『夢の中の現実』
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『密会Ⅱ』
翌日、取り立て屋は、客として店に連絡してきて、自宅で会うことに。
素直に真っ直ぐ言った。
『零那に隠れて父さんと会ってる理由が知りたい!!』
『バレたんか...まぁ零那チャンや父さんに無理矢理ナンカやらそうとか、悪い事考えてるワケちゃうから安心しぃや』
『チャント支払ってますからね!ほな何なんですか?父さん、組とはもう関係無いやんな?』
『ん~...零那チャンにバレたら厄介なん解ってたけどホンマ怖いもん無しやなぁ...』
『死ぬよりツライ事いっぱい在ったからなぁ...』
『確かになぁ...』
暫く沈黙が続いた。
ファイルを目の前に出された。
零那のフルネームが書かれてた。
ご丁寧に父さんと同じ名字の下にカッコ付で養父と初婚相手の名字まで。
『で、何、コレ...』
『見たらええよ』
ファイルの1ページ目には、零那の生年月日から大阪の平尾の住所、母さんの育児放棄ぶりから兄の素行の悪さ、姉の腹黒さや、零那の言葉遣いの悪さまで書かれてた。
近所の人に、産まれて初めて、おにぎりを食べさして貰ったことや、幼児にもかかわらず母さんを憎しみ恨んでたことまで...
とにかく事細かく生活ぶりが解る内容がビッシリ。
監視されてたんかと思うくらい...
平尾の家を出た後の行き先や動向。
それからの生きた道筋、様々な事件や人間関係、家族構成や家庭内の状況なども事細かく書かれてた。
勿論、零那が加害者側である内容も被害者側である内容も。
決してスベテでは無いけれど...
誰がこんなに綿密に知り得る事が出来るだろう...
暫く言葉が出んかった...。
『それ、よぉ調べられとるやろ。間違ってるとこあったら訂正するから言ってな』
『え、何の為に?』
『何の為?ん~...強いて言うなら親心なんかなぁ...』
『え、父さん?調べろって言われたん?コレ知っとん?読んだん?え、ちょ、待って...いつから?』
零那、脳内パニック。
だってこんなん知ったら確実に殺しに行くし!!
零那久々に過呼吸。
『安心して零那チャン。マダ見せてない。取引出来て無いから渡せれんしな』
『取引って...?』
『娘の情報料100万円。今迄長年かけて作り上げたコレ、100万円って身内価格にしても安いモンやでぇ』
『ほな父さんはアンタにお金払ってんの?』
『零那チャン、父さんに小遣いやってんのは誰?
コレが父さんの手に渡ってサヨナラする日が来る。時間の問題やなぁ...せっかく感動の再会で幸せな家族の時間を取り戻せたのに...』
『...今迄ナンボもろたん?それ全部返済に充てて!!情報料はチャラにして!!今更、父さんを犯罪者にしたくない!!何より離れたくない!!それに...知らん方が幸せなことも在るやん...』
『えらいなぁ零那チャン。父さんも、こんなん知りたぁ無い思うねん。知ってしもぉたら父さん怒り狂うからなぁ。
ただ、施設に入ってたことは前に言うたから父さん知っとるで。理由は言うとらんけどな』
『なんでそれだけ?』
『聞かれたんや施設居ったか』
『それだけ?』
『せや、1万円でな』
『なんでやろ...』
『心配やったんやろな、生活や養父の事も含めて...』
あっという間にタイマーが鳴った。
聞きたいこと、お互いに消化してないから延長。
『俺も零那チャンに聞きたいことあんねん。零那チャン、父さんのことごっつ好きやんなぁ?』
『はいっ!!』
『それってなんで?』
『え、なんで?理由?』
『母さんの方はキライやろ?』
『はいっ!!』
『それはなんで?』
『え、だって...母さんやか何もしてくれなんだし...父さんは家居らんくて、でも、家居らんのは母さんのせいやって...』
『それは事実?』
『...チョット待って?何?何か違う?でも、うん...事実っ!!』
『ゴメン...せや、その通り』
『え、なんなん?』
『零那チャンは芯が強い。守りたいモンは何が何でも守ってきた。今迄の生き様を見てきて、よぉ解ってるつもりや。
でもな、父さん、零那チャンのことになったらアカンねん。ただの父親やねん。
俺、ただの取り立て屋ちゃうねん。零那チャンの父さんのこと、今でも尊敬しとんや。せやからこんなことやっとんねん。
頼むっ!!父さんに嘘の過去を話して安心さしてやってくれ』
頭下げられた。
『そんなん...頭下げられんでも、なんぼでも嘘くらいつく。絶対犯罪者にやかささへんっ』
『零那チャンなら絶対そう言うてくれるって信じてた。あの日、コンビニで会ったのは零那チャンに目撃さす為やったんや。タイミング次第やったけど...今日話せて良かったわ』
『でも、また父さんから連絡くるやんね?情報料とか』
『そっちはどうにでもなる。でも今夜に話してな、嘘の昔話。ほな情報はもう要らん言うやろ』
『解った』
『よし、契約成立!』
『変な感じやけど...でも、父さんのこと好きな人が身近に居るってごっつ嬉しい♪』
『ホンマ変な感じやし変な関係やけどヨロシクなっ♪』
『はいっ』
事情が解ったからか、すごく安心してチカラが抜けてしまった。
この人のこと、信用できると想えた。
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