ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~
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第4章 俺の幼馴染とテロ屋さんが修羅場すぎる!
第63話 wolf
前書き
一年半ぶりの本編です。
ではどうぞ。
イッセーの家を出発後、お兄様とグレイフィア、そして私達オカルト研究部部員が火織達に連れられて来た場所、火織の言うところの"血沸き肉踊る狩場"は……
「……スーパー?」
今や日本国内であればどこにでも、この駒王町にもいくつかあるスーパーマーケットの1つだった。
「この時間ではもうまともに食材は残っていないと言っていなかったかしら?」
私達の疑問もそのままにスーパーに入店した火織たちは、かごも持たずズンズンと店の奥に進んで行き、私達はただ着いて行くしかなかった。
「えぇ、買うのは食材ではないですよ?」
「まぁもうすぐ分かるんでこのまま着いて来て下さい」
と、イッセーに言われればもうそれに従うしか無いのだけれど、何かしら? イッセーと火織、更にその前を歩く黒歌たちからも一様にワクワクしているような雰囲気を感じるのだけれど? それに……
「……ねぇ朱乃、気付いてる?」
「えぇリアス、何と言いますか……ただのスーパーとは思えないくらい殺伐とした空気を感じますわ」
そうなのよ。なんというか、こう……周りの客がどうにも殺気を放っているようにしか感じないわ。さらにその空気は店の奥に行けば行くほど強くなっているような……。そして何よりも気になるのは時折こちらを見る同年代くらいのお客が目を見開いて驚いたり、苦みばしったような顔をして囁くのよね。
「まさかあれは………………"変態"!?」
「"断頭台"もいるぞ!」
「"黒猫"に"白猫"、それに"無限要塞"まで……全員勢揃いじゃないか!」
「最近顔を見せないと思ったが……引退したんじゃなかったのか!?」
「クソッ、今夜はツイてねぇ」
「これは激戦だな……」
い、一体何なのかしら? 何やら不穏な言葉までちらほら聞こえたような気がしたのだけれど……。
「着いた。ここにゃ」
そうこうしている間に立ち止まる先頭の黒歌。私達が立ち止まったのは陳列棚の端っこ、そしてそこを少し抜けた先はほんの少し開けていて、その奥には……
「お弁当?」
どのスーパーにもよく売っているであろうお弁当、それも時間を考えれば売れ残りであろうお弁当が幾つかだけ残っていた。
「残りは……10個ありますね」
「お寿司のパックも2つ残ってるぜ」
「ん、それだと2個足りない」
「一応お惣菜もちょっと残ってるし、全部集めれば2人分くらいにはなるんじゃない?」
「にゃ~、じゃあ後でパックのお米も買わにゃきゃね」
え~と、つまり……売れ残りのお弁当を買いに来たの? "血沸き肉踊る狩場"なんて言うから一体どんな恐ろしい場所に連れて来られたのかと思いきや……
「あなた達が大袈裟に言うから何かと思えば、ただの普通のお弁当じゃない」
私はなんだか気が抜けながらも、こういったスーパーのお弁当もたまにはいいわね、と思いながら何故か立ち止まっているイッセーたちを追い越し、お弁当やお惣菜のコーナーへと向かおうと陳列棚の間から一歩足を踏み出す。でもその一歩を出した途端
「待つにゃ、部長」
何故か黒歌に腕を掴まれて止められてしまった。
「どうし……っ!?」
一体どうしたのかと黒歌の方へ振り向くと同時に、私はようやくその異常な状況に気が付いた。陳列棚から一歩出たからこそ見えた光景。お弁当コーナーの前の広場に面した陳列棚、その全てに私達同様に立ち止まっているお客さんがいた!
そして私はそこで驚くべきことがもう1つあった。私や朱乃、それに黒歌は学校で駒王学園の三大お姉さま等と言われていることもあり、男性から悪感情を向けられるということは殆ど無い。……代わりに下心満載の不快な感情は向けられることもあって男性があまり好きではなかったのだけれど。まぁその話は置いておいて悪感情、つまり敵意や悪意は日常生活においては女生徒の嫉妬などの感情しか向けられたことがなかった。
それがどうだろう。一歩踏み出した私に向けて周りが殺気紛いの敵意を持った視線を向けてきた!
「い、一体何なの!?」
敵として相対した堕天使などならまだしも、何も知らない一般人にここまでの敵意を向けられる覚えは流石にないのだけれど!?
「ん、すぐ分かる」
「もうすぐ時間ですしね」
「部長、とりあえず今は俺達の後ろにいてください」
「え、えぇ、そうさせてもらうわ」
い、一体何なのかしら? 正直一般人の放てる殺気ではないように思えるのだけれど。と、そこでお弁当コーナーのすぐ近く、関係者通用口からエプロンをかけた1人の男性が出てきた。彼は?
「店長にゃ」
「店長!?」
っていうかちょっと待って!? 普通のお客は店長の顔なんて知らないと思うのだけれど!? なんで黒歌はそんな事を即答できるの!?
「始まるな」
「皆準備はいい?」
「バッチリです」
「みなぎってきた」
「いっちょやりますか」
え!? 何!? どういうこと!?
私はもとよりこの子たち以外全員が混乱する中店長さんは弁当の元へと歩み寄り…………え? あれは半額シール? 店長はただ残っていたお弁当やお惣菜に半額シールをペタペタと貼っていったわ。そしてその半額シールが貼られるのに合わせて、周りから立ち上るえも言われぬ雰囲気も増大しているように感じる。一体、何が始まるというの…………?
そして半額シールを貼り終えた店長は満足気に1回頷くと、そのまま入ってきた通用口から出て行った。そしてその通用口が閉まった…………瞬間!
『『『うぉぉぉおおおっっ!!!』』』
「えぇっ!?!?」
「きゃあっ!?」
「何!? 何なの!?」
ものすごい雄叫びとともに客が一斉にお弁当に向けて飛び出した! しかもその中にはイッセーたちの姿も!
「血沸き肉踊る狩場ってこういうこと!?」
つまり火織たちの言っていたのはこの半額弁当の早い者勝ち競争だったのね!? …………と思っていた私はまだまだ火織の言っていたことの意味を理解していなかった。
火織たち先頭集団が広場の中心付近に辿り着いた…………その時!
「らぁっ!!」
「せいっ!」
「「ぐぎゃあっ!?」」
『『『えぇぇっ!?』』』
イッセーと火織が並走していた客を殴り飛ばした!?
「何してるのあの子たち!?」
と驚いたのだけれど、そこからさらに驚くべき光景が! 殴られた2人はまるで何事もなかったかのように立ち上がり、またお弁当に向かってダッシュしていった! っていうよりあの2人に殴られて何事もなかったかのようにってどういうこと!?
さらに状況は続き、いち早くお弁当まで辿り着いた黒歌、龍巳、白音はそのまま反転、三方に別れた。龍巳はお弁当の前でまるでお弁当を守るかのように腕を組んで仁王立ちし、黒歌と白音は突っ込んでくるお客さんたちの前に立ち塞がると……
「うりゃあっ!!」
「えいっ!」
『『『ぐぁぁああっ!!』』』
押し寄せるお客さんたちを吹き飛ばした! 更にそこに遅れていた火織とイッセーも合流し、一番奥に龍巳、そしてその周りに他の4人が配置し、他のお客からお弁当を守るかのように布陣した。
「ちっ、先越されたか……」
「おら、お前たちの勝ちでいいからさっさと取ってそこどきな」
と、彼女達を囲む他のお客たちが殺気立ちながらどくように促す。けれど……
「悪いけどそういう訳にはいかないのよね」
「あ?」
「ごめんねぇ、今日うちお客さんがいっぱいいるからここどけないのよぉ」
「ですからここのお弁当は全部私達が頂きます」
と言う黒歌と白音。けれど周りは当然そんなことに納得できるはずもなく……
「ふっざけんなぁ!」
「流石にそれはマナー違反だろ!」
と、まぁそうなるわよね……。
「もちろん分かってるさ、そんなこと。掟を破るつもりはねぇさ。けどよ」
「ここにいる全員、ぶちのめせば我ら総取り」
その言葉にシンとなる一同。そして
『『『上等だぁっ!!』』』
一斉に全員がイッセーたちに襲いかかった! そこからはまさに大乱闘、火織たちが圧倒的に優勢とはいえ、他の人達も一歩も引かない! というよりあの娘たちに殴り飛ばされたりしてもすぐに復活して立ち上がるって、人間の体でそれはおかしいのではないかしら!?
と、そこで……
「どすこーーーい!!」
「「ぐわぁぁぁあああっ!?」」
お、お相撲取りが乱闘に突撃してきた!?
「ダ、"ダンプ"が現れたぞ!」
「に、逃げぎゃぁぁああ!?!?」
「くそうっ! 大学の相撲部はやはり伊達じゃないってか!?」
あ、あんな人まで半額のお弁当を求めてやってくるというの? しかも敵わないと皆逃げ出す始末。と、そんな彼に突撃していく2人!
「イッセー!」
「了解!」
突っ込んでいったのはイッセーと火織! そのままイッセーは"ダンプ"という名らしき彼に組み付き
「ふんがぁぁああっっ!!」
"ダンプ"の突撃を止めた!? そして
「ナイス、イッセー!」
高く飛び上がった火織が空中で一回転したかと思うと、そのまま強力なかかと落としを"ダンプ"の肩に見舞った!
「無念で……ごわす…………」
ズズゥゥンと地響きを上げ、白目をむいて倒れ込む"ダンプ"。その姿に
「"断頭台"……」
と誰かが呟いた。って火織、もしかして以前から頻繁にあんなことをしていたから"断頭台"なんて名付けられていたのかしら……?
「なるほど……」
とそこで、お兄様がつぶやいた。
「まさかこのような趣旨の催しがあるとは、まだまだ人間界も奥が深いね。実に面白そうではないか」
そしてそのまま……乱闘へと足を向けた!?
「お、お兄様!?」
私の声ににっこり笑顔で振り返るお兄様。けれどその足は止まることなく、ついには乱闘現場に足を踏み入れた。そしてそんなお兄様に突き刺さる数々の視線!
「おいおい兄ちゃん、ここはあんたみたいな奴が来る所じゃねぇぜ!」
「怪我しねぇうちにさっさと帰りな!」
乱闘を繰り広げていた彼らのうちの何人かがお兄さまに気付き、威嚇する。けれどお兄様は
「実は彼女たちの言う客には私も含まれていてね。任せきりというのも何だからこうして出てきたんだ。私も仲間に入れてくれるかい?」
と朗らかに話しかけた。そしてそれを聞いた彼らは一瞬顔を見合わせると
「そういうことなら!」
「くたばれやぁ!!」
お兄様に殴りかかった!! と思った瞬間……ドサッと彼らが宙を舞い、崩れ落ちた。一体何が……
「い、今のは空気投げ!?」
「馬鹿な!? あの二人が一瞬で!?」
「なにもんだあの兄ちゃん!?」
一瞬の静寂の後、辺りは騒然とした。というか、空気投げ? 彼らはお兄様が何をしたか見えていたというの? 悪魔の動体視力を持つ私でも何をしたか分からなかったというのに。
「おいおい、やべぇぞこの兄ちゃん!」
「だが後ろがガラ空きだぎゃぁぁぁあああっっ!?」
そんなお兄様の後ろには
「サーゼクス様、いきなり飛び出されては使用人の私としては困ります」
「おや、グレイフィア」
いつの間にかグレイフィアがお兄さまと背中合わせに!? 一体いつの間に!?
「何っ!? メイド!?」
「メイドさんだと!?」
「しかもあれ、どう見てもコスプレなんかじゃねぇぞ!?」
「じゃああの兄ちゃん、どこぞのボンボンかよ!?」
「あんな美人メイド連れた金持ちイケメンクソリア充がなんでこの場に来てんだよ!? くっそォッ! 囲んで潰しちまえ!!」
その言葉に同調した、この場にいた内のおよそ半数の彼らはお兄様とグレイフィアを囲んでしまった! た、助けに行くべきかしら!? でも……
「ふふ、グレイフィア、昔を思い出さないかい?」
「はて、あの頃は私もあちら側にいたように記憶していますが?」
「そう言えばそうだったね。出会った時のこと、覚えているかい?」
「忘れるわけがないでしょう。死闘の末に対峙した私の腕を掴んで強引に抱きしめてきたのですから」
「いやぁ、あの時のグレイフィアは顔を真っ赤にして可愛かったなぁ」
お、お兄様……あれだけの嫉妬の嵐の中で惚気けだしたわ。……助けに入る必要ないわね、うん。
そしてそんなお兄様たちの姿を見せつけられた彼らは
『『『やっちまえぇっ!!!』』』
『『『うぉぉぉおおおっっっ!!!!』』』
あぁ、なんかお弁当争奪戦とは別の乱闘が始まってしまったわ。さらに
「イリナ! この際だ!」
「えぇ! 私達も自分の夕飯は自分たちで確保しましょ! さあっ! 道を開けなさい! アーメン!!」
イリナとゼノヴィアまで!? それに祐斗までもいつの間にか乱闘の中に!?
「うふふ、それでどうしますか、リアス? 私達も行きます?」
「流石にあの中に行くのは……それに私達まで行ってしまったらアーシアだけ取り残されることに……ってあら? アーシアは?」
「あらあら、アーシアちゃんならあそこですわよ?」
「え?」
その言葉に朱乃の指す方向を見やれば……乱闘場を大きく迂回してコソコソとお弁当に近寄ろうとするレイナーレとアーシアが! 祐斗といいあの娘達といい本当にいつの間に!? でもあそこまで近付けばコソコソしてようと流石に……
「おい! コソコソと近付いてる奴らがいるぞ!」
「何ぃ!? 戦わずして奪取しようとするとは、この卑怯者め!」
「ひぅぅっ!? 夕麻さん! やっぱり気付かれちゃいましたぁ!」
「ひぃっ!? お、お願いします! 見逃してください!」
「「うっ……」」
アーシアとレイナーレの涙目上目遣い。なるほど、そういう方法もあるのね、と一瞬思ったのだけれど……
「隙ありぃっ!!」
「「げぼあっ!?」」
……レイナーレの拳が2人の股間に吸い込まれるように直撃したわ。
「ほら行くわよアーシア!」
「ひぁっ!? あ、あの夕麻さん! お2人とも白目向いて泡吹いてますけど!?」
「いいのよあんなの! 放っときなさい!」
「でもあの! なんか危ない感じに痙攣して!」
「そのまま不能にでもなれば万々歳じゃない!!」
そんなやり取りをしつつアーシアの手を掴んで駆け出すレイナーレ。そして……
「あのアマぁっ!」
「あいつらを逃がすなぁっ!!」
「ひぃぃっ!? 夕麻さん! なんかいっぱい来ちゃいましたぁっ!」
「ああもうっ! こんなかわいい美少女2人を大の男が追いかけ回すんじゃないわよこの卑怯者!!」
『『『てめぇが言うなぁっ!!』』』
「きゃぁっ!? 来るな寄るな痴漢変態強○魔ぁっ!!」
「イリナ! アーシアが!」
「あぁっ!? アーシアさんを巻き込むなんて夕麻さん何やってるのよ!? 行くわよゼノヴィア!!」
「あぁ!! 待ってろアーシア、今助ける!!」
そのままイリナ、ゼノヴィア、レイナーレはアーシアを守りつつ乱闘開始。っていつの間にか参加していないのって私と朱乃だけ?
「うふふ……で、どうするのリアス?」
どうするって………………
「もうっ! ここで行かなかったら私だけノリが悪いみたいじゃない!」
「あらあら」
朱乃の微笑ましいそうな眼差しを振り切り、私は半分自棄糞で乱闘現場へと突っ込んだ。
「ありがとうございました~!」
「はぁ………………疲れた」
あれからおおよそ30分。無事に食料は確保できたけれど………………正直もう疲労困憊よ。肉体的にはそうでもないのだけれど、なんだか精神的にとてつもなく疲れたわ。……そもそも女の子の顔面に向かって本気で殴りかかってくるって人としてどうなのかしら。
「いやぁ~、久しぶりだったけどやっぱ楽しかったな!」
一方でイッセーや火織をはじめとした神裂家の面々はいかにも充実した時間を過ごした! と言わんばかりの晴れやかな笑顔。あれだけ動いてなんであんなに元気なのかしら? と、そこで
「あ、そういえば今日の月桂冠って誰取ったの?」
『『『月桂冠?』』』
火織の言葉に疑問の声を上げる私達。月桂冠って確かお酒の名前ではなかったかしら?
「月桂冠っていうのはね、その日の半額弁当の中で最も出来のいいやつのことにゃ。半額シールに描かれた月桂樹の葉が目印ね」
その黒歌の言葉を聞いて、皆それぞれ持ったスーパーの袋を覗き込む。私も自分の袋の中、エビマヨ・五目ごはん弁当に貼られたシールを見てみるけれど、そこに月桂樹の葉は描かれていなかった。……というより、そもそもスーパーの裏でパートのおばさま方が一気に作ったであろう、もしくは工場で大量に作ったであろうお弁当に、良し悪しなんてあるのかしら?
「そういや俺はガッツリ食べたくて月桂冠とか関係なく唐揚げ弁当取っちまったな」
「私も特に考えずなんとなくお寿司取っちゃったわね。龍巳は?」
「我見た時もうなかった」
「私も見てませんね。黒歌姉様ですか?」
「うんにゃ、私は一番最後に取ったし。一番幸運そうなアーシアとか?」
「わ、私はそんな幸運だなんて……それに私も違いますよ? 私とレイナーレさんはお惣菜取りましたし……」
「食い意地張ってるゼノヴィアなんじゃない?」
「私はそんな食い意地など張っていないぞレイナーレ! むしろこういう時は誰よりもちゃっかりしているイリナなんじゃないか?」
「ってそれどういう意味よゼノヴィア!?」
「あはは……。僕も違いますけど、朱乃さんはどうですか?」
「私も違いますわ」
「私も違うし……ではもしかしてお兄さま?」
「残念ながら私も外れのようだ。となると……」
そこでようやく私達の視線は最後の、まだ申告していない彼女、グレイフィアへと向いた。そしてそのグレイフィアはというと……
「ふ……皆さま、まだまだですね」
ピッと月桂樹の葉が描かれた半額シールを私達の前に掲げた!
「あれ!? っていうかグレイフィアさん、最初に弁当取ってませんでした!?」
「にゃっ!? 月桂冠のこと知ってたの!?」
その言葉に驚愕する私達! でも確かに、先ほどのセリフは意図して月桂冠を取ったと言わんばかりだったわ! でもなぜグレイフィアがそんなことを知っていたの!?
「1つだけシールの模様が違っていましたので。これは何かあるとすぐに察せました」
『『『グレイフィアさんマジパネェ!』』』
グレイフィアの心なしかドヤ顔の返答に対して驚愕を露わにする神裂家の面々。でも私は少々別の感情が沸き起こりつつあった。それは……
我がグレモリー家のメイドにして冥界最強の女性悪魔、そして四大魔王の一角であるルシファー様の女王、そして私のお義姉様であるグレイフィアが神裂家に毒されつつあるようにしか感じられない件について……
☆
スーパーを出た後私たちはそのまま近所のちょっとした高台、そこにある公園に来ていた。こっからの夜景は結構良くて、今日みたいな日はだいたいここのベンチで夜景を見ながら食べることになったのよね。最初に言い出したのは黒姉だったっけ?
で、今現在はというと
「はふはふ……おいしいですぅっ!」
「本当! 残り物の半額弁当なのになんで!?」
感嘆の声を上げるアーシアと疑問の声を上げる部長。他のみんなも似たり寄ったりな表情をしていた。一方の私やイッセーなどは、私達も最初はそうだったよなぁ~と感慨深くなっていた。
「ねぇねぇイッセーくん? これ普通のお弁当のはずよね? なんでこんなに美味しく感じるの?」
「あぁ、それはなイリナ……」
そこで言葉を切り、溜めるイッセーに対して固唾を呑む面々。そして満を持してイッセーが発した言葉は!
「実はスーパー側が売れ残った弁当を捌ききるために弁当にやばい薬を混ぜてるんだ」
『『『ブフォォッ!!』』』
「こらっ」
「もったいない事しにゃいの」
「痛っ」
イッセーの両側にいた私と黒姉でイッセーの後頭部をペシリと叩く。冗談としては質悪すぎよ。皆口の中のもの吹き出しちゃったじゃない。全くこの子は……。
「言っときますけど今のは冗談ですからね?」
「そ、そうよね。冗談よね」
部長を筆頭に安堵の息を吐く面々。……結構本気にしてたっぽいけど、冗談に聞こえないくらいおいしく感じるってことなのかな?
「それで火織、実際に美味しい理由って……?」
「味自体は普通の市販のお弁当と変わらないはずです。ただおいしく感じるのだとすればそれは……」
『『『それは?』』』
私はふふっ、と微笑んで興味津々な皆を見回してその言葉を口にした。
「あの激しい競争の中自分の力で勝ち取った食べ物だからですよ」
その言葉で皆は納得したのか、うふふ、あはは、と和やかな空気が流れた。実際これって真理だと思うのよね。実際ただ降って湧いた幸運よりも努力の末得られた結果のほうが何十倍も嬉しいものだし。
と、そんなことを思いつつ和やかに食事が進んでいた………………その時!
「……な、何やってるんだテメェら、こんな所で?」
「え?」
「……なぁっ!?」
「……おや、これは珍しい客人だ」
なんとそこに居たのは!
「あ、アザゼル様ぁっ!?」
叫ぶと同時、ズビシィッ!! と直立不動になるレイナーレ。そう、彼女の言葉通りそこにはチョイ悪オヤジ風な相貌に浴衣、そして手からは湯気を上げているカップ麺を持った堕天使総督が、そしてその後ろには私達と同年代の銀髪の男の子が居た。
後書き
次回予告
「知らかなかった。紙粘土で英会話なんて……やはり日本の文化は進んでいるな!」
「俺は最初からラーメン一択だ」
「ん、これ、巻きグs……」
「なんか、聞いてたのと違うっていうか……愉快なお姉さんだね」
「憂鬱だわ」
次回、第64話 魂の咆哮
「離して火織! 私には大切な使命が! 白音! 白音ェッ!!」
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