SAO─戦士達の物語
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GGO編
九十四話 闇の嵐と、闇の風
前書き
はい!どうもです!
今回は戦闘と会話半々くらい……
ま、どちらかというと会話メインですがw
では、どうぞ!
「やれやれ……もちっとプレイヤーをいたわりやがれってんだ」
ぼそりと呟くと、リョウはXM29の照準器を覗き込む。
三つ目のステージの天候は、嵐だった。場所は鬱蒼と茂る森の中。時間は夜で、風が強く、雨がひどい。
「やだねぇ……」
XM29の照準器に元から備えられている、サーモスコープを使って周りを見渡す。今はまだ、見えない。しかしリョウは相手の大体の位置を、聞き耳のスキルのお陰で既に特定していた。
このステージ条件ならば、正直まともに戦える。否、寧ろこう言った不意打ちし易い部隊の方が、自分には向いて居るかもしれない。
『昔は随分やったからな……』
しつこく追って来るオレンジプレイヤー達を相手に、森や洞窟で不意打ち奇襲を繰り返したこともあった。
今頃になってその経験が生きるとは思わなかったが……
「んじゃ、行きますか」
ぼそっと呟いて、リョウは足音を立てぬよう注意しながら歩きだした。
────
「くそっ……」
リョウの対戦相手、ギリーは歯噛みした。
先程の二回戦までの試合を順調に勝ち進んできた彼は今回こそ本戦に進めると意気込みつつ、この三回戦に望んだ。
が、速攻で蹴りを付け次に進むつもりが、此処で予想外にも、夜+風+雨+森という、いかにも弾を命中させにくく、難しいステージに当たってしまった事で、彼はイラつきを隠せないでいた。
「何処に居やがる……出て来い……」
あらかじめ用意しておいた暗視スコープ越しに周囲を見渡すが、相手である女は中々見つからない。
油断せず、ゆっくりと歩を進める。その時だった。
突然、背中から押されるような感覚がした。
「……は?」
同時に、ギリーは感じるまるで胸の中に何かが有るような違和感が……
「っっ〜〜!!?」
直後、その違和感が一気に左肩近くから斜めに右わき腹に向かって移動し、消えた。同時にHPが一気に減って居ることに気付く。
其処まで来て、彼はようやく気が付く。自分は攻撃されているのだ!
しかし既にHPは四割以上を持って行かれている。初撃は恐らくナイフだが、一体いつの間にそんな距離まで接近されて居たと言うのか。まるで気が付かなかった自分を叱咤しつつ、ギリーは動く。
「糞っ!ウオォ……ガゥ!?」
手に持ったサプレッサーとフォアグリップ、ダットサイトと言う使い易さを重視したカスタムのM4の銃床を振り抜くように振り返り、腰から抜いたやはりサプレッサー付きのMk23を引き抜き発砲しながら相手を確認しようとする。
しかして、マガジンの中身を撃ち尽くすつもりでトリガーを引いたその連射は、三発ほどを小さな音をたてて発射した所で止まった。真下から、かなり強い衝撃と、顎下から脳天にかけて又しても違和感。
相手はまだ確認出来ない。懐に入られて居たのだと分かったのは……
『この……ッ!!!?』
眼前に、銀色の自動拳銃が現れる。銃口が、自分の持つ45口径のそれよりさらにも大きい。これは……!
「Good night(おやすみ)」
ドゴンッ!と音がして視界が明滅した。視界に赤いフォントで《You are Dead》の文字が表示され、気が付いた時には総督府のホールに戻されていた。何が起きたのか冷静に考えた時にようやく、彼はその事に気が付いたのだった。
リョウコウ
第三回バレット・オブ・バレッツ予選トーナメント第三回戦突破
試合時間 五分零秒
――――
「ん……?」
三回戦を久々の闇討ちで制し、試合終了と共に息を付いたリョウが戻って来たのは、殆ど一時間ぶりの総督府だった。なかなかハードな予選だ。
一応周囲を見回すが、知り合い三人の姿はない。唯一シュピーゲルの姿は遠くに確認できたが、何やら試合を真剣な表情でみていたため、そっとしておく事にした。
「お隣失礼」
「っ……」
ダークブルーのコンバットスーツに身を包んだ小柄なプレイヤーの横に、リョウは座った。因みに小顔で短髪の黒髪に、胸の部分の控え目ながらはっきりと存在を主張する膨らみは明らかに相手が女性プレイヤーで有ることを示していたが、んなことはどうでも良い。リョウにとっては、電車の席に座るとき隣の乗客がどんな人間かを気にしないのとさして違いは無かった。
天井の巨大スクリーンに、リョウは目を向ける。知り合いの試合が映って居ないかと軽く探してみると、意外にも容易くそれは見つかった。
長い黒髪を携えた、少女と見紛うばかりの美貌。間違いなくキリトだ。
「って、おいおい……」
リョウは画面を見ながら、苦笑しつつその戦闘を見守る。
キリトの戦闘法は、彼らしいと言うか滅茶苦茶と言うべきか、大いに悩ましい……まあ常識外れな戦闘法だった。
基本的な様式は、突進だ。
軽機関銃を乱射して来る相手に対して真っ向から突撃し、掠る弾や当たらない弾は全て無視して自身の身体に直撃する弾丸だけを、アイリと同じ光剣でぶった斬る。そうして接近し、最後には相手を銃ごとやはりぶった斬る……と言う。突撃も突撃の捨て身戦法。だがあれだと……
『防げねぇな』
単純だ。だが単純すぎるがゆえ、対応が難しい。しかも、戦闘の殆どを発射された弾丸に頼るこの世界では、基本的に接近を防ぎようがないのだ。
『頭良いんだか馬鹿なんだか……』
溜め息混じりにそんな事を思った……その時だった。
「ヤ〜ミちゃん!」
「きゃぁっ!?」
隣から……どこかで聞いたことが有るような声と展開の会話(?)が聞こえた。
一度溜息をついてから、リョウはとなりを向く。
「ちょっ……と!アイリ……離れなさいって……!」
「だから、何してんだお前は」
「えへへ~、リョウやっほ~♪」
「いや、挨拶は良いから離れてやれよ」
「はーい」
ブンブンと体をゆするヤミちゃんさんを見つつそう言うと、アイリはようやく手を離す。
「はぁ……アイリ、いつも言ってるけど行き成り後ろから来るのはやめて」
「あははっ!さっきシノンにも同じこと言われた!」
「ならやらないでよ……」
コロコロと笑うアイリに呆れたようにヤミちゃんは言う。
その様子を苦笑交じりに見ていると、不意に彼女此方を向いた。
「で……えっと、この子は?アイリの友達?」
「うん!リョウコウって言って……あ、男の子だよ?」
「……はぁ!?」
「はぁ…………」
全く違う意味のはぁが部屋に響く中、アイリだけが相変わらずコロコロと笑っていた。
────
「ふーん、珍しい……って言葉じゃ足りないくらい珍しいわね……」
「だよねー。私も初めはすっごくびっくりしたもん」
「一番驚いたのは俺だけどな」
「それは……そうでしょうね」
溜息交じりにそう言ったリョウに、ヤミちゃん……もとい、HN“闇風”は苦笑しながらそう言った。
「それでね!リョウってば……あ、」
「ん?ありゃ」
「試合みたいね。行ってらっしゃいアイリ」
「頑張れよ」
「あー、うん!頑張ってくる!」
次の試合相手が決まったのだろう。アイリは光に包まれると、そのまま転送された。
「ふぅ……」
「なんつーか、嵐みたいなやつだよな」
「クスッ……そうね。良く表してると思うわそれ。でもあの子とっても面倒見はいいし、良い子よ?」
「それは知ってる。それに助けられた口だしな」
「それなら結構。それにしても……リョウか……」
何となく彼女の前だとお姉さんな雰囲気を出していた闇風は、微笑んでそう言うと……何故かリョウの顔をじっとのぞき込みだす。
「あン……?何だよ。いくらなんでもこの顔で女と付き合う勇気は俺にはねぇぞ?」
「違います。……けど、そう言う所も似てるのよね……」
「はぁ?何の話だ……?」
「いや、リアルの話なんだけど……アンタと同じ呼ばれ方で、すっごいむかつく奴がいるのよ」
「あぁ?」
少し不機嫌そうに、むすっとした表情でそう言う彼女の顔を、リョウは首をかしげてみ返す。
「そいつ、いっつも仕事サボろうとしてね。何っ回注意しても聞かないうえに、この間なんか校舎の中で追いかけっこみたいなことする羽目になって挙句の果てに二階から飛び降りて逃げたのよ?非常識だと思わない?」
「……あぁ」
どこかで聞いたような話だな。と思いながらリョウは頷く。と言うかリアルで、しかも他人の関係する話をそんな詳しく話すのはどうなのだろう?
「そりゃ、彼奴の仕事が大変だってのは私だって分かってるのよ?やたら数字ばっかり眺めなきゃいけないし、けど、悔しいけど彼奴優秀で、あたしなんかよりよっぽど早く仕事できるのよ。しかもそれでもあたしとか他の人に全然文句言わないし、逃げるのはムカつくけど、結局なんだかんだでちゃんと家とかで仕事して持ってきたりもするし……追いかけてる間になんか悪いような気がしてくるんだけど、けどなんかやめられなくて……ちょっと後ろめたいって言うか……」
「……えーと、いっこおかしなこと言っていいか?」
「でも……え?何?」
明らかに話しの軸がずれているが、なんだか聞けば聞くほどどっかの会計係の事を愚痴っているように聞こえて来て、思わずリョウは確認してしまう。
「……風は風、闇は……アンか?」
「……へ?」
きょとん、とした表情で彼女はリョウの顔を眺める。その顔が、一瞬で真っ青になり、次の瞬間リンゴのように真っ赤になる。
……確定のようだ。
「き、き、き、ききききき、桐ケ谷……君?」
「……はぁ、その呼び方、ネットじゃ禁止な。“風巻”」
「な、ななな……なんで……」
真っ赤な顔で、全く定まらない言葉を絞り出す彼女に一度苦笑しつつ、ニヤリと笑う。
「そう思うなら、是非仕事減らしてもらえっと助かるんだがな。会長?」
「だぁぁぁぁぁ!!嘘嘘嘘!!さっきの嘘ぉ!」
爆発しそうな顔で、腕をぶんぶん振りまわす闇風。もとい、風巻杏奈。
ニヤニヤと笑いながらリョウは返す。
「いやいや、嬉しいねぇ。会長さんはちゃんと俺の苦労分かってくれてたわけだ」
「嘘だって言ってんでしょ!!」
「いやぁ、ご謙遜めさるな。良い上司を持ったぜおれぁ……まさか後ろめたく──」
「黙りなさぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!」
「おいおい、騒ぐなよ。皆こっち見てるぜ?」
「はっ……!」
騒ぎすぎているせいで周り中の視線がこっちに向いて居た。中から、「あれ鬼女じゃね……?」「闇風か……?」等と言う声が聞こえる。どうやら彼女もそれなりに有名プレイヤーらしい。
「こっちきなさい……!!」
「おっとっと……」
リョウの手首を掴むと、闇風はかつかつと歩きだし、人ごみの中に紛れ込む。
ホールの端、別の位置で止まると、振り向いた。何とと言うか、怒っているのか照れているのか分からない。余りにも感情が高ぶっているのか、若干涙目だが……
「なんで、GGO(ここ)に居るのよ……!アンタは麻野さん達とALOやってる筈でしょ……!?」
先程と違いコソコソとした声で話す闇風に、苦笑しながら、リョウは答える。
「ちょいと用事が有ってな。コンバートした。少ししたらまた再コンバートすっからよ。ま、そう怒んなって」
「そ、そう……なら良いけど……」
「他に何かあるか?」
俯き、ぼそぼそとそんなことを言う彼女を苦笑しながら眺めつつ、リョウは首をかしげる。
すると、多少必死な顔で、彼女はこんなことを言った。
「他……あっ!さっき言ったことは忘れなさい……!」
「えー?なんでだよ……」
「……まわす仕事三倍に増やすわよ……!!!」
「すみません分かりました忘れます」
本気だ。間違いない。もし今の彼女に逆らえば、自分は間違いなく過労死させられる。
そう感じたリョウは即座に答え、苦笑しながら言った。
「にしても……闇風って……おま……」
多少冷静になっていた彼女の顔が、カッと朱くなった。
「そ、そうよ!悪い!?」
「だからお前、その歳で使うにゃちっとガキっぽいって言ったじゃねぇか」
「良いのよ!私はこの名前で通すの!!」
以前、彼女が携帯ゲーム機で某有名狩りゲームで行き詰っていると相談を受け、手伝った事が有った。その時も彼女は自キャラにこの名前を付けていたのだが、少々厨二病てきだったため、指摘したのだ。
しかし、残念ながら彼女はこの趣味を変えるつもりは無いらしかった。
「まぁ良いけどよ。お前、ブロックは?」
「……Eよ」
「……は?」
「え?」
聞き覚えのある答えに、思わずリョウは聞き返してしまう。しかしあえて確認するまでも無い。
「次何回戦?」
「……決勝だけど?」
「…………」
成程……つまり……。
「ならもう少し待つはめになると思うが……ま、気長に待っててくれや」
「え……じ、じゃあアンタ……」
「ま、そう言う事だな。すぐ行くからよ」
一瞬ポカンとした顔をした彼女はしかし……その顔に、普段リョウにリアルで見せる、好戦的で快活な笑みを浮かべた。
「いいわ。ま、多少はに待っててあげる。けど、知っての通りあたしもあんまり気の長い方じゃないの。だから上がってきなさい。この間の鬼ごっこの続き、してあげるから」
「上等」
そう言ってニヤリと笑ったリョウの言葉がまるで合図だったかのように……リョウは、光に包まれた。
────
一人残された闇風は、微笑みながら、何となくポカポカした気分で居た。
しかし、ふと気が付いたように、彼女は虚空に向かって呟く。
「そう言えば……彼奴知ってるのかしら?」
後書き
はい!いかがでしたか!?
原作では男性の忍者プレイヤー。闇風さん。なんと今作ではオリキャラのしかも女性にしてしまいました!
生徒会長風巻安奈さん。それが彼女の正体でありますw
そして本編でも申し上げた通り……Eブロック、決勝にコマを進めている彼女。つまり……
じかい、四回戦!
はたしてリョウは勝ち抜き、決勝に進めるのかー!乞うご期待~!
ではっ!
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