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学園黙示録ガンサバイバーウォーズ

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第十二話

屈強な強面の高城の親父さんの部下達との睨み合いで色々とあったが、高城の親父さんや小室達が駆け付けた事もあって何とか事なきを得た。あの状況が続いたら、俺は思わず拳銃を抜いちゃうかも知れなかったしな。まあ、流石に高城の家の関係者という事もあって俺としては随分と自制したと思っている。学校を脱出した時のバスの中でチンピラに容赦なく撃った時と状況はまるっきり違うからな。

チンピラや紫藤に銃口を向けたり撃ったりしたのは、明らかに俺達の邪魔になるとわかりきったからこそ引き金も軽かったが、ここは現状において高城の関係者という事を抜きにしても統率が取れて、世界が崩壊した中でも比較的まとまりが強いグループ。強い結束で結ばれたグループで、馬鹿みたいに暴れて自分の命を縮めるのは馬鹿だと理解していたからこそ俺は理不尽な事を言われて、最初こそ気に食わなくて撃ちそうになったが自制した。

なお、憂国一心会のメンバーは元自衛隊や警察官の肩書を持つものが大半を占めている。所属先も機械化歩兵の役割を担う普通科や、一般警察では対応できない現場に派遣される機動隊等だ。その他にも海外のPMCとの繋がりがあるため、平野と同様にPMCで軍事訓練を受けた者もいる。日本の右翼の中でも最高戦力を保有していると言われている理由がこれだ。右翼団体というより一国の軍隊の様に統率された理由も、高城の親父さんの高いカリスマ意外に、自衛隊や警察出身者が多いのも理由の一つなんだと思われる。銃をもって粋がっているチンピラではないという事だ。

「どういった武器を提供するかだな……」

昨日のような銃撃戦は基本的に稀だ。<奴ら>がバリケードの所に集中していたから近接戦だけでは対処できないと判断したから音が馬鹿みたいに響く機関銃や手榴弾を大量に使った。<奴ら>は視覚がないため、俺達を目で認識することはないが、音には敏感であるため、音に群がる習性がある。そのため銃みたいに音が派手に響く武器を躊躇なく使えば、撃つ→<奴ら>を倒す→音に反応して集まる→また撃つの無限ループに嵌る。

俺達は皆が仲良しのイーグルサムの様に、派手に撃つような事は避けるべきだと判断する。銃は確かに効率的に倒すのはもってこいだが、無限ループに嵌って<奴ら>に囲まれて逃げ道がなくなる未来は笑える話ではない。敵地に潜入して隠密に倒す特殊部隊の様に行動するのが基本的だろうと思う。

俺はデスバレットの購入システムで弾薬は西側や東側といった縛りを受けないが、日本で使われる弾薬は西側の5・56mmNATO弾や7・62mmNATO弾のために、渡すならそういった西側の銃器がベストだと思うが、自衛隊や在日アメリカ軍が提供してくれると思えない。しかし、この屋敷にある武器は西側で構成されているし、色々な武器が混雑すると補給の混乱を起こす危険もある。なお、拳銃はガバメント系列に統一されていると言われたから、これで渡す銃器は決まった。


「じゃあ、こういった武器はどうですか?」

俺が提供したのは、戦場で伝説を作り上げた世界で最も信頼性が高いアサルトライフルのAKシリーズで、西側向けに開発されたAK101に、短機関銃や拳銃は銃器メーカーで高い実績を誇るヘッケラー&コッホ社で、短機関銃はガバメント系列の同口径である45ACP弾を使用するUMP45や、拳銃も45ACP弾を使用するUSP45を渡した。

「これなら屋敷で使用する弾薬との互換もありますよね」

「ああ、この武器なら弾薬の互換もあるから助かるが、学生の君達がどうやって手に入れたんだ?」

呆れ半分、好奇心半分の何とも言えない呟きが聞こえる。気持ちは分からなくありませんが、そこは企業秘密で納得してくれないと困る。所持ている経緯がぶっ飛び過ぎて、俺も説明に困るから。

「なんならこれもどうですか?」

俺はミニミ軽機関銃を見せる。それを見て苦笑い気味でため息を吐く吉岡という高城の親父さんの部下。まあ、気持ちは分かりますけど……何回も言いますが、説明に困るので、出来れば深く聞かないので欲しい。

ーーー。

それから出来る限りの武器は提供した。弾薬も提供した武器の規格に合う5・56mmNATO弾や45ACP弾以外に、この屋敷で既に保有しているボルトアクションで扱う7・62mmNATO弾も提供した。その他に拳銃で使用する着脱式のサプレッサーや手榴弾もかなりの数を提供する。少なくとも屋敷にいるメンバーの実戦部隊には行き届くだけの武器や弾薬は提供したので、これで文句を言うなら俺も考えはあったが、どうやらもっと寄越せ的な対応はなかった。

武器や弾薬が保管されている屋敷の倉庫にいくと、俺が提供した以外の武器がある。

「そういえば、この屋敷にある武器ってどのような経緯で入手したんですか?」

自衛隊も真っ青なくらいに保有してある軍用オートに自動拳銃は、明らかに一つの右翼団体が所持できるレベルを超えている。戦争でも始めるのかと思うくらいに保有しているのだから。

「この事を組織に所属していない君に本来なら言う事は出来ないが、武器を提供してくれたお礼に話そう。ここの武器は大半は、西側系列で既に書類では破棄されている事になっている武器を密輸で入手したものだ」

まあ、確かにアメリカ軍では既に使用されていないM16系列であるA1やA2等を装備している事を考えれば理解できる。A1はアメリカ軍では既に使用されておらず、A2に関しても改良型であるA4やM16のカービンタイプであるM4カービンやフルオート対応のM4A1に更新が進んでいる。

M16A1は、アメリカ友好国であるイスラエル、フィリピン、韓国でも今でも使用されているが、それでも一部の限られた部隊にしか使用されていない。破棄されても可笑しくない武器を入手しているあたりは、考えて入手しているという事だな。書類上では既に退役で破棄されても可笑しくない武器だからな。

「我々は組織の立場上、利権右翼や暴力団とは仲が悪い。そのため会長や部下の家族や親戚が命を狙われた事が何度もある。それに対抗すべく、組織で元自衛隊や警察官の隊員で構成された戦闘部隊を組織した。ここにある武器は、会長や奥様の海外の交友関係で入手した武器が殆どだ」


いや、それは可笑しいから。右翼団体に元自衛隊や警察官がいても疑問には思わない。だけど、装備が既に右翼団体というよりテロリストや民兵組織のレベルだから。警察の目を盗んでここまで銃器を揃えているあたりは、この組織がとつてもなく高い水準である事を理解させられる。

床主市の警察って……ちゃんと仕事をこなしているのかと疑問に思うよ。まあ、今は床主市の警察が不憫なお蔭で、この現状では助かるけどな。世界が崩壊した現在は、ここのグループは比較的安全なのだから。

この倉庫で確認した武器や憂国一心会のメンバーの話を聞いて改めて、高城の親父さんやお袋さんがどれだけ凄いのか再確認したのだった。

ーーー。

あれから俺は特にやることがなかったので部屋に戻る事にした。基本的に俺達の今後の方針が決まった今は、小室、宮本、毒島を除いて静かに屋敷から脱出する準備を待つことだけだ。脱出の準備を手伝うにも、ここの屋敷にいる『大人』達は俺達に仕事を与えてはくれない。

これはまだ、俺達が『子供』扱いされている証拠だなと思う。

「俺が使う銃の整備でもするか」

やる事もないし、あるとすれば静かに脱出する準備をまつだけだ。それまで十分に英気を養う。イザという時に、満足に動けないのは嫌だからな。

部屋に戻ろうとした時に、偶然にも毒島と出会った。

「よお」

「やあ、田中君」

毒島とあって俺は軽い挨拶をする。それより毒島が持ているものが気になった。

「これは、高城君の父上より譲ってくれた物だ」

俺の視線に気がついたようで毒島が説明してくれた。毒島が所持ているのは日本刀だ。現代に蘇った武士娘を思わせるこいつには、ピッタリにハマり過ぎで何ともいえん。

「よかったじぇねか。木刀だけじゃあ、心元なかっただろ」

「それは否定しない。小室君達と行動するうえで、これほど頼もしいものはない」

本当に物好きだよなこいつも。まだ小室や宮本が、ここの安全を蹴ってまで外に行く理由は分からなくもない。小室や宮本は家族を探すと言う明確な目的があるが、こいつが同行する目的がいまいち理解できん。

「まあ、外に出るなら気を付けろよ。お前ほどの腕や心構えがあるなら心配するだけ野暮ってもんだが」

「心配してくれて嬉しいよ」

「へいへい」

俺はそう言って高城家が用意してくれた俺の寝室に戻ろうとした時に、毒島がある事を呟く。

「君はいつになったら私達に心を開いてくれるのだ?」

「そいつはどういう意味だ?」

「そのまんまの意味だ」

俺は振り向いて、毒島に告げた。

「俺は普通にお前達を信用しているけどな」

「見た目はそうだ……だが君は、ある一線を超えようとすると線を引いている。」

こいつ……どうして俺の心の奥底を逆撫でするように言ってきやがる。このグループで腕や心構えは信用している。だけど、深くまでは自ら進む気にはならねえ。

それは前世の経験からくる事だからだ。

「何を恐れている」

毒島は更に呟く。

「何が君を縛る?」

「なあ、俺は出来ればお前にこんな事は言いたくねえ」

殺気を込めた視線を毒島にあてる。だが、毒島は微塵も表情を崩さない。

「はっきりと言ってやる。俺は女っていう生き物を信用してねえんだよ。」

そうだ。前世でどれだけ俺は女に騙された。

ブランドやスイーツにしか目がないビッチ共に、俺はどれだけ騙された。欲しい物が手に入れば、直ぐに要はないと別れて、また新しい男の元にいくような奴らに、どうやって信用を置く。


「それが、君が一線を引いている理由か?」

「ああ。懐が狭いって思うなら勝手に思いな。俺は小室ほど、自分の懐が深いわけじゃねえんだ」

「深い事情があるのだろう。冷静な君が、そこまで感情的に言うならなおさらだ。だが、深い悩みを抱えたままだと、いずれは壊れてしまうぞ」

「何を言ってやがる」

この世界に来た時から俺は……。

「既に壊れてるんだよ……俺は」

世界が崩壊した今の世界で、<奴ら>を倒して、生きた人間相手に銃口を突き付けて撃つ感覚に喜びを感じている時点だな。 
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