戦国異伝
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第二百四十二話 淡路からその二
「屋島に陸と海から向かいじゃ」
「そしてですか」
「一気に攻める」
こう言うのだった。
「そして屋島で勝ちな」
「あの者達を四国から追い出しますか」
「うむ」
まさにだ、そうするというのだ。
「よいな」
「陸と海からですか」
「夜に昼に急いでじゃ」
そうしてというのだ。
「屋島まで行くぞ、休めるうちに休んでな」
「見付かってはならん」
今回はというのだ。
「あの者達をいきなり破ってな」
「それで、ですな」
「戦の機先を制する」
まさにそれをというのだ。
「そうした戦だからじゃ」
「何としても敵に見付からず」
「一気に攻めて勝つ」
そうすることがだ、今の信長の考えだった。
「わかったな」
「では軍勢を淡路の東に向けます」
「その様にな」
「さすれば」
「しかし。いきなり屋島とは」
やや首を傾げさせてだ、信長の船に来ていた元親が言ってきた。彼が普段乗っている彼の水軍の船ではなく。
「魔界衆は海での戦に自信がありますか」
「色々なところから集めたからであろうな」
「明や南蛮から」
「どっちも海賊が多い」
「倭寇等ですな」
「倭寇というが」
日本人の名前が付いていてもというのだ。
「実際は違うからな」
「はい、実は」
倭寇についてだ、元親も言う。
「本朝の者よりも」
「明や南蛮の者が多くな」
「朝鮮の者も」
「うむ、多い」
実にというのだ。
「だからじゃ」
「そうした倭寇の者達も入れたので」
「自信があるのじゃ」
そうだったというのだ。
「無論日本人の倭寇達も多く入れたしな、それにじゃ」
「妖術ですか」
「それを使ってじゃ、しかし」
「しかし?」
「ここは少し考えるか」
信長はその目を鋭くさせて言った。
「敵に妖術を使わせて破る」
「それは、ですか」
「屋島では止めるべきか」
「敵に妖術を使わせないのですな」
「妖術は連中の切り札じゃ」
魔界衆、他ならぬ彼等のというのだ。
「それを最初の戦で破ってみせるとな」
「敵がここぞという時にですな」
「使って来ぬ」
そうだというのだ。
「敵の切り札を破るのも一つの手じゃ」
「戦の」
「この度の戦はまだ最初じゃ」
「確かに。伏兵があっても二万程度しか出しておらぬのでは」
明智もだ、信長に言って来た。
「間違いなく」
「うむ、ここは決める戦ではない」
「次かそのまた次の戦ですな」
「だからじゃ」
「ここは一気に破りじゃ」
その屋島の敵を急襲して、というのだ。
「妖術は次かその次で使わせる」
「決戦の時にですな
「そうしよう、ではな」
こうしたことを話してだった、そしてだった。
信長は淡路の東の海をだ、夜の闇に紛れてだった。ひたすら進んでだった。密かに讃岐に上がってだった。
そこからだ、一気に進んだ。
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