| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

白夜

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二章

「本当に」
「何でもないの見てどうするんだよ」
「ここで生まれ育ったんなら白夜なんて普通だろ」
「何日も日が落ちないなんてな」
「他はどうか知らないけれどな」
「それはそうだけれどね」
 アルノルドもそのことはそうだと答えた。
「本当にね、ただ」
「ただ?」
「ただって何だよ」
「それでもって思って」
「それでもっていうのが気になるな」
「それも妙にな」
 クラスメイト達はその彼にさらに言った。
「好きな娘でもいるのかよ」
「ひょっとしてな」
「ああ、そういうのじゃないよ」
 クラスメイト達のその問いは否定した。
「ただ思うことがあるだけで」
「白夜にか」
「それだけか」
「それだけだよ、じゃあね」 
 それならと言ってだ、そしてだった。
 彼はこの日はこのまま学校生活を受けた、その白夜の中で。
 部活も終えて家に帰ってだった、風呂に入り夕食を食べて。
 自室に戻りだ、それから。 
 筆を出した、絵の具とキャンバスも。そしてそこに。
 おもむろに描きはじめた、それを何日か続けてだった。
 彼はその絵が完成してからだ、まずは両親にその絵を見せて尋ねた。
「どうかな」
「何だ、絵か」
「あんたが描いた絵なの」
「そうなんだ」
 その油絵を見せての言葉だ。見れば白夜の絵だ。それを描いてそうしてからだ、彼は両親に見せたのである。
「ずっと白夜を見ていたらね」
「描きたいと思ってか」
「それでずっと考えてたの?」
「そうなんだ、油絵なんてはじめて描いたけれど」
 それでもというのだ。
「挑戦してみたんだ」
「まさかな」
「あんたが絵を描くなんてね」 
 両親はまずは意外といった顔で言った。
「しかもな」
「そうよね」
 そしてだった、お互いに顔を見合わせて話した。
「中々な」
「いいんじゃない?」
「はじめてとはいうけれどな」
「そう思えないわ」
「上手じゃないか」
「よく描けてるわ」
「うん、じゃあこの絵先生にも見せてみるね」
 通っている学校のだ。
「そうしてみるよ」
「そうしてみろ」
「それでどうなのか聞いてみたらいいわ」
「専門の人にな」
「それでどうか言ってもらうといいわ」
「うん、じゃあね」 
 それならとだ、彼も頷いてだった。
 その絵を学校の美術の先生に見せてみた、すると。
 先生もだ、驚いて彼に言った。
「君は美術部じゃない筈だが」
「はい、バスケ部です」
 スウェーデンではあまり盛んとは言えないかも知れないが彼は室内のスポーツが好きなのでしているのだ。
「そちらです」
「それでも描いたのか」
「そうしてみました」
「はじめて油絵を描いたのだったね」
 このことをだ、先生は彼に確認した。
「確か」
「その通りです」
「そうだな、しかし」
「それでもですか」
「はじめてには思えない」
 先生もこう言うのだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧