。しかし転移門から神秘を感じられる。それが生きている証拠なはずだ。とにかく、会いに行ってみよう」

そう教えてくれた。生きてるって確約が欲しかったんだけど、ルシル君にも判らないことだってあるんだ。責めるのは筋違いだ。

「こちらレクリエーションルームのフィレスです。チーム海鳴はこれより転移門と接触します。トランスポーターの起動をお願いします。・・・さぁ、行ってきなさい」

フィレス一尉がブリッジに連絡を入れてくれた。そして私たちチーム海鳴はエントランスのトランスポーターから艦外へと出て、飛行魔法を使って“転移門”の前まで移動する。なのはちゃん、アリサちゃん、シャルちゃん、フェイトちゃん、はやてちゃん、ルシル君の6人でそれぞれ神器を持って・・・

「ケリオン君・・・!」

私は両手で“転移門”の崩れた門扉に触れる。なのはちゃん達も「ケリオン君!」名前を呼ぶ。すると『すず・・・んな・・・。・・ずか・・・みん・・・』ノイズ交じりだけど、確かに私の名前を呼ぶ声が聞こえた。私たちはそれぞれフローターフィールドを展開して、そこに着地。

「「ケリオン君!」」

「「「ケリオン!」」」

「姿を見せなさいよ!」

「ケリオン! 実体化できないのか!? 出来るなら、実体化してやってくれ!」

みんなでケリオン君の名前を呼んでいると、“転移門”の門扉の表面から光の粒子が溢れて来て、それが一ヵ所に集まると「ケリオン君!」の姿になった。だけど「ケリオン君、体が透けて・・・!」ケリオン君の体は、以前と違って透けているし、ところどころにノイズが走ってた。

『またみんなに会えて・・・良かった・・・』

「ケリオン君!」

『・・・みんな。スマウグ竜を逃がしてしまったけど・・・大丈夫だった・・・・?』

私たちは無言になる。スマウグは、リアンシェルト少将の手によって斃された。レーゼフェアさん、シュヴァリエルさん、フィヨルツェンさんも“エグリゴリ”だって判って辛かった。そこにまたリアンシェルト少将までもが、ルシル君の斃す、救うべき敵だったなんて。

「ああ。俺たちがしっかりと決着をつけてやった。安心しろ、ケリオン」

『そっか。さすが、ですね。・・・だけどこれで、僕もローフェティタも、安心して還れるよ』

安心したように微笑むケリオン君。そんなケリオン君に「ねぇ、還られなくてもいいんじゃないの!?」アリシアちゃんがそう言った。ケリオン君――“転移門”が門扉を閉めた理由、還る理由は、あちらの次元からこちらの次元に神器が入って来ないようにするため、それにスマウグをアールヴヘイムに閉じ込めるため。その内の1つが果たされた。

「そ、そうだよね。ケリオン君やローフェティタさんが人化すれば、門は開かないんだし!」

スマウグはもう居ない、人化すれば門は開かない。つまり、ケリオン君が還る理由はなくなる。でも『なのはの言う通りだけど・・・やっぱり還るよ』ケリオン君はやっぱり還ろうとした。

「どうして!?」

『・・・僕の本体、酷いでしょ? スマウグが無理やりこじ開けたんだ・・・。ダメージが大き過ぎる。神秘の無いこの次元にこのまま留まり続ける限り、僕たちは死へ向かうんだ』

引き止める理由を考えてた思考が止まる。還らないとケリオン君が死ぬ。そんなことを知ったら引き止めるわけにはいかない。みんなも沈んだ表情を見せる。

「ケリオン。神器を持って来たんだ。今、少し門が開いているな。アールヴヘイムへ共に連れて行ってやってくれないか?」

『もちろんです。神器を、僕の前へ』

こんな時でもルシル君は冷静に事を進める。それが正しいんだろうけど、どこか冷たい印象を抱く。なのはちゃん達は手に持ってる神器をケリオン君の前に差し出した。そして『うん。確かに全部神器だ・・・』ケリオン君は1つ1つに触れていくと、6つの神器は光に包まれて、僅かに開いた門扉の隙間の中へと飛び立って行って・・・門扉が完全に閉じた。アッサリなお別れになっちゃった・・・。

『・・・じゃあ、次は僕だ』

ケリオン君の足先から霧散し始める。私は「ケリオン君!」の手を取ろうとしたんだけど、すぅっとすり抜けちゃった。

『なのは、アリサ、フェイト、アリシア、はやて、ルシル、シャル・・・、そしてすずか。今度こそお別れだ。短い間だったけど、僕はみんなと一緒に過ごせて幸せだった。ありがとう』

「ケリオン君! 私、私は・・・ケリオン君のことが好きでした!」

ようやく伝えることが出来た私の想い。

『・・・うん。僕も同じ想いだよ、すずか。僕もすずかが大好きだ』

ケリオン君が私の目の前に来て、私の額にキスしてくれた・・・のに、やっぱり感触は無くて。ケリオン君が1歩と2歩と離れて行って、『幸せになってね、すずか』手を振りながらケリオン君はまた粒子となって“転移門”へと消えて行った。
そしてあの頃にみたいに一番下から霧散してく。今度は最後の最後までケリオン君が還るのを見送った。今度こそ永遠のお別れ。そう思うと涙が止まらない。両手で顔を覆って泣いていると・・・

「すずかちゃん!」

「アレ!」

なのはちゃんとはやてちゃんの声に私は顔を上げて、涙で滲む視界の中に何か輝いてるのが判った。それはゆっくりと私のところにまで落ちて来て「あ・・・!」キャッチする。

「指輪・・・?」

黄金で出来た指輪だった。ルシル君が「転移門の欠片だな。彼への想いを断ち切りたいなら捨てるべきだな。どうするかは、すずかに任せるよ」そう言って、ジャスミンへと飛び去って行った。

「ちょっ、ルシル!」

「そんなこと言わなくたっていいじゃん!」

アリサちゃんとアリシアちゃんが追いかけるように飛び去って行く。

「ルシル君。どうしてあんなこと・・・」

「たぶんやけどルシル君は、すずかちゃんがケリオン君に縛られへんように言いたかったんやないかな・・・? すずかちゃんが新しい恋を出来るように・・・」

はやてちゃんの言いたいことは私も解ってた。ルシル君は理由なくあんな冷たいことは言わないって解ってるから。

「すずか・・・」

「・・・もちろん、私は大事にするよ。ケリオン君が遺してくれたものだから。お守りとして一緒に生きて行く!」

袖で涙を拭って、私はケリオン君自身だって言っても過言じゃない指輪を左手の薬指にはめた。

・―・―・終わりです!・―・―・

新しい恋が出来るかどうかなんて今は考えられない。だから、それまでは一緒に・・・。

「これは・・・私のとても大事な思い出なんだ」

「そっか!」

「委員長として見過ごしたくはありませんけど、仕方ありませんわね」

「ありがとう。咲耶ちゃん!」

そうして私たちは、6年4組の教室へ向かった。

†††Sideすずか⇒はやて†††

卒業式が始まる。まずはわたしら卒業生の入場。1組から始まって、そんでわたしら4組。校歌のピアノメロディが体育館に流れる。

(こうして卒業式に出られるなんて・・・ホンマに思いもせえへんかったな・・・)

ルシル君と出会う前、わたしは孤独やった。父さんも、母さんも、お星様になって、足も動かへんくなって、もう生きたいって強く願う意志もなくなってた。そんなところに・・・

――ぶつかったお詫びに、お手伝いしようか?――

ルシル君と出会った。そんでわたしは、最初は女の子やって勘違いしたルシル君とスーパーで一緒に買い物をした。同い年の子と話すことも久しぶりやったし、わたしはルシル君と友達になりたかった。

――また会えるかもしれないし、もう会えないかもしれない。すべては流れるままに――

(あの頃からルシル君は不思議な子やったな~)

その数日後、わたしはルシル君と臨海公園で再会した。

――こんにちは、ルシリオン君――

――こんにちは。少しぶりだな――

(そこでルシル君がわたしのように家族が居らへんくて、さらに帰る家も、住む家もないことを知ったんやったな~)

それぞれの椅子の前に着いて、「一同、礼!」教頭先生の号令でわたしら卒業生は体育館のステージ向かって一礼した。教頭先生から開会の挨拶がされて、そんで国歌斉唱や。

――わたし、ルシリオン君のことがホンマに心配なんよ。ちょっとの間でもええから、わたしの家においで? わたしに、ルシリオン君のことを手伝わせて。手伝い言うても探し物の手伝いは出来へんけど、住むところとか食事くらいなら手伝える――

(ルシル君をうちに招くことを決めて、わたしは必死に説得したんやっけ)

――独りはやっぱり寂しい。・・・それにわたし、ルシリオン君と友達になりたいんや。出来ればもっと会いたいし、お話ししたいし。そやから一緒に住めれば、その2つがいっぺんに解決できるな~なんて――

わたしとルシル君の共通した思い・孤独。お互いに独りは寂しかったんや。そんで・・・

――お世話になります――

ルシル君は、わたしと一緒に暮らすことを選んでくれた。そんで、ルシル君が魔法使いやったってことをすぐに知ったんやったな。

(ルシル君が地球にやって来た目的も無事に終わって、どうやって引き止めようかなって考えてたところに、ルシル君自ら残るって、八神を名乗りたいって言ってくれた。それがどんなに嬉しかったか・・・)

「卒業証書、授与」

1組から名前を呼ばれた1人1人がステージに上がって、「卒業おめでとう!」校長先生から直に卒業証書を受け取ってく。

――闇の書ははやて、君を主として目醒め、そして守護騎士も君を主として守り、敬うだろう――

ルシル君とこれからも一緒に過ごしていけることになった直後に、わたしが物心ついた頃から一緒に在った分厚い装飾本が魔法の道具やってことを知らされた。さらには守護騎士ってゆう、新しい家族も出来ることも知った。

――闇の書の起動を確認しました――

――我ら、闇の書の蒐集を行い、主を護る守護騎士にございます――

――夜天の主の下に集いし雲――

――我らヴォルケンリッター。何なりとご命令を――

わたしの誕生日。“闇の書”は目醒めて、シグナム、シャマル、ザフィーラ、ヴィータが新しく八神家に加わった。そっからは楽しい日々を送れてたんやけど、わたしの下半身マヒの原因が、“闇の書”やってことをルシル君たちから聞かされた。

――我々は、主はやてを喪いたくありません。ですから、主はやてとの誓いを、申し訳ありませんが破棄させていただきたく思います!――

――はやてを助けるには闇の書を完成させて、はやてを本当の主にするしかないって!――

――ですから私たちに戦闘の許可をお願いします!――

わたしを救うためにルシル君たちが選んだのは、“闇の書”を完成させて、わたしを真の主にすること。そのために魔力が必要で、魔法を使って悪い人たちを懲らしめる意味を込めて、その人たちから奪うって手段やった。

「ルシリオン・セインテスト」

「はいっ!」

4組の番になって、ルシル君が担任の矢川先生に呼ばれる。大きく返事したルシル君は椅子から立ち上がって、ステージの左端に掛けられてる移動階段の前にまで移動。1つ前のクラスメイトの子が卒業証書を受け取って、右端の移動階段からステージを降りるのを合図に、ルシル君が壇上へと上がって校長先生の前にまで向かう。

(そやけど、その手段でルシル君は間違いを犯してしもうた・・・)

「高町なのは」

「はいっ!」

なのはちゃんが椅子から立ち上がって、ステージの校長先生から卒業証書を受け取った。それから「月村すずか」、「アリサ・バニングス」、「アリシア・テスタロッサ・ハラオウン」、「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン」、わたしの親友の名前が呼ばれて、同様に卒業証書を貰ってく。

(すずかちゃん達と知り合って友達になった後に、犯罪者でもないすずかちゃん達からも魔力を蒐集してもうたことをルシル君たちから聞かされた・・・)

――お初にお目にかかります。我が主。私は闇の書の管制人格にてございます。主の承認の下、無事に起動することと成りました――

“闇の書”のある一定のページが埋まったことで、最後の家族が起きた。シュリエルリート。後にリインフォース、リインフォース・アインスとなる、とっても綺麗な女性。何百年って続く残酷な運命から、アインスやシグナム達を解放する。それがわたしの一番の生きる理由になった。

「イリス・ド・シャルロッテ・フライハイト」

「はいっ!」

シャルちゃんもまた卒業証書を受け取った。シャルちゃん。ルシル君を巡る最大の恋敵にして親友の1人。正々堂々と戦って、どうしても勝ちたい相手や。ルシル君やシグナム達、そんですずかちゃん達と出会ったことが、わたしに生きたいって思いを強くさせてくれた。わたしはホンマに・・・

(幸せや!)

「八神はやて」

「はいっ!」

4組最後の出席番号32番、わたし八神はやての名前が呼ばれた。元気よく返事して、そんでステージに上がって卒業証書を受け取った。椅子に戻る途中、保護者席に居るシグナムとシャマルと目が合った。すずかちゃん達のご両親も揃い踏みや。

(さすがにヴィータとリインとアイリは大人モードに変身できひんから、ザフィーラと一緒にお留守番やけどな~)

そんで全組の卒業証書授与が終わって、校長先生からの式辞、さらに来賓祝辞・来賓紹介・祝電披露と続く。

(闇の書の闇を払って、夜天の魔導書ってゆう本当の名前を取り戻すことも出来た)

後にマテリアルとの闇の欠片事件、管理局への入局、アミタさんやキリエさん、王様らとのユーリを巡る“砕け得ぬ闇”事件、わたしとアインスのリンカーコアを利用しての、アインスの後継騎リインフォース・ツヴァイ――リインの誕生、アインスの旅立ち、リンドヴルムとの決戦。

(ルシル君たちと出会ってからの4年。ホンマに濃い出来事ばっかりが起きたなぁ)

一生分の波乱万丈を体験した感じや。でも、わたしらはまだ小学校を卒業するだけ。中学の3年、その卒業後は本格的に管理局員として働くことになるやろう。そうなれば、この4年での出来事以上のことを体験するかもしれへん。そやけど・・・

(忘れへん。一生。みんなとの出会いを、そしていろんな人たちとの別れを)

「式歌斉唱」

仰げば尊しのイントロが始まる。わたしらは万感の思いを込めて唄った。唄い終えた後は、卒業式閉会の言葉、そんで「卒業生、退場」わたしらは、校歌のピアノメロディが流れる中、1組から順に体育館から退場する。

(シャマル、ボロ泣きや♪ シグナムも泣いてくれてる・・・)

シャマルの手には、アインスの写真が収められた小さな写真立てがある。とても綺麗な笑顔を浮かべてるアインスの写真が。

(アインス。わたし、無事に卒業できたんよ。おおきにな。アインスがわたしに未来をくれた。そのおかげや・・・!)

鼻の奥がツンとなる。ホンマはアインスにも見てもらいたかったな。でも、心は一緒や。“シュベルトクロイツ”の待機モードである剣十字の首飾りに寄り添うように提げてる指輪の上に手を置く。アインスが旅立つ直前まで指にはめてた指輪や。

(いつまででも見守ってな、アインス)

そんで体育館から出たわたしらは、4組の教室に戻って来た。泣いてる子たちも居って、しみじみした雰囲気や。男の子のグループに居るルシル君を除くわたしらチーム海鳴は、帰りに翠屋に寄って卒業パーティーを開くって事前に決めてたから、そのことについて話してる。

「はーい、みんな席に着いて~」

担任の矢川先生も教室に到着。わたしら生徒は自分の席に着いて、「みんな。卒業おめでとう!」先生からお祝いの言葉を貰った。

「初等部はこれで卒業だけど、みんなはこのまま中等部へ自動的に進学だからそんなに寂しくないと思う。まぁ、先生は大好きなみんなと今日でお別れになっちゃうから寂しい。だから暇な時でも良いから逢いに来てね~」

少し目が赤い先生に「はーい!」わたしらは元気よく返事。嬉しそうに笑う先生の「ありがとう!」がとても印象に残った。それから春からの中等部への入学式の日付とか諸注意などを聴いて・・・

「よしっ! それじゃあ、聖祥小6年4組ホームルーム、これで終了! 木花さん!」

「はいっ! 起立!」

咲耶ちゃんの号令でわたしらは椅子から立ち上がり、「礼! 今までお世話になりました!」先生に一礼した。先生も「こちらこそ、ありがとうございました!」お辞儀。こうしてわたしらの小学校生活に幕が下りた。
みんなと「また中等部でね!」なんて1週間ちょっとのお別れの後の再会を約束しながら、ルシル君含めたわたしらチーム海鳴は校舎を出て正門へ。そんで「お世話になりました!」校舎に向かって一礼した。すると他の卒業生たちも「ありがとー!」とか「また遊びに来るよ!」なんて続く。

「はやてちゃん、ルシル君!」「主はやて、ルシリオン!」

わたしとルシル君の名前を呼ぶ2人の声。シグナムとシャマルや。側にはリンディ提督、クロノ君、エイミィさん、アルフ。そんですずかちゃん達のご両親が居った。保護者会がこの後あって、それが終わり次第、翠屋に集まるって話や。
すでにヴィータやザフィーラ、リインにアイリ、なのはちゃんのお姉さん・美由希さんやお兄さん・恭也さん、すずかちゃんのお姉さん・忍さん達が料理など御用意してくれてるそうや。そんなシグナム達と別れて・・・

「それじゃあ、翠屋にしゅっぱ~つ!」

なのはちゃんの掛け声に「おお!」拳を高々と突き上げて応じる。帰りは徒歩で、ゆったりのんびりと翠屋へ向かう。そんで店に到着すると「卒業おめでとう!」のお祝いの言葉と一緒に、パンパン!ってゆうクラッカーの破裂音が浴びせられた。それに「わっ!?」ってビックリしてもうた。

「ささ! 今日の主役は席に着いてね~!」

「撮影はこの私、忍が務めます!」

美由希さんにテーブル席に案内されてすぐ、忍さんが高そうなカメラでわたしらを撮影。シグナム達やすずかちゃん達のご両親が来るまで楽しく話をして、「お待たせしました~!」シャマルを先頭に翠屋に到着や。

「ではでは~! どういうわけか、私エイミィ・リミエッタが乾杯の音頭を取らせて頂くことになりました! 月日が流れるのは早いですね~! 初めてなのはちゃん達と出会ったあの日、もうずっと昔のように思えちゃいます! 色んな困難を立ち向かい、様々な試練を乗り越えて来たチーム海鳴! その彼女たちは今日! 小学校を卒業し、また1歩成長していきます! そんなチーム海鳴のみんなの新たな門出に・・・かんぱ~い!」

エイミィさんの音頭に「かんぱーい!」わたしらは手に持ったジュースの注がれたコップを掲げた。そこからはビュッフェ方式の食事会や。テーブル席やカウンター席に置かれた大皿から好きなだけ料理を自分の取り皿によそうってゆうやつ。思い思いに料理をよそって食べる。

「はやてちゃん、ご卒業おめでとうです!」

「うん。おおきにな、リイン!」

頑張ってアウトフレーム(9歳くらいの子供の姿)へ変身してるリインの頭を撫でる。そんでわたしらは夕方近くまで盛大に卒業のお祝いをして・・・「またね~!」解散となった。夕ご飯分の食事もしたから、今日の夕ご飯はもうなんも食べんくてもええかも。すずかちゃん達とお別れして・・・

「父さん、母さん。わたし、今日無事に小学校を卒業できたよ。春からは中学生や。そん時にまた逢いに来るな」

家に帰る前にお墓参り。ルシル君が帰り際に、ご両親に挨拶しに寄ろう、って言うてくれたからや。別に明日でもええと思うたんやけど、今日の内の方が良いってことでそのまま父さんと母さんが眠る墓地へとやって来た。

「はやてちゃんのお父様、お母様」

「はやてはこれからもあたし達がしっかり守るから」

「どうかご安心してください」

「リイン達は、はやてちゃんとずっと一緒です♪」

みんなもお墓に手を合わせて祈ってくれてる。幸せすぎて泣きそうや。今日1日でどんだけ泣きそうになるんやろ。ふと、ルシル君とアイリが視界に入った。2人とも真剣にお祈りしてくれてるみたいやけど、どこか悲しそうな気もする。

「ルシル君、アイリ・・・?」

「ん?」「なーに?」

わたしに振り向いた2人の表情はいつも通りのものやった。夕陽の影でそう見えてただけやろか・・・。わたしは「ううん。なんでもあらへん」首を横に振って、「そろそろ帰ろか」春先やからかちょう風が冷たい。とゆうわけで、今度こそわたしらの家に向かう。

「「「ただいまー!」」」

ヴィータ、リイン、アイリが真っ先に家の中に入ってく。遅れて「ただいま!」わたしらも家の中へ。

「あ、そうだ。はやてちゃん、ルシル君、シグナム。制服とスーツは明日クリーニングに出すから出しておいてくださいね」

「うん」「「ああ」」

わたしらはそれぞれ自分の部屋に戻って、制服から私服へと着替える。脱いだ制服を手に「お疲れ様」労いの言葉を掛けた。3年間、いま手にしてるんは2着目やけど、今日までお世話になった制服やしな。そんな制服を手に1階に降りて、「はい。シャマル。おおきにな」シャマルに手渡す。

「はい。しっかりクリーニングしてもらって、大切に保管しますね~♪」

シャマルは他にも小学校で使った教科書やらノートやら体操服やらを保管する気やった。どうもわたしが大人になった時、それらを使って思い出に浸りたいらしい。ん~、お母さんやな~。
リビングダイニングに入ると、「ヴィータ、アイリ・・・?」が冷蔵庫を漁ってた。ヴィータは「たくさん歩いたからお腹すいちゃって」って苦笑い。そんでアイリは「あ、シュークリームは~?」ヴィータにシュークリームの袋を差しだした。

「シュークリームか~。う~ん・・・それも良いんだけどな~」

「ヴィータ。なんか作ろか?」

シュークリームやと物足りんようなヴィータに提案してみると、「あー、いいや。軽いもんで足りると思うし」そう言うて、「あっ、そだ! ルシル! お前の作ったドーナツ、食って良いか~?」って、私服に着替えたシグナムやザフィーラと一緒にリビングに入って来たばかりのルシル君に訊いた。

「なんだ、ヴィータ。お前、あれだけ食べておきながらまだ食べるのか?」

「うっせぇなぁ、シグナム。小腹が空いたもんはしょうがねぇだろううがよ」

「食べても構わないけど、腹を壊すなよ」

「へーいき平気~♪」

「アイリも食べる~♪」

ルシル君のお手製のドーナツをダイニングテーブルに着いて食べるヴィータとアイリ。その様子を見てると「わたしも貰おうっと♪」食べたなってきたから、テーブルに着いて袋からドーナツ1個を取る。

「あー! みんなドーナツ食べてるー! 私もく~ださい♪」

私服に着替えて来たシャマルもテーブルに着いて「ルシル君、いただくわね♪」作ったルシル君に一言断ってから「いただきます~!」パクッと頬張った。

「シグナムとザフィーラもどうだ? 翠屋から墓地、そして家まで結構歩いたからな。小腹くらいは空いているんじゃないか?」

「む・・・。いただこう」

「では我も1つ貰おうか」

ルシル君にそう言われたシグナムもテーブルに着いて、ドーナツを1つ取って「いただきます」パクッと頬張る。そんで狼形態のザフィーラの口元に「はいです。ザフィーラ」リインがドーナツを差し出して、「いただこう」ザフィーラは大きく口を開けて丸ごとを一口で食べた。

『変なこと言わへんようにな』

シグナムを見てニヤニヤしてるヴィータに先制して忠告しておく。ここでヴィータはいらんことを言うてシグナムを怒らせるんやからな。すると『へーい』ヴィータは出鼻を挫かれたって風にそっぽを向いた。

「みんな。飲み物は何が良い?」

「あ、ルシル君。私も手伝うわ」

「わたしも・・・!」

「いいよシャマル、はやて。俺、立っているしさ」

「そう?・・・じゃあ、コーヒーを」

シャマルに続いてわたしも「ココアでお願いします」みんなも飲み物の注文。ルシル君は手際よく注文通りの飲み物を淹れてくれた。みんなでお礼を言うて、ホッと一息。ドーナツもルシル君が淹れてくれたココアも美味しいし。もう言うことなしや。
夕ご飯はもうそのドーナツだけで事足りたから、そのままお風呂に入って思い思いに就寝まで時間を潰す。そんで時刻は夜11時。ヴィータもリインもアイリもすでに眠りについて・・・

「おやすみなさい、はやてちゃん、ルシル君」

「主はやて、ルシリオン、おやすみなさい」

「んー、おやすみな~、シャマル、シグナム」

「おやすみ~」

シグナムとシャマルと挨拶を交わして、リビングから出てく2人を見送った。ザフィーラも、リビングに残るわたしとルシル君に頭を下げて玄関へ。ザフィーラは一晩のうちに寝る場所を何度も変える。対泥棒の番犬としての務めやって言うてる。そんなザフィーラも見送って、わたしはリビングの電気を消した。
ルシル君は「じゃあ俺もそろそろ・・・」リビングを出て行こうとしたから「ちょう待って」ルシル君の袖を摘まんで引き止める。そんで「良かったらもうちょい話せぇへん?」って誘ってみたら、「いいよ」受けてくれた。

「ようやく中学生になるんやな~、わたし」

ルシル君と2人きりになって、一緒にソファに座る。リビングを照らすのは月明かりだけ。音もない、ホンマに静かな空間や。

「ああ、あっという間だったな。はやてと出会ってもう4年だ」

「ホンマにな~・・・。・・・よし」

勇気を出して隣に座るルシル君の肩にもたれ掛る。ルシル君は何も言わんとただ受け入れてくれた。それだけで嬉しい。

(小学生はもう終わりや。1週間ちょっともすれば中学生。そろそろ本気で戦いのステージに立たなアカンよな)

遊園地デートでは頬にキスをして見た。思い出すだけでも全身が熱くなる。そやけどもう1歩踏み込んでかなシャルちゃんやトリシュには追いつけへん。そう。わたしだけが未だにやってへんことがある。それを今日、今この瞬間にやる。

「あのな、ルシル君」

「ん?」

ルシル君の声を聴く度に鼓動が速くなる。わたしは深呼吸を1回。そんで視線をルシル君の目と合わせる。

「わたしな。ずっと伝えたことがあるんよ、ルシル君に。初めて会った時からずっと、ルシル君のことが気になってた。最初は、わたしの孤独を埋めてくれる家族やって。そやけど、その思いはいつしか想いになってた」

思いが想いに変わった最大の原因は、海鳴スパラクーアでお互いの家族を紹介していた時、シャルちゃんが初対面のルシル君にキスして、さらに告白したからや。

――わたしはルシルが好き、ううん、愛してる。顔合わせは今日、この瞬間だった。でもそれだけで十分って言えるほどにこの想いは確かなもの。もしかしたらこの想いは前世のわたしの影響かも知れない。でもその想いはもうわたしのもの。だから、負けないよ――

――わたしかて・・・!――

そのやり取りで、わたしはルシル君への恋を自覚した。それやのに、後から現れたトリシュにも告白の先を取られてしもうた。今の楽しい時間を壊したないから、わたしは何かと理由を付けて逃げてばっかやった。そやけどもう・・・遠慮も、逃げもせぇへん。わたしは・・・

「ルシル君が好き! 家族としてやない! 1人の男の子として! ルシル君が好きです!」

想いを告げた。ルシル君はわたしの想いなんか前々から気付いてるって風に驚くことはなかった。うん。そんなリアクションやろうなぁって予想はついてた。

「・・・正直、嬉しいよ。そう言ってくれて。俺なんかを好きになってくれて、本当に嬉しい」

シャルちゃんやトリシュには見せへんかった反応が返って来たことに驚いた。微笑んだルシル君はわたしに顔を近付けて来たから、ドキッと心臓が止まるかと思うた。キスされるかと思うたから目を瞑ろうとしたんやけど、「??」コツンと額と額をくっ付けただけやった。

(あー、今のは勘違いは恥ずかしいわぁ~・・・)

別の意味で顔が熱くなる。でもその恥ずかしさも、目の前にルシル君の顔があることのテレに掻き消される。

「でも・・・俺は・・・」

来た。この1回の告白で上手く行くなんて端から思うてへん。そやから「ルシル君!」その先を言わさへんように先制。

「出来れば今すぐ答えを出してほしくないんよ。ルシル君の事情は解ってるつもりや。エグリゴリの救済。それはホンマに危険なことで、自分がいつ戦いに敗れるか判らへんから、わたしらの告白を断ろうとしてるんやろ」

「・・・ああ。知っての通りエグリゴリは強い。残り4機の内、シュヴァリエル以上が2機。リアンシェルトに至ってはスマウグより上だ。正直・・・」

そこから先を言い淀むルシル君。リアンシェルト総部長までもが敵やったなんてショックやった。シグナム達が総部長と会う時いつも警戒してた理由が、スマウグ戦の時にようやく判った。

「でも、勝つんやろ? ルシル君は」

「ああ、勝つよ」

「だったら、大丈夫や。ルシル君は勝って、わたしらのところに帰って来てくれる。答えはそん時に貰いたい。ルシル君がセインテストの存在意義から解放されたその日に・・・」

このまま勢いで口にキスしようとしてみたけど、さすがにそこまでの勇気は出せへんくて。そやからデートの時みたく頬に「それまで、わたしらに振り回されてな❤」キスした。コチコチと時計の針が動く音と、わたしのバクバクってゆう鼓動の音だけが耳に入る。そんな時に、PiPiPi♪って通信が入ったことを知らせるコール音が突然鳴ったから「っ!?」わたしだけビクッとしてもうた。

「な、なんや? こんな遅い時間に・・・!」

「俺、か・・・」

受信者はルシル君やった。そやけど「ルシル君・・・?」はなかなか出ようとせぇへん。なんでかな?って考えて、「あ、わたしか・・・?」内務調査部からの大事な連絡かもしれへんから、わたしの前では出られへんのかって思い至った。

「わ、わたし、もう寝るな。えっと、おやすみな♪」

ルシル君に挨拶してソファから立ち上がって、手を振って自室に向かう。

「はやて・・・」

「ん?」

呼び止められたから振り返るとルシル君もソファから立ち上がってて、わたしを引き止めるかのように手を伸ばしてた。

「あ・・・えっと・・・。うん。おやすみ、はやて」

「変なルシル君♪ おやすみ、ルシル君。また明日❤」

ルシル君が手を振って挨拶してくれたから、わたしももう一度手を振って挨拶を返した。自室に入って、勉強デスクのお出かけバッグの中で眠るリインに「おやすみ」小声で挨拶。そんで、ベッドの中で寝相を崩したヴィータの、布団から出た足と腕をしまってから「おやすみ」わたしもベッドに入る。

(・・・っ! うぅぅーーー! 言った、ついに告げた!)

さっきの告白を思い出してベッドの中で蹲る。そやけど、それ以上にシャルちゃんとトリシュと同じステージに立てたことが嬉しい。もうこっからは一切の手加減無用。うん!と改めて決意を固めて、わたしはそのまま眠りに着いた。



そんであくる日。カーテンの向こうから差し込んで来る朝陽に「ん・・・ん・・・?」目を覚ました。今日から春休みで仕事もみんな休みやから、みんなして起きてくるのは遅い。時計を確認すると午前7時すぎ。

(やっぱ習慣やなぁ~。時には盛大に昼くらいまで眠ってみたいかも)

ヴィータを起こさへんように注意してベッドから降りる。リビングへ向かう前にまずは「おはよう、アインス」勉強デスクの上に置かれた箱に収められた剣十字と指輪に朝の挨拶。そのアインスの魂を首に提げる。今日もずっと一緒やよ。

「やっぱり誰も起きてへんなぁ・・・」

リビングに入ると、シャマルどころか早起きなルシル君も起きて来てなかった。ルシル君のことを考えると「あぅ・・・」また顔が熱くなる。ルシル君と直接顔を合わせればどうなんかちょう不安。

「ん?・・・テーブルの上になんか・・・」

熱を冷ますようにかぶりを振ったところで、ダイニングテーブルの上に紙が1枚置かれてるのに気付いた。昨夜には無かったから、わたしが起きて来る前に誰かが置いたんやな。わたしはその紙がなんなのかを確認するために手にとって「っ!!?」そこに記されてたメッセージを読んで目を疑った。

「うそ・・・うそ・・・うそや・・・うそや!」

そのメッセージを信じたなくて、確認するためにリビングから飛び出して、「ルシル君!」の部屋へ。ノックも何もせんと扉を開けて・・・

「っ!・・・いや・・・いやや・・・いやぁぁぁぁぁ!」

わたしはその場にへたり込んで泣き喚いた。ルシル君の部屋やったそこにはもう誰も居らんくて、ルシル君の私物も何も残ってへんかった。





こうしてルシル君は、4年と過ごしたわたしの家から姿を消した。


EpisodeⅢ : Usus, magnus vitae magister, multa docet....Fin




・―・―・次章予告・―・―・

魔法少女、育てます。

新暦69年。日常では小学生から中学生となり、非日常では各々夢を叶え、チーム海鳴はそれぞれの道で仕事に励む。

「高町なのは教導官って、本当にすごいんだよ!」

「フェイト執務官、アリシア執務官補。お疲れ様です!」

「あれが、八神はやて特別捜査官と八神の騎士たち・・・! すげぇ!」

「バニングス捜査官、ご協力感謝いたします!」

「やぁ、すずか君。やはり私の目に狂いはなかったよ」

さらに有名になりつつある彼女たちの時は流れて行く。そんな中、はやては決意する。

「わたしな、自分の部隊を持ちたいんよ」

現管理局、特に地上部隊の体制に不満を抱き、その不満を少しでも解消するため、自分の部隊の立ち上げることを決めた。
古くからの本局の協力者たちの力添えにより、彼女の夢は、心強い仲間たちと共に着々と実現へと近付いて行く。

「スバル・ナカジマ二等陸士であります!」

「ティアナ・ランスター二等陸士です!」

「エリオ・モンディアル三等陸士です!」

「キャロ・ル・ルシエ三等陸士であります!」

新しい仲間もさらに増え、彼女の夢はとうとう実現を果たす。

「これが、わたしらみんなの部隊、機動六課や!」

古代遺失物管理部・機動六課。とあるロストロギアと、騎士カリム・グラシアの預言の元に設立された部隊。はやて。なのは。フェイト。アリシア。シグナム。ヴィータ。シャマル。ザフィーラ。リインフォースⅡ。そして新たな仲間たちは、次元世界史に残る大事件に直面し、解決に奔走することになる。

「第零技術部長ジェイル・スカリエッティ中将。あなたを逮捕します」

「はーっはっはっはっは! 俺からのプレゼントだ、我が愚弟・・・ジェイル!」

「こちらアリサ・バニングス二等陸尉。これより機動六課と合流するわ」

「月村すずかです! みんな、よろしくね♪」

暗躍する本局上層部。そして機動六課のため、それぞれ別の部隊からも集まる仲間たち。

「ちょっとぉぉぉーーー! 誰との子供よ、ルシルぅぅぅーーーー!」

「待つんだ、まずは話を聴け、シャル――ぐはぁっ!?」

そんな中、機動六課の前に現れた2人の幼い少年と少女。その2人の出現に、言われなき暴力を受けるルシリオン。

「ドクター・プライソン・・・彼が首謀者だ!」

「さぁ、始めよう! 戦争だ! 燃えろ、燃えろ、全てを燃やしつくしてやれ、我が作品たち!」

「あなたは本当にそれでいいの!? ルシル君!」

「ズィルバーン・ローゼ、全騎出撃!」

「何としてもこれ以上の砲撃を撃たせるなぁぁぁぁぁーーーーー!」

「ミッドは滅ぼさせない!」

リンドヴルムによって引き起こされたクラナガンの悪夢。それ以上の悪夢がクラナガンを、そしてミッドチルダを襲う。

「私は、あの人に死んでほしくない・・・!」

「それが裏切りであっても・・・」

「あたし達が!」

「僕たちが!」

「きっと止めて見せる!」

「予言しよう、神器王! 将来、お前は必ず――」

「黙れぇぇぇぇぇーーーーーーーッ!!」

食い止めろ。無情な戦火を。吼えろ。己たちの意志を通すため。

Next Episode....EpisodeⅣ:Desine fata deum flecti spectare precando.
 
 

 
後書き
ドブロホ・ランクゥ。ドブリイ・デニ。ドブリイ・ヴェチル。
おーわった、おーわった! エピソードⅢがおーわった~!
1年以上もお付き合い頂いてありがとうございました! これにてエピソードⅢ完結です!
長かった~。省いた日常編を足せばもっと掛かるところでした。それらは本作の完結後、時間があれば足していきます。
 
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