FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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413DAYS
前書き
ナインハルトの魔法中々強いですね。仮にあの魔法でシリルの記憶の中の強敵が出てきたら誰になるのか・・・まさかの誰も出てこないってのも面白そうだけどね(笑)
フェアリーヒルズにて・・・ウェンディside
「おはようございます、エルザさん」
「ウェンディか、おはよう」
朝部屋から出ると、丁度エルザさんも出てきたところだったらしく、軽く会釈をする。
「久しぶりに見たな、その服」
「そうですか?」
青のスカートとノースリーブのブラウスに青いリボンをあしらった服装のエルザさん。今日の私の服は七年前にハコベ山に登った時に着ていたピンク色のワンピース。言われてみれば最近全然着てなかったかもしれない。いつものワンピースとはちょっと変えてみたくなったんだよね。
「あら?この時間に部屋から出てくる人多いわね」
「ホントだ~!!」
隣をチョコチョコと歩いているシャルルとセシリーが前方を指さしながらそう言います。私も前を見ると、そこにはお部屋の中に手を振っているジュビアさんがいました。
「おはようございます、ジュビアさん」
彼女にも挨拶すると、ジュビアさんも私たちに気付き、こちらへと歩いてきます。
「皆さん!!おはようございます」
挨拶を返してくれるジュビアさん。いつものように丁寧な言葉使いな彼女だけど、今日はいつにも増して声のトーンが高い気がする。どうしたのかな?
「ずいぶんと上機嫌だな。何かいいことでもあったのか?」
私と同じことに気付いていたエルザさん。質問されたジュビアさんは、どこか恥ずかしそうに頬に手を当てて体を揺すっています。
「いいえ。ただ、ただ・・・今日はジュビアがグレイ様と出会って、413日目の記念日なんです」
一瞬納得してしまいそうになりましたが、すぐにある違和感を覚えた私。413日?
「グレイ様と出会って413日目の記念日!!すごく特別な日なんです!!」
「「「「んん?」」」」
幸せそうな表情のジュビアさん。だけどやっぱり何かがおかしい。そのため、私たち四人は彼女の言葉に反応できないでいます。
「413日目の記念日?」
「ええ!!」
「それ、切りが悪いと思うよ~?」
訝しげな表情のシャルルとセシリーがそう言います。普通記念日って一ヶ月後とか、一年後とかのような印象があるけど、ジュビアさんの言っているものはそのどちらにも当てはまらない気がします。
「413って数字に、何か意味があるの?」
シャルル鋭い!!そっか!!その数字に何か特別な思い出があるから、特別な記念日なんだね!!
「お二人に取って記念の数字とか、出会った日が、4月13日だったりとか!!」
「いいえ。ただ、グレイ様と出会ってから413日目というだけなんです」
きっとそうなんだと思って聞いてみると、あっさりと否定されてしまいました。
「ちなにみに昨日は?」
「412日目の記念日!!」
「明日は?」
「414日目の記念日!!」
ジュビアさんは体からハートのオーラを放出しながら、手帳を取り出します。そこに乗っているカレンダーには、どの日にもハートのマークが描かれていました。
「毎日が記念日です!!」
「「「ははは・・・」」」
前向きと言うかなんというか・・・すごい発想の持ち主であるジュビアさんの言葉に私たちは苦笑いするしかありません。
「素晴らしい!!」
「「「??」」」
ですが、エルザさんだけは違いました。反応に困っている私たちのことなど全く気にしていないようで、幸せそうなジュビアさんの正面に立ち、声をかけます。
「日々をそのように有意義に過ごすことは、大事なことだ。青春は短い。私も見習いたいものだ」
「そ・・・そうですね。一日一日を大切にするジュビアさんは、偉いと思います」
「毎日楽しくてしょうがないんだろうね~」
「幸せな性格よね、ジュビアって」
私とセシリー、シャルルはジュビアさんに感心するエルザさんの天然ぶりに、呆れてしまいましたが、なんとかジュビアさんに称賛の言葉をかけることに成功しました。
「はい!!それはもう・・・グレイ様のおかげで、毎日幸せです!!」
頬を赤らめてクネクネしているジュビアさん。その様子を見ていると、私もシリルと毎日記念日を作った方がいいのではないかと錯覚してしまうから不思議です。
「413日目の記念日か。めでたい。実にめでたいな」
「そうなんです!!」
ついにはお祝いの言葉までかけ始めるエルザさん。私は二人に聞こえないようにと、シャルルとセシリーに耳打ちします。
「エルザさんはとても大人ですね」
「あれは天然っていうのよ」
「バカって読むやつだね~」
きっと心からめでたい日だと思っているであろうエルザさん。なんだか彼女を見ていると、私もそんな風に思えてきます。
「何かお祝いでもするのか?」
「いいえ。ジュビアは今日一日を幸せに過ごせれば、それで満足です」
「それはいかんな」
エルザさんの質問に目を閉じて首を振るジュビアさん。それを聞いた彼女は諭すように言葉を紡いでいきます。
「せっかくの記念日だろ?プレゼントでも渡せば、グレイも喜ぶんじゃないか?」
「ジュビーン!!」
それを聞いた瞬間、ジュビアさんは衝撃を受けたように叫びます。そして、いつものように妄想の中へと入り込んでしまいました。
『グレイ様、記念日のプレゼントです!!』
『オオッ!!嬉しいぜジュビア!!』
リボンをしたプレゼントボックスを手渡されたグレイさんは、嬉しさのあまりそれを投げ捨てジュビアさんを抱き締めます。
『結婚しよう』
『はい!!』
そこから舞台はいきなり二人の結婚式に!!って!!
「「「展開早っ!!」」」
プレゼントを渡したとすぐに結婚するって・・・ジュビアさんの中でのグレイさんのイメージってどうなってるんですか!?さすがに急すぎますよ!!
「素晴らしい考えです!!ジュビア、やってみます!!」
やる気満々な様子のジュビアさん。ですが、すぐに何かに気付き慌て出しました。
「でも!!何をプレゼントすれば!?急には思い付きません!!」
好きな男性へのプレゼント。女友達にあげるプレゼントともまた違いますし、なかなか難しい選択を迫られるかもしれませんよね。私もシリルにヘアバンドあげる時、迷いに迷った末にあれにしましたから。
「ここは女子力が試されるところね」
「女子力・・・」
「グレイくんを振り向かせられるかどうかはここにかかってるよ~」
シャルルとジュビアさん、そしてセシリーがそう言います。先日も女子力対決なんてしてましたけど、最後の種目ってもしかして『好きな男性へのプレゼント』とかだったのかな?そうだったら審査員も判断が難しかったかも・・・
「そう悩まずともよかろう。プレゼントの基本は、相手が喜んでくれるものだ」
「ちなみに、エルザさんの喜ぶものは?」
「無論!!武器や鎧だ」
するとジュビアさんは、グレイさんに武器や鎧をプレゼントした時の妄想をしているようです。
「イマイチイメージと違うような・・・」
「グレイさんは裸になることが多いですし、似合わないかもですね」
「そういう問題?」
「なんか違うような~」
エルザさんと違いグレイさんは鎧や武器は使いません。どちらも氷の造形で作り出せますからね。
「ウェンディは、男の子が喜ぶものはなんだと思いますか?」
「え!?」
今度は私にプレゼントの相談をしてくるジュビアさん。突然のことだった私は変な声を出してしまいました。
「シリルに何をあげればいいかを考えればいいんだ」
私が困っているのを察してくれたエルザさんがアドバイスをくれます。シリルに何をあげれば喜んでくれるかですか・・・
「そういえば・・・」
『ねぇウェンディ!!これどう?』
先日シェリアに水着を買った時、お洋服のお店に入ったシリルが黒と青のジャケットを手にしているのを思い出しました。
『少し大きくない?』
『俺じゃなくてレオンにだよ』
『あ、そういうことか』
お友達になったレオンへのプレゼントととして購入していたジャケット。ファッションは男女共通のお洒落ですし、服のプレゼントなんかいいんじゃないかな?
「お洋服・・・なんてどうですか?」
「あんたさっきと言ってること矛盾してない?」
「グレイくん服脱ぐじゃん」
提案してから気付きました。そういえばグレイさんへのプレゼントを考えていたんでしたね。シリルに置き換えていたからすっかり抜け落ちていました。
「だがジュビアからのプレゼントなら、案外脱ぎ癖が直るかもしれんぞ?」
「本当ですか!?」
恋人からのプレゼント。それなら大切に使いたいしなるべく長く身に付けていたいから、エルザさんの言う通り服を脱ぐのが減るかもしれませんね。ただ、ジュビアさんとしては彼の裸が見れなくなってしまうかもしれないから悩んでいるようでしたが。
「レビィやラキにも聞いてみたらどうだ?さっきカナも食堂にいたぞ」
「せっかく一緒に寮生活してるんですし、いろんな意見を聞くといいと思いますよ」
「そうですね。はい!!ジュビア、やってみます!!」
そういうとジュビアさんはさっそくレビィさんのお部屋へと向かっていきました。どんなプレゼントになるのか、私も気になりますし、シリルにプレゼントする時の参考にできればいいなぁ。
シリルside
「ナツさん、少々聞きたいことがあるのですがいいですか?」
ギルドでお昼ご飯を食べていると、やって来て早々ジュビアさんがすごい勢いで食事を食べているナツさんへと話しかけていました。
「ジュビアさんがグレイさんより先にナツさんに話しかけるなんて珍しいね」
「今グレイさんいないし、丁度いいのかも」
俺の目の前でココアを飲んでいるウェンディがそういう。丁度いいって・・・何がかな?
「もらって嬉しいもの?」
「もちろん食いもん!!」
「オイラは魚!!」
ナツさんの正面で彼の食事の様子を眺めていたルーシィさんがジュビアさんの質問に首をかしげている。聞かれた本人たちは間髪入れずに解答していた。
「グレイ様は魚をあげても喜ばないのでは・・・」
ハッピーの答えに何とも言えないような表情のジュビアさん。
どうやらグレイさんに何かプレゼントをするにあたって、適当な人に何をもらえば嬉しいか聞いて回っているようだ。
「エルフマンさんとガジルくんは?」
「もらって嬉しいもんか。俺なら・・・漢だな!!」
エルフマンさんに聞いた自分がバカだったと言わんばかりのため息をつくジュビアさん。他の人たちも頭を抱えてあきれていた。
「俺は白いスーツとギターだな。赤いバラもあったら完璧だ」
「それなりに似合うような気もしますけど」
ガジルさんは単に歌いたいだけなのでは?と思ってしまう俺。ジュビアさんはその格好をしたグレイさんを想像して少し興奮しているようにも見えますけど。
「でも、ちょっとグレイのイメージじゃないかなぁ」
ルーシィさんにもっともなことを言われ、思い止まったジュビアさん。
「シリルは何をもらえると嬉しいですか?」
すると、今度は俺に質問をしてくるジュビアさん。もらって嬉しいものか・・・
「じーっ」
何がいいか考えていると、ジュビアさんとは反対の方からものすごい視線を感じる。
「ウェンディ?」
その視線を送っているのは正面に座っていたウェンディ。なんかあまりにも真剣すぎて、プレッシャーが半端ないんだが・・・
「あ・・・愛があるものなら何でもいいんじゃないですかね?」
「「真面目か!!」」
答えに困って、そんなことを言ってみるとシャルルとセシリーから突っ込まれてしまう。いきなり聞かれても答えられるわけないじゃん・・・
「でもシリルの意見はいいわね。それだとやっぱり、手作りのものがいいんじゃないかしら?」
「「手作り?」」
カウンターから一連の話を聞いていたミラさんがそう言う。それを聞いたジュビアさんとウェンディは、なるほどといった顔をしていた。
「気持ちを込めるなら、やっぱり手作りが一番よ」
彼女の言う通りだと思う。俺が今つけている赤いヘアバンドはウェンディのお手製なのだが、やっぱり大切な人が自分のために一生懸命作ったものは嬉しいに決まっているもん。
「俺ならやっぱ食いもんだな!!」
「あんたも余計なことを・・・お!!」
「ナツのアイデアいいわね!!」
エルフマンさんとガジルさんが手作りの話で妙なことを口走っていたが、それを聞いているとナツさんが骨付き肉を掲げながらそう言い、ルーシィさんとミラさんがその意見を肯定している。
「そういえば、この間エルザたちも美味しそうなケーキ作ってたわね」
「手作りのケーキ・・・うん!!」
アスカちゃんに俺たちがケーキを作ったことを思い出しているミラさん。ジュビアさんも同じようにケーキを作ろうと考えているみたいだけど、初心者にあれはなかなか厳しいと思うんだけどなぁ・・・
「一人でできるの?」
「えぇ!!大丈夫です!!ジュビア、やってみます!!」
ジュビアさんはそういうと、善は急げとギルドから飛び出していく。やる気満々だな。
「大丈夫かな?ジュビアさん」
「たぶん最初でつまずくと思うよ」
心配そうに彼女の背中を見送るウェンディ。ケーキを作るならクリームを泡立てる動作が出てくるのだが、あれは氷水を入れたボールにクリームを入れたボールを入れ、冷やしながらかき混ぜないとなかなか泡立たないんだ。たぶんそんな知識ジュビアさんにはないだろうし、なかなか厳しい戦いになるような気がする。
それでも「グレイ様のために!!」とかいって、なんとかしちゃうかもね。
それからしばらくして、やっぱりジュビアさんが心配だったのでフェアリーヒルズへと向かうことにした俺たち。
「はああああああ!!」
すると、やはりというべきなのか、フェアリーヒルズから黒い煙が上がっていた。
「うわっ!!やっぱりこうなってる!!」
「早くいきましょう!!」
「そうだね!!」
駆け足でフェアリーヒルズのキッチンへと急ぐ。そこにたどり着くと、エプロンに身を包んだジュビアさんが肩で大きく息をしていた。
「ジュビア!!」
「!!」
ルーシィさんが彼女の名前を叫ぶ。それでジュビアさんは完成したものを誰かに見せたかったらしく、俺たちの方へと出来上がったケーキを見せる。
「ジュビアはやりました!!」
「「「「「やってないやってない」」」」」
生クリームがチョコレートのように変色し、スポンジケーキは薄い緑色の、なんとも言えない色へのなってしまっている。ジュビアさんは自信満々みたいだけど、どう見てもこれはアウトだろ。
「えぇ!?上手に出来てません!?」
「う~ん・・・努力したのはすっごくよくわかるんだけど・・・」
「色がかなりヤバイですし・・・」
「単語の綴りも間違ってますし・・・」
「フルーツがカピカピだし~・・・」
「ヘタ」
シャルルがオブラートに包むことなくドストレートで彼女の心を突き刺す。それを聞いた彼女は、体育座りをして見るからに落ち込んでいた。
「あ!!でも食べてみたら、意外と美味しいかも!!」
「そうだよね!!食べ物は味が一番だもん!!」
なんとか励ます材料が欲しくて出来上がったケーキ(だったもの)から一口分クリームを取り、口の中へと放る俺たち。
「うっ!!」
「~~~!!」
だが次の瞬間!!双方ともに、あまりの味に顔を歪ませる。
「普通の材料しか使ってないんですけど・・・」
「ある種の才能かもね。これはこれで」
「二人とも大丈夫~?」
セシリーが机に突っ伏している俺とウェンディにコップを渡す。中に入っている水を口の中へと流し込み、なんとか甦ることができた。
「どうしましょう・・・別のお料理の方がいいでしょうか?」
「料理はやめとくべきよ」
「グレイくんのためにもね~」
シャルルとセシリーの言う通り、今から新たに料理をジュビアさんに作らせるのは少々勇気がいる。てか隣でルーシィさんがケーキを食べて青ざめてたけど、大丈夫かな?
「ここは私たちが片付けますから、ジュビアさんは他のプレゼントを考えた方が」
「そう言われても、何がいいのか・・・」
失敗を引きずっており、暗くなっているジュビアさん。
「だったら、アクセサリーとか、身に付けるものはどう?」
「こんな感じにいつも付けてれば、あげた人も嬉しいんじゃないですか?」
シャルルがナイスな提案をしてくれるので、俺はヘアバンドを指さしながらそれに乗っかる。それを聞いたジュビアさんは、パッと晴れやかな表情になった。
「あぁ!!なるほど!!ジュビアやってみます!!」
グレイさんのぬいぐるみを抱き締めながら自分の部屋へと走り出すジュビアさん。
「ところでシリルは、それいつも付けてるの?」
ジュビアさんがいなくなった後、片付けをしながらルーシィさんがそんな質問をしてくる。
「風呂入る時と寝るとき以外はずっとつけてますよ」
お風呂に入る時に洗濯してるから、自然と寝る時は乾かすことになるため外すことになっている。やっぱり大切なものだからこそ、大事に使わないといけないと思うんだよね。
「ふ~ん。それで?」
「え?」
俺と話していたはずのルーシィさん。なのに彼女はいつの間にか、ウェンディの方へと体を向けている。
「ウェンディはあれ、どんな気持ちで作ったの?」
「!?」
ニヤニヤしながら聞いてくるルーシィさん。ウェンディは予想だにしなかった問いに、目を白黒させていた。
「どんな気持ちですか・・・」
チラチラとこちらを見ながら考えを巡らせている天竜。彼女は考えが纏まったのか、そっとルーシィさんに耳打ちする。
「へぇ!!ウェンディってば可愛いわね!!」
「そ・・・そんなことないです/////」
左右の人指し指をツンツンと合わせながら恥ずかしそうにしているウェンディ。なんて言ったのか、すごく気になる。
「これ見ていつでも私を思い出してね・・・か」
「きゃああああああ!!/////」
何かをボソボソと呟いたルーシィさん。その刹那、エルザさんの飛翔の鎧顔負けの速度で彼女の口を塞ぐウェンディ。
「ルーシィさん言わないでくださいよ!!」
「ごめんごめん。だってウェンディらしくて可愛いんだもん」
少し下品な笑いをしながら顔面真っ赤になっているウェンディを撫でる星霊魔導士。膨れっ面の天竜はこちらに視線を軽く向け、口を開く。
「今の・・・聞こえてた?」
「残念なことに聞こえてないよ」
ウェンディがどんな想いを込めてこれを作ってくれたのか、もらった本人である俺が聞けなかったなんてやっぱり悔しい。後でルーシィさんから聞いてみようか?いや、でもできるなら本人から聞きたいなぁ。
「あんたたち」
「ちゃんと掃除やってよ~!!」
俺たちが談笑していると、真面目に後片付けをしているシャルルとセシリーが口を尖らせいることに気づく。
「しかしジュビア・・・どんな料理の仕方したらこうなるのかしら?」
「た・・・確かに・・・」
「あははは・・・」
苦笑いするしかない俺たち後片付け組。もしかしたら予想通り泡立たなかった結果、魔法でも使ったのかもしれないな。そんなことを考えながら、ボロボロになったキッチンの清掃をしたのであった。
ジュビアside
「こんな時間になっちゃったけど、グレイ様ギルドにいるかしら?」
シャルルとシリルが身に付けるものと言っていたので、マフラーを編んでみました。きっとグレイ様なら似合うはずです。
そう思いながら彼を探そうとギルドを見回すと、とんでもない光景が目に飛び込んできました。
「ちょっと・・・やめてよナツ」
「いいだろルーシィ。な?な?」
なんとナツさんとルーシィが体を密着させ、ラブラブオーラを出しているのです。
今までそんな素振り見せたことがなかったのに。ジュビアは目を擦りもう一度彼らの方を見ます。
「ホントによく食べるわね?」
「仕事がねぇと他にすることねぇもん」
しかし実際には、ルーシィとナツさんはテーブルを挟んで座っており、イチャイチャしてるようには見えません。
「幻覚?」
ジュビアの見間違えなのでしょうか。なので周りの人もどうなのか見回してみると、今度は唇を重ね合わせているレビィさんとガジルくんが目に映りました。
「ジュビーン!!」
予想だにしなかった光景に驚くことしかできません。しかもそのすぐ隣に座っているエルフマンさんは、エバーグリーンさんと頬を密着させて互いを誉めあっています。
「どこか静かなとこにいこうよ」
「そうね、二人だけでお魚食べましょ」
今度は尻尾でハートを作り、手を握り合わせているハッピーとシャルル。
「ちょ・・・シリル・・・ギルドでこんな・・・」
「いいじゃん。恋人同士なんだし」
さらにその近くでは、ソファにウェンディを押し倒し、鼻と鼻がくっつくくらいまで顔を近づけているシリルがいることに気付きました。
皆さんがラブラブしすぎていてあまりにも不自然に感じたジュビアは、目を凝らして皆さんの方を見ます。すると、先程までの甘い雰囲気から一転し、皆さん普通に談笑していました。
「あ!!ジュビア!!」
「お疲れさま。プレゼントできた?」
「あ、はい!!マフラーを」
ルーシィとレビィさんに、ジュビアが作ったマフラーが入っている紙袋をお見せします。
それにしてもさっきのあれ・・・まさかラブ脳すぎて変な妄想が頭をよぎってしまったのでしょうか。
「グレイなら、結局今日は来なかったわよ」
「自分ちにいるんじゃねぇか?」
「そうですか・・・わかりました。ジュビア、いってきます」
今日はグレイ様はギルドにお見えにならなかったらしいので、ジュビアは彼の自宅までプレゼントを渡しにいくことにしました。グレイ様、喜んでくれるかしら。
次の日・・・シリルside
「すみませんでした、グレイ様。ジュビア・・・何も知らなくて・・・」
グレイさんがギルドにやってきたのと同時に、彼の元へと駆け寄り頭を下げるジュビアさん。何でも昨日は、グレイさんとリオンさんの師匠であるウルさんの命日だったらしく、ジュビアさんが『記念日』と言ったのが彼の心を逆撫でしたらしい。
「いや・・・俺の方こそ少しボーッとしてた。すまん」
しかし、彼は照れ臭そうに彼女に謝罪する。エルザさんから聞いたのだが、グレイさんはジュビアさんから受け取らなかったマフラーを、後で回収して身に付けていたらしい。素直にそう言えばいいのに。
「お詫びといってはなんですが・・・」
そういうとジュビアさんは、どこからか自らの水着の写真がプリントされている大きな枕を取り出し、彼へと押し付ける。
「ジュビアの抱き枕です!!どうぞ!!」
「いるか!!」
いつものテンションに戻ったジュビアさんがグレイさんが受け取るまではと彼に自分の抱き枕を押し付け続ける。
「いらねぇよ!!」
「じゃあ何をプレゼントすればいいんですか?」
互いに抱き枕を相手に押し合っている。もうそこまでするなら、いっそ「自分がプレゼントです!!」の方がグレイさんも諦めるんじゃないか?
「ねぇシリル。あの枕、どう使うの?」
「抱き枕だから、抱き締めて眠るんじゃない?」
ウェンディの質問に想像のまま答える。ただグレイさん的にはジュビアさんが印刷されてるから、抱きにくいといわれればそれまでなんだろうけど。
「やれやれ。ま、毎日が賑やかで結構だ」
「はい!!ジュビア、これからも頑張ります!!」
幸せそうに微笑むジュビアさん。きっと彼女の想いも、いつかグレイさんに届けばいいなと、その場にいる全員が思ったのであった。
後書き
いかがだったでしょうか。
今回の話はジュビアの妄想でシリルとウェンディがいちゃつくところを書きたいがために頑張りました。なのでそこから先の部分はかなり雑です。
次はちょっと遊んでみたくなったため、あることをさせていただこうと思います。本編とは全く関係ないので
あらかじめご了承ください。
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