ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
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第3章 黄昏のノクターン 2022/12
34話 造り物の心
「悪かった、金輪際勝手な真似はしない!? だからもう止めてくれ!!?」
半二階から見下ろしていた、海賊然とした水運ギルドの親玉は十数分前の威勢は消え失せ、声を震わせながら命乞いを繰り返すだけとなっていた。
この状況に至るまでの間に、コルネリオは自身に向かってくる水夫や木こりの全てを容赦なく叩き潰し、俺達は自衛さえすることなく事態は終結してしまったのだ。鞘に収まったままの刀はいよいよ血に染まることなく、しかし鞘や柄尻が猛威を振るった傷跡は凄まじい。酒場を思わせるバーカウンターに水夫の身体を挟み込むように谷折りになっていたり、天井の梁から干された布団の如く垂れる木こりが呻き声をあげていたり、暴力の凄惨さを物語る光景は枚挙に暇がない。その全員がスタンから復帰していないので死人こそ出さずに済んだものの、なまじアバターが消滅しなかったからこその地獄絵図というものだろうか。あまり女の子に見せるのが憚られる光景である。
………当然、男も例に漏れず、手摺の吹き飛んだ半二階のバルコニーから突き出されて宙ぶらりんに吊り下げられていた。片方の足首だけを左手だけで支えるという、およそ人間業から外れたものであったが、それでもコルネリオの顔は眉一つ動くこともない。ただ冷たい表情で、無様な男を見下ろしていた。
「要領を得ないな。私が求めているのは謝罪ではないのだよ………その貧相な頭を使って考えたまえ」
苛立ちさえ匂わせるような棘のある低い声で呟くと、男は喉を鳴らして矢継ぎ早に口を動かした。
「わ、分かったぞ………エルフどもとの取引の儲けか!? アンタ達に話を通さなかったのは悪かった! 分け前も渡すから………!」
男の発言を受け、コルネリオは何かを窺うような面持ちで俺達に視線を向けてきたものの、当初の目的とは大きく異なる示談内容だ。一応は周りの意見も取り入れた上で返答を返そうとするものの、クーネ達は目の前で繰り広げられた事件の一部始終に腰を抜かしてしまって論外。ヒヨリはティルネルに目と耳を覆われて――――正確には、抱きしめられて――――いたのでこちらも論外。唯一の有効票であるティルネルは首を縦に振って拒否の意思表示を見せる。
ティルネルに倣い、俺もコルネリオに首を横に振って見せると、コルネリオは首肯した後に再び逆さ吊りになっている男に冷たい視線を落とす。
「それだけで話が収まるとでも思ったのか?」
「じゃ、じゃあ、あれか!? ずっと《みかじめ》を払いそびれていたもんな! その事だろう!?」
「………どうも、君には失望させられるよ」
半ば自暴自棄な勢いで捲くし立てる男に対して、コルネリオは深く溜息を吐き、腰に佩かれた《朔》を抜き放ち、男の左耳に切っ先を添えた。
「………そろそろ腕も疲れてきた。余分なところから削ぎ落して、少しずつ軽くするというのはどうだろうか?」
「頼む、待ってくれ!?」
「それは君の気持ち次第だ。先ずは左耳から………」
「取引先の、エルフ共のアジトに案内する!!? あいつらだって、ロービアで取引をしてたのに話を通さなかっただろう! お、俺達だけが悪者じゃあねえ筈だ!?」
最後の一言、まさしく俺達が求めていた条件に見合った発言で、頬を撫でながらゆっくり降下していた《朔》の切っ先が半ばで停止する。強いて確認するならば、左耳は健在というところか。これには一安心である。
「ふむ、となると君は、フォールンエルフのアジトまで我々を送り届けてくれると、そう申し出てくれているのだね?」
「ああ、そうだともクソッタレ!」
「では、早急に準備に取り掛かってくれたまえ。木箱を搬入していた大型船一隻で十分だ。それと、申告してくれた未納金の支払いも遅滞なく頼むよ。利息が少々値の張るものでね」
余分に幾つか話を取り付けたコルネリオは、男をバルコニーの床に放り捨てた後に何か言葉を交わしてから階段を降りてこちらへと歩み寄る。あれだけの戦闘を繰り広げながらも、拵えの良いベストとトレンチコートに乱れはなく、ハンカチで左手を拭き取りつつ放り捨てると、沈黙を破って語り出した。
「私に任せて正解だっただろう?」
「全く、見事なお手前で」
「お褒めに与り光栄だ。さて、船の手配は整った。彼等には我々のセーフハウスまで船を運ぶよう伝えてあるから、部下と合流するとしよう」
つまり、アジトに戻るということだろうか。
ここに残っても、対して得られるモノは見受けられないので、コルネリオと共に水運ギルド本部を後にする。
帰り道の運河で擦れ違う船頭は、果たして本部の有り様を知った時にどのような心境となるのか気掛かりではあるものの、彼等とてフォールンエルフとの密貿易に少なからず加担していると見て良いだろう。恐らく、どの船頭の船に乗って作業場の空箱について問うても、「答えられない」という台詞を使い、躱されていたと容易に想像できる。知らぬ存ぜぬで受け流された方が関係性を疑わなかっただろうに。犠牲者や被害者としては括られることはないだろう。
………などと、横道に思考が逸れながらもゴンドラは恙なく運河を渡り、もう幾度も立ち寄ったコルネリオのアジトの前にて接岸。
出発前のコルネリオと側近との会話通り、黒服に身を包んだコルネリオの部下が水路に沿って並び、一糸乱れることなく待機していた。加えて、木箱を輸送していた大型のゴンドラも停泊されている。船頭は昨日に引き続き、フォールンエルフの許まで木箱を輸送していた男が抜擢されたようだ。自分の立場を理解してか、膝が竦んでいる姿には憐憫の情さえ覚えてしまう。
「ふむ、順調だ」
満足げなコルネリオは一言だけ残し、ゴンドラから降りると側近の前まで歩み出る。
「ブルーノ、ロレッキオ。首尾は?」
「総勢四十二名、準備を終え待機中です」
「それと、彼等の報告書を拝見いたしましたが、どうやら相手は水上における戦力を保有しているようです。如何なさいますか?」
「ああ、それなら――――」
側近の両名と作戦会議を始めてしまったコルネリオに取り残され、俺達は蚊帳の外に追いやられる。この会話に横槍を入れて、クエスト進行に何らかの支障が生じても困るので、空き時間として利用しつつポーションの分配や装備の確認を始めることにする。
「リンさん、お話があるのですが………」
「………フォールンについてか?」
神妙な面持ちで話を持ち出したティルネルに問うと、静かに首肯される。
俺は彼女の表情や声色から感情の機微を読み取れるほど細やかな性格をしていない。そういう役回りはヒヨリやクーネの専売特許というものだ。
果たして、俺に持ち掛けて良いような相談であるかは内容如何によるが、少なくとも全体のイニシアチブを取るならばクーネの方が有利であろうし、一番身近にいるヒヨリに話しさえすれば俺には拒否する意思はなくなるだろうに。それでも敢えて俺に話を持ち掛けるというのであれば、それを無下にするつもりは毛頭ない。彼女もまた、俺からすればかけがえのない仲間なのだから。
「コルネリオさん達は、このままフォールンエルフ達の潜伏先に強襲を仕掛けるでしょうか」
「間違いなく戦闘は避けられないだろうが………大丈夫なのか?」
大丈夫なのか、という質問はあまりにも抽象的に過ぎる。通常のNPCであれば首を傾げてしまうような難問でさえも、ティルネルは頷いて返す。
「はい。私は《迷い霧の森》にて森エルフの部隊を数度に渡って襲撃しています。ですから、戦うことについての忌避感はないんです」
手の掛かる姉の命も掛かってますから、と冗談混じりに言葉を締めくくるティルネルの表情は、言葉に反して暗い。こうなれば、さしもの俺でも心情を察することは可能だ。
「………フォールンエルフに、何かあったのか?」
「やっぱり、話さなきゃ………ですよね」
困ったように笑うティルネルを見る俺の表情は、笑えていないと思う。
いっそ訝しむような表情でいるかもしれない。だが、その本心を聞き出さねば、きっと俺は後悔する。認識を拒絶された、稚拙な我儘で否定された予測が声高に鳴らす警鐘を脳裏に押しやりつつ、ティルネルの言葉を待つ。
時間にしてみれば半秒もないような空白でさえ、緊張とも表現出来そうな重苦しい内情は体感時間を大きく引き伸ばしてみせた。ティルネルの意思を聞かなくては、という焦燥感と、それだけの重荷を俺が耐えられるだろうかという不安が綯い交ぜになった感情の奔流は、しかしティルネルの声を耳朶に受けた時には、延長された体感時間など露ほども感じさせないほどに一瞬に感じられる。この揺さぶられるような思いには、慣れることはないかも知れない。
「………決して、コルネリオさんの強さを認めていないのではないのです。ですが、相手は………人族の手に負えるものとは到底思えない。もちろん、私にも………このまま、あの人達が、もし死んでしまったらと思うと………それに、このまま姉さんを救えなかったらと思うと………恐いんです………」
意図的に情報を伏せているのか、それとも口にするのを憚られるような内容なのだろうか。不透明なティルネルの言葉には、それでも困難な障害が立ちはだかっていることを暗に伝えるものがある。現状において破格のレベルを誇るコルネリオでさえ手に負えないような何かを、ティルネルは見たのかも知れない。
加えて、それだけの存在をフォールンが有するとして、このままコルネリオ達を戦いに向かわせれば、それは即ち彼等を見殺しにすることとなる。しかし、彼等がフォールンへの襲撃を取り止めれば、今度は黒エルフの拠点であるヨフェル城が戦渦に呑まれることとなる。
コルネリオやその側近、部下の黒服達はこのSAOによって生み出された仮想の存在でしかない。俺達のように《生きているプレイヤー》とは別種の、造り物だ。しかし、だからティルネルが気に病むことはないという発言は、決して気休めにはならない。いや、気休めにしてはいけないのだ。
彼等を《NPC》と、仮想世界が生み出した幻影であると断ずれば、それは同様の存在であるティルネルを、今まさに苦悩している彼女の《心》を否定してしまうことになるのだから。
それに、ヒヨリでもなく、クーネでもなく、この数日ですっかり気心の知れた同性の友人を差し置いて、わざわざ俺に相談を持ち掛けてくれた。彼女の苦悩に向き合わず、気休めで場を濁すなど、それこそあってはならない。ティルネルの仲間だと自負する俺にとっては恥ずべき悪手だ。そんな事をすれば、相棒に愛想を尽かされても文句は言えないだろう。
「俺だって完璧じゃない。全てを理想の形で完結させるという高望みだけはしないでくれ」
「………何を、するんですか?」
「ティルネルは調剤器具とポーションの材料を用意。必要な種類と数量は追って知らせるから、いつでも作れるように準備しておけよ。いいな?」
ティルネルの返事も待たず、メールウインドウを開いてアルゴに文書を飛ばす。
生憎とキャンペーン・クエストを実際に攻略した事のない俺は、精々そのストーリーが黒エルフと森エルフとの戦争であるという程度しか知り得ていない。正直に告白するならば、ティルネルに聞くまではそれ以外のエルフの派閥である《フォールンエルフ》という存在を知らなかったくらいである。
情報がない。ならば手に入れればいいだけのこと。餅は餅屋。情報は鼠と自分の中で固まりつつある不変の真理を信じつつ、祈る思いで待ち侘びると、一分と待たずに鼠から返信が送られる。
開いたままのメールウインドウで文面を確認すると、フォールンエルフに関する情報――――戦闘における使用武器やアイテムといった情報のみに限定した――――が詳細に書き連ねられた、ともすれば【プチ攻略本】とも言えてしまうような代物が視界に羅列される。
「全部終わったら、あとでトッピング全部乗せのピザでも奢ってやる」
思わず口を突いて出た感謝の言葉も、まともに耳にしたのはティルネルくらいのものか。そんな些事はさておき、メールで届いた文面を手持ちの羊皮紙にコピーしつつ、コルネリオの許へと足早に移動する。《NPCという無機質な存在》ではあるが、賢明な彼の事だ。或いは、何かしらのギミックのトリガーとなるかも知れない。少なくとも今はマフィアの元締の理解力に賭けるしか他はない。
「――――では、その手筈で頼む」
「畏まりました」
まさに取り込みの話が終え、側近の二人が場を離れたところに滑り込む。
殊に表情を変化させるでもないコルネリオは、しかし事態を認識したかのように場を離れることなく待機する。或いは、そう見えただけかも知れないが。
「コルネリオ、これを見てくれ」
「………これは、どこで手に入れた?」
呼び捨てにされた事など気にすることもなく、受け取った羊皮紙に記載された文面に目を通すコルネリオは、返って怪訝な表情を見せる。一端とはいえ、敵の内情について記された文書を突然見せられれば嫌疑も掛けられそうなものだが、今はそれどころではない。
「知り合いに腕の良い情報屋がいるだけだ。俺も文面を少しだけ見たが、あいつらは煙幕や閃光弾で目晦ましをしてくる。加えて麻痺毒や熱毒を塗った武器を使うらしい。準備だけはしておいてくれないか?」
俺からの具申に対して、返答はない。
ただいつも通り、淡々と文面に目を通していくだけ。読み終えたコルネリオは書類を折りたたみ、懐に仕舞い込む。しかし、今更になって出過ぎた行動だとやや後悔する。モンスターの手の内を予め予期出来るのはベータテスターの特権であるが、それはプレイヤー間の常識であって、このSAO内に設置されているNPCには埒外の理屈となる。常識的に考えて、超越的な手段で得た情報を鵜呑みにされることは先ず在り得ない。それこそ敵の内通者と取られても文句の言えない状況を自ら作り出したことになる。
今にも斬り掛かりそうな鋭い視線を横目から向けてくるコルネリオはゆっくりと息を吐いた。緩慢とした動作で空を仰ぐ動作がむしろ恐怖を煽る。
「これは、君達が書き纏めたものではないね。しっかりと目を通したかい?」
「いや、俺は一ページ目だけしか………」
「実に面白いものだ。これほどまでに『誰かに生き延びてほしい』という感情の籠った報告書は、そうそう見られたものではない。それに、彼等の戦法についてここまで精緻な情報を得るには、少なからず身を危険に晒さねばなるまい。その観察眼も胆力も非常に優秀なものだ。貴重な情報を提供して頂き、感謝する………良い友人を持ったな」
――――これからも、その友人を大切にするといい。
年長者の持つ、どこか深みのある声音で、最後にそれだけ告げて、肩に手をポンと置かれる。
「………俺を、信じるのか?」
「疑う理由など無いさ。その指輪が受け取られた瞬間から、君達は我々の友なのだからね」
無機質な存在と、俺は彼を思ってしまっていたが、その認識を撤回しよう。
ティルネルと出会った時から気付くべきだった。もっと早くから認識するべきだったのだ。
――――この世界はゲームであっても、無機質な世界ではない、と。
「しかし、毒を使うとは厄介だ。この街の道具屋では既に欠品を起こしている。どうにか用意したいところだが………」
「その点については問題ない。仲間が店売りのポーションよりも性能の良いモノを作れる。今から作らせるから全員に配備してくれ」
「助かる………と、言いたいところだが、材料は足りるのか?」
「………あ、どうだったかな」
危うく諸手を挙げて安堵するところを、コルネリオは冷静な助言で頭を冷やしてくれる。
しかし、それを決して咎めるでもなく、彼は極めて冷静に手近な部下の一人に声を掛けた。
「アドルフォ、頼まれ事を聞いてもらえるか?」
「は、はい! 光栄ッス!」
アドルフォと呼ばれた黒服は、まだ若いように見えた。高校生くらいの年代だろうか。
光栄という言葉に社交辞令的な意味合いを感じさせないほどに、やや興奮気味に返された返事を受け、コルネリオは満足そうに頷く。
「良い返事だ。では、至急市場まで向かい、薬品の原料に使えそうな薬草を木箱五つほど買って来てくれ。金に糸目はつけない。無論、最高級品だけを選りすぐるように」
「………へ?」
まるで忠犬を思わせるアドルフォは先の気合に満ちた返事から一転、放られた長財布を両手で受け取るものの、理解が追いつかずに疑問符を頭上に浮かべた。
「聞こえなかったのか? ………私は薬草を買ってくるように言ったのだよ」
しかし、コルネリオには説明に時間を割く意思も、一度下した命令を取り下げる意思も持ち合わせてはいなかったらしく、《朔》の柄に手を乗せつつ、底冷えする声で再び命令を繰り返す。要するに最後通牒である。
「ひぃッ!? よ、喜んでェーーッ!?」
コルネリオの殺気に中てられ、若干涙目になりながら街路を南へと疾走。そのまま行き交うゴンドラを飛び石代わりに水路を跳ね超え………ようとした矢先に一人の船頭が運悪く水路に転落。アドルフォはそのままゴンドラを拝借して市場へと去っていった。さも当たり前のように白昼堂々繰り広げられたゴンドラジャックの一部始終に困惑しつつ、コルネリオは愉快そうに低い声で小さく笑う。
「全く、いつ見ても飽きないものだ」
「可哀想でならないぞ………」
アドルフォと船頭は気の毒に思えて仕方がない。
「安心してくれ。あとで手当を付けておくさ………それと、今度は君の友人に礼でもせねばなるまい。全てが終わったら、行き付けのレストランにでも招待しよう。もちろん、君達全員もね」
「いや、あの船頭………もういいや………そうだな、ありがたい。だったら尚更死ねないな」
「ああ、そうだとも。死んだらつまらない」
まさか情報代がマフィアのボスとの食事会ともなっているとは、さしもの鼠も思うまい。
ともあれ、これでフォールンエルフが使用する状態異常に対して友好的NPCが対抗策を持ったことになる。毒や麻痺によるディスアドバンテージを克服する。たかが数個のポーションを準備しておくだけで、死を免れることなど、この浮遊城に於いてはプレイヤーの多くが経験したことだろう。ティルネルにはこれからコルネリオを初めとした全員分のポーションを作成してもらうのだが、一先ずは薬師の誉れとしてもらおう。死にはしない筈だ。
………と、ティルネルに内心で合掌していると、コルネリオはふと思い出したようにトレンチコートの内ポケットに手を差し込んだ。
「まだ読んでいないのならば、これはやはり返すとしよう。君の友達との秘密にしようと思ったのだが、それでは勿体ない」
仕舞ったばかりの羊皮紙を懐から抜き出し、手渡してくる。
それを受け取ると、コルネリオは愉快そうに笑いながら低い声で語る。
「最後の一文を読んでみるといい。中々に傑作だぞ」
意味が分からず、言われるままに一番後ろのページの最後の行に目を通す。
そこに記されていたアルゴの憎い心遣いに、思わず左の目尻が引き攣った。
【P.S. このくらいはむしろ一般常識だぞ。もう一度勉強し直せよ】
追伸に記された、無慈悲な一言はコルネリオにとってどう映ったのだろうか。少なくとも悪いようには認識されなかったのだろうが、それとは裏腹に、俺はより強くアルゴに対して心に刻んだのだ。
――――やはり、相容れない、と………
後書き
フォールンエルフ戦の準備回。
今回はコルネリオ無双後半と、ティルネルの苦悩に対して暗躍を開始した燐ちゃんと、それに応えたマフィアのボスと、健気にパシられるアドルフォ君でお送りしています。大冒険できませんでした。
さて、お気づきの方もいらっしゃると思いますが、三章はNPCに焦点を当てた構成となっています。というか、裏テーマですね。
より具体的に言うのであれば、《燐ちゃんのNPCに対する認識》でしょうか。コルネリオさんは《NPCを生きている人間と別物と認識する》燐ちゃんを矯正する為、若者を導くような懐の深いイメージでキャラを作ってみました。これについて細かな言及をすると、作者のSAOに対する認識から今後の展開まで暴露することになるので、とりあえずは《ハードボイルドなのに遊び心のあるマフィアのボス》がいましたとだけ認識して頂ければ幸いです。
既に設定されたNPCの持ち物を新たにプレイヤーが追加するという行為そのものが、果たしてSAO本来の仕様であったのか否か。それはもしかしたら、燐ちゃんの想いに突き動かされたコルネリオさんの心意気なのかも知れません。なんて、思わせぶりなかたちで纏めておきましょう。ぶっちゃけスカイリムとかなら普通なんですけど(笑)
そして、まさかのマフィアのボスに情報を売り、高級レストランに招待されることが確定したアルゴさんですが、それは第三章と第四章の間の話となりますので、本編では触れることはないと明言しておきましょう。何気に彼女も重要人物でしたね。《本作のアルゴ》の想いもしっかりコルネリオさんに届いています。というか、思いつきってすごいですね。
話題は変わりまして、プログレッシブではキリアスコンビは《水の都》に《水上の村》に《湖上の城》にと観光名所を満喫したり、混浴したり、主人公らしく友であるエルフの女騎士様と共闘したりしていますが、この作品ではまさしく対照的です。観光名所としてのロービアではなく、《街の裏側とキャンペーン・クエストのバックストーリー》という日陰をひた走る構成になりましたが、これから原作と話がリンクします。多分。
………と、第三章を振り返るような内容の後書きとなってしまいましたね。
32話で『あと三話で終わらせる』なんて言っていましたが、あれは嘘です。纏まりませんでした。
もうちょっとだけ続くんです。
ということで、何気に第三章も佳境に差し掛かっております。
頑張ってモリモリ更新していきたいと思います。
それと、お話は別方向に飛びますが、迷い猫先生が書いておられる《ソードアート・オンライン -旋律の奏者-》にて、拙作とのコラボが実施されております。
未来の燐ちゃん達と狂った夫婦の邂逅、燐ちゃんは生きて帰ってこれるのですかね。こちらを読み終わった方は是非そちらも御贔屓にお願いします(ダイレクトマーケティング!)
ではまたノシ
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