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監獄学園 theオリジナル

作者:Bloo-D
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第3話

 
前書き
懲罰と誘い。

もう一人のヒロインが登場します。 

 
懲罰棟に入ってから、道経達は惨めだった。
授業は受けられるには受けられるが、懲罰棟に設置されたモニターでしか受けられず、オマケに質問することも出来ない。

オマケに授業以外では鉄条網を作ったり害虫駆除をやったりと大変。

「見てあいつらよ、この間覗きした奴ら!」

「本当だ、先輩さんから制裁まで受けていい気味ね。」

「本当本当。」

「かっこ悪〜い!」

その姿を見かけた女子生徒からこんな事を言われたり災難にも程がある。


道経「なんでこんな目に会わなきゃなんないんだよ?」

惨めな姿を晒されて道経はこう呟いたが、今回の一件は明らかに道経達が悪いから文句を言っても仕方ない。
それ以前に……

宗安「うう……先輩……。」

先輩の影御雷に嫌われたのが、最もたちの悪い話だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一方……

『……。』

午前の授業が終わった昼休み。多くの生徒が集まる食堂ではどんよりした空気が漂っていた。
それは……

影御雷「たく…あの馬鹿共め……。」

今朝後輩達の所業を聞かされてからずっと不平タラタラな影御雷だった。

第一として朝の授業で教師から指名された時、本人が相手をキッと睨み付けたせいか何人もの教師が天国へ旅立ったか…いやプレッシャーに当てられて病院に送られたか……知れたモノではない。それだけでなく、彼の近くの席の女子も強烈なプレッシャーとオーラに気絶してある意味大問題となっているが、本人の怒りが収まらない以上はどうする事も出来ない。
何れにしても影御雷は怒りを抑えられず、他の生徒おろか教師までも近付こうともしない。否、恐くて近付けない。


?「ミヅチさん」

影御雷「?」

紗江「……。」

そんな影御雷に声をかけたのは乱月流一門の中嶋 紗江、流派で唯一の女剣士。影御雷に好意を寄せる女子の一人で、生徒の中で影御雷以外に帯刀を許されている人間だ。

紗江「相席しても構いませんか?」

『⁉︎』

怒る影御雷に対して相席を要求する紗江に対し、その光景を目撃してる者達は驚きが隠せない。
無理も無い。何せ理事長でさえ恐怖のあまり近付こうともしないのに、その状態で彼に相席を求めるような自殺行為をやってのける猛者など学園には居ない。

「あいつ正気なの?」

「あの状態でよくあんな要求出来るわね。」

「無理よ、絶対断られるに決まってるわ。」

「けれど、これで本人が折れたら見ものね。」

「それにしてもライバルが増えるなんて……」

「吊るし首……火炙り……闇討ち……溺死……」

外野では紗江の勇姿に呆れながらも、内心感心を抱く者も少なからずいる。
本来なら影御雷とお近付きに成りたい者ばかりなのだが、状態が状態故に近付けない。
そんな中で出て来た猛者に感心と嫉妬の念が向けられつつあった。

影御雷「……、好きにしろ……。」

『⁉︎』

紗江「ではお言葉に甘えて♪」

鬼の形相で睨まれる紗江だが、そこは乱月流一門。
ごく普通の女子なら逃げ出す有り様だが、彼女はその程度は動じない。
そこで動じていては危ない橋は渡れないし、乱月一門の恥だ。
サラッと要件を言って本人からの許可を取り次第、ざわついた周りの人達をそっちのけに彼の隣に腰掛けた。


紗江「ところで、いい加減許したらどうですか?」

影御雷「あいつらをか?」

紗江「で無ければ誰を話題にすると?」

いっこうに表情を変えない影御雷に対し、紗江はというと道経達の事を話し出した。
影御雷本人としては、彼らの名を出されるのは非常に嫌だった。もとより、今朝聞いた愚行に腹の虫がおさまらないのだから、本人は不愉快で仕方ない。

影御雷「ここでヤツ等の名を出すな、非常に不愉快だ。」

紗江「ですが、“後輩の愚行を許すのも、先輩が成すべき技量たるもの。”っと以前言ったお方は誰でしたか?
それに、いつも問題ばかり起こす彼らを呆れながら庇って来たのはミヅチさんじゃありませんか?」

影御雷「……(くっ!悔しいが…言ってる事が正しいから言い返せん……)」

道経達の所業には今だ許せない影御雷はその事を話題に出されて不愉快な気分になるも、中学時代に紗江を含めた後輩達に唱えた自身の言葉を引き合いに出されて言い返す言葉が無くなった。それ以前に、学校で数少ない話し相手である為か、彼らが問題を起こす度に間に立って彼らを守って来た。紗江の言ってる事は正論である故、影御雷には反論の余地が無い。
付け加えて言うなら、実は影御雷は戦闘では負け無しを誇る強さを持つが、言い争いとなると紗江には勝った事が一度も無かった。現に今彼は、今も紗江に言い負かされてしまっている。

影御雷「……、考えてみよう……」

紗江「適切な判断ですね。」

影御雷「……(だがどうしたものかな……?それにはまずキッカケが欲しいがな……)」

ついに折れた影御雷は紗江の言葉に応じたが、とりあえず考慮だけはする事にした。
だが幼い頃から武士として育った彼にとって、簡単に人の愚行を許す事など許されない。キッカケを作れば造作もないが、それが無い以上はどうにもならない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一方……

万里「たく、女子風呂を覗いて先輩の乱月から制裁を受けるとは……全く惨めな奴らだな。」

花「男なんてそんな生き物ではないのですか?」

万里「確かにそうだ、だが奴は違う。」

花「奴?」

万里「乱月の事さ。」

花「ああ…全く成る程。」

裏生徒会室にて、道経達の件で愚痴をこぼしてる万里と花がいた。
この時、副会長の芽衣子は道経達への懲罰の為に席を外している。


万里「花、お前はどう思ってるんだ?
乱月を。」

花「ええっ、いきなり何を聞くんですか⁉︎
別になんとも……///!」

万里「お前は解り易いな。
顔を真っ赤にして恥じらうところで、どこがなんとも無いのだ?」

花「……」

そこから話は影御雷へと移った。彼のことを聞かれた花は動揺、呆気なく万里に見透かされて黙りこんでしまった。
実は花、今朝の一件で影御雷を案内した際に一目惚れし、彼の非公認ファンクラブから買った盗撮写真を財布に入れて持ち歩いている。

万里「図星か……仕方ないだろな、何せ私も同じなのだからな。」

花「!会長もですか⁉︎」

万里「当たり前だ。幾ら男嫌いの私でも、異性に恋をするというものはするさ。」

加えて言うなら会長の万里も同じく一目惚れした女子の一人で、今では盗撮写真おろか彼の似顔絵を描いて部屋に飾る始末だった。


花「とはいえ、鈍感なのが感心出来ませんね。」

万里「彼にも彼なりの事情があるのだ。少しは立場を考えてやらんと、厄介事を起こされたら面倒だからな。」

花「確かに、運営委員からもそのような連絡があったそうですし。」

万里「ああ……細心の注意を払わんとな。」

けれど彼女達でさえ納得がいかないのが彼の鈍感ぶりだった。握手を迫っても写真撮影を迫っても、下心なんか微塵も無い本人は用を済ませるとそそくさとその場を後にするところがあるから、女子からはその不満はかなりのモノらしく、校長室にはその抗議で対応を迫られる羽目だった。しかし彼は家元が武士の家系で今世紀最強と名高い二刀流剣士である故、下手に対応しようモノなら何されるか解らないと黙秘をせざるを得ない状況となった。
更に運営委員会からは、“彼の扱いには気をつけろ。”と指示もあって、マトモに手も出せない状態だった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一方……

≪バシーンッ!≫
道経「ぐふぇっ!」

芽衣子「グダグダしてないでさっさとしろ!」

道経達は裏生徒会副会長の芽衣子からのキツイ懲罰で疲労困憊だった。
にもかかわらず……


芽衣子「さっさと舐めろ。」
≪グリグリ……≫
陽一「痛〜〜!!!」

独裁政治同然の指導体制で、しかも違反行為をやってしまった以上は大人しく従う他は無い。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

それから数時間後……

道経「ふぅう…終わった……」

一日のノルマを終えた道経は疲労のあまり地べたに座りこんでしまう。
すると……

≪チュンチュン……≫

道経「ん?」

地面で鳴く一羽の小鳥に目が止まった。
更に上を見ると鳥の巣がある。

道経「もしかして、巣から落っこちたのか?
なら、俺が巣に戻してやるよ。」

事を察した道経は小鳥を巣へ戻そうと手のひらに乗せ、落とさないように木を登って行った。
余談ながら、道経は出来は悪いがロッククライミングが上手で、その腕は影御雷が認める程の実力だった。そんな彼にとってすれば、木登りなんて苦では無い。

≪チュンチュン……≫

道経「よし、もう大丈夫だぞ。これに懲りて、二度と巣から離れようとすんなよ。」

小鳥相手に聞こえまいとは思いつつ、小鳥を気遣ってそう言った道経だった。
その時……


?「あなた、小鳥を相手に優しいのね。」

道経「えっ?」

いきなり声がしたと思って正面に顔を向けると、そこには廊下の窓から道経を見つめる女子が立っていた。

道経「えっと……君は…誰?」

?「私は栗原 千代、裏生徒会長の妹よ。」

道経「⁉︎」

名前を聞いた道経は、彼女の正体を聞いて驚いた。裏生徒会長とは見た目も正反対だし好意的そうな振る舞いを見た以上は驚くのは仕方ないが……

千代「ねえあなた、名前は?」

道経「えっ……多寡木 道経……」

千代「多寡木君か、良い名前ね。」

道経「ああ……ありがとう……(名前で褒められるって初めてだな……)」

千代に名前を聞かれた道経は、緊張しながらも自己紹介。そして名前で褒められた道経はすっかり緊張感は失せていた。
余談ながら、道経は名前の件に関してはあまり良い思い出は無い。っが、それはここでは話さず別の機会にしよう。

千代「そこで多寡木君、私と相撲観戦に行かない?」

道経「はっ?(相撲⁉︎何で相撲なの⁉︎)」

それはさて置き千代は単刀直入に要件を言った。それは一緒に行かないかというデートに等しい誘いだった。

道経「いや俺、今は懲罰中で……」

千代「大丈夫、私からなんとかするから。」

道経「えっ、ちょ……!」

千代「それじゃあ今度の日曜日の朝9時に正門前に来てね、待ってるから。」

道経「って俺の話聞け〜〜‼︎」

だが道経は今覗きをはたらいた罪で懲罰中、幾ら裏生徒会長の妹であってもデートを理由に一時的に解放されるとは到底思えない。……が、千代はどうにかすると言って道経を無視して走り去って行った。

道経「……(俺、どうなっちまうんだ一体……?)」

一方取り残された道経は、ただ呆然となって自分の身の危険を感じていた。


その後、道経が硬直から回復したのはすっかり陽の落ちた夕暮れ時だった。 
 

 
後書き
影御雷「今更だが、この物語の主人公って一体誰なんだ?」

作者「それは読者の見解次第だ。」

影御雷「他人任せかよ!テメェそんでも作者かよ⁉︎」

作者「そんじゃお前の存在消したろか?ん?」

影御雷「ちっ!覚えてろよ‼︎」

____________________

頭の中で思い浮かんだ話でした。(笑)

さて話は脱線しましたが、次回は千代と道経の相撲観戦。
影御雷も助力する? 
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