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銀の煌めき

作者:アイズX
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銀の煌めき 2話 濃霧に紛れて

 
前書き
突然、帝斗と梨桜を襲った謎の濃霧。
梨桜の背後にいた「何か」とは?
展開がすごく急です…。 

 
「誰!?」
 見えない何かに向かって、私はそう叫んだ。
「貴様が、銀の魔法師の末裔か」
 兄のものではない、低い声が聞こえる。その声が聞こえたと思った瞬間、声がした方から、二点の赤い光が現れた。赤い光は、揺らぎながら、ゆっくりと、こちらに近づいてくる。
「銀の魔法師…兄さんも言ってた…」
 そうつぶやいた途端、赤い光を二筋の白い閃光が穿いた。
「ぐっ!」
 先ほどの声が、呻き声をあげた。そして、私の隣に、何かがスタッと着地した。
「梨桜、無事か?」
「兄さん…!」
 赤い光は、跳躍する様に、残光を残しながら、上空に飛び、叫んだ。
「お前か、銀の末裔は!」
「お前に教える義理はない。低級悪魔が」
 帝斗は、そう言い放ち、赤い光よりも高く、跳躍した。そして、背中で十字に差している、二振りの刀を抜刀しつつ、二刀を横に倒し、平行に構え、回転斬りの構えをとる。
「消え失せろ、魔界の使いが!…絶ノ氷塊、ニブルヘイム!」
 帝斗の二刀に水色のオーラが纏い始めた。そして、悪魔に向かって横回転に斬りつけた。
「ぐぉっ!」
 その二刀を悪魔は、大鎌で防いで見せた。だが、持ちこたえられたのもほんの数秒。すぐに鎌は断ち切られ、悪魔もろとも一刀両断にした。
「解放!」
 帝斗がそう唱えると、悪魔の体が内から弾け飛び、その一片一片が、氷の粒となって、飛散した。
「ふぅ、魔結界にいつの間にか、放り込まれてたな」
 帝斗は、刀を鞘に納めて、固有結界に戻した。私は、突然の出来事に困惑していた。
「ねぇ、兄さん。イマイチ状況が掴めないんだけど…」
「だろうな。俺も不意打ち喰らったしな。まさかここが魔結界だと思わなかった」
「??」
 私は首を傾げた。
「あぁ、簡単に説明するとだな…、俺たちは霧の中を歩く途中で、魔結界の入り口に入れられていたみたいなんだ。そして、まんまと悪魔に俺は肩を切り裂かれたんだ。まぁ、あのくらいなら治癒魔法ですぐに完治けどな」
 魔結界、とは悪魔がこの現世の環境に適応した体質に変化させるために一時的に留まる亜空間である。そして、その魔結界に留まる悪魔を討伐するのが、魔法師の役目である。
「なるほどね、私一人だったら悪魔に殺されてたかも。こう言うパターンもあるんだね」
「イレギュラーだけどな。俺もこんなことは初めてだ」
 気がつくと、霧はすっかり晴れていてて、いつもの道に私達はいた。
「じゃあ、学校行こうか」
「そうだね」
 私は、何となく時計を確認する。時刻は7時40分。
「兄さん!時間!」
「え?…うわ、いつの間に!後、10分しかない…急ぐぞ梨桜」
 私は、先に走り出した帝斗を追いかけ始める。
「ま、待って!」
 私達は約5分ほど、全力でダッシュした。


 ***


「はぁ…はぁ…ぎりぎりだな」
「うん、はぁ…はぁ…疲れたぁ」
 電車がくる5分前に駅に到着した。私達は、人の少ない駅を小走りで駆け、切符を買って、改札を潜り、プラットホームに出た。もうその時には電車がくる2分前になっていた。
「いやー、久々に走ったな」
「良かったね、早めに出てて」
 私は、狭いプラットホームに一つだけある、長椅子に腰掛けた。
「この駅ってさ、なんか寂しいよね」
「ん、なにがだ?」
「うーん、何て言うかな…ここさ、錆びれてるし、普通なら出勤ラッシュの時間帯なのに人全然いないしさ」
「まぁな。でも、住めば都ってやつだろ、俺は好きだな。こう言うの」
 帝斗も、私の隣に座った。帝斗は、携帯の画面を少し眺め、その後に何か打ち込んだ。恐らくメールであろう。
「誰から?」
「蒼美から。…あ、まあいいか」
 帝斗が何かを思い出したように言った。
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
「何でもなくないでしょ。…あ、そう言えば、駅で何か買うって言ってなかった?」
「あぁ…。あ、電車きたぞ」
「もぅ、誤魔化さない!」
 先に帝斗が電車に乗る。それを追いかけるように私も乗った。
 やはり車内は、人が少ない。いるのは、同じ学校の生徒が二人、スーツを着た男が一人、黒い、エナメル、とでもいうのだろうかそんな質のフード付きのパーカーを着ている、見た感じ怪しい男が一人。
 とりあえず、兄の隣に私は座った。これは定位置である。
「…で、兄さん。駅で何買おうとしてたの?」
「そんなに気になるか?」
「気になるよ」
「そんなに?」
「そんなに」
「えーと、まぁ、そのだな、蒼美の…」
「ええっ?!」
「まだ、最後まで言ってないんだが」
「言わなくてもわかるよ!」
 私は、周りの迷惑にならない程度にそう言った。
「蒼美さんの、誕生日プレゼントでしょ?」
「よく分かったな」
「バカ兄さん!」
「ば、バカとはなんだ」
「兄さん、誕生日プレゼントに何あげようとしてたの?」
「普通にキーホルダーでも、と思ったんだけど」
「バカバカバカ!」
 私は、帝斗になぜか怒っていた。帝斗は、確かに頭が良いし、魔法師としても優秀である。だがそれに反して、こう言う、常識的なことに関してはこの上なくバカ、である。
「むぅ〜、蒼美さんの誕生日って12月26日だよね?」
「おう、だから学校ある間に渡そうと思って…」
「バカ兄さん! 当日に渡すよ!」
 私は帝斗に詰め寄った。
「しかしなぁ、26日は定例会議があるんだよな」
「そんな毎週あるやつの方が、蒼美さんより大事なの?!」
 私は、珍しい帝斗に心の底から怒っていた。それは、妹としてではなく、一人の乙女として、である。
「わかったよ、どうにかしてその日は空けておくよ。 …で、何を渡すのがベストかな?」
「冬休みの最初の日! ちょっと遠出してなんか買いに行くよ! その日ならいいでしょ!」
 ずいっと、帝斗に迫り、不満度最大の表情でそう言った。
「わ、わかったわかった。そうしよう」
「じゃあ、その日の前にうちの周りの悪魔を片付けておこ!」
「そうだな、留守にしてる間に何かあっても困るしな」
 電車は、気づくと高校前の駅に到着していた。いつ出発したかも気づかなかった。それくらい、帝斗にキレていたのだ。
「もう着いたねー」
「よし、降りるか」
 私と帝斗が立ち上がると、エナメルパーカーの男が、帝斗に近づいてきた。
「………した………だ」
 帝斗に何か一言囁いて、エナメルパーカーの男は電車を降りて行った。私は断片的にしか聞き取れなかった。
「兄さん、知り合い?」
「あぁ、まあな、…おっと、降りるぞ」
 電車が出発しそうだったので、私達はいそいそと降りた。
「あいつ、いや、あの人はアイズ氏だ」
「え、そうだったの?」
 てっきり男と思っていた人は、帝斗の剣の師である、アイズ・ノルタティヴだった。アイズは女性にしては肩幅が広く、身長も高い。フードで長い髪や目元が見えなかったので、全くわからなかった。
「で、アイズさんが、なんて?」
「今日の23時に駅に来い、ってさ。あ、梨桜も来いって」
「え、あ、まぁ明日休みだしいいかな」
 私達は、話しながらもプラットホームから出て、改札を潜り、外に出た。さすがに、ここは社会人や、高校生などが行き交っている。とは言っても、都会とは言い難い人の数ではある。
「兄さん、今日の夜は志倶覇さんに合うんじゃなかったの?」
「ん? まあそうだけど、19時からだし間に合うだろ」
「間に合えばいいけどね」
「志倶覇は話しが長いもんなあ、まあでも今日はそんなに時間取らないって言ってた」
「だったらいいけど」
「おーい、梨桜ちゃーん」
 後ろから、名前を呼ばれた。振り返ると、茶髪で小柄な同級生の姿があった。
「おはよー、神崎さん」
「だーかーらー、真央って呼んでよ〜、みおってさ〜…あ、霧真先輩おはようございます!」
 真央は、帝斗に気づいて挨拶をした。
「おはよう、神崎」
「霧真先輩、冬休みの練習は行けそうですか?」
「あー、行けても29、30、31くらいかな、他の日は難しいと思う。まあ、行ければ行くよ」
「ほんとですか! その時はよろしくお願いします!」
 真央は目を輝かせてそう言った。
 実は帝斗、休み休みではあるが、弓道部に参加していたのだ。そして、どうやらかなりの腕があるとのこと。射法を教えるのも上手く、後輩からはとても慕われている。
「じゃあ、私は先に行ってるね」
「う、うん、じゃあまた後で」
 真央は、そう言うとさっさと駆け出して行った。
「お、蒼美だ。おーい」
帝斗は少し遠くを歩く、一人の女子生徒に声をかけた。
「あ、帝斗くん」
少し、ブルーの入った長い黒髪。背は私より幾分か高いが、アイズほどではなく、帝斗より少し低めというくらい。目も髪と同じ、黒がかった藍色。蒼美は、こちらに駆け寄ってきた。 
 

 
後書き
小説書くのって難しいな…ってつくづく思う。
でも、書けるだけ頑張ります。
( ´ ▽ ` )ノではでは〜♪ 
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