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戦国異伝

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第二百四十八話 魔の島その八

「御前、どうやらです」
「我等のことが気付かれました」
「この島に我等が潜んでいることが」
「残念ながら」
「そうか、しかしな」
 ここで老人は言った。
「敵の数は多いというが」
「実はですか」
「少ないと」
「そう言われますか」
「そうじゃ」
 兵達が騒ぐことと違ってというのだ。
「おそらく忍の者達がそれなりの数で来ているだけでな」
「それに過ぎず」
「それで、ですか」
「数自体は大したことではない」
「そうなのですな」
「そうじゃ、しかしじゃ」
 それでもと言うのだった。
「問題はこの島に我等がおるとわかったことじゃ」
「備前の海にあるこの島のことが」
「かつて鬼ヶ島と言われたこの島のことがですな」
「幕府にわかった」
「そのことがですな」
「今攻めてきた者達を退けてもじゃ」
 例えだ。そうしてもというのだ。
「すぐにまた来る、そしてな」
「織田信長もですな」
「来ますな」
「そしてそうなれば」
「戦どころではありませぬな」
「まず傷は癒えてはおらぬが」
 それでもと言うのだった。
「仕方がない、ここはじゃ」
「島を後にしますか」
「ここは逃げて」
「そのうえで、ですな」
「戦ですな」
「西に逃げるぞ」
 そうするというのだ。
「縮地の術を使ってもな」
「ではその逃げる場所は」
「何処にされますか」
「この島を捨てて」
「何処に」
「周防か長門か」
 老人はこうした国々の名を出した。
「そこに逃げてな」
「そして、ですな」
「戦を挑みますか」
「そうされますか」
「再び」
「そうする、今度はじゃ」
 老人はその目を怒らせてだ、棟梁達に言った。
「勝つぞ」
「今度こそですな」
「我等の全てを使い」
「そのうえで織田信長を滅ぼし」
「勝ちますな」
「傷が癒えてはおらぬ」
 このこともだ、老人は言った。忌々しげに。
「だから次がじゃ」
「はい、最後になりますか」
「最後の戦になりますか」
「ここで我等が敗れれば」
「後は」
「また潜むことになってしまう」
 闇の中、そこにというのだ。
「そして織田信長の政を見るとな」
「我等のことを完全に知っています」
「だから闇に逃れても」
「それでもですな」
「これまでの者達と違い」
「追って来る」
「そうしてきますな」
「だからじゃ」
 それでというのだ。 
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