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アインクラッド篇
movement Ⅱ 絶望と希望の二重奏
VS閃光--②
前書き
本作において、この辺りの時期のアスナは、アマギと対比させていこうと思ってます。本作正ヒロインであるソラさんより現状出番が多かったりしますが、あくまで彼女はキリト氏とくっつけるつもりです。アマギとの間にはフラグ立てる予定はありませんので。
五十層攻略も既に一週間、迷宮区の探索も残すところあと半分というとき。
「お邪魔しまーす。」
現在、四十七層リンダースにある血盟騎士団本部。今日俺はそこに呼び出されていた。
「待て!貴様何者だ!!」
え?おい、呼びつけといて話通してないのかよ
「勘弁してくれよ、聖騎士さんよぉ。」
「すまないな。君がこんなに速く来てくれるとは思っていなかった。」
衛兵?の奥から深紅のローブを身に纏い、やはり深紅の全身鎧を着こんだ男が現れる。間違いない、『神聖剣』のヒースクリフだ。そのどこか無機質を思わせる瞳がこちらに注がれている。
「だ、団長!?」
「君、彼は私の客人だ。通してやってくれ。」
「ハッ!失礼しました!」
直立不動で敬礼した団員をよそに、俺とヒースクリフは奥の一室に入った。そこそこ広い部屋、会議室か何かだろうか。
「時間が無いのでね、早速本題に入らせて貰おう。」
「ああ、」
「単刀直入に言おう。私とデュエルしたまえ。」
「………はぁ?」
話の流れがサッパリ掴めない。何をどうしたらそうなるのか。その時、ドアがノックされた。
「入りたまえ。」
「失礼し………ます。」
入ってきた人物は、俺を見て一瞬硬直する。アインクラッドで数少ない超絶美人、『閃光』アスナがそこにいた。
「何で……あなたがここに?」
「コイツに呼ばれた。デュエルしろって。」
「え!?」
驚きで固まる閃光はほっといて、俺は今一度聖騎士に向き直った。
「理由を説明してくれ。」
「なに、そこのアスナ君からフィールドボス攻略の時の話を聞いてね。是非ともかの『南十字星』の底を見てみたいと思ったのだよ。」
いい迷惑だ。正直かなり面倒くさい。
「断る。」
「ほう、どうしてだね?」
「そもそも付き合う理由が無え。」
「それもそうだな。では……回廊結晶五個、勝てたら十個でどうかな?」
「………回廊つったか?」
「ああ、」
「転移じゃなくて?」
「勿論だとも。」
「よしやろう。」
「ちょ、ちょっと!」
そこでフリーズしていた閃光が意識を取り戻したようだ。
「団長の手を煩わせる事ありません!私がやります!!」
「………えー、」
「えー、じゃない!宜しいですか?団長!」
「ああ、いいだろう。出来れば自分で図りたかったが、今は彼の強さが分かればいい。」
了承を受けた閃光は部屋をでた。仕方なくついていくと。裏手の何もない空き地にでた。どうやら訓練に活用しているようで、隅に訓練用の案山子が転がっている。と、目の前にウインドウが出現。曰く
『asunaにデュエルを申し込まれました。』
渋々受諾を選択。60秒のカウントダウンが始まる。思えば前回は、お互いにかっとなってろくに考えもせずに突っ込んだ節があるので、実際に本気でやるのは今回が初めてだろう。
10
相手の構えは中段。恐らく初撃は隙の少ない単発突き
9
対するこちらは下段。ほぼ大抵の攻撃ならこれで防げる
8
距離は5m強、俺やあの女の敏捷値なら一秒未満だ。
7
相手の鋒が僅かにぶれる。狙いを定めているのだろう。
6
揺れ動いていた刀身が定まる。視線は右の脇腹辺りを狙っているが十中八九フェイント。
5
目を閉じる。神経を極限まで集中させる。
4
もっと深く、自身の内側に潜り込むように。
3
世界から一瞬感覚が消える。次いで、今までの倍以上の情報を聴覚が伝えてくる。
2
柄をもう一度強く握り、息を吐く。
1
目を開く。先ほどまでの視界は、靄でもかかっていたかのように思えるクリアな世界。全てを見透かせるようにすら思える。
DUEL!!
この文字列が閃いた瞬間、閃光がその名に恥じぬ速度で突っ込んでくる。攻略組に名を連ねるプレイヤー達ですら、十人中九人は見えないであろう神速の突き。しかし、恐らく攻略組最高の敏捷値をもつシエラさんや、ソラの鞭の先端速度に慣れている俺には、その一挙一動が手に取るように見えていた。こちらに迫る鋒は最初、右の脇腹を目指していたが、途中で軌道を変え、右肩にその狙いを移す。まだだ。まだ避けない、まだ、まだ、まだ…………
ーーーここっ!!
ギリギリまで引き付けた刃を、右足を半歩退き、紙一重でかわす。必中の突きを外された閃光の目が、驚愕に見開かれる。そのまま回れ右の要領で一回転して背後に回り込み、がら空きの背中にブラッドクロスを振り下ろす。が、その一撃は、閃光がソードスキルを発動させることで自身を加速したことで、鋒が背中を掠めるだけに留まった。
「あらら、今ので決めるつもりだったんだけどな。」
「…………っ!」
細剣を構え直す閃光。まだ勝負は始まったばかりだった。
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