リリカルなのは~優しき狂王~
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第三話~新しき出会い~
前書き
第三話です。
今回いきなり文章量が増えました。読みにくく感じるかもしれませんが許してください。
文章を多くした理由ですが…ぶっちゃけ早く他のメインキャラを出したいからです。
森の中・キャンプ跡
森の中、三人の人間がいた。それは、少々特殊な組み合わせであった。一人は少しくたびれている服装をした大柄の武人。この武人は、森の中にいても違和感はない。しかし、残りの二人が森という場所にいるにはいささか似合わない容姿であった。一人は紫の長い髪をした幼い少女。そして最後の一人は手のひらサイズの妖精のような少女だった。
その三人の前に紫の魔法陣が展開され、その中心にライが召喚された。
ライ「一体なにが!?」
武人「…おまえがライか?」
ライ「……!」
召喚されたことに驚き、周囲の状況を確認しようとした瞬間に声をかけられ、声のする方に臨戦態勢を取りつつ素早く振り向いた。
武人(ほう)
「警戒する必要はない。私たちは一応味方だ。」
ライ「……じゃあ、あなたがウーノさんの言っていた。」
武人からの言葉を聞き、ライは警戒を解いた。
ゼスト「そうだゼスト・グランガイツという。」
ライ「ライ・ランペルージです。…あの……もう一人いると聞いたのですが?」
ゼスト「ん?ああこの子のことだろう。」
その言葉を聞き、ライはゼストの視線を追った。
少女「………」
ライ「なっ!……」
そこでライは言葉を無くした。そこにいたのは、ナナリーやアーニャ、そして自分の妹よりも幼い少女がいた。
ゼスト「驚くのに無理もないが彼女は優秀な召喚士だ。わたしよりもこの手の任務には向いている。」
ライは実働部隊と聞いていたため、ゼストのような武人がもう一人いると考えていた。そのため、その少女を見て一瞬だが思考が停止した。
そして、ゼストの言葉を頭で理解できた瞬間、その言葉の一つに意識が向いた。
ライ「召喚士?なら今僕をここに呼んだのは」
ゼスト「ああ。彼女だ。」
ライ「そうですか。よろしく…えーと」
ゼストからの肯定の言葉を聞き、挨拶をしようと目線を彼女に合わせて声をかけようとすると、先に彼女から口を開いた。
ルーテシア「…ルーテシア・アルビアーノ…」
ライ「ルーテシアか。よろしく、ライ・ランペルージだ。」
ライは笑顔で挨拶を返した。その顔を見た瞬間にルーテシアは顔を赤くし、軽く俯いてしまった。
ルーテシア「……」
ルーテシアにとって打算無しに笑顔を向けてきたのは母親ぐらいであった。そのため、ライの笑顔はルーテシアに懐かしさと人としての温もりを与えていた。そのことで、嬉しさと恥ずかしさを感じて俯いてしまったのだ。
ルーテシアはその感情が何か解らなかった。だが決して不快ではない、寧ろ心地よく感じるその感情を知ろうと考えた。
妖精?「おい!ルールーが困ってるぞ!離れろ!」
ルーテシアが思考の海に浸りかけた瞬間、大きな声が響いた。
ライ「……妖精?」
ライがその声のした方を見ると小さな少女がいた。その姿を見た瞬間にライは頭に浮かんだ言葉を反射的に口にした。
アギト「恥ずかしい呼び方すんな!!あたしは『烈火の剣精』アギト様だ!」
ライ「???」
ライの呼び方が気に食わなかったのか、アギトがライに言葉を返した。
ゼスト「アギト、彼は魔法の存在しない世界から来ている。お前のような存在に慣れていないのだろう。あまり脅かすな。」
アギト「ちぇっ。旦那の言うことならしょうがねーな。おい、ルールーを困らせたら燃やしてやるから気をつけろ!」
ゼスト「すまんな。」
ライ「いえ、こちらはあなた方を補助する立場なので。」
(というより、ウーノさんが二人と言っていたから戸惑っただけだったんだけど。)
ライがゼストの考えていた事と若干的外れなことを考えていた時、ルーテシアがこちらを見ていることに気付いた。
ルーテシア「……」
ライ「んっ?」
ルーテシア「あなたはどうして手伝ってくれるの?」
ライ「ウーノさんから事情を聞いていないのかい?」
ルーテシアがライの言葉を聞き、首を横に振り答えた。
ルーテシア「あなたの言葉を聞きたい。」
ライは少し考える仕草をし、答えを返した。
ライ「そうだな…。僕を助けてくれた人が僕を信じて任せてくれたから、その期待には最低限応えなければならないと思った。それがさっきまでの理由のひとつだよ。」
ルーテシア「さっき?」
ルーテシアが小首をかしげて尋ねた。
ライ「うん。今はここにいる全員が無事に戻れるようにするために僕が少しでも役に立てばいいと思っている。」
ルーテシア「なぜ?」
ライ「さっきのアギトを見て君たち三人が仲間のことを大切に思える人たちとおもえたから。」
この三人を見てライは心からそう思うことができた。だからこそ自然と素直に自分の言葉を口にできていた。
ルーテシア「……」
ライ「他人を大切に思うことができる人を失いたくない。」
ルーテシア「わたしも?」
ライ「ああ。ルーテシアも無事に戻ってきてほしい。」
ルーテシア「………でいいよ。」
ライ「えっ?」
ルーテシア「呼び方……ルーでいいよ。」
ライ「分かったよ、ルー。」
その言葉にライは笑顔で答えた。
ルーテシア「……」
その笑顔に再び俯いてしまうルーテシアだった。
アギト「テメー!!さっき忠告したろうが!!!」
その様子にアギトは黙っていなかったが…
ライ「アギト」
アギト「な…なんだよ。」
ライからの真剣な眼差しと声に多少怯んでしまっていた。
ライ「僕に魔法は使えない、それにどこまで役に立てるかも判らない。情けないけど君たちを守ることも恐らくできない。だけど君は魔法を使うこともルーを守ることもできるのだろ?」
アギト「当たり前だろ!!」
ライの言葉に即座に答えるアギト。
ライ「なら僕は君を最後まで信じる。だから君も僕を信じてくれ。」
アギト「……勝手にしろ…。」
アギトは素っ気なく返していたがライはその言葉を聞き笑顔を返していた。
森の外れ・小高い丘
ゼスト「早速だが今回の目標と君の役目を確認する。」
ゼストからの言葉にライは意識を切り替えた。
ライ「イエス、マイロード。」
ゼスト「今回の目標はレリックと呼ばれる赤い宝石の形状をしたロストロギアだ。」
ライ(ロストロギア。確か古代文明の魔法の遺産…だったか)
ライは研究所にいたときにこの世界の知識をウーノから教わっていた。その中にはロストロギアの知識も含まれていた。
ゼスト「それをこの先にある施設から奪取する。」
ライ「質問です。施設ということはある程度の広い範囲が相手の活動範囲になります。それを振り切るのにどうするのですか?」
ゼスト「転移魔法を使う。そしてレリックの回収にはルーテシアの召喚魔法を使う。そのためには施設内のどこにレリックがあるかを知る必要がある。だからまず私が施設の動力源を全て破壊する。その後にルーテシアとアギトと俺が相手の反抗を抑え込んでおく。その間に君は施設に侵入してレリックの在処を探し出しルーテシアに報告してくれ。その後、彼女の魔法でレリックを回収し君と合流。あとは転移魔法を使う。」
ライ「報告の手段を僕はもっていませんが?」
ゼスト「念話を使う。」
ライ「念話?」
ライはこの世界の知識は教わっていた。そして自分にも魔法を使うための器官、リンカーコアがあること聞かされていた。しかし詳しい魔法の知識は教わっていなかった。
ゼスト「簡単に言えばテレパシーの一種だ。それを君が侵入したのを確認してから二十分後、こちらから行う。だからそれまでにレリックの位置を特定してくれ。」
ライ(思った以上に条件が厳しい。時間が掛かれば掛かるほどこちらが包囲される。最悪、相手の増援もあり得る。それに…)
「もし僕が魔法を使用する相手に出会った場合は?」
ライにとっての懸念はそこであった。ライは生身の人間を相手にすることには自信があった。しかし魔法を使用する魔道士をする自信はなかった。なぜならライには魔法の知識が無いため対策が立てられないのだ。
ゼスト「いや相手の士気と兵力はそれほど高くはない。俺たちが出れば魔法を使った戦闘のできる兵士は逃げるか立ち向かってくるしか出来なくなるはずだ。それならば相手側には魔法の使えない者だけになる。さきほど私が声をかけたときの君の反応と動きは平均的な兵士よりもはるかに良いものだった。なんの心得があるのかは判らんが、それだけ動けるのなら対応には十分だ。」
ライ(それだけの動きで……。この人、すごい。)
ライはゼストの戦略術の高さと戦士としての観察眼に感心していた。元の世界でもここまでの技量を持っているのはライの知っている限り、藤堂鏡志郎や黎 星刻ぐらいであった。
ライ「…特定が困難な場合は?」
ゼスト「残念だが撤退するしかない。」
ライ「……分かりました。」
ライは自分の役割の重大さを再確認し返事をした。
ルーテシア「……大丈夫?」
ライ「ああ。きっとできるから、僕を信じてくれ。」
ルーテシア「…うん」
目標の施設・近くの茂み
ライ「そろそろか。」
ライが施設の近くの茂みに隠れそう呟いた時に轟音が響いた。施設の方に視線を向けると複数の煙の帯が見えた。
ライ「……あれが魔法。」
(KMFよりも破壊力だけなら上だな。それよりも今は…あった!あの壁の亀裂から中に入れる。)
ライは煙と爆発の大きさを確認し、魔法について冷静に分析していた。
その思考を一時中断し、先の爆発でできた施設の建物の亀裂へ足を向けた。
施設内・廊下
ライはまず施設に侵入しロッカールームを見つけた。そのことを幸運に思いつつ中にあった白衣をはおり廊下を進んだ。
ライ(確かに練度は低いな。敵に襲撃されてからの対応が遅い。まぁ、そのおかげで作業員の服も簡単に手に入ったからよかったけど。あとは……)
すれ違う人間を観察しながらもライは目的の人間を探していた。
幹部「資料の保護を優先しろ!敵の狙いが判らない!どれが狙われても対応できるようにしろ!」
ライ(見つけた。あの指揮をしているのがある程度権力を持っている幹部か。……他人から奪うためでなく、誰かを助けるために使えるのなら……)
目的の人物を見つけ、一瞬躊躇したがすぐにその迷いを自分の決意で振り切った。
幹部「むっ。おい貴様!そこで立ってないで作業を手伝え!」
ライに気付き声をかけてくる幹部。
ライ「はい!…しかしその前に確認しなければならないことがあります。」
幹部「なんだ?早く言え!」
幹部は焦っているのか、ライの言葉に苛立ちを込めて返事をする。幸いなことに外の戦闘に多くの人員を割いていたため、今この場にいるのはライとその幹部だけであった。
ライは自分の中にある撃鉄を起こした。
迷いもなく、
後悔もなく、
ギアスという武器の引き金を引いた。
ライ「レリックの移送を中止し、それが保管されている場所を教えろ!」
その言葉を研究員は聞き、その幹部は一瞬呆けるがすぐに反応を示した。
幹部「……ああ。分かった。」
『レリックの移送を中止。その場に放置しろ。』
幹部は通信機を取り出しすぐさま支持を出す。
作業員『なぜです!?あれはっ!』
幹部『放置だ!!これは命令だ!!』
幹部からの指示に作業員は疑問の声をあげるが、幹部は即座に命令を返し通信機の電源を落とした。
幹部「レリックの保管場所は地下にある保管庫だ。地下施設はその保管庫だけだからすぐにわかる」
ライ「よし。あとは」
ライは幹部からの言葉を受け取ると、彼に当て身を使い気絶させた。ちょうどその時にゼストからの念話が入った。
ゼスト『ライ。こちらゼスト。どうだ?』
ライ『地下の保管庫にあるそうです。詳しい座標まではこちらでは…』
ゼスト『いや、それだけ判れば後はこちらで回収する。君はすぐに撤退しろ。』
ライ『イエス、マイロード。』
ゼストとの通信を速やかに終わらせすぐに次の行動に移るライであった。
施設外・戦闘区域
ゼスト『ルーテシア、インゼクトが地下に行くまでどのくらいかかる?』
ルーテシア『……8分くらい』
ゼスト(ギリギリだな。上手く逃げてくれ。…しかし彼の対応は早すぎる。たとえ彼が失敗しても、こちらがいくらでもフォローができるようにしていたのだが…。彼にはなにかあるのか?)
ライからの情報を、別行動をとっているルーテシアに伝え、施設を警護していた武装隊視線に向ける。戦闘はゼストの完勝に近い形で終わったが、ライの手際の良さに疑問を抱くゼストであった。
施設外・撤退ルート
ライ(合流ポイントまであと少しか。……それにしても、敵の施設が整備されすぎていた。あれはまるで…民間かもしくは軍の研究施設の一部みたいだった。…どういうことだ?レリックは盗まれてあの場所にあったはずだ。だが僕が見た限りこれでは盗み出しているのはむしろ……)
ライが走りながらも施設内で感じた違和感について考えていた時、少し離れた位置から声が響いた。
ゼスト「ライ!ここだ!」
ライ「!」
(考えるのは後にしろ。今は生き残ることだけ考えろ!)
ゼストの声を聞き意識が現実に引き戻される。ライの姿を確認し、ゼストはルーテシアに指示を出す。
ゼスト「よし。ルーテシア、頼む!」
ルーテシア「分かった。」
その言葉と同時にルーテシアを中心に紫の魔法陣が展開された。そして作戦が上手くいく事を確信した瞬間にゼストの体に痛みが走った。
ゼスト「…ぐっ」
(なんとかなったか。…しかし私の体ももう長くはもたなくなってきている。)
空中・撤退ルートの近く
ライたちがもう少しで合流できる時に、白いバリアジャケットを纏い白と黄色を基調としたデバイスを持った女性が空に姿を見せた。彼女は辺りを見下ろし、ルーテシアの魔力を感じると口を開いた。
???「見つけた!レイジングハート間に合う?」
レイジングハート「あなたならできます。」
???「それじゃあ行くよ!!」
そう言うと彼女はデバイスを構え、魔力を収束していく。桜色の魔力がデバイスの先に集まり大きな塊になっていく。そして…
???「ディバイ~~~ンバスターーー!!!」
その塊は1つの線となって放たれた。
撤退ルート上
白い魔導師が収束砲を打ち出す少し前。ライは背筋に寒気を覚えた。そして辺りを見回すと視界の端に桜色の光の塊が見えた。
ライ「!」
(あれは! だめだ、まだ誰も気づいてない!)
それを見た瞬間にライは思考し、行動を開始した。
ライ「アギト!二人を陣から出すな!!」
ライはルーテシアとゼストの間にいるアギトに指示を出した。
アギト「え!」
いきなり声をかけられ困惑するアギト。ゼストはライの声は聞こえていたのだろうが、俯いていてあまり反応を示さない。ルーテシアは魔法の発動に集中していて反応すら示さない。
その時点でライは間に合わないと思ったが、作戦の前のことを思い出しアギトに言葉を発した。
ライ「信じたぞ!」
アギト「!…分かった!」
ライの言葉を聞き、アギトはゼストとルーテシアの服を掴んだ。その時に状況を把握できたのかゼストは驚いた顔をしていた。
ライ「ゼストさん、ルー!!先に行って!!」
ゼスト・ルーテシア「!」
ライの言葉に二人は驚いていたが、二人に声をかけた瞬間にライは駆け出していた。
ライ「間に合えー!」
ライは桜色の魔力が線に変わる瞬間に射線上に立ちふさがった。
ライが最後に認識できたのは、三人が転移する瞬間と辺りに響いた轟音だけであった。
空中
???「逃げられちゃった?」
砲撃の姿勢を解いて、疑問の言葉を口にする白い魔導師。
レイジングハート「いいえ。一人が盾になっていたので、その人物だけ残っています。」
???「その盾になった人は?」
レイジングハート「気絶しているようです。」
???「なら回収しに行こうか。一応、医療班に連絡。非殺傷設定でもそれなりにケガしてるかもしれないから。」
レイジングハート「了解」
そして彼女、管理局のエース・オブ・エースである高町なのははライが倒れている方へ飛んで行くのだった。
後書き
なのはファンの方々お待たせしました。やっと登場させれました。
まぁ「???いらないんじゃね?」というツッコミが殺到するかもしれませんが(^_^;)
ここから時間軸に違和感を感じる人が多くなると思いますが、ご都合主義と割り切ってもらえると助かります。
ご意見・ご感想をお待ちしています。
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