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戦国異伝

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第二百四十一話 二度目の戦その七

「源氏はまず身内で争っておった」
「平家や奥州藤原氏と戦う前に」
「そうしたことを繰り返していたからな」
「遂には血が完全に絶えました」
「ああなってはいかん」
 こう言って否定するのだった。
「だからじゃ」
「上様は、ですな」
「頼朝公の様なことはせぬ」
 決して、というのだ。
「そして義朝公とも違う」
「では猿夜叉様も」
「あの時も殺さずじゃ」
 久政に逆らえず織田家に弓を引いた時、その時のことも言うのだった。
「そしてな」
「これからもですな」
「そうじゃ、あ奴は天下の宝の一つじゃ」
「それ故に」
「あ奴と竹千代に次の戦の先陣を任せる」
 ここでこうだ、信長は言った。
「屋島での戦のな」
「そうされますか」
「うむ」
 林に確かな声で答えた。
「そうするつもりじゃ。どうか」
「よいかと」
 まずは林が答えた。
「お二人で」
「それがしもそう思いまする」
 平手も言って来た、ここで。
「猿夜叉様と徳川殿はです」
「二人はじゃな」
「上様、いえ織田家を支える両輪」
「そこまでの者達じゃな」
「はい、そこまでの方です」
「若しもじゃ」
 ここで信長はその目を鋭くさせて言った。
「わしが猿夜叉を殺していればな」
「その時はですか」
「頼朝公と一緒になっておった」
 そうなっていたというのだ。
「間違いなくな」
「頼朝公とですか」
「そうじゃ、あ奴が生きていてよかった」
 浅井家と戦になったその時でもというのだ。
「まことにな、しかし」
「猿夜叉殿が生きておられて」
「まことによかった」
 心から言うのだった。
「本当にそう思うわ」
「若しもです」
 今度は柴田が信長に言って来た。
「あの時久政殿が犠牲にならないと」
「うむ、久政殿かな」
「猿夜叉様となっていましたので」
「まことに危うかった」
「ですな、上様のお命を狙うかそうでなければ」
「浅井家を滅ぼさせていた」
「色の家の一つをな」
 信長はこう柴田に述べた。
「色は光、そしてその色の家はな」
「あの者達へのこれ以上にない力ですな」
「大和朝廷は色だったのじゃ」
 信長は本能寺の前にわかったことを言った。
「それを世に広めたのじゃ」
「神武帝が」
「うむ、そうしてくれたのじゃ」
「そういうことになりますか」
「そのことがわかった、神武帝は闇におるあの者達を退け」
「この国に光をですな」
「もたらしてくれた、そうした方だったのじゃ」 
 信長は前を見ていた、そのうえでの言葉だった。 
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