ロックマンゼロ~救世主達~
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第51話 アンダー・アルカディア
前書き
メンテナンスルームに足を運んだルイン。
全てのミッションを終えたルインはメンテナンスルームに入ると、ほとんど万全の状態となったハルピュイアが起き上がり、自身の武器を収めていた。
「もう動けるんだ。流石だねハルピュイア。」
「ええ…もうこれ以上、寝ているわけにはいきませんので。人間を…バイルから守ってやらなければなりません。これはエックス様からの命令でもあります」
「ハルピュイア…」
あの時と比べて格段に強い意志を感じられるので、今のハルピュイアならきっと大丈夫だろう。
すると、ハルピュイアの様子を同じく見に来たのであろうセルヴォがメンテナンスルームにやってきた。
「行くのだね?」
「ああ、世話になったな。悪いが今すぐ出る、早くバイルを止めなければ……あいつは…」
「ハルピュイア…無茶だけはしないで…お願い」
「ルイン、俺は人間を守るために生まれた戦士…。エックス様の部下にして、誇り高きネオ・アルカディアの戦士です。例えこの体が朽ち果てようとも……人間のためなら喜んで戦います。例え、あなたでもこればかりは譲れません…これが俺の信念ですから」
「そっか…」
少し悲しげに笑うルインに頭を下げると、ハルピュイアはメンテナンスルームを後にしようとした時であった。
ハルピュイアのお見舞いに来たのであろうアルエットがメンテナンスルームに入ってきた。
「ハルピュイア、行っちゃうの?」
「ああ」
「また会えるよね?」
「……ああ」
アルエットにそう返すと、今度こそメンテナンスルームを後にして、ハルピュイアは外へ飛び立っていった。
「良かったのかい?」
「いいの、私達には私達の。ハルピュイアにはハルピュイアの戦いがある。でも願いは同じはず、今はこれでいいの」
「そうか…」
『ルインさん、ルインさん…。至急、司令室までお越し下さい…』
「あ、もう解析終わっちゃった?」
思っていたよりも早く終わったことにルインは目を見開く。
「息つく暇もないな…ルイン……」
「大丈夫、行ってくるよ」
メンテナンスルームを後にし、ダッシュで移動してルインは司令室に向かう。
「セルヴォさん、ゼロもルインお姉ちゃんもハルピュイアも…みんな大丈夫だよね?」
「ああ、勿論だとも……ゼロ……ルイン……ハルピュイア……みんな…死ぬんじゃないぞ……」
人間とレプリロイドの希望となりつつある三人の身を案じるセルヴォの呟きはメンテナンスルームに響いた。
司令室に入ると、シエルがルインに歩み寄る。
「どうだった?ハルピュイアは?」
「ハルピュイアは、メンテナンスルームを出て、外に出ちゃった。人間達を守るために戦うんだって」
「そんな…まだ完全に治っていないのに。無茶をするところはルインに似たのかしら…?」
「無茶はエックスの方、それよりも解析結果は?」
「あ、ごめんなさい。折角、二人に色々な情報を集めてもらったのに……バイルが何処にいるかまでは、分からなかったわ。でも…バイルが何をしようとしているのか……それは少し分かったかもしれないの」
「それは本当?」
表情を引き締めていくルインにシエルも頷いて口を開いた。
「バイルの話をする前に…まず…二人が見つけてくれた妖精戦争のデータファイルを開くわね。」
データファイルをコンピュータに差し込み、モニターに妖精戦争の詳細が出る。
《ファイルナンバー945388--妖精戦争--イレギュラー戦争の終わり頃、サイバーエルフが大量に使用されたことから……これ以後、戦争が終わるまでを妖精戦争と呼ぶ。特にダークエルフと呼ばれる超大型妖精と…そのコピーであるベビーエルフの使用により……レプリロイドの力を増幅させ……同時に思い通りにコントロールする事が可能になってからは……かつてない程の……最悪の戦争となった……。戦争は、ダークエルフ使用により、四年で終結するが……レプリロイドのほぼ90%……。人間の60%が死滅した……。》
「この時、使用した技術……。ベビーエルフを使ってレプリロイドを思い通りにコントロールする技術をバイルは、再び使用しようとしてるんじゃないかしら……。」
「なる程、あのキチガイ研究者とベビーエルフとの相性は抜群だしね…。」
ベビーエルフ達はバイルの言葉に何の疑いも持っていないので平然としてそれをやるだろう。
「そして、二人がダークエルフのコピー工場で見た物は、きっと、そのために用意したものだと思うんだけど……。」
「………」
「あれ?どうしたの?さっきから黙って?」
さっきから無言の2人に視線を遣るルイン。
するとルージュの口が開いた。
「クックックック……よく調べたな。Dr.シエル……。」
普段のルージュから考えられないくらい狂気に満ちた声。
「な?」
いきなりのことにシエルは目を見開いた。
「だが少し………遅すぎたんじゃないかね?」
ジョーヌもルージュと同様の状態になっている。
「Dr.バイルか!?」
この変化の原因を察したゼロが周囲を警戒し始める。
「「クーックックッ…今度のオメガは、正に完璧だ……。もう、ベビーエルフなど使わなくとも…この世界…全てのレプリロイドを思うがままに操れるようになったのだ!クーックックッ…さあ…始めるとするか…オメガよ…。今こそ思い知れ…儂を追放した人間共よ!恐怖しろ…儂を追放したレプリロイド共よ!刻み込むのだ。この世界に…支配者たる儂の名を!!我が名はDr.バイル。世界は、我が手の中にある…。この手を握り締めるだけで……この世界を終わらすことが出来るのだ!!」」
「ルージュさん…ジョーヌさん…まさかあのキチガイ科学者…ここまでやるなんて…!!」
「クーックックックッ…クヒャーッハッハッハッハッ!!」
「まっ、まさか!?」
ジョーヌの体で大笑するバイルと、司令室に向かってくる足音にシエルは顔を真っ青にする。
すると、レジスタンス兵がバスターショットを構えて司令室に入ってきた。
「う…うう…」
「そ、そんな……!!」
「新たなる世界…新たなる秩序…。閉じられた歴史が…再び動き始める…。」
「Dr.バイル…レジスタンスのみんなまで…!」
「下がれ!シエル!!」
ゼロとルインがシエルを守るように立つ。
「ゼロ!?ルイン!?」
そしてレジスタンス兵の前にゆらりと出てくる小さな少女…アルエットの姿。
「バイル様に…栄光あれ…」
バイルに支配されたアルエットの姿にシエルの顔色は更に酷くなり、ゼロとルインの表情は険しくなる。
「世界に刻め…我らの支配者の名は…バイル!!バイル!!バイル!!バイル!!バイル!!バイル!!バイル!!バイル!!バイル!!」
レジスタンス兵がバスターの引き金を引こうとした瞬間であった。
「三人共、動かないで!!」
エックスが姿を現したのと同時にエックスの体が光り輝き、光が収まった時にはレジスタンス兵達とアルエットが倒れていた。
「あ…!」
急いで倒れたアルエット達に駆け寄るシエル。
「大丈夫…この子もみんなも気を失っているだけだよ。ダークエルフの力を取り除いたんだ。このベース周辺はダークエルフの力が及ばないようにしておいた。間に合って良かったよ…。」
「エックス!!」
「遅いぞエックス……。バイルはどこだ?」
「ネオ・アルカディアの地下動力部……アンダー・アルカディア…だよ。オメガはそこから世界中にダークエルフの力を送っているんだ。」
「どうやら、まともに動けるレプリロイドは私とゼロとエックスだけのようだね。ハルピュイアは大丈夫かな…?」
さっきレジスタンスベースを去っていったハルピュイアは無事だろうか?
「大丈夫だよ。ハルピュイア達四天王もダークエルフの影響は受けない。」
「そっか…良かった…」
「エックス、アンダー・アルカディアの座標を教えろ。」
「オメガと…戦うんだね?」
「ああ……それが…何だ?」
エックスの言葉に疑問符を浮かべるゼロだが、エックスは首を振る。
「いや、君なら大丈夫だ…。気をつけて………ルイン、オメガとの戦い…出来るだけ僕も力を貸す。君達だけに戦わせたりはしない」
「え、うん…」
エックスは人型から球体の姿になり、レジスタンスベースを去り、サイバー空間へと戻っていく。
「て…転送装置に…アンダー・アルカディアの座標入力を確認…」
「転送を頼む。」
二人は中央のトランスサーバーに乗り込んだ。
「了解…各員…転送準備にかかれ。」
ジョーヌの指示で、司令室に警報が鳴り響き、転送準備が始まる。
「転送準備完了…」
「「転送…」」
ゼロとルインの二人がアンダー・アルカディアへと転送された。
「ゼロ……ルイン……帰って…来てね……」
二人が無事に帰ることを願いながらシエルはモニターを見つめる。
一方、サイバー空間に戻ったエックスは“彼ら”の意識が戻ろうとしていることをファントムからの報告を受け、急いで向かう。
案内された場所にはオメガに敗北して撤退したファーブニルとレヴィアタンが横たわっていた。
「(この二人が意識を取り戻すのにここまで時間がかかるなんて…)酷くやられたようだね。大丈夫かい?」
「目覚めよ。エックス様の御前である。」
エックスとファントムが呼び掛けると、レヴィアタンとファーブニルの意識が覚醒する。
「…う…ん…!…っ!ファントム…?エックス様!?」
「ああん…?…っ!っ…おいおい、俺達死んじまったのか?」
目の前にいるのは間違いなく、数ヶ月前にエルピスにボディを破壊された自分達の主であり、一年前のゼロとの戦いで死んだはずの同僚であった。
彼らが目の前にいるということは自分達は死んでしまったのかとファーブニルは思い込む。
「否。お主らは今、生と死の狭間を漂ってるに過ぎん。拙者の体は既に失われて久しいが、お主らにはまだ戻るべき体が残されている。そしてやるべきこともまた残っているはずだ。」
「そう、君達に頼みたいことがあるんだ。」
「頼みたいこと…?」
エックスが自分達に頼みたいこととは何なのか、レヴィアタンは疑問を抱いてその美貌を顰める。
「ネオ・アルカディアで、いや、今や世界中でレプリロイドたちによる混乱が起きている。ダークエルフとオメガの共鳴が全てのレプリロイドを洗脳し、バイルの思うがままの支配、恐怖、そして復讐の序曲が始まろうとしているんだ。」
「バイルですって…!?」
「ちっ…ダークエルフがあのイカレた爺の手に渡ったっていうのか…。」
自分達が気絶している間に世界は最悪の方向に大きく変化していたことにファーブニルは舌打ちする。
「このままでは妖精戦争の悲劇が再び繰り返される。それを止められるのは洗脳の影響を受けない君達とゼロとルインだけなんだ。」
「で、俺達にゼロを手助けしろってわけだ。へっ…そういう話なら俺は一抜けだ。俺はあいつと馴れ合うつもりはねえ。俺は必ずあいつを…ゼロをぶっ潰す!」
拳を握り締めながら言うファーブニルの隣でレヴィアタンも表情を顰めながら口を開いた。
「それは私も同じ…。例えご命令であっても、ゼロとお友達ごっこをする気はないわ。あいつは…私の獲物だもの。」
そっぽを向くレヴィアタンにエックスは少し残念に思ったが、今まで敵対してきた相手に力を貸したくないと言う二人の気持ちも理解出来なくはなかった。
「そうか…」
「…と、言いてえところだけどよ」
「「「?」」」
ファーブニルの言葉に全員の視線が彼に向けられる。
「それ、ルインも関わってんのかエックス様?」
ファーブニルの問いにエックスは即座に頷いた。
「そうだよ、彼女もまたバイルの野望に抗おうとしている。彼女が、バイルの支配を受け入れられるはずがないからね」
「そうかよ…ルインが関わってんなら話は別だ。ゼロと馴れ合うつもりはねえが、あいつの手助けならしてやるよ…あいつ、一応俺達のお袋なんだろ?」
「ファーブニル…」
呆然とするエックスとレヴィアタン、ファントムも表情にこそ出さないが驚いていた。
しかし、レヴィアタンもフッと微笑みを浮かべてフロストジャベリンを握り締めた。
「そうね。ゼロとお友だちごっこをするつもりはないけど、ルインの手助けなら別ね…エックス様がいた時はいつも私達を優先させてもらっていたわけだし…たまには親孝行も悪くないわ。それに、バイルなんかに私の獲物を取られるわけにもいかないしね!」
「そういうこった。まずはゼロを潰す前に、あのオメガの野郎に借り返さねえとな。へっ、舐められっぱなしじゃあ闘将の名が廃るってもんだ…安心しろよエックス様、エックス様の大事なモンは今度こそ守ってみせるぜ!」
「君達…」
レヴィアタンとファーブニルの言葉に一瞬目頭が熱くなったがすぐに微笑み、そんなエックスの様子をファントムも僅かだけ笑みを見せる。
「「エックス様。今一度ご命令を!」」
跪いてエックスの命令を待つ二人にエックスは統治者としての表情となり、凛々しい声で命令した。
「…ファーブニル!レヴィアタン!バイルとオメガの脅威から全ての弱き者達を守って欲しい!!…やってくれるね?」
「「お任せを。我らの誇りに懸けて、必ずや!」」
二人はエックスの命令を受けると立ち上がり、ファントムの方を見遣る。
「おい。おめえはどうすんだ、ファントム?」
「闇漂うは我が定め。拙者にはここで成すべきことがある。」
自分はゼロが人間とレプリロイドの守る存在となり得るのかを確かめたい。
だからこそサイバー空間に残って最後までゼロの戦いを見届けるつもりだ。
「そう…はあ…久しぶりに、四人揃い踏みとはいかないわけね。ちょっと残念。」
四天王の中で最も強く冷静で広い視野を持っていたファントム。
彼がいなくなってからの変化を見て、彼がどれだけ自分達にとって大きい存在だったのかをレヴィアタンはこの一年間で強く感じていた。
だからこそ、サイバーエルフの状態であっても共に来て欲しかった…頼りになる同僚として、そして自分が信頼する兄として。
「それじゃ戻ろう。君たちが守るべき、あの世界へ。」
エックスとファントムに導かれ、サイバー空間から出ようとした時、レヴィアタンはファーブニルに尋ねる。
「ねえ、ファーブニル。あんた随分珍しいことをしたわね?いくらルインが私達の母親だからって率先して力を貸そうとするなんて…熱でもあるわけ?」
失礼な問いにファーブニルは表情を歪める。
「馬鹿にすんじゃねえ、俺だってよ…反省してんだぜ」
「は、反省!?あんたが!?…あんた、電子頭脳が熱暴走起こしてんじゃないの?」
「っ!?ファーブニルが…反省を…」
「何と…」
レヴィアタンが冗談抜きで本気でファーブニルを心配し、ファーブニルのことを良く知る二人も心底驚いた。
「おめえは俺を何だと思ってんだよ?後、エックス様もファントムも驚き過ぎだろ……」
「ファーブニルよ、お主があの方に力添えをしようとした理由は何なのだ?」
冷静さを取り戻したファントムがファーブニルに尋ねる。
すると、ファーブニルは気まずそうに胸の辺りを手で擦ると理由を語った。
「数ヶ月前にエルピスって野郎がやらかした事件があったろ?そん時に俺は炎の神殿にやって来たエルピスを倒すよりもゼロとルインと戦うことを優先しちまった。」
「ファーブニル…それは私だってそうよ。世界よりもゼロとルインとの戦いを優先したもの」
「あん時の俺は正直、ベビーエルフやダークエルフの力なんて舐めてた。いくら世界を滅ぼしかけた力でもどうせ半分だから大したことねえ。エルピスの野郎もハルピュイアなら楽勝だろうし、いざとなりゃあ、俺達全員で掛かりゃあどうにでもなると思ってた。その結果があれだ。」
結果としてハルピュイアは一人でエルピスと対峙し、ベビーエルフとダークエルフの半分の力に敵わず敗北してエックスのボディは破壊されてしまった。
そしてエルピスを倒した後にルインはハルピュイアと共にいた自分達の前に現れ、破壊されてしまったエックスのボディのパーツをハルピュイアに渡した。
あの時の衝撃は凄まじかったが、その時のルインの泣き顔を見て口から出そうになった言葉が引っ込んでしまった。
「何でか分かんねえけどよ…あん時を思い出す度にこの辺が痛えんだ。ゼロに負けてボロボロになった時だってこんなに辛くなかったはずなのによ……もう、あいつの泣きっ面を見んのはごめんだ」
それはきっと後悔だ。
いつも自分の気持ちに正直に全力で生きているファーブニルにとっては確かにそれは慣れない痛みであっただろう。
「ふうん…あんたもお母さんのルインの涙には弱かったみたいね…そうね…初めてのルインへの親孝行…頑張ってみようかしら」
あの時のルインの泣き顔はレヴィアタンの脳裏にも刻まれており、彼女なりにやってみようと気持ちを固めさせたのであった。
一方でアンダー・アルカディアに転送されたゼロとルインはZセイバーとZXセイバーを構えてダッシュで突き進む。
ダークエルフの力で操られているパンテオンやメカニロイドを斬り捨てながら先に進んでいく。
段差を降り、宙に浮かんでいるリフトに乗り込み、そして次のリフトに乗り移る。
それを繰り返し、ゼロとルインはトゲが敷き詰められた床に落ちないように注意を払いながら、シャッターの近くに着地して先に進む。
シャッターを潜るとメカニロイドが光弾を放ってくるが、それを回避してセイバーで返り討ちにしながら奥に向かう。
そして再び段差を降り、確実に動力部に向かっていく。
縦穴に入り、下で待ち構えているパンテオンとメカニロイドをルインがZXバスターで撃ち抜く。
そして最深部に辿り着いて奥のシャッターを抉じ開けると、そこにはバイルがいた。
「Dr.バイル…!」
「よくもレジスタンスのみんなを操ってくれたね!数十倍にして返してやるんだから!!」
二人の鋭い視線を真正面から受けてもバイルは怯むどころか笑みを深めるだけだ。
「クーックックックッ…勇ましいな…ゼロ…ルイン…英雄もどきと英雄のなり損ないが英雄ごっこか?今や世界中のレプリロイドは儂の手の中にある。レプリロイドに頼らねば生きていけぬ豚のような人間達など………その気になれば何時でも始末出来るのだ。分かっているな?」
「あっ!?」
バイルが転送の光に包まれていくのに気付いた時、二人は阻止しようとしたが間に合わなかった。
『クリエ!プリエ!そいつらを好きにしていいぞ!!儂は、今から豚共の悲鳴を聞きに行く。惰眠を貪り、怠惰に…ただ生きているだけの豚共に……世界の支配者が誰なのか…教えてやる!クーックックックッ…クヒャーッハッハッハッハッ!!!』
バイルの狂笑が響き渡る中、奥からベビーエルフ達が出て来た。
「また来たー!悪いレプリロイドー!!」
「また来たー!偽者レプリロイドー!!」
「はあ?悪い?偽者?何言ってんだか分かんないけど、お遊びの時間は終わりだよ?おチビ達?ちょっとばかり“おいた”が過ぎたみたいだね」
普段の彼女からは考えられないくらいに冷えた視線と言葉である。
「おチビって言ったー!お前なんかバラバラにしてやるー!!」
「おチビって言ったー!お前なんかズタズタにしてやるー!!」
怒ったベビーエルフ達がルインに襲い掛かる。
改造されたのだろうか、以前よりエネルギー反応が高くなっているようだが今更恐れるような相手ではない。
「戦闘は単純なパワーで決まるものじゃないんだよ。教えてあげるよおチビ」
二体のベビーエルフからプリエに攻撃を繰り出し、ゼロはクリエを相手にする。
こうすればプリエとクリエの合体攻撃を妨害出来る。
ルインはFXアーマーに換装し、ゼロはリコイルロッドを装備して挑む。
「(ベビーエルフ達は合体攻撃さえ封じれば大した敵じゃない。突っ込んで来たら吹っ飛ばしてやる)」
「壊れちゃえー!!」
ゼロに向かって体当たりと光弾を放つクリエ。
「(前回と同じように考えなしの攻撃か…ベビーエルフ達を生かしておくことは出来ん…許せ、アルエット)」
ベビーエルフ達のことを嬉しそうに話していたアルエットの姿が脳裏を過ぎるが、ゼロはロッドのチャージ攻撃でクリエを吹き飛ばす。
「うわああん!痛いー!!」
「君達を生かしてはおけない。ここで…処分する!!グラウンドブレイク!!」
ルインもベビーエルフ達のことを案じていたアルエットに申し訳ないと思いつつも、ベビーエルフ達を生かしておけば、ベビーエルフ達の無邪気で残酷な遊びで奪われる命があるかもしれない。
これ以上犠牲を出さないためにもベビーエルフ達を始末する結論を出したのだ。
「やったなー!!」
火柱をまともに受けて激昂しながら光弾を放つプリエ。
それをかわし、ナックルバスターによるパンチを叩き込む。
「君達は罪深いことをやりすぎた!ダークエルフに会うために何人もの人間とレプリロイドを傷つけた君達を許すことは出来ない!!あの世で…反省しなさい!!」
「うるさーい!!」
「うるさいうるさーい!!」
ルインの言葉に聞く耳持たないプリエとクリエは光弾を放つ。
「アルエットのことを考えれば残念でならんがな。お前達を破壊する。」
ゼロがバスターショットを構え、クリエにバーストショットを喰らわせ、怯んだところをロッドによる連撃を浴びせる。
「当たれ!!」
ナックルバスターのチャージショットである火炎弾が炸裂し、そしてZXアーマーに換装してZXセイバーを構えて突撃した。
「はああああっ!!」
空中回転斬りを叩き込み、プリエの体を削る。
そしてゼロとルインが同時に距離を取りながらバスターを構えてチャージショットを放つ。
ベビーエルフ達がそれをかわして、合体攻撃をするために近付いたが、それよりも速く二人は動いた。
「「クロスチャージセイバー!!」」
ベビーエルフ達が合体した瞬間に二人は交差するようにチャージセイバーを繰り出した。
合体していたために痛覚も倍増しており、二発のチャージセイバーを受けたベビーエルフ達は分かれた。
「あれ…プリエ…何だか変だよ…」
「うん…クリエ…何だか変だよ…」
耐久力を大きく超えたダメージを受けたことにより、自分達に襲い掛かる激痛によりベビーエルフ達の輝きが消えていく。
「体が…いっぱ…いチクチク…す…るよ…」
「か…らだが…いっぱ…いズキ…ズキ…す…る…ミ…ミーーーッ!!!」
ベビーエルフ達は痛みに絶叫しながら消滅した。
二人の脳裏にアルエットの姿が過ぎるが、ベビーエルフを止めるには最早こうするしかなかったのだと思う。
『二人共、大丈夫?エックスから、新しい情報を貰ったわ。…一度レジスタンスベースに戻ってきて…』
「分かった…転送しろ」
転送の光に包まれた二人はレジスタンスベースに転送されたのだった。
「転送終了まで…2…1…転送!!」
ゼロとルインが司令室のトランスサーバーに出現した。
「お疲れ様でした」
エックスの力の加護があるからか、普段通りのルージュとジョーヌの様子に安堵しながらゼロとルインがトランスサーバーから出ると、シエルが駆け寄ってくる。
「二人共…無事で良かった…。さっき、エックスから新しい座標が送られてきたの。どうやらそこにバイルとオメガがいるみたい…。これが最後の戦いになるかもしれない……。二人共…気をつけてね」
ルイン「うん。」
「オリジナルエックスより入手しました座標データ…入力…完了しました。」
「座標が示す場所は、廃棄された古い研究所なの……。記録によるとここは、昔バイルが研究していた場所で…ゼロが眠っていた…あの場所の…すぐ近くだわ……」
「そこに…バイルとオメガがいるんだな…」
「あいつらと決着をつける時が来たみたいだね。」
「ゼロ…ルイン…気をつけてね………」
ダークエルフの力を得たオメガは強敵だ。
その力はダークエルフの力を得ていない状態でも四天王のファーブニルとレヴィアタンを圧倒したほど。
恐らく、かつてない戦いが繰り広げられることだろう。
「ああ」
「大丈夫だよ、さっさと倒してすぐに帰るから」
シエルの心配そうな言葉に、ゼロとルインはそう言うと、オペレーターの二人に向き直る。
「オペレーター…行けるか?」
「いつでも行けます」
「準備はよろしいでしょうか?」
ゼロの問いにジョーヌとルージュが頷き、それを見た二人は中央のトランスサーバーに乗り込んだ。
「ミッション発令…各員、転送準備にかかれ」
ジョーヌの指示で、司令室に警報が鳴り響き、転送準備が始まる。
「転送準備完了…」
「「転送!!」」
二人の声が司令室に響いたのと同時にゼロとルインの二人が研究所へと転送された。
「ゼロ…ルイン…!生きて帰ってきて…!!」
最後の戦いに挑む二人に、シエルは二人の身を案じながら帰りを待つのだった。
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