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アインクラッド篇
movement Ⅱ 絶望と希望の二重奏
アマギ 其之一
取り敢えず次はこっちのターンだ。やや距離があるが一歩で詰め、右手で袈裟斬りを放つ。当然防がれるがそんな事百も承知。弾かれた剣を引き戻し、縦横に連撃を加える。しかし、流石と言うべきか、KoB副長の実力は伊達ではなく、的確にパリィしてくる。一度距離をとろうとすると、その隙に細剣基本技《リニアー》の追撃がくる。最初の突きと同じ要領で後ろへ回り込むが、一度見せた技。二度は通じない。高速で剣を後ろへ振り抜く。が、
「!?」
声に出さない驚愕は、全力で剣を振り抜いたその先に、俺がいなかったからだろう。避ける、或いは防がれるならばまだしも、見当たらないのだから。そこで何かに気付いたように顔を上げる。恐らく彼女は見たのだろう。宙返りしながら頭上を飛び越えていく俺を。
「オオォ!!」
「クッ……!」
着地と同時に両手剣単発技《バックラッシュ》を発動。反時計回りに体を回転させ、猛撃を叩き込む。かろうじて防がれたが、2~3m吹っ飛ばす。
「………何ですか今のは?」
「命名『ムーンサルト』、最初のアレ見せた後にやると大体引っかかるんだよね。まあ、最初に見せた『プルターン』同様、一回しか使えないけど。」
仕組みは簡単。後ろへ回り込んだタイミングでジャンプし、軽業併用で前方宙返りを決めるだけだ。ただし、相手が引っかからないと相手に背中を晒すだけになってしまう。
「でも、あなたの強さは、こんなものではないんでしょう?」
「んー………。」
実を言うと、この女に勝つこと自体は、さほど難しくない。《剣聖》を使ってしまえばそれで済む。問題はそこからだ。聖騎士と閃光というアインクラッドでも十指に入るプレイヤーが二人も見てれば、《剣聖》の存在は一発でばれる。そうなると厄介だ。この二人なら漏洩の危険は無いだろうが、それでもなるべく知られたくない。
「どうしたもんかねぇ?」
「………?」
「ま、何とかなるだろ。」
閃光の一挙一動に集中する。互いに探り合いの状況。視界上部のカウントダウンが60を切った瞬間、同時に地面を蹴る。モーションから細剣高位八連撃ソードスキル《スタースプラッシュ》と判断。その初撃の開始地点に、《クレセント》をドンピシャでぶつける。
スキルを発動させ、ライトエフェクトを纏ってから、実際にアシストが始まるまでには、僅かながらタイムラグがあり、連撃数が増える毎にそれは大きくなる。そこを衝き、初撃が放たれる前にスキルのモーションを大きくずらすと、スキルは強制終了されるが、硬直は通常通り課せられるという中々理不尽な状態に陥る。それに気付いた俺が編み出した、意図してその状況を作り出すシステム外スキル《剣技妨害》。速すぎても遅すぎても、さらには当てる場所が狂っても失敗する。
「なっ!?」
「もらったあぁぁ!!」
片手半剣“最上位”ソードスキル、《コズミックドライバー》十一連撃を発動。全段ヒットし、HPを、三割以上削り取った。
Winner amagi !!
システムウインドウがそう告げた。
「満足か?これで。」
「ああ、噂以上の実力だったよ。
「そりゃどーも。ああ、約束は守ってくれよ?」
「結晶の件かね?勿論だとも。後で届けさせよう。」
「ほいよ。じゃ!」
放心状態の閃光を放っておいて、俺は取り敢えず帰った。
「ち、ちょっと待ちなさい!」
「んあ?」
転移門前で閃光が追いかけて来た。
「何だよ?」
「何故です?」
「何が?」
ここ最近コイツに質問されてばかりなので、多少の苛立ちをこめて返すが、向こうは意に介さないかのように続ける。
「あなたは、どうしてそんなに強いんですか?」
「………また難しいことを………。第一そんな事聞いてどーすんだよ?」
「……私には、どうしても強くなりたい理由があるんです。」
「……全プレイヤーの解放のため、とか言っちゃうか?」
「………何か悪いですか?」
「いや、俺には“アイツ”と肩を並べたいっていうのもあるんじゃないかなーって?」
反応は激甚だった。
「あ、な、ば…馬鹿じゃないの!?そ、そんな事ある訳な、無いじゃない!!?」
(………わかりやすっ!)
中々面白い物がみれた気がした。
「まあ、そーゆー事にしとこう。」
(しかし、強くなった理由かー、)
「………最初は茅場の野郎を一発ぶん殴ってやりたくなってね。だから何がなんでも生き残ってやらぁ!って思ってたんだけどねー。」
「………。」
「でも、姉貴が殺されてから復讐に取って代わった。来る日も来る日もソイツを殺す事しか考えてなくて、でも殺せなかったんだよなー。」
「…………負けたんですか?」
「いや、勝てなかった。負けもしなかったけどな。で、そっからシエラさんと会って、こき使われながら仲間集めて、この世界を楽しむことを知って……まあ、だから結局、この世界を『生きてる』から、かな?俺が強いかどうかしらないけどな。」
何も言わない閃光に、じゃあなとだけ言って、今度こそ転移門を潜った。
後書き
段々アマギ君の過去が明らかになってきました
アマギ「いやー、中々ハードだぜ?俺の過去。」
てな訳で、次回から過去編でーす。
アマギ「また随分唐突だな?」
ホントはもっと後のつもりだったけど、思ったよりイマジネーションが弾けてね……
アマギ「へー、そーなんだー、すごいすごーい。」
興味持とう?つー訳でゲスト二人、どーぞ?
アマネ「お邪魔しまーす♪」
???「お邪魔いたします。」
アマネ「………何故ここに?特にお前!まだ出てきちゃだめだろ!!」
???「ウフフ、良いじゃないですか、ね?」
アマネ「そーよそーよ、次回から私達三人の話なんだから。」
アマギ「………おい作者?」
よーし、次回から断章 《南十字の追憶》に入ります。つきましては第二章は一時ストップします。
アマギ「無視すな!!」
ゲボォッ!? ガクッ ドサッ
アマギ「………ま、しょーがねーな。次回も楽しみにしてくれ。」
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