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ロックマンゼロ~救世主達~

作者:setuna
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最終話

 
前書き
ラグナロクの崩壊に巻き込まれたゼロ達。 

 
バイルを倒し、穏やかな気持ち最期を迎えたゼロ達。

しかし目を開いた直後、不思議な空間にいることに気付いた。

「ここは…?」

「どうやら、僕達の魂はサイバー空間に流れ着いたらしいね…悪運が強いね僕達」

「えっと…つまり、サイバーエルフになっちゃったの?私達?どこも違和感ないけど…」

「サイバー空間ではボディを持っていた時と同じ感覚で動かせるんだ。向こうでは少し勝手が違うけれど」

「ふ~ん…」

「(それにしても、まさかまたサイバーエルフの状態でサイバー空間に来れるなんて……偶然とは考えにくい。まさかあの人が…それしか考えられないな…)」

「どうしたエックス?」

考え事をしているエックスに気付いたゼロが尋ねてきた。

「え?あ、ごめん。まさかまたサイバーエルフになるなんて思わなかったからさ」

エックスの言葉の意味を理解したルインは苦笑した。

「あはは、まあ、またボディを失った状態になるなんて普通は思わない…よね…」

「貴重な経験だな」

「うん、まあ…そうだね」

苦笑するエックス。

それとルインはようやく思い出したのか、慌てて二人に振り返った。

「帰らなきゃ!!」

「「?」」

疑問符を浮かべる二人にルインはムスッとした表情で二人…特にゼロを睨みつける。

「シエル達の所だよ!帰ってきてって言われてるじゃない!あれからどれだけ時間が過ぎたかは分からないけれど、女の子を待たせるのは良くないよ!特にゼロ!!」

「そんなことを俺に言ってどうしようって言うんだ?」

「どうしようじゃない!早く帰るよ!!」

「どうやってサイバー空間から出るんだ?」

今更だが、サイバー空間から向こうの世界にどうやって行けばいいのだ。

以前もサイバー空間への行き来はしていたが、それはボディを持った状態であり、サイバーエルフの状態では勝手が違うだろう。

「え、えっと…気合いで!!」

「出来るか」

無茶なことを言うルインにゼロの静かなツッコミが下った。

「大丈夫だよ、行きたいと思う場所をイメージすれば行ける」

「そうなの?流石に経験者は違うね」

よくよく考えてみれば、コピーエックスが統治者として君臨した時からサイバーエルフとして行動していたはずだ。

自分達とはサイバーエルフの生活の年季が違うだろう。

「良い経験かどうかは置いといてね」

そのまま三人はサイバー空間から溶けるようにいなくなった。

ゼロ達がラグナロクのエリア・ゼロへの落下を阻止してから、数年の年月が経ち、人間の集落はあの頃よりも人間もレプリロイドの数も増えてすっかり様変わりしていた。

ネオ・アルカディア跡地の惨事も次第に人々の記憶から薄れてゆき、ベビーブームの真っ只中となった今、誰もが嬉しくも多忙な日々を送っている。

人間の集落付近では、ここら辺の手強いイレギュラーはいないと判断したハルピュイア達がエリア・ゼロの外のイレギュラー掃討に向かおうとしていた。

「そっかー、君達も行くんだね」

「ああ、ここ周辺のイレギュラーは掃討したが、ここ以外にもイレギュラーはいる。生活圏を広げるためにも、イレギュラーは掃討しなくてはならない」

「ハルピュイア君達もいなくなっちゃうなんて寂しくなるね」

「たまには様子を見に来るわよ。お母さんが守った場所だもの」

「そう、気をつけるんだよ(あの三人はまだ来ないのかな?)。」

負ったダメージも完全に癒えたはずだ。

それなのに来ないということはまだ手間取っているのだろうか?

「気をつけてね」

アリアの隣では今でもゼロ達の帰りを待っているシエル。

ハルピュイア達が集落を後にしようとした時であった。

「待って!お願いだから待って!!」

「(やっと来たか………)」

安堵の溜め息を吐き、振り返ると三つの光球。

それは人型の形になり、自分達を見つめていた。

「ゼロ……」

「久しぶりだなセルヴォ…遅くなったな……シエル」

「あ…あ…」

ゼロの姿を見てシエルは涙を流しながら駆け寄る。

よろめきそうになってもシエルは必死に走り続ける。

しかし感動し過ぎて大事なことをシエルは忘れていた。

「ゼロ!!」

抱きつこうとしたが、両腕が空振りして体はゼロをすり抜け、勢い良く地面に倒れ込み、勢いのせいか少し前に滑る。

「「プッ」」

シエルの豪快なスライディングを見て思わず吹き出してしまったアリアとレヴィアタン。

アルエットは慌ててシエルに駆け寄る。

「大丈夫、シエルお姉ちゃん?」

「い、痛たたた…だ、大丈夫よアルエット」

擦りむいた鼻を押さえながら、シエルはゆっくりと立ち上がる。

「サイバーエルフって触れないの?」

「基本的に人間は特殊な装備がなければサイバーエルフに触れないよ」

シエルのスライディングを見たルインの疑問に苦笑しながら言うエックス。

「おい、豪快にぶっ倒れてたぜ。大丈夫かよ?」

「う、うん…少し擦りむいただけだから大丈夫よファーブニル…それにしてもゼロもルインもエックスも…二年も待たせるなんて…」

「二年?」

「こっちじゃあ、そんなに時間が経っていたの?」

つい最近のことかと思っていたのにこちらでは二年の年月が過ぎていた。

恐らく傷付いた三人の魂が癒えるまで時間がかかったのだろう。

「言われてみれば…シエル、お前とアリアは背が高くなっているな……。」

「ああ、本当だ。アリアさんなんて化粧してるよ」

「これでも、見た目には気を遣ってるんだよ、それにしてもお帰り。」

腰に手を当てながら微笑むと、帰ってきたゼロ達に言うアリア。

「はい、ただいま戻りました」

「シエル…約束は果たしたぞ…」

「ええ…お帰りなさい…ゼロ。」

涙を流しながらも微笑むシエルはとても美しかった。

しばらくシエル達と会話をした後、ルインとエックスはハルピュイア達の元に向かう。

「すまない、久しぶりだからつい話しこんでしまったよ」

「いや、別に謝らなくてもいいんだぜエックス様?」

「ええ、別に気にしてませんわ。それにしてもお母さん、その格好は…」

ルインの姿を改めて見るレヴィアタン。

今のルインは見慣れたアーマーではなく、エックスが着ているローブの色違いを着ていたのだ。

「えへへ…エックスの着ていたローブをイメージしてみたんだよ。似合うかな?」

「ええ、勿論似合うわよお母さん。エックス様とのお揃い」

ルインとレヴィアタンが会話に華を咲かせる中、エックスはハルピュイアと会話をしていた。

「ハルピュイア。僕達はボディを失い、この世界に英雄と呼ばれる存在はいなくなった。今の僕達はただのサイバーエルフ。そして、かつての理想郷、ネオ・アルカディアも無くなった。これからは君達が新しい世界を築いていくんだ」

「はい、それではエックス様、母上。我々はこれで」

「うん、気をつけてね。私もエックスも君達の傍にいてあげられないけれど…」

「いいえ、例え住むべき世界が違おうとも、俺達の心はあなた方の傍にいます」

これからハルピュイア、レヴィアタン、ファーブニルの三人はエックスの意志を継いで、人間とレプリロイドを守るために旅に出るのだ。

レプリロイドが存在する限り、イレギュラーは必ず発生するから。

「ハルピュイア…うん、そうだね」

「ファントム、彼らに何か言うことはないかい?」

エックスが後ろを振り向くと、そこには確かにファントムの姿があった。

「ファントム……」

「久しいなハルピュイア…」

「ああ、エリアX以来だな」

久しぶりの再会のためか、普段は無表情であるファントムの口元に笑みが浮かんでいる。

「ハルピュイア、レヴィアタン、ファーブニル。お主らにはエックス様と母上の加護がある。そして拙者もお主らのことを見守っておるぞ」

「ファントム…」

「へっ…」

笑みを浮かべるレヴィアタンとファーブニル。

息子達の穏やかな会話にルインとエックスも穏やかな表情だ。

「拙者はお主らと共に同じ時間を過ごし、戦えたことを誇りに思う」

それだけを言うと、ファントムは静かにサイバー空間へ去っていった。

「頑張って」

「私達、サイバー空間でずっとずっとハルピュイア達を見守ってるからね!!」

エックスとルインはゼロの方に視線を遣ると、ゆっくりとサイバー空間へと帰っていった。

それを見つめていたハルピュイアの背中をレヴィアタンが力一杯叩く。

「っ!な、何をする!!」

「何、湿っぽい顔してんのよキザ坊や。何も永遠の別れって訳じゃないでしょ?心配性なエックス様…もうこの呼び方じゃない方がいいわね…お父さんとお母さんのことだから時々この世界の様子を見に来るだろうし、私達だっていつか死んでサイバー空間に行くことになるんだから、その時はお父さんとお母さんに思いっきり甘えなさいよキ・ザ・ぼ・う・や」

「でもよ、本格的にエックス様…じゃねえや、親父…は何か違うな…父さんとお袋に会うのには死ななきゃいけないってのがどーもな…」

頭を掻きながら言うファーブニルの言葉に、ハルピュイアとレヴィアタンが苦笑する。

「そろそろ行くぞ、予定より大分遅れた」

「ええ」

「おう」

ハルピュイア、レヴィアタン、ファーブニルはそのまま人間の集落を後にした。

そしてハルピュイア達が去っていくのを見たアリアはゼロに尋ねる。

「それで?ゼロ君はこれからどうするの?」

「しばらくはゆっくり過ごすのも悪くない。時折、この世界の様子を見に来ようと考えている。サイバーエルフの力さえ酷使しなければ、普通のサイバーエルフくらいには生きていられるはずだ」

「そっかあ、じゃあ…次にゼロ君が来る時まで、もっと集落を豊かにして、人間とレプリロイドを共存を進めないといけないね」

「ええ、ゼロ。サイバー空間で見ていて。みんなを絶対に幸せにしてみせるわ、人間とレプリロイドが手を取り合えるような、平和な世界を見せてあげる。」

「ああ…」

「それと…」

「?」

疑問符を浮かべるゼロに、シエルは赤面しながら俯いて、少しの間を置いて口を開く。

「時々でもいいから、私にも会いに来てくれない?そして…その…デ、デートとか……」

「ワオッ!!?シエルちゃん積極的ぃ!!まあ、でもゼロ君はニブいから多少積極的じゃないとね」

アリアの言う通り、ゼロの場合は積極的に行動しないと分かってもらえない。

叶わない恋なら、このまま仲間のままでいいと思わないわけでもないが、しかし弱気になっていては何にもならない。

可能性があるなら、諦めずそれに賭けるべきだ。

いつだって自分はそうだった。

「…………そろそろサイバー空間に戻らせてもらう」

「は?ゼロ君、返事は?」

シエルの言葉に返事をしないままサイバー空間に戻ろうとするゼロに唖然となるアリア。

やはり駄目だったかとシエルが気落ちした瞬間。

「シエル、先程のことは考えておく」

それを聞いた瞬間、シエルの表情は明るくなる。

ゼロが了承してくれたのが、微妙な雰囲気の変化から感じたからだ。

「ええ!約束よ…ゼロ…私、頑張るから!!」

シエルの言葉にゼロの口元に僅かだが笑みが浮かんだ。

そしてゼロはサイバー空間へと去っていった。

「お互い頑張ろうね、シエルちゃん」

「ええ」

満面の笑顔を浮かべる二人。

こうしてゼロとシエル達の物語は終わりを迎えた。 
 

 
後書き
エンディング。
かなり悩みましたが、ゼロ達はサイバーエルフの状態で生還させました。
ルインはともかく、エックスとゼロは英雄なので、ボディを持った状態で生還させるのが難しかったのです。
因みにラグナロクの破片は便利屋女神様が片付けてくれたので、ゼクスには繋がりません。 
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