| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

歌集「春雪花」

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

181




 才もなく

  力もなくば

    虚しける

 恋影探す

    冬の夕暮れ



 私には豊かな才能はなく…況してや人が驚くような力もない…。
 努力しても報われず、こんな歳まで生きて…気付けば然して何も残すものもなく…虚しいばかりだ…。

 そんな私が…彼を愛しても叶う筈のない夢…。
 だが…冬の寂しさに覆われた夕暮れ時には、もし彼と生きれたら…と、考えてしまう…。

 何とも憐れな生き様…そう思ってしまうものだ…。



 光り射す

  朝に凍みし

   窓硝子

 君を想へば

    夢となりぬる



 やけに寒い朝…見れば、窓の硝子が凍りついている…。

 一枚一枚…凍りついた硝子の模様は違った顔を見せ、まるで色のないステンドグラスのようだ…。

 それは寒々とした冬の象徴でもあるが、彼にも見せたいと思った時、不意に…一緒に居たらと、夢を見てしまった…。

 ありえない夢…それはこの凍りついた硝子のように様々な顔を見せ、ほんの一時…私はその夢が現実になるのではと希望をもってしまった…。

 虚しいだけだ…けれど、もう少しだけ…。

 そうして朝の陽射しに照された凍りついた硝子の模様を、私は彼を想い…暫し見入っていた…。



 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧