『夢の中の現実』
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『新たな住人』
此の2人は零那が仕事中にバレんように会ってたらしい。
でも2人が仲良しって知らんかった零那は、父さんに悪かったなぁって思った。
夜御飯、3人でどうかと亀井サンをウチに誘ったら、是非!!ってことで決まった。
で、帰る時、待ち合わせて一緒に帰った。
父さんが固まってた。
零那が言う。
『ただいまっ!
えっと、話の流れで、亀井サンが「久しぶりに父さんに会いたい」って言うから連れて来た』
父さんは、多少ビックリしてたけど少し申し訳なさそうに言った。
『ほんまは、こいつとは悪い仲ではないんや...借金取りの立場やから言いにくかったけど...でも、安心してくれ』
『うん、そう聞いた。ゴメン...。勝手に2人を会わさんようにして支払いのことも勝手に決めて』
『それはしゃあない。零那が悪いんちゃう。普通、借金取りと仲良しとか思わへんしな』
『そりゃそうやけどゴメン。今日は楽しく飲んで♪何か特別に食べたいものある?買ってくる♪』
『...ほな、刺身食べたいな♪』
無邪気な笑顔で可愛いワガママを言う父さん。
胸がキュンって...
いやいやアカンやろ。
『解った。ほな、ぼちぼち飲んでて』
『ありがとうっ♪
気を付けてなっ♪』
鮮魚店に行って新鮮なの数種類買った。
急いで帰った。
『刺身、すぐ捌くから待っててなぁ♪』
亀井サンと親しげに仲良く飲んでて安心した。
昔の懐かしい話もしてて、聞いてて色んな意味でハラハラドキドキした。
昔の父さん、零那の知り得んかった父さん...ほんの欠片だけ見え隠れした。
たとえどんな内容だとしても、父さんの過去に触れることが出来たことは嬉しい。
大皿に、父さん好みの、少し分厚く切った刺身を並べ、盛り合わせを出した。
『うまそうやなぁっ♪こんなに色んな種類買ってくれたんかっ♪ありがとなっ!!』
はしゃぐ父さん。
いつもと違う父さん。
『いえいえ、父さんが楽しく飲んでくれるなら零那幸せやん♪』
ある程度の料理を作り、並べ終え、零那もやっと席につく。
邪魔なような気がしたけど...零那の知らんかった父さんの欠片を集めたい。
黙って静かに飲むことに。
『零那、ありがとな♪乾杯♪』
『あ、はい、乾杯♪』
話に夢中で気付かんやろ思たらすぐ気付かれた。
『くち、あーん!』
父さんが刺身を零那の口に入れようとする。
恥ずかしいやん...
亀井サンは、零那の恥ずかしがって困ってる姿を見て、指さしてゲラゲラ笑ってる。
父さんは、何が何でも零那にあーんしたいらしい。
意を決して口を開けた。
父さん超笑顔。
すっごく笑ってる父さん。
楽しい空間。
何故か和む雰囲気。
父さんがいっぱい笑ってる。
何よりごっつ幸せ。
此の日は珍しく深夜迄飲んだ。
時間は一切気にせず。
昔は2人で一緒に朝迄よく飲み歩いてたらしい。
懐かしい懐かしい言ってた。
父さんの表情が、亀井サンが来てから徐々に変化していった。
父親の顔から男に戻ってく。
其れを悪いとか怖いとか思うワケちゃう。
不満や不安も無い。
ただ、いつもと違うなって解るほど変わってたってだけ...。
亀井サンは、このまま泊まって行った。
父さんの布団を買い替える時に、一応予備に1組買ってたから其れを出した。
此の日から亀井サンは住みついてしまった。
自宅に帰る気配が無い。
奇妙な3人暮らしが始まってく。
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