少年少女
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第九話
「今だ!」
俺の合図にシノンは弓の速射で応える。彼女の前方の死霊が二体、HP全損により四散する。
「ジンガ!頼んだわよ!」
シノンは死霊の隙間をすり抜け、キリトの方に走って行く。
「よし、貴様ら、覚悟は良いか?」
俺はシノンが包囲を抜けたのを確認すると、刀を中段に構える。喰らうと良い、俺のユニークスキル。『流派・天元』!
「・・・四の型、『嵐独楽』!」
駒のように回転しながら横斬りを死霊共に放つ。
三回転した後、渾身の横斬りを丁度良い位置にいた死霊に見舞う。
「おぉおおお」
「アアアアアア・・・」
死霊を一気に五体倒す。残りは三体。俺の右側から二体、反対側から一体、一斉に近付いてくる。
「ジャアアアアア!」
「おぉおん!」
死霊は叫び声をあげながら攻撃を仕掛けてくる。だが、俺の次のスキル発動の方が、僅かに早かった。
「五の型『猿舞曲』!」
左側の死霊の爪攻撃を軽いバックステップで回避しながら首を斬り飛ばす。着地後、右側にいた死霊二体が噛みつきと爪攻撃を仕掛けてくるが、それを回避しつつ後ろへ回る。突きと袈裟斬りで死霊たちを四散させる。
五の型は一定時間、反応アップとカウンター効果があるスキルだ。俺のユニークスキルはハッキリ行って地味。だが、何故か現実の実家で教えている剣術なので使いやすかった。まぁ、あまり好きではないんだが。
「っと、一丁あがり、だな。」
俺は死霊の全滅を確認すると、直ぐにキリトたちの方へ向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ジンガ!頼んだわよ!」
私はそう言うと、死霊の隙間を潜り抜け、キリトの元に向かった。キリトは依然として防戦一法で、苦戦していた。とはいえ、ボスクラスの敵を一人で相手にしている辺り、さすが攻略組の中でもトップレベルのプレイヤー・・・といったところかしら。
「ヒェッヒェッ。しぶといなぁ、早くくたばれば楽だぞぉ。」
「くっ、このままだとヤバいな・・・」
ネクロマンサーとキリトが鍔迫り合いをしている。運が良いことに、私はネクロマンサーの後方に位置している。これはチャンスね。私は弓の有効射程圏に入ると、弓を構えた。
「・・・後ろに注意、よ。」
小さな声でそう言い、矢を放つ。
「ぐわ!ぬぬぅ。後ろからとは卑怯ぞぉ。」
ネクロマンサーは鍔迫り合いをしながら顔を180度回してこちらを見る。気持ち悪い。
「卑怯で結構よ。卑劣なアンタには言われたくないけど。」
ネクロマンサーは「ぐぅぅ」と悔しそうに唸った。ざまぁみろ。
「シノン!ナイス!」
キリトはそう言うと、ネクロマンサーの武器を弾き、ソードスキルを叩き込んだ。
「ぐうえっ!ぬぅぅう。よくもやりおったなぁ!」
ネクロマンサーのHPが半分ほどになると、ネクロマンサーは怨めしい声と共に、手にしていた武器を掲げる。
「かぁぁああ!」
「おおおぉん・・・」
「アアアああ」
すると部屋中に死霊がポップする。もはや死霊の外見はプレイヤーを装っておらず、ゾンビそのものだった。
「ヒェッヒェッ!どうだぁ?これだけ数があれば、どうする事もできまい?!」
「くそ!シノン!ジンガ!」
「ちっ!またこの手!?しつこいのよ!」
私の近くにも複数ポップする。冷や汗をかき、ヤバいと思った瞬間、ジンガが回転斬りで部屋中の死霊を斬り倒しているのが見える。
そのままジンガはこちらに近付いてくる。もちろん、私の近くにいた死霊も斬り倒される。まるで嵐のような光景だった。
「キリト!シノン!死霊は俺が掃討する。心配はいらん、とっとと終わらせるぞ!」
ジンガが死霊を巻き込みながら回転する姿を見て呆気にとられているキリト。
「キリト!合わせるわ!一緒にソードスキルいくわよ!」
私の叫びに、はっとするキリト。直ぐにネクロマンサーの方を向きなおす。私はすかさず、矢をネクロマンサーに向けて撃ち込んだ。
「ぐぬぅ!」
ネクロマンサーの背面に矢が直撃し、若干隙ができる。キリトはその隙を見逃さなかった。
「うぉおおおお!」
恐らく威力の高いものだと思われるソードスキルを発動する。私はそれに合わせ、弓のソードスキル『タイム・オブ・スナップ』を撃ち込む。
「ぎゃああぁあ!!」
ネクロマンサーは堪らず、叫び声をあげる。しかし、HPは僅かに残ってしまっていた。
「お、おのれぇ!こちらの番だ!死ぬが良い!」
キリト目掛けて武器を降り下ろすネクロマンサー。まずい、私もキリトも硬直で動けない。
「くっ・・・そっ!」
キリトが悔しそうにそう言った時、ジンガが回転しながらネクロマンサーに肉薄し、回転の勢いが着いた袈裟斬りを叩き込んだ。
「おぉりゃゃああ!」
ザン!
「がっ・・・」
ネクロマンサーは短く発すると、HP全損により消滅した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
シノンが包囲を抜けて少しすると、シノンとキリトのソードスキルがネクロマンサーに炸裂する。その少し前に、周囲の死霊を片付ける為、俺は何度目かの『嵐独楽』を放っていた。
「はあぁぁぁあ!」
死霊を蹴散らしながら、様子を伺っていると、ネクロマンサーは再び死霊を部屋中に呼び出した。こいつ、しつこいくらいに同じ事するな。一斉攻撃を喰らうとまずい。俺は回転しながら再びポップした死霊を蹴散らしていく。
「キリト!シノン!死霊は俺が掃討する。心配はいらん、とっとと終わらせるぞ!」
俺はそう叫びながら、キリトたちの方へと死霊を蹴散らしながら向かう。
シノンとキリトのソードスキルの連撃にネクロマンサーは耐え、僅かにHPを残しているのが分かった。俺はネクロマンサーの方へと回転しながら近づく。幸いな事に、これは間に合うと確信が持てる距離だ。
「お、おのれぇ!こちらの番だ!死ぬが良い!」
ネクロマンサーが叫ぶと同時に武器を降り下ろそうとするが、その前に『嵐独楽』のフィニッシュブロウがネクロマンサーに炸裂する。
「おぉりゃゃああ!」
ザン!
「がっ・・・」
ネクロマンサーの断末魔は短く、低いものであった。
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