【ネタ】 戦記風伝説のプリンセスバトル (伝説のオウガバトル)
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24 決戦準備
天宮シャングリラへ向けての決戦が進む。
向かってくる帝国軍はどんなに少なく見積もっても三万以上。
現在の新生ゼノビア王国軍の総兵力は降伏兵を入れても二万程度。
こっちの全兵力を上回っていた。
「シャングリラ攻略は二つ部隊を分ける必要があります。
本隊はシャングリラを攻略する。
もう一つはシャングリラの下で進軍する帝国軍を撃破する事が目的です」
ゼノビア城会議室。
トリスタン陛下やナーナ王女、デスティンやウォーレンの他に、ホーライ組であるサイノスやアーウィンド、ジュルクの初顔合わせの側面もあったりする。
会議は私の主導の元淡々と進む。
「で、シャングリラを迎撃するのはここです」
地図の一点を私は指差す。
この地を決戦地に選んだのはいくつかの理由があった。
「ディアスポラ。
ここで私達はシャングリラを迎え撃ちます」
ゲームと違って、かなりの長期戦となったこの反乱というか建国戦争は、既に半年の月日が流れている。
その間に収穫が得られ、食料の確保ができた事でこの決戦を行う決意ができた。
あと少し時間が経っていたら、ゼノビアで本土決戦となっていただろう。
「ディアスポラを決戦地と選んだ事によって、この地の住民の避難を進めています。
収容所があったディアスポラを放棄。
貿易都市ラロシェルから貿易都市ソミュール、神聖都市アルカション、貿易都市リモージュの街道に防衛線を敷いて住民を避難させます。
彼らの避難先は、司令部の置かれるポアチエと自治都市メーマックと城塞都市ロモランタン。
入りきれない避難民はゼノビアのスラムに引き取ってもらいます」
この地を決戦場に選んだ理由の一つがこの街道の存在だった。
セルビア王国が健在だった頃、マラノの都とドヌーブ王国とゼノビア王国を繋ぐだけでなく、ここからアヴァロン島の巡礼客が船で旅立っていったという。
ホーライ王国滅亡後、この地は流刑地として寂れたが、元の経済力は抜きん出ていたのである。
始まっていた王国復興において、この地はゼノビア領にする事を決めていた。
そして、統治する為には、この地を守って民の信頼を得なければならない。
「ポワチエの司令部で統括指揮を。
城塞都市ロモランタンに補給拠点を置き、神聖都市アルカションに前線司令部を置きます」
この地を決戦場に選んだ理由その二。
街道だけでなく川も走っていて防衛がしやすく、河川を使った補給がし易いのだ。
ゼノビアへはポワチエから南に下れば行けるが、アヴァロン島巡礼客をさばいていた貿易都市リモージュの存在が大きかった。
そしてリモージュから川を上ってソミュールまで船が使えるのだ。
「この防衛線で敵を抑えている間に、シャングリラを攻略します。
その為、ここで敵の空中戦力を消耗させないといけません」
ギルバルド侯爵が私に質問を投げる。
シャロームの領主としてではなく、ビーストマスターとして部隊を育成している彼はLユニットを何処に投入するか知りたかったのだろう。
「具体的にはどうするのだ?」
「基本的には籠城です。
シャングリラがある以上、彼らはその空中部隊を遠慮無く各都市に振り向けてくるでしょう。
アーチャー・レンジャー・アマゾネスの弓で迎撃するだけでなく、ゴーレム部隊を編成してグリフォンやワイアームを潰してもらうのです」
「ゴーレム?
どうやって?」
皆の目の前で私は物を投げるそぶりをした。
それで、一同理解する。
「巨石を投げるんです」
マジックユーザーはALIで最初の選択が有る。
魔法は人には過ぎたる力なのはこのオウガバトルでも同じで、ALIが低くならないと魔道を極められないという因果な職なのだ。
秩序と混沌もしくは善と悪なんていい方をされるやつだが、ゲームではALIの高いユーザーはウィザードにはなれない。
その救済職という形で、ドールマスターという職ができている。
アッシドクラウドという全体攻撃魔法で序盤に活躍するが、それしか魔法が使えないのでゴーレムの補正がつくという形で救済が図られている。
これが現実にどう解釈されるかというと、魔法の考え方になる。
全部個人で片付けるか、別の力を使うかだ。
ゴーレムというのはその象徴なのだ。
ドールマスターからエンチャンターにクラスチェンジするが、その先がタクティクスオウガで出たウォーロックになる。
「ドールマスターを防衛に使います。
戦力はこちらが少ない以上、彼らも投入しないと防衛できないでしょう」
天空シャングリラ攻略のためには、グリフォンやワイバーンという飛行ユニットの輸送が欠かせない。
そして、それを護衛するホークマンやバルタンはこちらのほうが少ない。
かれらをシャングリラ攻略に使う以上、制空権は帝国軍の方にある。
市街戦になった時にLユニットがあるのと無いのではまったく話が違うのだ。
「宰相の言う事は理解したが、ジャイアントやトロールでは駄目なのか?」
ナーナ様が次に私に質問を投げかける。
ある意味想定していた質問なので、私は即座にその疑問に答えた。
「そのジャイアントやトロールには別の仕事をしてもらう予定なのです。
ポワチエからリモージュの連絡線確保という仕事を」
魔女デネブを得た事で、パンプキンヘッドを戦力化できたのはこちら側の大きな利点だ。
彼らは囮であると同時に、歩く食料でもある。
補給拠点である城塞都市ロモランタンから各拠点に彼らを歩かせると、確実に敵に狙われる。
その護衛としてジャイアントやトロールを使うつもりなのだ。
「彼らは一騎当千ですから、パンプキンヘッドの護衛に持って来いです。
そして、ゴーレムは失ってもまた補充できますが、ジャイアントやトロールはそうはいきません」
この補充のしやすさがゴーレムとドールマスターを防衛戦の主戦力に使った理由だった。
それでも戦力はこちらの方が足りない。
だからこそ、さらに戦力を補充する必要があった。
「王国周辺のリザードマン族とジャイアント族と交渉を。
河川防衛は彼らに任せる予定です。
更に、蛮族とも交渉し彼らの協力を得ることに成功しました。
城塞都市アジャンに駐屯させて、予備兵力として使う予定です」
この隠し玉はディアスボラとガルビア半島の間の地図から消えた大地である。
ホーライ王国の滅亡と交易路の衰退によって都市が滅び、蛮族と亜人の楽園となったこの地ではゴブリン相手にジャイアント族と蛮族とリザードマンが大苦戦をしていた。
多産から来る兵力差がその主要因だ。
で、都市の再興と交易路の整備をつけた上でゴブリン族討伐を条件に彼らと同盟を結んだのである。
戦いが勝利に終わったら、王家直轄の元で自治をと考えている。
数は揃えたのだが、それゆえに信頼ができないし、蛮族ゆえの文化的摩擦から彼らを街の中に多数入れられないという欠点もある。
だからこそ私の直轄にして目を光らせる必要があった。
だが戦力としては絶大で、リザードマン族は千人、ジャイアント族は十数人、蛮族ことバーサーカーとアマゾネス達が五千人も協力してくれたのだ。
リザードマンに川の防衛を任せ、蛮族ことバーサーカー達を遊撃戦力という名前の使い捨てにする。
並の人ならば、ジャイアントの巨体で沈むのだ。
他にも隠し玉は有る。
「同じく、カストラード王国から人魚のケートーと人魚たちが、アヴァロン島よりデボネア将軍とテンプルナイトが魔法都市アングレームと貿易都市リモージュの防衛についてくれるそうです。
ここにアッシュ殿と兵三千を置きます」
人魚たちはその海での加護を使って海上輸送に大活躍してもらう予定で、デボネア将軍と千騎のテンプルナイト達は切り札として使わせて貰う予定である。
この二カ国も新生ゼノビア王国が負けて滅んだら次は自分たちだと分かっているだけに戦力の出し惜しみはしていない。
この二者と共闘できる将としてアッシュ将軍に出馬を願った。
「よかろう。
この戦いの要の都市を守りきろう」
老将はただ淡々とそれを了解した。
彼が率いる三千は選抜して士気も練度も高い者を集めている。
「現在の帝国軍はシャングリラを落とす為に戦線を一本化しています。
その為に、アンタリア大地とアンダルシルから戦力を引き抜きます」
永久凍土を落とさなかったのはこの為だ。
かの地を治めるミザールにガルビア半島に攻め込む意志がないのは分かっている。
とはいえ、からにする訳にもいかないから、引き抜けるのはアンタリア大地とアンダルシルからの戦力になる。
「降伏兵と志願兵が主体ですが、その兵力は六千。
既に工業都市ペリグーに送り込んでおり、貿易都市ラロシェルに配備する予定です。
この部隊の指揮はサイノス候爵にお願いしたい」
「心得た」
候爵位を得た彼だが、もちろんアーウィンドも一緒だ。
最左翼に六千もの兵を置いておくのは、激戦地となる貿易都市ソミュール防衛時に背後から突いてもらうためにほかならない。
ジュルクは残って占領地の防衛をする事になっている。
「激戦地になる貿易都市ソミュールの防衛ですが、兵三千を率いてランスロット卿にお願いしたい」
「心得た」
最前線になる貿易都市ソミュールはパラディンに出世したランスロットに任せる。
彼が率いる三千は反乱の初期組で一番練度が高い。
「神聖都市アルカションと城塞都市アジャンは兵七千で私が守ります」
戦線指揮を取るのは私だから、私も兵を率いて前に出る。
私が率いるのはアンダルシルまで私についた連中に、さっき言った蛮族や亜人達の同盟軍とオルシーナ率いるドュルーダ修道会騎士団である。
オルジーナ達の最初の仕事は、敵に剣を向けるのではなく、怪しい同盟軍相手にハニトラを仕掛けることになるだろう。
「決戦ゆえ、陛下には近衛騎士団を含めた五千を率いてポアチエまで出てきてもらいます」
「わらわもついてゆくぞ」
「どうぞご随意に。
アクエリアス様も構いませんよ」
「宰相の好意に感謝します」
王都ゼノビアの防衛は財務大臣のトートとギルバルド侯爵が受け持つ事になる。
ギルバルド侯爵が育成した魔獣部隊はライアンが戦線で使うことになる。
「大将軍デスティンが指揮する五千の兵が天空シャングリラ攻略部隊になります。
我々の飛行戦力ではこれが運べる限界で、上にどれだけの兵がいるか分かりません」
「構わない。
エリーを信じるよ」
真顔で堂々と言うなよ。イケメンめ。
という訳で、今回の決戦戦力をまとめてみる。
ディアスポラ防衛戦
王国軍総司令部 ポアチエ
総司令官トリスタン陛下
近衛騎士団他 五千
大将軍デスティン
天空シャングリラ攻略部隊 五千
貿易都市リモージュ
将軍アッシュ 王国軍右翼 三千
将軍デボネア 同盟国 千
貿易都市ラロシェル
サイノス候爵 王国軍左翼 六千
貿易都市ソミュール
聖騎士ランスロット 防衛部隊 三千
神聖都市アルカション
エリー候爵 王国軍中央 七千
合計 三万
なんとかかき集めた三万である。
しかも、3分の1以上が降伏兵や同盟国で士気が怪しく、もう3分の1は動員したての新兵で練度が怪しい。
だが、勝てない戦いではない。
勝ち筋は薄い分の悪い戦いだが、勝てない戦いではないのだ。
こうして、新生ゼノビア王国の運命を決め、長く語り継がれる決戦。
ディアスポラ=シャングリラの戦い
は、その幕を開けた。
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