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おぢばにおかえり

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第二十四話 出会いその十一

「阿波野君とはあれで終わりよ。多分もう滅多に会わないわ」
「名前まで知ってるじゃない」
「何よ、本当に手が早いじゃない」
「えっ!?」
 言われてびっくりです。
「初対面でもう名前知ってるの?」
「普通そこまでって」
「ないわよね」
 皆の方が驚いた顔になっています。何でなのか私には全然わかりません。
「どうやってわかったのよ、そんなの」
「まさかとは思うけれどちっちから聞いたとか?」
「まずは私から名乗ってね」
「うわ、大胆」
 本当のことを言っただけなのにいきなりこれでした。
「ちっち、それはないでしょ」
「ねえ」
「ないって?」
「だから。自分から名前言ったのよね」
 このことを確認するようにして私に尋ねてきます。
「その子に」
「そうだけれど。それがどうかしたの?」
「だから。自分で来てって言ってるようなものじゃない」
「言うなら言うでね」
「しかも受けること前提」
「?どういうこと?」
 話が全くわかりません。それで目をぱちぱちとさせて同時に顰めさせて。変わった顔になっちゃいながら皆に聞き返します。
「来てだの言うだの受けるだのって」
「だから。若しその子がちっちのこと好きだとするじゃない」
「ええ」
 何が何なのか全然わからないまま皆の話を聞き続けます。
「名前とか。クラスも言ってるのよね」
「ついでだったし」
 このことも正直に答えました。
「言ったけれど。向こうも」
「向こうもねえ」
「お互いってことはもうやばいわね」
「やばいやばい」
 皆の言葉の意味がさっぱりわかりません。何が言いたいのかも。
「じゃあ。覚悟してなさい」
「積極的な子だったらやばいわよ」
「やばい」
 この言葉の意味もわかりませんでした。
「何でなのよ。さっきから言ってる意味わからないわよ」
「知らぬが何とやらって言うけれど」
「年下の子でも男の子は男の子よ」
 話がどんどん変なふうになっているような。
「油断したらもう後ろからとか」
「いきなりってのが多いわよね、やっぱり」
「相手もね。虎視眈々よ」
「だから。さっきから何言ってるのよ」
 本当に全然わからないので少し苛立ちながら皆にまた尋ねました。
「虎視眈々とか。尋常じゃないじゃない」
「こりゃ駄目だわ」
「鈍過ぎよねえ」
「わかっていたけれど。それでも」
「本当に訳わからないけれどとにかく」
 私もムキになって皆に返しました。
「クラスに案内しただけ。それだけよ」
「まあそう思っているといいわ」
「自分がそれでいいんならね」
「すっごい引っ掛かる言い方なんだけれど」
「気のせい気のせい」
「だから。自分がそれならそれでいいじゃない」
 物凄く引っ掛かる言い方ばかりです。こんな言われ方は今までなかったです。それにしても皆何かがわかってる感じです。私以外は。
「そういうことよ。ところでさ」
「今度は何?」
「今度の担任の先生誰だったっけ」
「あと副担任の人」
「あれっ、そういえば」
 言われるとまだ誰なのか知りません。今言われてそのことにも気付きました。
「誰かしら」
「まあ今までと同じだと思うけれどね」
「そう思うと特に警戒することないわね」
「そうね。それにしても高校生活もあと一年」
 そうです、高校三年生です。泣いても笑っても普通にやっていればこの一年で終わりです。一年の頃はどうなるかって思いましたけれど。
「それで終わりね」
「そうよ。悔いが残らないようにしないとね」
「じゃあこの一年」
「ええ、宜しく」
 変な子に会いましたけれどとにかく高校生活最後の一年がはじまりました。この時はいよいよ、と意気込んでいたのですがそれがすぐに変わることになるとはまだ思いも寄りませんでした。世の中は本当に色々なことがあります。出会いもまたその中にあるようです。いい出会いも悪い出会いも。


第二十四話   完


                           2008・9・10 
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