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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epico?-Bそれは愉快痛快で~Undefeated and Invincibility~

†††Sideはやて†††

アリサちゃんと、シャルちゃんやトリシュの同郷の親友で教会騎士仲間やってゆうクラリスちゃんが、あろうことか新しい神器持ちと遭遇したってフィレスさんから連絡が入ったことで、わたしら八神家はスカラボ→現場近くの病院経由で北部のミラ地方に到着して、空を飛んで現場に急行中や。

(遅れてフェイトちゃんとアリシアちゃんとアルフも来てくれるとのことやし、焦らず、でも迅速に対処せえへんとな)

『アリサとクラリスが接敵! 街中のライブカメラ映像を拝借しているのだけど、ターゲットの姿だけが霞んでいてハッキリと認識できないの』

フィレスさんから通信が入る。相手の神器がどんな物かも判らへん今、戦闘なんか危険すぎる。ルシル君も今回の一件に、『これじゃ神器の詳細が判らないな・・・!』監察課オフィスからのアドバイザーとして参加してくれることになった。ホンマは一緒に戦ってほしいんやけど、ルシル君にはルシル君の仕事もあるからな。うん、諦めや。

『なんだろう? アリサがすごい怒ってるわ。・・・あ、交戦を開始した模様! アリサ、どうしたの!? クラリス、状況説明!』

アリサちゃん達とリアルタイムで通信できる環境を整えてくれたフィレスさんの問いに、『狼頭がアリサのおっぱいを触って、おっぱいが小さいことを褒めた』クラリスちゃんからそんな返答が。

『アイツ! アイツ、ブッ殺す! 何が、ナイスちっぱい、よ! ロリコンは死すべし! あのふざけた頭の中を焼き払ってカニ味噌みたいにしてやるわ!』

すごくキレてしもうてるアリサちゃん。うん、理解できる怒りや。女の子の胸を許可なく触ったことだけでも万死に値するレベルやのに、小さいことを褒めるやなんてあの世でも拷問地獄に処さへんと許されへん大罪や。

『アリサ! カニ味噌は脳みそじゃなくて中腸線――肝臓と膵臓のことだぞ!』

そんなアリサちゃんに冷静なツッコみを入れるルシル君。ルシル君、今は空気を読むところや。そのツッコみはアカン、アカンよ。案の定『判ってるわよ、それくらい!』アリサちゃんの怒りの矛先がルシル君に向かうわけで。

『ていうか、早くあのロリコンの持つ神器の正体を教えなさいよ! 逃げ出してんのよ今! 絶対に逃がさないわ! 必ずとっ捕まえてやる! あたしの胸に触ったこと、土下座100回でもさせなきゃ気が治まらないわ!』

『そうしたいが、こちらからはターゲットの姿が確認できないんだよ。何か特徴は無いか?』

『義賊ファントムって記事を調べてみて! 間違いなくソイツよ!』

アリサちゃんからの情報を基に『ファントム・・・。これね! みんなにデータを送るわ!』フィレスさんが調べ上げて、わたしらにもその情報を送ってくれた。展開されたモニターに表示されるのは、ファントムってゆう、義賊行為を行ってる犯罪者のデータ。

「サーチャーやカメラに映ってんのに記録されない、か」

「正しく今の状況に酷似しているな」

ヴィータとシグナムが唸った。しかも「肉眼での目撃情報がバラバラなのね」シャマルの言うように、完璧に人の目も誤魔化せるだけの術を持ってるみたいや。わたしは「アリサちゃんとクラリスちゃんもそうなん?」って、見えてるファントムの姿が違うんか訊いてみた。

『うん。私は狼の頭をした人型っていう風に見えてる』

『あたしはピエロね! 真っ赤なスーツ着て――あーもう! 外した!』

アリサちゃんのその言葉の直後、視界内に火柱が立った。アリサちゃん、手加減なしで攻撃してるな~。とにかく「現着! これより介入します!」アリサちゃん達を確認したから連絡や。フィレスさんからも『許可します! アリサを止めてあげて!』戦闘許可が下りた。けど目的がアリサちゃんの制止って。無意識やろか・・・?

「シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ! とにかく確保を最優先や!」

「「「はいっ!」」」「おう!」

「リイン、アイリ! わたしとヴィータのサポートよろしくな!」

『はいです!』『ヤー!』

わたしとユニゾンしてるリインと、ヴィータとユニゾンしてるアイリにも指示を出す。ビルの隙間を急降下して、アリサちゃんとクラリスちゃんを確認。リインが『大きなお馬さんですぅ!』クラリスちゃんが乗る黒い馬の規格外なサイズに驚いた。わたしらも初見やからビックリや。

「アレがターゲットか・・・!」

「そもそもアレは人間なのかしら・・・!?」

神器持ちのターゲットを視認した。アリサちゃんはピエロ、クラリスちゃんは狼頭って言うけど、わたしはヒマワリの頭に玩具のような顔があって、服装は緑色の全身タイツで両手は葉っぱって感じ。狼頭でもピエロでもあらへん。

「みんな。何に見える? わたしはヒマワリの着ぐるみなんやけど・・・」

『え? リインは海賊風の衣装を纏ったウサギです』

『アイリは吸血鬼っぽいけどね。顔はトマトかな・・・?』

「あたしは・・・あれだ。サンバの格好! 顔はきゅうり!」

「私はドアマンの格好に、三日月の頭に見えます」

「ダルマですね、私は。服装は・・・白衣なので、医師でしょうか」

「・・・侍です。顔は動物の頭蓋骨ですね」

「みんな見事にバラバラやな・・・」

外見もそうやけど、その動きは完全に人のものやあらへんかった。アリサちゃんの火炎砲撃をくねくねした動きで躱して、クラリスちゃんの乗る馬の突進をまともに受けて轢き飛ばされたかと思えば、バネのように全身が伸び縮みしてボヨンボヨン跳ね回った。

「なんなのよコイツは!」

――イジェクティブ・ファイア――

アリサちゃんの怒声がハッキリと耳に届いた。そんなアリサちゃんのバヨネットフォームな“フレイムアイズ”の銃口から発射される火炎砲撃がターゲットが当たるかどうかって時、「ひょおおお~~~~!」空気を吸う音と一緒に砲撃がヒマワリの、口に当たる部分の中に吸い込まれてった。

「げぷっ!」

大きなゲップと一緒に輪になった黒煙が吐き出されて、「受け取れ、私の想い!」その輪を射抜くように、先端がハート型の煙を吐き出した。アリサちゃんは“フレイムアイズ”の斬撃で斬り払うと「要らんわ!」怒鳴り声を上げて、火炎弾フレイムバレットを連射。ターゲットは「ひゃっほぉ~い! やっほぉ~い!」陽気な声を上げながら、闘牛士の持つ赤い布のような物を持って、ヒラリと火炎弾をやり過ごしてく。

「むっきぃーーーー!」

「アリサ落ち着いて! 怒りで顔がひしゃげてるよ!」

「ひしゃげ――・・・ああもう! ストレスでぶっ倒れそうよ!」

アリサちゃんの血管いつか切れへんか心配になってきた。これ以上はあのターゲットに好きにはさせへんよ。わたしは「シャマル、ザフィーラ!」捕獲担当の2人の名前を呼んだ。

「はい!」「はっ!」

――鋼の軛――

2人が発動するのは相手を貫いて拘束する魔法。そやけど今は非殺傷なんて設定はあらへんからもう1つの使用方法、囲んで閉じ込めるって形でターゲットを包囲した。

「アリサちゃん!」

「はやて! シグナム達も来てくれてサンキュー! でも、アイツをしばくのはあたしだから取らないでね。さぁ、どうしてくれようかしら、ふっふっふ。まずは仮面を剥いで、逆さ吊りにして火で炙ろうか」

悪者笑いをしてるアリサちゃんの様子に『アリサさん、イっちゃってますね・・・』リインが苦笑した。そんな中でクラリスちゃんが「ありがとう。私たちだけじゃ捕まえられなかった」伏せた馬から降りて、わたしらにお辞儀した。

「気にせんでええよ。元よりこの手合いはわたしらの管轄やからな」

チーム海鳴の機動一課として最後の仕事である神器回収。今回のを回収すれば残りは2つ。1つは人に変身できる神器やから、放っておけば向こうからコンタクトを取ってくれるはずってルシル君は言うてる。つまり実質あと1つってわけやな。

『大きなお馬さんですぅ! カッコいいですね!』

「えっと、リインだっけ? ありがとう。私の愛馬、アレクサンドロス。私ともどもよろしくね」

『あ、はい! 八神リインフォースⅡです! よろしくお願いしますです!』

『誰か。判る限りでいいからターゲットの特徴を教えてくれ。外見はみんなバラバラだというのは判ったが、もう少し踏み込んだ特徴が知りたい』

ルシル君からの通信に、わたしらは今見たターゲットの動きを伝えることに。ゴムのようにくねくねしたり、バネのように飛んだり跳ねたり、魔術化した火炎砲撃を呑み込んだり、とか。ルシル君は『なんか嫌な予感が・・・』って心当たりがあるんか唸った。

「思い当たることがあるんなら教えなさい!」

アリサちゃんがそう言った直後にバキバキって音がして、ガシャァンって音を立てて鋼の軛が粉砕された。慌てて臨戦態勢に戻るんやけど、「あや?」そこにターゲットの姿はなくて、「ああ! 穴掘って逃げてやがる!」ヴィータが言うように地面に大穴が開いてた。

「あんのロリコン野郎! 逃がすものですか!」

アリサちゃんが血走った目で必死に周囲を見回して、そんでクラリスちゃんの方を見て一気に殺気だった。わたしらもクラリスちゃんへと視線を向けて、その光景にドン引きした。唯一状況が判ってへんクラリスちゃんは「な、なに・・・?」小首を傾げるだけや。

「クラリス! 足元!」

「へ? ~~~~~っ! きゃぁぁぁぁぁっ!」

クラリスちゃんの足元にターゲットが居った。掘った穴から顔だけ出して、クラリスちゃんのミニのタイトスカートの中を覗き込んでた。スカートの裾を左手で押さえたクラリスちゃんは、右手に持つ2mちょっとはある槍の穂先をターゲットの顔に向けて振り下ろした。

「ひゃっはぁ~! ナイス、ロリパンツ♪」

「パンツじゃないもん! アンダースコートだもん! 別に見えても良いもん!」

ターゲットは穴に戻っては瞬時にまた別の穴を掘ってそこから飛び出してきた。すかさず「紫電一閃!」シグナムと、アリサちゃんが「バーニングスラッシュ!」炎の斬撃で前後から挟撃。ターゲットはその一撃を受けて、「っ!!?」胸から上、胴体、腰から下の3分割にバラバラになってしもた。シグナムとザフィーラを除くわたしらは「きゃぁぁぁぁっ!」悲鳴を上げた。

「し、し、し、死んでもうたんか・・・!?」

「マジか、マジなのか! シグナム、アリサ、どうすんだよ!」

「え? や、だって、そんな・・・!」

「ま、待て! 本当に殺してしまったのか!? 人を斬った手応えが無かったぞ・・・!?」

「ど、どど、どうしましょう!?」

みんなでオロオロ。フィレス一尉からは『何があったの!?』現状の説明を急かされて、『はやて、みんな! 大丈夫なのか!?』ルシル君には心配された。素直に今起きたことを伝えようとすると、「主! お前たちも下がれ!」ザフィーラが見るも無残な姿をしてるターゲットからわたしらを庇うような位置取りをした。

「あ、風船みたいに膨らんでる・・・!」

「えっ? 偽物!?」

「やはり通りで手応えが無いと・・・!」

3分割になってたターゲットの体が急激に膨らんでって、パァン!破裂した。目を瞑らんように必死に目に力を込めて、その後のことをしっかり視認。ターゲットの体やって思うてたソレはいつの間にか風船と入れ替わってて、破裂と同時に無数の紙吹雪が舞った。その内の1枚を手に取って見ると・・・

「ロリっ子サイコー❤・・・」

そう書いてあった。うん、引いた。ペッと投げ捨てて、いつどこから来るか判らへん変態さんなターゲットに即座に対応できるよう身構える。と、「はやてちゃん! 下です!」シャマルがわたしの足元を指差した。見るより早くスカートを左手で押さえて、“シュベルトクロイツ”の先端を向けつつ視線も下に向けた。

「~~~~っ!」

足元にはいつの間にか穴が開いてて、「ナイスアングル❤」そこからターゲットが顔を覗かせてた。管理局に入ってからの騎士服への変身中、自前の下着やのうて、クラリスちゃんのようなアンダースコートを穿くようにしてる。そやから見られてもええんやけど、わざわざ見ようとするような真似をする人は許せへん。

「リイン!」

『ボコにするです!』

「『ブラッディダガー!』」

穴に向かって高速射撃のダガーを20本と一斉射出。ターゲットは着弾より早く穴の中に消えてって、「うおっ!?」ヴィータの足元に現れた。すぐさまヴィータはゴルフのように“グラーフアイゼン”を振り被って「テメェは・・・!」フルスイングをお見舞いした。けど「くそっ、逃がした!」!」当たらへんかったようや。そこからはまるでモグラ叩きのような状況に。

「あの、どうしてか私とシグナムのところには来ないのですけど・・・」

「どれだけ待っていても一向に近付いて来んな・・・」

シャマルは捕獲体勢、シグナムは迎撃態勢で待ち構えてたんやけど、ターゲットはわたしかヴィータかアリサちゃんかクラリスちゃんかの4人にしか来ぉへんから待ちぼうけを食らってる。するといくつもの穴の中からポンって空気が破裂する音がして、また紙吹雪が舞った。

「あひゃひゃひゃ♪ 私がB.B.Aのスカートを覗くわけないだろう?」

「「BBA?」」

わたしらみんなが紙ふぶきの1枚を手に取って、そんで書かれてる内容に血の気が引いた。紙には、13歳以上のババアの下着なんぞ大金を積まれても見ない!って、えらく達筆で書かれてた。

「「ババア・・・?」」

シグナムとシャマルに振り返るんがちょう怖い。とりあえずターゲットの命に関わるような攻撃が入る前にわたしらで止めへんとアカンな。

「あーもう、うぜぇ! アイリ! ユニゾン・アウトして、お前も攻撃に参加だ!」

『え~?・・・う~ん、まぁ、別にいいけど』

「『ユニゾン・アウト!』」

ヴィータとアイリがユニゾン・アウトしたその瞬間、「ふぉぉぉぉーーーー!!」ターゲットが一番遠い穴から飛び出して来て、「好みにどストレートの幼女キタァァァァ!」アイリに向かって突撃して来た。

「『ブラッディダガー!』」

わたしとリインの包囲攻撃をまともに受けて爆散。その光景にビクッてなるんやけど、また別の穴から無傷なターゲットが飛び出して来て、再びアイリに突撃。そこに「鋼の軛!」ザフィーラの拘束魔法。次々と飛び出してくるソレらの合間を蛇のようににょろにょろ動いて回避しきった。

「マジか・・・! この・・・!」

――シュワルベフリーゲン――

「うりゃぁぁぁぁっ!」

――フレイムバレット――

ヴィータとアリサちゃんの射撃魔法、計20発。それらが一斉にターゲットに向かってく。ターゲットは背中に両手を回したかと思えば、どこからともなく身の丈を越える大きな盾を引っ張り出して来た。2人の攻撃はその盾に弾かれてった。

「レヴァンティン!」

≪Explosion≫

ターゲットの進路上にシグナムが立って、鞘に納めた“レヴァンティン”のカートリッジをロード、居合抜きの体勢に入った。そんで「退けババアァァァーーー!」また女の人に対してタブーを叫びながら突撃してくるターゲットに向かって・・・

「私の外見年齢は19歳! ば、ババアではない! まだ・・・まだ少女の年齢だ!」

――紫電清霜――

シグナムはなんやらしくない言葉を吐き捨てながら“レヴァンティン”を鞘から引き抜いた。まさに一瞬。目にも留まらへん速さで振るわれた“レヴァンティン”はターゲットの盾を真っ二つに斬り払って・・・

「私だってまだ・・・おばあさんじゃないですぅー!」

――ペンダルシュラーク――

シャマルの“クラールヴィント”から伸びた振り子4つが高速でターゲットの四肢を貫いた。ガクッと体勢を崩して転びそうになるターゲットへアイリが突進。ターゲットは「あぁ、やっぱり可愛いなぁ~!」って、比喩でもなんでもない、マンガとかで見るようにホンマに目玉だけをポーンと飛び出させてアイリを見た。

「アイリの可愛さにメロメロになるのはしょうがないよね♪ でも・・・罪は罪だよ!」

アイリが飛び出して来た目玉にビンタを食らわすと、目玉はどっかに飛んでって「にょぎゃぁぁぁ!?」ターゲットは空洞になった眼孔を両手で押さえて転んだ。転んだ勢いのままアイリの側まで連続前転で近付いたターゲットを「おしまい!」アイリが足蹴にした。

――竜氷旋――

アイリの足元から上に向かってとぐろを巻くように冷気が昇ってく。至近距離でそんな魔法を受けたターゲットはすごい勢いで凍結されてって・・・完全に氷漬けにされた。閉じ込めるんやなくて完全な凍結封印。ターゲットが動く気配はなくなった。

「・・・ターゲットの確保に成功」

『了解!』

フィレス一尉にそう報告して、わたしらはようやくホッと一息吐いてると、『・・・氷漬けにされたことが影響しているのか、ターゲットの姿をこちらでも確認。私は馬の被り物を被った作業員に見えるかな』フィレス一尉にはターゲットがどう見えてるんか言うた。続けて『俺も確認した。・・・アリサ』ルシル君からも通信が入る。

「なに?」

『君の見ている姿が半分正解だ。ピエロの仮面が当たりで、服装は俺から見るとキャップ、白Tシャツ、チェックのシャツ、青ジーンズ。君とクラリスが送って来たターゲットの服装のままだ』

「おお! やった・・・って、喜ぶのもどうかだけど」

「じゃあわたしらの目が誤魔化されてるってわけなんやね」

『そういうことだ』

「それでルシル君。このターゲットの持ってる神器って、ピエロの仮面ってことでいいのかしら?」

『ああ。シャマルの推察通りソレが神器だ。仮面型の魔造兵装・道化師の本能(ヴンシュ・ファイクリング)。装着した者の理性リミッターを解除し、本能のままに行動させるという物だ』

ルシル君からの説明に「本能・・・」わたしらはターゲットのこれまでの行動を思い返した。アリサちゃんの胸を触ってその小ささを褒めたり、わたしらのスカートの中を覗き込んできたり、13歳以上はババア呼ばわりしたり、ロリっ子最高って公言したり。うん、完全に変態さんや。そやけど、義賊行為もまた本能なんやな。変な正義感がそうさせたんやろか。

「それでルシル。この仮面の能力って、人の目を騙すだけじゃないんでしょ」

『戦ったのなら解ると思うが、対象が仮面を付けている間、あらゆる法則を無視する体を手に入れることが出来るんだよ。まずはどんな物も再構築できる。たとえば紙を鋼鉄に変えたり、自分の体を別の物に変えたりな。それにゴムやバネのような軟体になったり、斬られても問題なかったりと、攻撃によるダメージを一切受け付けない。全ての法則を味方にするんだ。早い話、仮面を付けている間はどんな攻撃を受けようとも死なない不死身になるってことだ』

今まで見て来た以上にまずい能力を持ってる神器やってことが判ったわたしらは絶句。

「じゃあ・・・今、アイリがターゲットを氷漬けにしてっけど、これってあんまり意味なかったりするんかよ・・・?」

『抜け出そうと思えば今すぐにでも抜け出せるだろうな』

ルシル君がそう言うた直後、氷漬けになってるターゲットを覆うように小さな竜巻が発生して、氷を砕き始めた。そんで「ひゃっは~い!」ターゲットが解放されてしもうた。宙を舞うターゲットは「目! 私の目はいずこ!」って、アイリのビンタでどっかに飛ばされた目玉を探し始める。

「ルシリオン! どうすれば奴を止めることが出来る!?」

『戦闘じゃ無理だシグナム! 仮面を外している間、ただの人間である状態でしか勝てないんだ! 俺たちチーム海鳴が束になろうとだ!』

「とゆうことは、わたしらに打つ手なしなんか!?」

これまでは戦闘でどうにか神器持ちを打ち破って来た。そやけど戦闘での制止が出来ひんってことになると、わたしらにはもうどうすることも出来ひん。

『いや! 制限時間があるんだ! 使用者によってまちまちだが、おそらくターゲットは一般人なはず! となれば、最高で30分! 時間がくれば強制的に剥がれるから、その時に逮捕と回収を行えば勝ちだ!』

ルシル君から攻略法を聴いたわたしらが勝利を確信した時、『なるほど了解だよ!』って通信が入った直後・・・

――シューティングスター――

空色に輝く魔力弾が飛来して、地面に着弾。すると小さく白い球体2個――ターゲットの目玉が宙を舞った。ターゲットは「目が回るぅぅ~~~!」自分もフィギュアスケーターのようにくるくる回って、「No !」ドサって転んだ。

『こちらチーム・テスタロッサ! ただいま現着!』

フェイトちゃんからそう報告が入った。さっきの通信はアリシアちゃんのもので、降って来たのはアリシアちゃんの長距離魔力弾やった。これで戦力は整った。あとは時間が来るまで相手すれば、わたしらの勝ちや。

「ヴィータ! 目玉キャッチ!」

「おうよ!」

地面に向かって落ちてくるターゲットの目玉をヴィータがキャッチすると、「おほう! 幼女が私の目玉をぉ~♪」ターゲットは地面に倒れ込んだままウネウネ悶え始めたから、『気持ち悪いですぅ~!』リインがわたしの中でドン引きしてる。

「うげぇ! キショイ!」

ヴィータが目玉をポイっと上に放り投げて、“グラーフアイゼン”をフルスイングしてフライを上げた。アイリは「オーライ、オーライ!」頭上から降ってくる目玉を待ち構えて、バレーボールのトスのようにまた打ち上げた。目玉はそれぞれシグナムとシャマルの方へ飛んで行くんやけど・・・

「触るなババア! せっかく愛しの白髪ちゃんに触ってもらったのに、お前たちのような年増に触られたら汚れ――」

地面に倒れたままジタバタ暴れるターゲットが叫ぶ。ホンマに命知らずやなぁ~。シグナムとシャマルの顔がみるみる恐ろしいものに変わってく。シグナムは“レヴァンティン”をバットのように構えて、「やかましい!」目玉に大きく打ち放った。

「私の外見年齢はまだ20代前半ですぅ!」

そんでシャマルは若干涙を浮かべながら目玉に全力のスパイク。ターゲットは「Oh, no !」体をブリッジさせて痛みに悶え苦しんだ。シグナムの打った目玉はアルフが空中で「あらよっ!」スパイク。シャマルの打った目玉は地面に叩き付けられてバウンド。そこにアルフの打った目玉が直撃。

「Oh, my Loli Girl !!」

そう大声で叫んだターゲットは大人しくなった。そやけど「もっと、もっと私を苛めてくれ、可愛いロリっ子たちよぉぉぉ!」すっと音も無く立ち上がって、背中に手を回す。そんで小さな風船2つを鼻の穴の位置に持って来て、プクッと膨らませたかと思えば、ソレらを眼孔の中に押し込む。すると風船が新しい目になった。

「ホンマに法則とか無視するんやなぁ~」

「幼女、幼女! ちっぱい、ちっぱい!」

身の危険を感じてまう。それほどまでに本能に忠実なターゲット。もし捕まったりでもしたら・・・。考えるだけでも気絶しそうや。とそこに「プラズマランサー!」フェイトちゃんの魔法がターゲットに問答無用で降り注いで来た。着弾すると、まるでコントのようにターゲットが感電して、骨格が見えたり消えたり。目や鼻や口から黒煙を上げて、「しゅっしゅぽっぽ!」そこら辺を走り回る。

「んん? んお!? おお! ふぉぉぉぉーーーーっ!」

そんでたった今、地面に降り立ったばかりのフェイトちゃんを見た瞬間、雄叫びを上げた。それに、まんまハートの形をした心臓がドックンドックンって胸から飛び出して来てる。

「けしからん! 実にけしからんぞ! 太もも、脇! なんて眩い! そんなはしたないバリアジャケットなんて着て! 君はあれか! 見られて興奮するタイプか!? この痴じ――ぎゃふん!?」

「え・・・!?」

フェイトちゃんに向かって突撃するターゲットの頭上から、クラリスちゃんの乗った馬アレクサンドロスが落下して来て、ドスン!踏みつけた。ターゲットは「ほんぎゃぁぁぁぁ!?」変な声を上げて押し潰されてしもうた。

「確保っ!」

バインド系の魔法を使えるわたしらは一斉にターゲットを拘束するんやけど、「その太ももに頬擦りするまで捕まってたまるか!」なんて言うて、一瞬だけ小人のようなサイズになってわたしらのバインドから抜け出して、元のサイズに戻りつつフェイトちゃんに突進。

「あたしの御主人様を変な目で見るんじゃないよ!」

「ケモノ娘も大好物だが、幼女になってから出直してこいババア!」

「だったらこれでどうだい!」

ターゲットの言う通りに変身魔法でその体格を小さなものに変えたアルフ。すると「ふぉう♪」ターゲットはフェイトちゃんからアルフへ進路変更。

「これでとっとと墜ちやがれ!!」

――ギガントハンマー――

ヴィータの一撃がターゲットを捉えた。巨大化してる“グラーフアイゼン”の一撃を受けたターゲットは「ピヨピヨ」平べったく潰れされたんやけど、潰れたままチョロチョロと動き回ってる。なんや可愛いかも・・・。

「ふんぬっ! その尻尾でモフモフさせ――」

と、ここでようやくターゲットの顔からヒマワリ・・・やのうてピエロの仮面が剥がれて宙を舞った。ターゲットの格好はアリサちゃんから聞いてたように一瞬でキャップやシャツ姿になった。気を失ってしもうてるんかターゲットは顔面から倒れ込んだのに声も上げへんかった。

「と、とにかく確保や!」

「オッケー!」

アリサちゃんがターゲットに手錠をはめた。そして仮面なんやけど、誰も触ろうとせえへん。もし万が一に触れた人になんらかの干渉をせえへんとは限らへんし。ちょう触ることに抵抗があったり・・・。

「ルシル君。仮面に触れてもなんも問題はあらへんか・・・?」

『ああ。その仮面を付けられる者には条件があるんだ。自分に対して絶対の自信が無い、生きていることに不安・不満を覚えている者、それが仮面を付けることの出来る条件なんだ。はやて達はその条件に当てはまらないだろ?』

わたしらは顔を見合わせる。絶対の自信がどうかは別として、生きてることに不安も不満も無い。それより生きて、好きな人や友達と一緒に過ごせる今は最高に幸せな時間や。そやから「うん。それなら大丈夫やな」わたしが一番近かったこともあって、仮面を拾い上げた。こうして4つ目の神器の回収は終わった。
 
 

 
後書き
ジェアグゥィチエルモジン。ジェアグゥィチトロノーナ。ジェアホナグゥィチ。
神器回収編パート3、これにて終幕。えー、今回の神器にはモデルがありまして、知っている方は居るかな? ジム・キャリー主演の1994年の映画「マスク」に登場する仮面がモデルだったりします。
あの無茶苦茶っぷりが未だに忘れられず、ANSUR本編でもある1章・大戦編でも出したことがあったので、今回にも再び出すことにしました。
 
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