| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

学園黙示録ガンサバイバーウォーズ

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第九話

世界が崩壊して三日。現在、俺達は高城の実家にいる。バリケードでの<奴ら>との戦闘後に無事に保護されて、LMVもハンビーも、この家の人たちが持ってきている。今はメンテナンス中との事だ。それにしても、昨日の夜はぐっすりと寝れた。安物のベットではなく、高級ホテルに置いてあるようなフカフカのベットに、この三日で色々と切羽詰まった感覚もあってぐっすりと寝る事が出来た。

しかもこれが他人である俺一人に使わせてもらえると、高城の家がどれ程の財力があるのか理解させられる。

「だがな……」

窓から見る景色は、高城の家がただの金持ちではないとわかる。屋敷の外には、旧日本軍の士官服を思わせる服装に身に纏い。装備に猟銃、日本刀等がを標準装備している屈強の強面の男たち。猟銃は日本でも手に入るから装備しても特に驚きはしないが、その他にも軍用拳銃のガバメント系列に、スタームルガー製のライフルであるミニ14をNATO正式マガジンであるSTANAGマガジンを差し込んでいる物を見かける。他にもM16系統の小銃やボルトアクション式のライフルまである。

俺も人の事を言えないが、普通の連中じゃないと理解できる。

これだけの装備を加えて、屋敷の中にはテントを張っており、俺達と同じように保護された人間が、ここの人間関係と思われる人たちに治療も受けていれば、缶詰めやペットボトル入った水を渡されているのを見かける。装備だけでなく、医療や食料関係も充実している。

これだけの非常事態に一糸乱れなく対応しているところを確認すれば、組織としてかなり出来ていると認識できる。それだけの組織を統括しているのが高城家であり、その組織は国内でもトップクラスの国粋右翼団体『憂国一心会』の会長だそうだ。ただの右翼団体ではない事は目の前の現実を見れば確認できる。とにかく非常時でも組織として崩壊していなく、逆に一糸乱れない統率力を確認できる。右翼団体と言うより、ここの連中は規律に正しい国家の軍隊を思わせる。

あのバリケードも、ここの大人たちが張り付けたものだ。この家周に繋がる道全体に張り付けているそうだ。バリケードが原因で百体を超える<奴ら>を相手にしなければいけなかったが、今を考えれば安全だ。現状という言葉をつけるが、それでもあのバリケードがむやみに破壊でもされないかぎりは、この家の周辺は<奴ら>の侵入を防ぐ事が出来ると言う事だ。

「下に降りるか……」


ーーー。

「銃の整備。ごくろうさん」

「あ、田中先輩」

高城家が所有している車庫の一つに、俺達が移動手段として使っていたハンビーとLMVが置いてある。そして車の整備や修理をするなら十分過ぎるほどの環境が、この車庫一つに収まっていた。その開いたスペースで平野は、銃の整備をしていた。

まあ、昨日はアホみたいに銃をぶっ放したから銃の整備は重要だ。どんな頑丈に作られた銃も使用すれば部品にダメージが与えられるし、機関部に火薬がこびりついて、それが重なると作動不良が起きてしまう。それ=死につながる。

昨日のように、安心して整備できる環境は限られてくるし、使用した前日にクリーニングするのが好ましいが、それがいつまで出来るのか怪しいものではあるが……。

さっきから大人たちの微妙な視線が気になって仕方がない。まあ、昨日の出来事を考えれば、『子供』が、あんな事を出来るのかと思いたいのも分からなくもない。


「まだ弾薬に余裕があるとはいえ、かなり使ったな」

「でも、消費したのが使いどころが難しい12・7mmNATO弾でよかったですよ。先輩も5・56mmNATO弾を最小限に抑える戦闘をしていましたし。」

「だが、あんな馬鹿げた消耗戦は、何回も出来るもんじゃないぞ。弾薬にも限りがあるしな」

弾丸の購入にかんしては、M2の12・7mmNATO弾等を除けば、デスバレットの購入システムでいくらでも揃える事は出来るが、マネーにも限界はある。出来れば弾薬は節約したい。

まあ、それでも<奴ら>をかなり倒したお蔭で、マネーはかなり補充されたが、この機能もいつまで使えるか分からないからな。

しかし、平野は楽しそうだ。小室や高城が使っていたモスバーグM590やMP5SD6を分解して、エアーで綺麗にクリーニングした後に、ちゃんと組み立てている。平野って銃を扱う事が本当に大好きなんだなと理解できる。

「楽しそうね。あんた達!」

「お、高城か」

「何よ。私がせっかく様子を見にきてあげたのに、その言いぐさ!」

「お、落ち着いてくださいよ高城さん」

俺、普通に言葉を返しただけなんだけどな。何か妙にイラついてないか高城。それと平野。ナイスフォロー。

「ま、今のうちに楽しんでおけばいいわ。どうせいつまでもいられないもの」

「どうしてですか高城さん?こんな要塞みたいな屋敷だったら」

平野はあんまり事態を理解していないか。

「電気・ガス・水道といった日常生活に欠かせない物が、いつまでも維持できるか分からないからだろ」

「そうよ。この三つは日常生活では欠かせないものよ。それを維持するのに平和な日常でさえ、多数の専門家が安心して働ける環境が必要だった!電力会社・水道局・ガス会社は軍隊じゃないもの、当然よ!」

「じゃあ、今は?」

「何処もかしこも<奴ら>だらけ!」

だよな。高城の話が本当ならいつまでも維持できるか怪しいものだ。電気・ガス・水道という現代社会に必要不可欠なこの三つが、いきなり供給不可能となった時の混乱は凄まじいものだ。警察や自衛隊もそれを理解しているからこそ、護衛対象の優先対象は、この三つを専門的に動かす専門家の護衛だ。

しかし、軍人でもない職員たちが、しかもこんな命が危険で、いつ自分達が<奴ら>となって同僚に食われる心配もしながら維持できるとも思えない。それに、外にいる家族や親しい人間達の安否も気になるだろうから、その反動が爆発して職場放棄するのも時間の問題という訳か。

「兄ちゃんたち。それ本物の銃だろう?子供がどうやって入手したんだい?」

そこに作業用ベストを着て、工具箱を片手に持っている男が近づいて来た。この人が、ハンビーやLMVを整備してくれた人だ。

「偶然と言うか……何というか……」

デスバレットの購入システムで入手した武器とは言えない。てか、信じてもらえるとも思えないけど。

「まあ、扱えるならとやかく言うつもりないよ。話は聞いてるからな。沙耶お嬢様と一緒に派手に戦ったんだよな。ここまで銃声と爆発音が響いたぜ」

まあ、M2の弾幕射撃に加えて、アサルトライフルやショットガンを遠慮なくぶっ放して、最後に手榴弾まで使ったんだからな。

「松戸さん。要件はそれだけ?」

「あ、沙耶お嬢様。乗ってきた車の整備を終えた事をお伝えしようと……」

「わかったわ。ありがとう」

整備してくれた男性は頭を下げて、その場を去った。するとなぜか平野が目をキラキラさせて高城を見ていた。

「本当にお嬢様なんですね」

「あんたに言われたくないんだけど」

うん。その事にかんしては高城の言葉に全目的に同意する。お前の家系も十分に一般市民とかけ離れてるレベルだぞ。父親が宝石商。母親はファッションデザイナー、祖父は外国航路の船長、祖母がバイオリニストという何とも何処の漫画のキャラ設定だようと、思う程の家系だよ。

高城に劣らず平野も十分に金持ちの家系に属されるが、本人は感性が少しぶっ飛んではいるが、いたって庶民的で、生まれを自慢げにしない所が人間として好感はもてる。


「それより、それ!早く何とかした方がいいわ!」

高城が指をさしたのは、俺達が所持している銃だ。

「銃をですか?」

「今の反応でわからない?ここにいるのは『大人』がほとんど!彼らにとって私達は何?」

「『子供』でしかないわな。本物の銃を持った」

高城と俺の言葉を聞いた平野の表情が変わる。

「……小室と相談してみます」

「イザという時に備えて、拳銃くらいは装備しておけ。俺達の現状の立場からすれば『大人』達の対応も分からなくないだろう」

「わかりました」

「あのね。戦うこと前提で話を進めないでよね!拳銃を持つくらいにとやかく言わないけど、今の現状でちょっとしたきっかけで本当にまずい事になりかねないのよ!!」

「自分の身は、自分で守るもんだ。それを無理矢理奪うなら、俺は実力行使で、相手を黙らせるだけだ」

俺はハイパワーを取り出して、自分の意思表示を示す。子供だから、大人だからという理由だけで甘える事は許されないし、相手が良識的に対応するなら俺も戦う事はしない。

だけど、もし無理矢理でもテメーの要望を満たそうとするなら、俺は容赦なく引き金を引く。今まで共に行動してきたチームの一員の関係者であろうともだ。

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧