戦国異伝
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第二百四十八話 魔の島その九
「ここで闇に逃れても闇まで追って来る」
「だからこそですな」
「ここは逃れずに」
「背水の陣で戦う」
「そうされますか」
「一ノ谷で傷を負い過ぎた」
魔界衆自体がというのだ。
「だからじゃ」
「次の戦で何としても」
「織田信長を滅ぼす」
「そうされますか」
「滅ぼすか滅ぼされるか」
老人の声は追い詰められていた、明らかに、。
それを彼自身も感じながらだ、そうして言った。
「どちらかじゃ」
「ですな、最早」
「そうした状況ですな」
「だからこそ次は」
「次の戦では」
「滅ぶか滅ぼされるかだ」
まさにとだ、今も言う老人だった。
「どちらかじゃ、よいな」
「はい、では」
「それではです」
「我等も全て死ぬ気で向かいます」
「退路はないものと考え」
「次の戦では」
「もう逃げる場所もない」
こうも言った老人だった。
「織田信長のことだ、この島を出ればな」
「天下の全てにですな」
「目を光らせ」
「我等の逃げ場所を潰していく」
「そうしてきますな」
「そうじゃ、だからその織田信長と幕府を滅ぼすか」
それか、だとだ。老人も言う。
「我等が滅びるかじゃ」
「では」
「まずは周防か長門に逃げ」
「そして陸と海で」
「そこで戦いましょう」
「我等十二家の者達は海に布陣する」
老人は強い声で棟梁達に告げた。
「そしてそこでじゃ」
「織田信長にですな」
「最後の決戦を挑みましょうぞ」
「瀬戸内の西の海で」
棟梁達も応えてだ、そのうえで。
魔界衆の者達は島から逃げ去った、だが。
その時いだ、明や南蛮の海賊達はだ。
全て置いていった、老人は彼等についてはこう言った。
「あの者達は島でじゃ」
「はい、我等の代わりにですな」
「戦ってもらい」
「そうしてですな」
「時間稼ぎに使うのじゃ、あの者達が逃げてもじゃ」
島からだ、そうしてもというのだ。
「よい」
「ですな」
「あの者達はもう用済みです」
「精々瀬戸内にいてもらい」
「幕府の軍勢の足止めをしてもらいましょう」
「我等が戦の用意をする間」
「織田信長は賊を放ってはおかぬ」
決してというのだ、老人は信長のその気質を呼んでいた。
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