おぢばにおかえり
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第二十一話 授業中その八
「広島も海あるし。プールにも行くわよ」
「その時どう?」
「どうって?」
「だから。男の子に声かけられない?」
「あっ、かけられるわ」
「何人にも声かけられるわよね」
真剣な顔で佐野先輩に尋ねておられます。
「やっぱり」
「困るのよね、だから」
佐野先輩の顔が曇ります。本当なのがわかります。
「私そんなつもりないから」
「佐野いつも水着どんなの?」
「ピンクとかライトブルーのワンピースね」
少し考えてから答えられました。
「フリル付いてるのが好きね」
「そうなの。私もワンピースね」
高井先輩も答えられます。
「赤とか白が多いかしらね」
「ビキニはねえ」
「やっぱり抵抗あるわよね」
「ビキニって」
御二人のお話を聞いているだけで何か凄いことを聞いているかもって気持ちになります。御二人が水着で海とかプールにおられたらって思うだけでもう。
「そんな格好だと大変ですよ」
「そうよね。男の子の視線がね」
「ただでさえ感じるし」
「御二人共凄くお奇麗ですから」
今の私の言葉は嫌味ではないです。
「当然ですよ。それですと」
「けれどねえ」
「本当に海とかプールで声をかけられても」
御二人は困った顔になられました。
「仕方ないわよね」
「街でも困るけれど」
「じゃあ何処がいいんですか?」
少し気になって御二人に尋ねました。
「声をかけられるとしたら」
「学校!?やっぱり」
「そこだとね。ゆっくり話もできるし」
「学校ですか」
何かかなり意外な感じの御言葉でした。学校で声をかけられるのが一番いいなんて。
「だってねえ」
「私達寮生だし」
忘れられないこの事実、今これが出ました。
「だからね。付き合えるにしろ場所が限られてるし」
「相手も」
「相手も・・・・・・ああ」
言われて気付きました、私も。
「そうですね、やっぱり」
「付き合う子って大抵あれよ」
「天高生」
必然的にそうなっちゃいます。寮にいるとどうしても生活する場所や行き来する場所が限られますから。実は天理高校の生徒同士での結婚も結構あります。
「だからね、それはね」
「仕方ない部分もあるのよ」
「仕方ないですか」
「場所が限られてるから」
「けれどあれよ」
それでも御二人は私に仰います。
「相手には困らないわよ」
「この学校って男の子の方が多いし」
「ですね、それは」
これが少し不思議だったりします。天理教は教祖も女性の方でしかも婦人会や女子青年が強くて教会でも女の人あってこそなんですが何故か天理高校は女の子のほうが少ないんです。知ってる人は女の人に対してやけににこにこされて『婦人会のお姉さん達に逆らったらそれこそ終わりですから』なんて仰っています。とにかく天理教は女の人あってというところが非常に大きい宗教なのは確かです。
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