天才小学生と真選組の方々。
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無事
猛烈な戦いが始まった。
私は総悟と背中あわせで戦った。小さい頃はいつもこの戦い方だった。
そんなことを考えていても今は意味がないので、私は戦いに集中した。
「なんだか」総悟が戦いながら言う。「小さい頃を思い出す。年上の奴らが喧嘩売りに来たら、いっつもこの体勢で戦ってた。」
「あんたと私じゃ」私も答える。「違う思い出だけどね」
言いながら戦う。
無我夢中で戦うと、だんだん天導衆の数が少なくなっていった。よし。この調子だ。
朧と戦っているのは旦那、虚と戦っているのは高杉だった。
私たちは天導衆がほとんどいなくなったのを確認して、朧と虚の方へ向かった。
それを見た土方さん、近藤さん、ザキがあと残りすくない天導衆を引き受けてくれた。
朧たちの方に行くと、旦那、神楽ちゃん、新八くんが朧と戦っていて、高杉と神威、阿伏兎は虚と戦っていた。
私と総悟は一回止まった。ここの人手は大丈夫そうだ。けれど、油断はできない。
総悟と私は顔を見合わせて、総悟が旦那たち、私が高杉たちのところに行くことにした。
二人で一斉に飛び出していくと、さすがに危険を感じたのだろうか、朧と虚は上に飛び上がった。
戦う相手を見失った旦那たちと高杉たちは一瞬キョロキョロと辺りを見渡したが、すぐに見つけ、追いかけようとした。
すると、朧と虚はさらに上に上がり、私たちが上がれないような高さまで上がってしまった。
「今回はこちらの負けを認めよう」朧が静かに言う。「だが吉田松陽の弟子たちよ、今度会った時は…容赦はしない。」
「今だって容赦なかったじゃねえかよ」高杉が静かに言う。
「今よりもずっと、だ」
そう言い残して、朧と虚は去って行った。
しばらく私たちは立ち尽くしていた。
「で」沈黙を破ったのは神威の声だった。みんなが我に帰り神威の方に振り向く。「どうする?これから戦う?」
旦那たちはやる気のようで、体勢を立て直した。
「今日は終わり」本当に戦いそうだったので、私は止める。「こっちも疲れてるしそっちだって随分体力を消耗してる。こんな状況で戦えば、いい戦いができない。そうでしょ、神威?」
「確かにね」神威はにっこり笑う。「ここがダメだったから、新しい世界を見つけないとなぁー。シンスケ、行こう。僕たち侵略進めないと。」
高杉が頷き、神威たちも去って行った。
私たちは緊張が解けたせいか、少しの間ぼーっとしていた。
「恋奈ぁー!!!!!!!!!!!!!」
神楽ちゃんの可愛い声で我に帰る。抱きついてきた神楽ちゃんを抱き返す。
「心配したヨロシー!」私の隊服に顔を突っ込んだまま、くぐもった声で神楽ちゃんが言う。「もう二度と会えないかとも思ったアルヨ!もう二度とこういうことしないでネ!」
「大丈夫だって神楽ちゃん。」
私は神楽ちゃんをなだめ、旦那、新八くん、総悟と一緒に土方さんたちの元に戻った。
そのあとの警察の事情聴取により、私を誘拐、記憶を無くさせた理由が浮き彫りになった。
私が蹴り飛ばした黄河が全てを自供したのだ。
これまでの連続殺人事件の犯人は黄河で、これは天導衆に認めてもらうためにやったことだという。
中村秀兎は、天導衆に頼まれてやったらしいが。
そして私を誘拐したのは、天導衆を最強の軍隊に育て上げるためだったらしい。
かなり前から私の高い戦闘能力に目をつけていた天導衆は、私を引き入れれば最強の軍隊になると考え、脅迫状を私たちと神威たちに送りつけ、警戒態勢を厳戒にしてから黄河に私を誘拐させ、記憶をなくす薬を飲ませた。
警戒態勢を厳戒にしたのは黄河を試すためで、薬は人間関係などの記憶がなくなるだけの薬だったらしい。
そしてそのまま新たな人間関係を作り、軍隊に引き入れる算段だったというわけだ。
ただ私が早くに記憶を取り戻してしまったことで、計画が失敗した。
私が記憶を取り戻していなかったら、と思うと、私は寒気がした。
警察署から出ると、そこには蘭ちゃん、和葉ちゃん、園子ちゃん、小五郎さんが待っていた。
「よかった!」と言うなやいなや、蘭ちゃんはコナン君に駆け寄った。「大丈夫コナン君?怪我してない?血がついてるけど…」
「大丈夫だよ蘭姉ちゃん」コナン君が蘭ちゃんをなだめる。「お兄さん達のおかげで何も怪我しなかったよ。」
コナン君がそう言うと、蘭ちゃんは私たちに向かって頭を下げた。「本当にありがとうございました。」
「ううん、蘭ちゃん、私たちが迷惑かけたのよ。お礼を言うのはこっちの方。お礼っていうか、謝罪、ね。」
「それにしても」和葉ちゃんが言う。「災難やったなぁ、恋奈ちゃん。べっぴんさんやから狙われた思うてたけど、戦闘力目当てか…。強すぎるっちゅうんも大変やなぁ。」
「そういや恋奈」旦那が言う。「俺、一つ気になることあんだけど」
「?なんですか旦那?」
「お前さぁ、どうやってあの場所がわかった?いつ記憶を取り戻した?」
「あーそれは」私は空を指差す。「じーさん、ですよ。」
「なるほど。」
旦那も納得したようで、空を静かに見上げた。
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