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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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GGO編
  九十三話 battle in ???

 
前書き
はい!どうもです!

さて、今回は二回戦。

死銃とのコンタクト?何のことですか?

では、どうぞ!! 

 
「うぉっ!?」
キューン!と言う甲高い音と共に、リョウの真横を弾丸が通り抜ける。
出そうとした顔を慌てて引っ込め、息を一つ。

「くそ、正確すぎだろ、あのテンガロン」
二回戦、リョウは今、遮蔽物の裏に付いて釘付けになっていた。ここから出ようとすると、どう出ようとしてもその瞬間弾丸が飛んでくるのだ。

「なんであんな古風な銃であそこまでやれんだよ……射撃技術教わりてぇな……」
二回戦、相手の名は「ギャレット」と言うらしい。
互いに発見はほぼ同時だった。その際に幾らか撃ち合ったのだが、先に逃げ出したのは弾数も連射能力も勝るリョウの方だった。

ギャレットのメインアームはリョウやインコと違い、一発撃つごとに銃身のレバーを引いて排夾と装弾を行うタイプの……ボルトアクションだかレバーアクションだかというタイプの銃なのだが、射撃の精度が異常な程高かった。
何しろ飛んでくる弾の殆どが頭か、その至近……即ち首やら何やらを狙って飛んでくるのだ。
それだけなら避けられるのだが、無論腕や足にもピンポイントで弾丸が飛来し、機動力を奪おうとしてくる為油断は出来ない。

幸いと言うべきか否か……、このステージは今の所狭い通路で構成されていて、大きくは動けないもののそこら中にある扉や階段を盾に逃げられて居るが……

「つーかどこだよ此処!」
言いながら、リョウは20㎜ランチャーを後ろに向かってぶっ放す。曲がり角に着弾したそれば爆発し、通路の鉄板やらパイプやらが吹っ飛ぶが、効果があるかは怪しい。

狭い通路といってもその通路は傾くようにゆっくり少しずつ揺れていた。その事から、此処がおそらくは船の中だろうことは分かるが、タンカーなのかあるいは貨物船か、何だかは分からない。

ステージ名は“沈まざる魂”

「魂とかなんだっつーのぉ!?」
次の瞬間、リョウの頭に赤い線が走り、とっさに頭を逸らしたリョウの目の前を空気を切り裂く音を立てながら弾丸が駆け抜けた。咄嗟に目だけでギャレットのHPを確認すると……

『糞っ……!』
角を曲がり掛ける直前を狙ったにも関わらず、減ったHPは僅かに二割。初見で一割合計三割だ。対し此方は……既に四割は持って行かれている。弾道予測線を見てから避けてあれなのだ。この先警戒しつつ追ってくるなら、おそらくは余りランチャーに過剰な期待をすべきでは無い。

『強えぇな……』
予測線を見てから反応したのだとすれば……否、そもそもこの戦闘が始まってからずっと感じていた事だが……このギャレットと言うプレイヤー。かなり強い。
射撃制度や銃の扱いもそうだが、VR慣れもなかなかどうして対したものだ。かなりベテランのVRMMOプレイヤーだろう。GGOの状況は知らないが、それなりにトッププレイヤーだったりするかもしれない。

「上等……!」
体制を立て直してスイッチを切り替え、リョウはライフルを撃ち牽制。引っ込んだギャレットを一瞥して、リョウは上部に続く階段を上がった。

――――

「っと!」
バンッ!と言う音と共に、甲板の扉が開く。そこから転がり出るように、リョウが飛び出した。そして其処にあった景色を見て……絶句した。

「な……に……?」
そこは、砲の巣とも言うべき場所だった。
自分から見て左側に、無数の機関銃やら高角砲が有った。その全てが曇り空と海に向けられている。

右側に、余りにも巨大過ぎる大砲が有った。リョウの身長を裕に超える大きさの基部と、此処からではよく見えないものの、太く、恐らくは人の頭などすっぽりと入ってしまうであろう三本並んだ砲塔部。

リョウが後ろを見上げれば、其処にも主砲と思われるそれ程では無いものの、十分に大きな副砲が有る。
最早、疑いようもない。現代において、これほど多くの……そして巨大な砲を備える船の種類を、リョウは一つしか知らなかった。

「せ、戦艦……!?」
リョウがもし今、ALOのように空を飛ぶことが出来たなら、この船の全景を見る事が出来ただろう。

艦橋付近に付いた、無数の銃口、砲口を虚空に向ける高角砲と機関砲の群れ。
二基六門の副砲と……三基九門の巨大な主砲。そして……艦首に付いた、菊の紋。



ステージ“沈まざる魂――戦艦 大和 内部・甲板部”



それはGGO日本サーバーが誇る、至上類を見ない“ネタステージ”であった。



――――

「って、見とれてる場合じゃねぇ!」
ついつい唖然としてしまった自分を叱咤して、リョウは障害物の多い機関砲、高角砲の方に走り出す。
リョウが出て来た場所から丁度高角砲で陰になる位置まで来た時……

「あっぶ!?」
予測線がリョウを貫き、危うい所でリョウは身をかわす。後ろの高射砲に弾が当たり、キューン!と音を立てた。
即座に隠れた高射砲から飛び出して、ライフルを乱射する。

ギャレットが隠れた扉付近の壁が、チュンチュンと音を立てて火花を散らす。反転して走り出し、また予測線。回避。反撃。とやると、不意にギャレットが隠れた機銃の向こうから軽いノリの男の声が聞こえた。

「お姉さん!いい加減に鬼ごっこは終わりにしないかい?大丈夫!痛くしないよ!」
若干イラつきながら、リョウは怒鳴り返す。

「ならさっさと脳天撃ち抜かれろっての!つーか男だってんだよ!何度も言わせんな!!」
キレ気味なリョウをからかうように、向こう側から笑い声

「いやあ失礼!久々に良い感じな緊張感の勝負で気分が高まっていてね!しかも相手がこうも美人じゃあ……」
「Die! fu●k'n sheriff!!(死んどけ!この糞保安官が!)」
やたらと口汚く怒鳴りながらリョウは更にライフルを乱射しつつ下がる。
ちなみにリョウがギャレットを保安官呼ばわりしたのは、ノリではない。ギャレットと言う名前の、恐らくは語源となったのだろうアメリカ西部開拓時代のガンマンが、保安官だったからだ。

「おぉ怖……口が汚いね!」
「手前のせいだよ!」
反撃とばかりに飛んできた脳天狙いの弾をギリギリでかわしつつ、リョウは更に反撃する。ついでにランチャーをぶっ放したが、上手く高角砲を盾にかわされた挙げ句、反撃の弾が肩に掠り、HPを更に一割減らした。

――――

いくら挑発されたとて、それで真正面から突っ込む程リョウもバカでは無い。
高角砲、機関砲の群れを抜け、リョウとギャレットは互いに艦橋側と艦首側の主砲を遮蔽物にして、撃ち合いを続けていた。

昔どこかの小説か何かで読んだが、船には女神だか精霊だかが宿るらしい。船魂(ふなだま)だか艦魂(かんこん)だかと言うらしいそれは何故か全員女なのだとその小説には書かれていたが、もしもこの船にもそれが居るとしたら今頃大層お冠だろうなとリョウは思った。
何しろ火器満載の戦艦の上で、銃やらグレランやらを使って撃ち合っているのだ。非常識にも程がある。
リロードをしながらそんなことを考えたリョウは、ギャレットの連射が止まったと見るや否や飛び出しライフルを撃とうとして……仰天した。

拳銃(リボルバー)……!?』
ギャレットがそれまで使って居なかった、真っ黒な六連式のリボルバー拳銃を此方に向けていたのだ。
それも映画で日本の警官が使うような小さな物ではない。大きい。銃口だけでも、自分が腰のホルスターに入れているDEと同じ位の大きさは……と、其処まで考えた時、リョウの頭部分に赤い光の線が走り、リョウはとっさに倒れるように主砲側に飛んだ。

「う、おっ……!」
直後、ドゴンッ!と言うDEに似た重々しい音と共に銃弾が放たれ、リョウの右足に掠った。

『マジですか!?』
銃弾その物の速さが、先程までのそれと比べ遥かに早い。しかも威力も……

『糞っ、やっべえぞおい……』
残りHPは、二割を切っていた。
流石の威力と言うべきか。マグナム弾は見事にリョウの足からHPをごっそりと持って行った上に、最悪な事に今の衝撃でステータス異常が起きたのか右足が上手く動かない……

「さーて、どうする?」
ギャレットはまだ仕掛けてこない。恐らくはリロードしているのだろうが、このままでは遅かれ早かれやられるのがオチだ。
しかしだからといって諦めるのは癪だ。シノンやキリト。何よりアイリにあれだけ見栄を切っておいて、「負けました」では格好がつかない。

『ちっ……ん?』
そんな事を考えていた時、リョウの耳が妙な音を捉えた。
そして同時に、背中に違和感が起きる。

――ゴウン……ゴウン――


背中の壁が……否。艦の主砲が……動いていた。と、それを理解した瞬間、リョウはあることを思い出した。同時に勝利へのアイデアが頭の中に閃く。穴だらけだが、もしもギャレットがこの事を知らないとしたら……?
そうこうしている内に、リョウの後ろで主砲が回頭を終え、更に三本の砲塔がそれぞれ大きく、中ほどに、浅く角度を取り始める。やはりこの動きは……

「迷ってらんねえ!」
直後、リョウは左足だけで何とかバランスを取って、艦橋の方へと飛んだ。後ろから、予測線が走る。やはり、ギャレットはこの事を知らない!

「jump!」
ドウッ!と足のブースターが火を噴いた。勢いと共にリョウは更に艦橋の、艦内部に続く扉の方へと吹っ飛び、弾をかわす。

「間に合えぇぇぇ!!」
転がるように扉の前にたどり着き、自慢の筋力で開ける。中に飛び込んで扉を閉める直前、ギャレットが此方に走って来るのが見えた。
扉を閉め、何となく叫ぶ。

()ェ!!」
直後――



ズドオォォォン!!!!!!!!!!



DEや、先程のマグナムなど非ではない文字通りの爆音が、リョウの耳に響いた。衝撃で、全身が震えた。

「ヒューッ!!」
笑いながら叫ぶ。
確認するまでもない。艦の主砲が、発射されたのだ。
原則として、戦艦の主砲が発射される際に甲板に居てはならない。発射時の衝撃波が、砲弾だけではなく、人間までも吹き飛ばしてしまうからだ。
ギャレットは、主砲のすぐ近くに居た。つまり……

「ま、次は気をつける事だな」
「はぁ……そうするよ……」
HPを残り一ドットにして、ステータス異常のせいで全身を動かせないテンガロンハットの男にXM29を向けながら、リョウはニヤリと笑って言った。まあ……あまり誉められた勝ち方ではないが、立派な勝利だ。

「良い勝負だったよ……次は負けないからね」
ニッと笑って言ったギャレットに、リョウも尚も笑いながら返す。

「再戦の時は、女呼ばわりすんなよ」
「ははっ。分かったよ」
ダンッと言う音と共に、試合はその幕を閉じた。


《コングラチュレーション》が表示される空を一瞥してから、艦橋を見上げ、リョウはニヤリと笑って呟く。

「援護サンキューな。戦艦の精霊さん」
差し込んだ陽光で艦橋の先端がキラリと光った気がした。
直後、リョウは光に包まれた。

リョウコウ
第三回バレット・オブ・バレッツ予選トーナメント第二回戦突破

試合時間 二十八分五十六秒
 
 

 
後書き
はい!いかがでしたか?

えーと、今回やたらリョウが口汚くなったのは寛容に見ていただければ幸いです……

さて、ちなみにギャレットさんが此処で敗れたということは……お分かりですね?

ではっ! 
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