戦国異伝
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第二百四十一話 二度目の戦その十一
「本陣におれ」
「わかりました」
「御主には二郎三郎をつける」
二人の弟の一人でである信広をというのだ。
「いつも通りな」
「畏まりました」
「あの者を討つ時もじゃ」
津々木、信行にとっては因縁の相手である彼をだ。
「二郎三郎の力を借りてじゃ」
「そのうえで」
「討て、よいな」
「そうさせてもらいます」
信行は素直にだ、兄に答えた。
「それがし自分をわかっているつもりであります」
「だからじゃ」
「二郎三郎と共に本陣におり」
「討つ時もな」
「あ奴の力を借ります」
今この場にいない彼にだ、こう兄に言うのだった。
そしてだった、その話をしてだった。信長は長政そして家康に先陣を命じてだった。全軍を屋島に向けさせた。
その大坂を出る時にだ、左手の海を見て言った。そこには海を埋め尽くさんばかりの天下の水軍があった。
見れば青い旗だけでなくだ、他にもだった。
「毛利の緑にじゃ」
「はい、長宗我部の紫に」
「他にもですな」
「天下の水軍が集まっています」
「まさに」
前田と佐々、それに川尻と前野が信長に応えて言って来た。
「敵も多いでしょうが」
「水軍もまた」
「しかしです」
「それでもですな」
「うむ、負けることはない」
決してというのだ、そしてだった。
信長はその水軍の中でもとりわけ見事な船達を見てだ、また言った。
「あれがある、我等にはな」
「あの船があるので」
「それで、ですな」
「負けることはありませんな」
「何があろうとも」
「しかも人もおる」
船だけでなく、というのだ。
「二郎達がおる、あ奴ならば大丈夫じゃ」
「やはり水軍となれば」
ここでだ、こう言ったのは長可だった。
「あの方ですな」
「うむ、二郎はやはりじゃ」
「天下の水軍の将ですな」
「それでじゃ」
「あの方がおられ」
「鬼若もおる」
水軍の中にというのだ。
「だからじゃ」
「他にも小早川殿がおられ」
「それで負ける筈がない」
「海においても」
「あの者達はわかっておらぬがな」
「魔界衆の者達は」
「戦の仕方も。船や人のこともな」
そうしたこと全てがというのだ。
「わかっておらぬ、ではあの者達が勝てる筈がない」
「それでは」
「我等は海でも勝つ」
そこでもというのだ、こう話してだった。信長は水軍も見つつ自分達の勝利を確信していた。そしてだった。
姫路に入りだ、そこからだった。
いよいよ屋島に行くという時にだ、先陣を務める家康がだ。
嫡子である信康にだ、こうしたことを言った。
「次の戦がな」
「はい、戦国の世を完全に終わらせて」
「そしてじゃ」
「新しい世を開くのですな」
「天下は武を収め」
「泰平となり」
「そしてじゃ」
それにとだ、さらに言う家康だった。
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