戦国異伝
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第二百四十三話 信長の読みその一
第二百四十三話 信長の読み
魔界衆の者達はその夜宴を開いていた、船の中でも陸の陣中でもだ。ならず者が多いので彼等は率先して飲んでいた。
日本のならず者達だけでなく明や南蛮のならず者達もいる、彼等は酒を飲みつつ話していた。
「この国の酒もいいな」
「うむ、日本の酒もな」
「実に美味いぞ」
「こうした酒もあるのだな」
「これなら幾らでも飲める」
こうしたことを話しながら飲んでいた、そしてそれはだった。
魔界衆の面々も同じだった、彼等も飲みつつ話していた。
「明日じゃな」
「明日かそれ位になるな」
「海から来た織田の軍勢をな」
「一気に倒してやろうぞ」
こう話していた。
「水軍は揃っているぞ」
「倭寇の者達を抱き込んだからな」
倭寇の中でもならず者達をだ。
「明や南蛮の者達も集めた」
「朝鮮からもな」
「シャムや大越からもな」
「そして呂宋からもじゃ」
「このあたりで呼べるならず者達は皆呼んだ」
「海にいるならず者達はな」
それ故にというのだ。
「あらかた集めた」
「海での戦なら負けぬ」
「この瀬戸内ではな」
「最早敵はいないわ」
自分達の戦力を見て言うのだった。
そしてだ、こうも言った。
「若し陸から来ても」
「我等には妖術がある」
「十二家の棟梁の方々の妖術があれば」
「百万の兵も怖くはないわ」
例えどれだけの大軍がl来てもというのだ。
「恐ることはない」
「ここで織田信長も終わりじゃ」
「伊賀では遅れを取ったがな」
「今度はそうはいかんぞ」
「我等魔界衆の力を思い知れ」
「我等のまことの力をな」
こう言っていた、彼等の兵達も。そして。
本陣ではだ、その十二家の棟梁達がだった。老人を中心として飲みつつだった。そのうえで明日のことを話していた。
百地がだ、老人に鋭い目で告げた。
「御前、どうやらです」
「織田の軍勢はじゃな」
「この屋島に向かっております」
「姿は見たか」
「いえ」
百地は老人のその問いには首を横に振って答えた。
「残念ですが」
「しかしか」
「送っている忍達がです」
物見に出したその彼等がというのだ。
「讃岐の東岸の方に出した者達が誰も帰ってきませぬ」
「と、いうことはじゃな」
「そこからです」
「来ておるか」
「間違いなく」
「そこに行った忍達は皆殺されたな」
老人は酒を飲みつつ百地に応えた。
「やはり」
「間違いなく」
「そうじゃな、ではな」
「織田信長は間違いなくです」
「ここに来ておる」
この屋島にというのだ。
「そして時間はな」
「明日ですな」
「その時にな」
「来ますな」
「織田信長といえばじゃ」
ここで老人は言った。
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