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『夢の中の現実』

作者:零那
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『出発』



さて、父さんが動く。
岡山迄JRで行くらしい。

零那と同じで、父さんは交通機関に詳しくないみたい。
乗る機会が滅多に無いから尚更解らん。
必ず係員に聞いてる父さんを可愛いと想った。

零那は四国でJRの特急に乗る事が多かったくらい。
大阪は遥かに規模が違う。
バスすら解らんから地下鉄なんか迷宮入り。

親子なんやなぁホンマに。
こんな些細なことで、こんな嬉しくなる。
そんな自分は...キライじゃないって思えたりする。

岡山に着く迄、此処に来てからの父さんとの日々を細かく思い出して反芻してた。
時間は、あっという間だった。

岡山駅から岡山港迄バスが出てたから其れで港に向かった。

懐かしい海の匂い。
いろんな思い出や想いが駆け巡る。

できることなら、こんな形じゃなくて楽しい旅行として、同じ潮の匂いを身に纏いたかった。
でも...其れはもう...叶わぬ夢...。

もう充分。
逢えんって思ってた父さんに逢えた。
何も助けれんって思ってたけど借用書の額全部支払えた。
決して父さんが借りた金では無いけど。
納得のいく支払いでは無かったけど、父さんの為やから出来た。
父さんの役に立てた。
一緒に生活してこれた。
抱き締めて貰えた。
たくさん触れ合えた。

夢のような日々を過ごせれた。
充分...。
幸せだったよ、零那は...。

父さん、心から、ありがとぉ...。

フェリーに乗って小豆島に着いた。
外はもう暗い。

船内でした亀井サンとのやりとり。

『帰りは逃げる形やろ?
一旦高松に出よう!四国内で泊まってから、本州出て新幹線で帰ろう!』

『零那が何をしようとしてんのか解ってて、そんなこと考えてんの?』

『俺はまた3人で前と変わらず一緒に生活したい』

『そんなん無理やん。
解るやん?零那は今、殺意を抱いてんねや。父さんは守る、絶対っ!!絶対父さんだけは無罪で終わらすんや!!それには亀井サンがシッカリ父さんを捕まえててくれなあかん。解ってる?』

『勿論解ってる。でも...』

『亀井サン、ありがとぉ!!
零那なんかの為に色々と...
此からも父さんを頼むねっ♪』

父さんがアイツを呼び出してるんか、家迄行くんか、どんな形で会うんかすら知らん。

大体、今日のことになるんかすら...

時間が来たら島に軟禁状態なるし...

父さんがタクシー乗る。

亀井サンと零那は合図しあって同じタクシーに乗った。
父さんの乗ったタクシーを追いかけて貰う。

父さんが止まった。
零那達も降りた。
島には何カ所も港が在る。
降り立った港から違う港に来た。
此処...解った。
アイツが良く釣りに来てた場所...。


 
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