ソードアート・オンライン stardust=songs
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アインクラッド篇
movement Ⅱ 絶望と希望の二重奏
星屑達の実力
「じゃ、入るぜ。アラン?」
「問題ない。」
アランは星屑之歌唯一のタンク。それ故こういった場面では先陣切って突入し、初撃を受け止めることが多い。両手で持ったタワーシールドには大型の棘が幾つもあり、《盾殴打》スキルを使って殴るときに、刺突ダメージが追加される。固有名『ヘッジホッグ』。星屑之歌専属の、とある鍛冶屋作の逸品だ。
「3…2…1…ゴー!」
合図と共にまずアランが、続いて俺達と血盟騎士団のパーティーがボス部屋に入る。部屋の真ん中に一体のゴーレム。名前は《ドレイク ザ タイタニウムゴーレム》と読める。『チタンのゴーレムドレイク』、という意味だろうか?
「行くわよ、アランは敵の攻撃を防いで!リルはフォロー、アマギとマシラは両脇から攻撃!!弱点を探って!」
「「「了解!」」」
「………任せろ。」
やはり遅れるアランの返事を合図に素早く陣形を組む。そこに鈍い銀色のゴーレムが拳を振り下ろす。ガアァァァン!!と激しい音と火花が散る。
「おおりゃあぁぁぁぁ!!」
気持ちのいい気合いと共にマシラが突っ込む。両の拳を振りかぶり、目にも留まらぬ(俺は見えるが)連撃を叩き込む。ゴーレムの例に漏れず打撃に弱いのか、思ったよりHPが削れる。さらにマシラは、ゴーレムの体を駆け登り、頭の模様に蹴りを決めた。この軽業スキルと体術スキルを併用した戦闘スタイルを初見で見切ることは困難を極める。そんな彼を人は『山猿』と呼ぶ。
「うわっ!?」
しかし、ゴーレムも反撃を合わせる。着地と同時に放たれた拳はしかし、横合いから割って入った金髪の人影に阻まれる。左の盾で器用にいなされた拳は地面を叩き、そこを右の剣で攻撃される。
「はしゃぎすぎよ、マシラ。」
「姐さん、アザっス!」
妨害者はリル。白いワンピースの上から銀の軽装鎧というミスマッチな格好だが、彼女が着ると何故か似合う。手には金色がかった片手剣と、質素な木製の盾。それで攻撃を的確に捌き、ダメージを与えていく。彼女の二つ名、『金色の風』は、速さではなく、その捉えどころのないスタイルから献ぜられたものだ。
「リル、代われ。」
その一言で通じたようで、敵の一撃をソードスキルで弾き、後ろへ下がる。入れ代わった俺は片手半剣高位ソードスキル《スラストスターズ》、七連撃を発動。一気に一割近くHPを削り、ノックバックさせる。
「今よ、アラン!」
「………フッ……!」
短い気合いから放たれたのは《盾殴打》スキル、《プレッシャーシールド》。一撃でゴーレムを5mほど吹っ飛ばす。『鉄壁』のアラン、いざというとき頼れる男だ。
「スイッチ!」
それを合図に全員で退く。代わりに血盟騎士団のパーティーが前に出て、立ち上がるゴーレムに追撃を加えていく。
sightアスナ
強い。その一言しかなかった。体術使いの少年も、金髪の片手剣士も、巨漢の壁戦士も、そして、片手剣より長く両手剣より短い不思議な剣を使うあの男も。
このゴーレムと戦い始めて二十分。四本あったHPは、三本目を赤く染めている。うち二本分を削ったのは彼等だ。
(何故ーーー?)
何故それほどの強さがあって、今までまともに攻略して来なかったのか。どうして彼等は、この世界でああも笑えるのか。互いをフォローしながら戦う彼等の口元には、等しく笑みがあった。
「ハアァァァァ!!」
苛立ちをぶつけるように、細剣基本技《リニアー》を放つ。苛立ち?何に?
「もう、……訳分からないじゃない。」
私は、一体何に苛立っているのだろう。何が、私の意思を妨げるのだろう。
sightアマギ
三本目のゲージを削り切り、ボスが雄叫び(口があるかは別として)を上げる。初めは偵察だけのつもりだったが、このまま押し切れそうだ。
「うっし、ラスト一気にいくぞ!!」
ブラッドクロスを頭上に掲げる。片手半剣スキル単発重攻撃《カルネージ》。真っ赤なライトエフェクトが剣を包み、大型トラックを思わせる重く低いサウンドが響く。
「オオオオオ!!」
見るとリルとマシラが足留めしてくれている。この技は威力はあるが隙が大きいため当てずらいので、正直助かる。
ズガァァン!!と、剣ではあり得ない様な衝撃音が轟き、一気にHPが三割削れる。両脇からマシラの拳とリルの剣が、やはりそれぞれ閃光を纏って炸裂する。バク宙で場所を開けるとアランが走り込んできて、やはり盾で殴る。
「背中借りるぜ!!」
その頼もしい背中を蹴りつけ、再び飛び上がる。
「ぜえぇぇりゃぁぁぁぁ!!」
片手半剣十二連撃《ペルセイダス》。ペルセウス座流星群を表すらしいそのソードスキルがゴーレムに殺到する。
「ソラ、ラストどーぞ。」
鞭五連撃《ゼラニウム》の紅い光が疾る。僅かに残ったゲージを全て消し飛ばした。
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